◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 取引先の法人そのものの情報は個人情報ではないが、役員等の氏名は含まれ、担当者の氏名・連絡先も個人情報として扱う前提で運用するほうが説明しやすい。
- 同一社内の拠点間の共有は第三者提供に当たらないが、子会社や代理店など別法人の拠点は別に整理が要る。
- 社内規程には目的・責任者・運用ルール・点検を書き、派遣社員も対象に含める。
- 公式アカウントならメンバーを一覧で把握し退職時に外せるが、それだけで個人情報保護法上の対応が済むわけではない。
- 送信取消では相手に伝わった可能性は消えず、漏えいの疑いが出たら4類型に当たるかで報告と本人通知の要否を判断する。
目次

拠点ごとのLINEで取引先の情報が散らばったとき、まず何を確認するか
拠点や担当者ごとにLINEで注文を受けていると、取引先の担当者の氏名や電話番号、注文の履歴が誰のスマホに残っているのか、会社として説明できなくなります。
取引先の法人そのものの情報は個人情報ではありませんが、法人の役員等の氏名は個人情報に含まれます1。
役員でない担当者の氏名や連絡先も、整理・検索できる形で持てば義務の対象になりえます。
同じ会社の拠点どうしで共有するだけなら第三者提供には当たりません1。
まずはLINEに触れられる人の棚卸し、従業者向けの社内規程、漏えい時の初動の3点を整え、それで足りなければアカウントの集約や受発注手段の移行を考えます。
法人の情報と担当者個人の情報の違い
散らばった情報を前にして最初に分けたいのは、それが「会社の情報」なのか「人の情報」なのかです。
個人情報保護委員会のQ&Aは、法人の情報は個人情報に含まれないとしたうえで、法人の情報であっても役員等の氏名等は個人情報に含まれると説明しています1。
取引先の社名のような法人そのものの情報と、注文を送ってくる担当者の氏名・携帯番号とでは、扱いの出発点が違うということです。
判断が難しいのは、役員ではない現場の担当者です。
委員会のQ&Aのこの記載は役員等の氏名に触れたもので、一般の担当者について直接述べたものではありません。
ただ、同じQ&Aは社内の他部門へ移す例として「取引先に関する個人データ(氏名、電話番号など)」を挙げており1、取引先担当者の氏名や電話番号を個人データとして扱う場面を前提にしています。
このため実務では、担当者の氏名や連絡先を「対象外かもしれない情報」として置いておくより、個人情報として扱う前提で運用を組むほうが、後で取引先に説明するときにも筋が通ります。
もう一つの分かれ目は、情報がどんな形で残っているかです。
法律上の義務がどこからかかるかは、氏名や連絡先が検索できる形に整理されているか(個人データに当たるか)で変わり、LINEのトーク履歴や友だち一覧がこれに当たるかは、使い方によって個別の判断になります。
LINEの表示名やIDだけで本人を特定できるかも、表示名の付け方や他の情報との結び付きによって変わるため、一律には言えません。
ここで線引きを先に決めようとするより、拠点ごとに「どの端末・どのアカウントに、誰の氏名と連絡先が残っているか」を一覧にするところから始めるほうが、次の判断に進めます。
同一社内で共有するときの扱い
拠点の担当者が「A拠点で受けた取引先の連絡先を、B拠点にも回してよいのか」と迷う場面があります。
委員会のQ&Aは、同じ会社内で他部門へ取引先に関する個人データを移すことは第三者提供に当たらず、会社が定めた利用目的の範囲内で使えると説明しています1。
同じ会社の拠点どうしであれば、共有のたびに取引先の担当者から同意を取り直す必要はない、という整理です。
ここで先に確かめておきたいのが、各拠点が本当に同じ会社なのかという点です。
営業所や倉庫が同一法人の一部なら上の整理が当てはまりますが、子会社、代理店、フランチャイズ加盟店のように拠点が別の法人であれば、同一社内の移転とは言えません。
別法人へ渡す場合は、第三者提供として扱うのか、業務の委託として扱うのかを別に整理する必要があります。
「グループ会社だから社内と同じ」と考えて情報を回していると、取引先への説明で食い違いが起きます。
同一社内なら何に使ってもよい、というわけでもありません。
使える範囲は、会社が定めた利用目的の内側です1。
受発注の連絡のために預かった担当者の携帯番号を、別の営業案内に流用してよいかは、利用目的をどう定めているか次第になります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 法人そのものの情報
- 個人情報に含まれない
- 法人の役員等の氏名等
- 個人情報に含まれる
- 役員でない担当者の氏名・連絡先
- 整理・検索できる形で持つかなどで個別に判断
- 実務では個人情報として扱う前提で運用する
自社が負う義務のうち、LINE運用で実際に問題になるもの
従業者の範囲(派遣社員を含む)
拠点間の共有そのものが第三者提供に当たらないと分かると、残る論点は「社内の誰が、どう扱うか」です。
LINEで受発注をしていると、取引先の情報に触れるのは正社員だけではありません。
拠点で注文を受けるパートや派遣社員が、拠点の共用スマホで取引先とやり取りしていることもあります。
委員会のQ&Aは、派遣社員も派遣先の指揮監督を受けて業務に従事している限り、派遣先の従業者に当たるとしています2。
自社のルールの対象から派遣社員を外す理由はなく、管理の範囲に含めて考えることになります。
範囲を決めるときに迷いやすいのが、別法人の拠点で働く人です。
前の節で触れたとおり、拠点が子会社や代理店であれば、そこの担当者は自社の従業者ではなく別の事業者の人です。
自社の規程を「拠点の全員」に一律で配るより、別法人の人については、契約や委託の条件として取り決めるほうが整理しやすくなります。
拠点ごとに「取引先とLINEでやり取りしている人」を、雇用形態と所属法人を並べて書き出すと、誰が自社の従業者として規程の対象になり、誰について別の取り決めが要るかが一度に見えてきます。
従業者の管理と社内規程
では従業者のLINE利用をどう管理するか。
委員会のQ&Aは、従業者をモニタリングする場合について、目的を定めて社内規程に明記し、従業者に周知したうえで、責任者、運用のルール、点検を置くことが望ましいとしています2。
これは監視の場面を想定した考え方ですが、業務でLINEを使う範囲を決める規程にも応用できると考えます。
「何のために」「誰が責任を持ち」「どう運用し」「いつ点検するか」が書かれていないルールは、拠点が増えるほど解釈が分かれていくからです。
LINE受発注に当てはめると、規程に書いておきたい項目はたとえば次のとおりです。
- 目的:取引先との受発注の連絡にLINEを使う理由と範囲
- 使ってよいアカウント:会社の公式アカウントか、会社支給の端末か、個人のアカウントを認めるか
- 責任者:拠点ごと・全社でアカウントと権限を管理する人
- 運用ルール:取引先の氏名・連絡先を転送・保存してよい場所、誤送信に気づいたときの連絡先
- 点検:権限を持つ人の一覧を見直す時期と、退職・異動時の手順
規程を作るときに見落としやすいのは、個人のスマホで個人のLINEを業務に使っているケースです。
会社の端末なら、会社が中身を確認する仕組みを用意できますが、個人の端末に残ったトークを会社が見に行くことは、従業者のプライバシーとの兼ね合いが出ます。
目的の明記と周知が求められているのは、こうした場面で従業者が「何を見られるのか」を事前に知っておけるようにするためと考えられます。
個人のLINEを業務に使うことを認めるかどうかは、この点検ができるかどうかで判断すると整理しやすくなります。
規程に盛り込む安全管理措置の細目は、委員会のガイドライン(通則編)に示されている項目と照らし合わせて作る必要があります。
LINEの運用ルールだけを切り出して作ると、紙の注文書や会社のメールに残る同じ取引先の情報との扱いがずれるため、既存の個人情報の取扱規程の中に位置づけるほうが運用は続けやすくなります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 同一社内の他拠点・他部門
- 第三者提供に当たらない
- 会社が定めた利用目的の範囲内で使う
- 派遣社員を含む従業者
- 指揮監督下なら従業者として規程の対象
- 別法人の拠点・代理店
- 第三者提供か委託かを別に整理する
- 契約や委託の条件として取り決める
LINEの使い方ごとに、情報の置き場所と見られる人はどう変わるか
個人LINEの送信取消でできること・できないこと
規程で「使ってよいアカウント」を決めるには、LINEの使い方ごとに、取引先の情報がどこに残り、誰が見られるかの違いを知っておく必要があります。
担当者が自分のLINEで取引先とやり取りしている場合、注文や連絡先はその人のアカウントのトークに残ります。
会社が把握しにくいだけでなく、間違えて別の相手に送ったときの取り返しにも限りがあります。
LINEヘルプセンターによると、送信取消ができるのは標準で送信後1時間以内です5。
そして取り消した場合でも、プッシュ通知などによって相手が内容を一部認識している可能性があると案内されています5。
ここから言えるのは、誤送信を取り消しても「相手に届かなかった」ことにはならないという点です。
別の取引先の注文内容や担当者の連絡先を誤って送った場合は、取消をしたうえで、何を誰に送ったかを記録し、次の節で扱う漏えい等の判断につなげる運用が要ります。
標準で1時間という期間は、拠点の担当者が誤りに気づくまでの時間を考えると長くはありません。
夕方に送った注文の誤りに翌朝気づいた場合は、取消はもうできない前提で動くことになります。
公式アカウントの権限管理
LINE公式アカウントは、担当者個人のアカウントではなく、会社のアカウントに複数のメンバーを登録して運用する仕組みです。
権限設定マニュアルでは、管理画面の「設定」から「権限管理」を開き、メンバーの追加と、権限の確認・変更・削除ができると説明されています4。
登録できるメンバーは、権限の種類を問わず1アカウントにつき100人までです4。
PC版でメンバーを追加するときは、認証用のURLを発行して本人に送り、そのURLには有効期限があって1人1回しか使えません4。
同じURLを拠点内で回して何人も入る、という広がり方はこの仕組みで防げます。
100人という上限は、権限の種類を問わない登録人数の枠です4。
拠点が多い会社では、全拠点の担当者を一つのアカウントに入れるのか、拠点や事業ごとにアカウントを分けるのかを、この枠と管理のしやすさから考えることになります。
どの権限で何ができるかの詳しい範囲は管理画面上で示されているため、拠点の担当者にどの権限を付けるかは、実際の画面で操作範囲を見てから決めるのが確実です。
個人のLINEとの違いをまとめると、公式アカウントでは「誰が見られるか」を会社が一覧で把握し、外すことができます。
ただし、これは棚卸しや退職時の対応がしやすくなるという運用面の違いであって、公式アカウントを使えば個人情報保護法上の対応が済むという意味ではありません。
取引先を招待したグループLINEは、退職や異動のときに会社として何ができるかが仕様として示されていないため、表ではその欄を空けています。
参加者全員が同じトークを見られる形なので、別の取引先の情報や社内向けの話を流さないというルールを、個人のLINE以上に意識しておく必要があります。
クラウド利用が提供に当たるかの考え方
取引先から「LINEに個人情報を預けていいのか」と聞かれたときに関わるのが、LINEの利用自体が個人データの第三者提供や委託に当たるのか、という論点です。
委員会のQ&Aは、クラウドサービスの利用について、サービス提供事業者がその個人データを取り扱うかどうかで、提供に当たるかが決まるとしています2。
提供事業者が取り扱わない場合は提供に当たらず、本人の同意や委託先の監督は生じませんが、その場合でも利用する事業者自身は安全管理措置を講じる必要があります2。
この考え方をLINEにどう当てはめるかは、LINEヤフーとの契約や規約で、事業者が個人データを取り扱わない旨やアクセスの制御がどう定められているかを見て判断することになり、使い方によっても変わります。
公式アカウントだから提供に当たらない、個人のアカウントだから当たる、と一律に言える根拠はありません。
データがどの国で保管・処理されるかという外国への提供の論点もありうるため、取引先への説明に使う前に、LINEヤフーの公式な説明と契約条項を自社で確認しておく必要があります。
どちらに整理されたとしても、自社が安全管理措置を講じる責任は残ります2。
LINEを使い続ける以上、前の節の社内規程と、ここで見た権限の管理は外せない部分になります。
| 観点 | 個人のLINE | LINE公式アカウント | グループLINE |
|---|---|---|---|
| 情報の置き場所 | 担当者個人のアカウントのトーク | 会社のアカウント(管理画面でメンバーを登録して運用) | 参加者それぞれのアカウントのトーク |
| 閲覧できる人 | アカウントを持つ担当者本人 | 権限を付けて登録したメンバー(1アカウント100人まで) | 取引先を含む参加者全員 |
| 退職時の対応 | 会社の操作で外す手順は仕様で確認できない | 管理画面の一覧から権限変更・削除 | 仕様で確認できる範囲なし |
| 確認できた根拠 | 送信取消は標準1時間以内・通知で認識されうる | 権限設定マニュアル | 確認できた範囲なし |
▼ 図の内容を文字で読む
- 個人のLINE
- 情報は担当者個人のアカウントのトークに残る
- 送信取消は標準で送信後1時間以内
- 取消後も通知で相手が一部認識している可能性がある
- LINE公式アカウント
- 権限を付けたメンバーを管理画面の一覧で把握できる
- 登録は1アカウントにつき100人まで
- 退職・異動時は削除や権限変更ができる
- 取引先を招待したグループLINE
- 参加者全員が同じトークを見られる
- 退職・異動時に会社ができることは仕様として示されていない
端末紛失・退職・異動のときに、何をいつまでにするか
退職・異動時のメンバー削除
拠点の担当者が退職するとき、公式アカウントで運用していれば、管理画面のメンバー一覧からその人を削除でき、異動であれば権限を変更できます4。
大事なのは操作そのものより、それを誰がいつ行うかを決めておくことです。
人事の手続きとアカウントの管理が別の部署にあると、退職の連絡がアカウントの管理者に届かず、辞めた人がメンバーに残り続けることが起こりえます。
そこで、退職・異動の手続きの中に「公式アカウントのメンバー一覧を確認し、該当者を削除または権限変更する」という項目を入れ、規程の点検とあわせて定期的に一覧を見直す運用が考えられます。
拠点が多いほど、一覧に並ぶ名前が今いる人と一致しているかを拠点の責任者に確認してもらう仕組みが役に立ちます。
一覧を見る手間は残りますが、各拠点の担当者の端末を一台ずつ聞いて回る確認は要らなくなります。
個人のLINEで取引先とつながっている担当者の場合は、事情が違います。
アカウントは本人のものなので、会社の操作でトークや友だちを外すことは前提にできません。
退職が決まった段階で取引先へ窓口の変更を伝え、受発注の連絡先を会社が管理するアカウントへ切り替えてもらうこと、業務に必要な注文の記録を会社の記録へ移しておくことが、現実的な手当てになります。
端末をなくした場合も、本人のアカウントの操作が中心になるため、会社として打てる手は限られます。
漏えい等報告の4類型と初動
端末の紛失、誤送信、不正なログインなどで取引先担当者の情報が漏れた疑いが出たとき、次に考えるのは委員会への報告と本人への通知が必要かどうかです。
2022年の改正法施行から、個人データの漏えい等のうち、次の4類型のいずれかに当たる場合は、報告と本人通知が義務になっています3。
- 要配慮個人情報が含まれる場合
- 財産的被害が生じるおそれがある場合
- 不正の目的によるおそれがある場合
- 1,000人を超える場合
報告は速やかに、概ね3〜5日以内に行うものとされています3。
本人への通知は、漏えいの概要、漏えいした項目、原因などを本人に分かりやすく伝えるもので、方法は書面やメールなどです3。
取引先担当者の氏名や連絡先、注文内容だけが漏れた場合に、どの類型に当たるかは事案によります。
たとえば拠点の共用スマホを紛失し、そこに数十社分の担当者の連絡先が入っていた場合、人数の基準には届きません。
一方で、不正なログインが疑われる場合は「不正の目的」の類型に当たる可能性があり、注文のやり取りに支払いに関わる情報が含まれていれば、財産的被害のおそれも検討が要ります。
4類型に当たらないと判断した場合でも、その判断の理由を記録しておくと、取引先から問われたときに説明できます。
初動で迷わないためには、気づいた人が最初に誰へ連絡するかを決めておくことが一番効きます。
報告の目安が短い以上、拠点の担当者が一人で抱えたり、送信取消だけで済ませたりしている余裕はありません。
▼ 図の内容を文字で読む
- 気づいた担当者が決められた連絡先へ知らせる
- どの端末・アカウントに誰の情報が残っていたかを特定する
- 公式アカウントなら該当メンバーの権限を変更・削除する
- 個人のLINEは本人のアカウントの操作が中心になる
- 4類型のいずれかに当たるかを判断する
- 要配慮個人情報・財産的被害のおそれ・不正の目的・1,000人超
- 当たれば速やかに報告し本人に通知する
- 当たらない場合も判断の理由を記録する
ルールで続けるか、アカウントを集約するか、別の受発注手段へ移すか
状況別の判断
ここまで見てきた、情報がどこに残るか、誰が見られるかを会社が把握できるか、漏えいの疑いが出たときにすぐ動けるか、の3点を自社の今の運用に当てはめると、取るべき手が見えてきます。
以下は、これらの観点から組み立てた判断の目安です。
拠点が少なく、取引先とやり取りする担当者がほぼ固定している場合は、運用ルールの整備で足りる見込みがあります。
誰がどの取引先と、どのアカウントでつながっているかを一覧にでき、退職や異動もまれなら、規程と定期的な点検で状況を把握し続けられます。
この場合の課題は、担当者が増えたときや入れ替わったときに、一覧の更新が漏れないようにすることです。
個人のLINEで取引先とつながっている担当者が多く、棚卸しそのものが難しい場合は、公式アカウントへの集約を考える段階です。
集約すると、取引先から見た窓口が会社のアカウントになり、誰が見られるかは管理画面のメンバー一覧で把握できます4。
拠点ごとに担当者の端末を確認して回る手間が、一覧の見直しに置き換わる、というのが集約で変わる部分です。
一方で、新しい窓口への切り替えを取引先にお願いすることになるため、案内の仕方と移行の時期は取引先の都合もふまえて決める必要があります。
注文の履歴をあとから探せる形で残したい、拠点ごとに見られる範囲を分けたい、誰がいつ注文を受けて処理したかを一か所で追いたい、といった要件がある場合は、受発注を管理する別の手段へ移すことも検討に入ります。
トークに流れていく注文をあとから台帳へ書き写して管理している場合、その転記と照合の手間は、LINEの運用ルールを増やしても減りません。
移行で変わるのは、注文が最初から記録として残り、見られる人を権限で分けられるようになる点です。
取引先に新しい手順を覚えてもらう負担や、移行期間の二重運用は別に考える必要があります。
どれを選んでも、それだけで漏えいがなくなるわけではありません。
変わるのは、問題が起きたときに「誰が何を見られたか」を会社が答えられるかどうかです。
いきなり手段を替える前に、まず今の状況を一覧にしてみると、自社がどの段階にいるかが判断しやすくなります。

取引先に『個人情報は大丈夫か』と聞かれたとき、何を示すか
説明項目
取引先から「うちの担当者の情報は大丈夫ですか」と聞かれたとき、相手が知りたいのは法律の解説ではなく、自分たちの情報がどこで、誰に、どう扱われているかです。
ここまでの内容をもとにすると、説明できるように整えておきたいのは次の項目です。
- 利用目的:預かった氏名や連絡先を、受発注の連絡など何のために使うか
- 社内での共有範囲:どの拠点・部署が見られるか(同一社内の拠点間は第三者提供に当たらないこと)
- アクセスできる人の管理:公式アカウントのメンバー管理や、退職・異動時の削除の手順
- 漏えいの疑いが出たときの連絡窓口:誰から、どのように連絡が来るか
社内での共有範囲を説明するときは、同じ会社の他部門へ移すことは第三者提供に当たらない、という委員会の整理を示せます1。
ただし拠点の一部が別法人であれば、その拠点については別の説明が要ります。
「全拠点で共有しています」と答える前に、その全拠点がどの法人に属するかを確認しておくと、説明が後から食い違うことを避けやすくなります。
言えないことも押さえておきます。
LINEの保管場所や契約内容のうち、自社が確認していない事柄を、取引先に断定して伝えることは避けるべきです。
説明できるのは、自社が決めたルールと、自社が実際に行っている管理の範囲です。
取引先が求める水準に今の運用が届いていないと分かった場合は、改善の予定とあわせて伝えるほうが、曖昧な安心を伝えるより信頼につながります。
同意を得て担当者情報を他社に伝えるとき
受発注の現場では、取引先B社の担当者の連絡先を、別の取引先A社に伝える場面が出てきます。
たとえば、B社から仕入れた品をA社へ直送してもらうために、両社の担当者どうしをつなぐような場合です。
委員会のQ&Aは、取引先B社の窓口担当者の氏名・連絡先を、本人の同意を得てA社に伝える場合について、本人に代わって個人データを第三者提供しているものとして、記録義務は適用されないとしています2。
この整理は、本人の同意があり、本人の代わりに伝えるという事情があることが前提です。
担当者に断らずにグループLINEへ連絡先を流したり、トークを転送したりする場合は、この前提を欠いています。
実務では、他社に連絡先を伝える前に本人へ「A社の担当者にお伝えしてよいですか」と確認し、その返事をトークに残しておけば、同意の有無を後から確かめられます。
多拠点では、この確認を省いて転送してしまう人が一人いるだけで、取引先への説明が成り立たなくなるため、規程の運用ルールにも書いておきたい項目です。
拠点ごとの所属法人、担当者の雇用形態、使っているアカウントが入り組んでいると、どこを規程で決め、どこをアカウントの集約や受発注の仕組みで管理するかを社内だけで切り分けるのは難しくなります。
今の拠点構成と取引先とのやり取りの流れを一緒に整理し、ルール整備で続けられるか、集約や移行を考える段階かを確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 取引先の情報の区別 | 法人の情報は個人情報に含まれない。役員等の氏名等は含まれ、担当者の氏名・連絡先も個人情報として扱う前提で運用する |
| 拠点間の共有 | 同一社内なら第三者提供に当たらない。別法人の拠点は第三者提供か委託として別に整理する |
| 社内ルール | 目的・責任者・運用ルール・点検を規程に書き、派遣社員も対象に含める |
| アカウントの管理 | 公式アカウントはメンバー一覧で把握し、退職・異動時に削除・権限変更する |
| 漏えいの疑い | 4類型に当たれば速やかに報告と本人通知。当たらない場合も判断理由を記録する |
| 次の手段 | 棚卸しができなければ集約、記録・権限・履歴の一元管理が要るなら移行を検討する |

取引先への説明や移行の検討は、注文の記録をどこに残し、誰が見られるようにするかという受発注業務の組み立てと切り離せません。 受発注の流れのどこに確認や転記の手間が残っているかを洗い出し、移行で何が変わり、何が残るかを確かめられます。
よくある質問
取引先の担当者が役員でない場合、氏名や連絡先は個人情報になりますか。
委員会のQ&Aが個人情報に含まれると明記しているのは、法人の役員等の氏名等です1。
役員でない担当者について直接述べた記載ではありませんが、同じQ&Aは取引先に関する氏名や電話番号を個人データの例として扱っています1。
義務がかかるかは、氏名や連絡先を整理・検索できる形で持っているかなど個別の事情で変わるため、実務では個人情報として扱う前提で管理しておくのが無難です。
個人のLINEで取引先とやり取りしている社員が退職したら、会社として何をすべきですか。
個人のLINEは本人のアカウントなので、会社の操作でトークや友だちを外すことは前提にできません。
退職が決まった時点で取引先に窓口の変更を伝え、会社が管理するアカウントへ連絡先を切り替えてもらうこと、業務に必要な注文の記録を会社側へ移しておくことが中心になります。
同じことを繰り返さないために、業務で個人のLINEを使うことを認めるかどうかを社内規程で決めておく必要があります。
LINE公式アカウントの管理者は何人まで置けますか。退職時はどう外しますか。
権限の種類を問わず、1アカウントにつき100人までメンバーを登録できます4。
退職時は、管理画面の「設定」から「権限管理」を開き、メンバー一覧から削除します4。
異動の場合は、削除せずに権限を変更することもできます4。
グループLINEに取引先を招待している場合、第三者提供になりますか。
グループへの招待そのものについて、委員会のQ&Aから直接の答えは示せません。
注意したいのは、グループ内で別の取引先の担当者の連絡先を共有する場面です。
本人の同意を得て別の取引先へ伝える場合は、本人に代わる第三者提供として記録義務が適用されないと整理されています2が、同意がない場合はこの整理が当てはまりません。
グループに流す前に本人へ確認し、その返事を残しておく運用にしておくと説明しやすくなります。
誤送信した注文や連絡先は、送信取消で十分ですか。
送信取消ができるのは標準で送信後1時間以内で、取り消してもプッシュ通知などで相手が内容を一部認識している可能性があります5。
取消はしたうえで、何を誰に送ったかを記録し、漏えい等の4類型に当たるかを判断する手順につなげます。
1時間を過ぎて気づいた場合は取消ができない前提で、誤送信先への連絡と社内への報告を優先します。
- 1 出典:個人情報保護委員会「個人情報保護法 よくある質問(一般・事業者向けQ&A)」(2026年閲覧)
- 2 出典:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン・Q&A」(2026年閲覧)
- 3 出典:個人情報保護委員会「漏えい等報告・本人通知の義務化(改正法特集ページ)」(令和4年施行)
- 4 出典:LINEヤフー株式会社「LINE Official Account Manager 権限設定マニュアル」(2026年閲覧)
- 5 出典:LINEヤフー株式会社「LINEヘルプセンター:メッセージの取り消し(送信取消)と削除」(2026年閲覧)
画像の出典元
- Business professionals collaborate in a contemporary office space with laptops and documents./Photo by Tima Miroshnichenko on Pexels