◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- BtoB通販の市場規模とEC化率を、経済産業省の最新調査にもとづいて整理します。数字の出どころと対象年もあわせて示します。
- EC化率が何を分母に計算されているかを先に確認します。定義を押さえると、社内資料での引用ミスを防げます。
- 市場全体の数字を、自社の受発注をどう見直すかという判断に落とし込む手順まで示します。
目次
BtoB通販の市場規模は2024年に514.4兆円へ拡大(前年比10.6%増)
BtoB通販の市場規模は、2024年の日本国内で514.4兆円でした。前年の465.2兆円から10.6%増え、企業間取引のEC化率は43.1%に達しています。経済産業省が2025年8月26日に公表した「令和6年度電子商取引に関する市場調査」の結果です*1。
BtoB通販(BtoB-EC)とは、企業間の商取引において、受発注などの取引プロセスをインターネットなどの電子的な手段で行う取引です。消費者向けの通販とは対象が異なり、卸・製造・建材・部材といった事業者どうしのやり取りが中心になります。
2024年は514.4兆円、前年465.2兆円から10.6%増
同調査によると、国内のBtoB-EC市場規模は2022年が420.2兆円、2023年が465.2兆円、2024年が514.4兆円でした*1。2023年・2024年と2年続けて前年を上回っており、直近の伸び率は前年比10.6%増です。
金額の規模もさることながら、稟議で判断材料になるのは伸び方のほうです。直近の伸び率が続く前提に立つと、いま電話やファクスで受けている注文が数年後も同じ手段のままである保証は薄くなります。
数字の出どころは経済産業省が毎年実施する市場調査
この市場規模は、経済産業省の「令和6年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」で推計されたものです*1。担当は商務情報政策局 情報経済課で、2025年8月26日に公表されています。
同調査は1998年度から毎年実施され、今回で27回目にあたります*1。年次で継続している統計のため、社内資料には「どの年の取引を対象にした数字か」を添えてください。
EC化率43.1%は「全商取引金額に占める電子商取引の割合」
EC化率は、電子化の進み具合を示す指標として市場規模とセットで引用されます。ただし分母を誤解したままでは、社内の議論がかみ合わないままです。まず定義を確認し、数字の意味を固めておきましょう。
分母は全ての商取引金額、分子は電子商取引の市場規模
経済産業省の定義では、EC化率とは全ての商取引金額(商取引市場規模)に対する、電子商取引市場規模の割合を指します*1。つまり分母は電子・非電子を問わない取引の総額です。
この定義を踏まえると、43.1%という数字は「企業間の商取引金額のうち4割強が電子的な手段で行われている」という読み方になります。市場が新たに生まれた分ではなく、既存の取引がどこまで電子に置き換わったかを示す比率です。
BtoB-ECの算出対象は「その他」以外に分類された業種
同調査では、EC化率の算出対象がBtoCとBtoBで異なります。BtoB-ECでは業種分類上「その他」以外とされた業種が算出対象で、BtoC-ECでは物販系分野が対象です*1。
43.1%という数字は、この範囲で計算された値になります。全産業のあらゆる取引を均等に均した数字ではないため、引用する際は算出対象の但し書きまで添えると誤解が起きません。
前年比3.1ポイント増:伸びているのは既存取引の置き換え
BtoB-ECのEC化率は、前年比で3.1ポイント増加しました*1。市場規模の伸び(前年比10.6%増)と同じ方向に、比率も上がっています。
比率が上がるということは、分母である商取引全体の中で電子の占める割合が増えたことを意味します。新しい需要が湧いたというより、これまで電話・ファクス・メールで処理していた注文が電子的な手段へ移った結果と読み取れます。
BtoC-EC26.1兆円・EC化率9.8%と並べると企業間取引の電子化が先行
同じ調査はBtoC-EC(消費者向け電子商取引)の数字も公表しています。2024年のBtoC-EC市場規模は26.1兆円、前年比5.1%増でした*1。EC化率は9.8%で、前年比0.4ポイント増です。
| 区分 | 2024年の市場規模 | 前年比 | EC化率 | EC化率の算出対象 |
|---|---|---|---|---|
| BtoB-EC(企業間電子商取引) | 514.4兆円 (2023年は465.2兆円) |
10.6%増 | 43.1% (前年比3.1ポイント増) |
業種分類上「その他」以外とされた業種 |
| BtoC-EC(消費者向け電子商取引) | 26.1兆円 (2023年は24.8兆円) |
5.1%増 | 9.8% (前年比0.4ポイント増) |
物販系分野 |
出典: 経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」(2025年)*1
金額の桁が違うのは、取引の性質が違うため
市場規模だけを比べると、BtoB-ECの514.4兆円はBtoC-ECの26.1兆円のおよそ20倍にあたります。企業間取引には原材料・部材・卸売の流れが何段も重なるため、同じ製品が最終消費者に届くまでに複数回の取引金額として計上されるからです。
したがって「BtoB市場のほうが儲かる」という読み方は成り立ちません。読み取るべきは金額そのものではなく、自社が関わる取引がどの程度電子化されているかという比率のほうになります。
EC化率の水準を単純比較しない:算出対象が異なる
BtoB-ECの43.1%とBtoC-ECの9.8%は同一の調査による数字ですが、算出対象は前述のとおり異なります*1。BtoBは「その他」以外の業種、BtoCは物販系分野が対象です。
そのため「企業間取引は消費者向けの4倍以上まで電子化が進んでいる」といった倍率の断定は避けてください。両者は対象範囲が異なるため、水準そのものの単純比較はできません。傾向として企業間取引の電子化が先行している、という言い方にとどめましょう。
伸びを支えるEDI標準・クラウド利用率80.6%・電子取引データの保存義務
数字を押し上げている環境側の条件は3つあります。いずれも自社が移行を検討する際の前提条件になります。
EDI標準仕様が受発注データの共通言語になっている
企業間の受発注を電子化する土台のひとつがEDI(Electronic Data Interchange、企業間で取引データを電子的にやり取りする仕組み)です。消費財流通の分野では、流通システム標準普及推進協議会が流通BMSを策定しています*5。
流通BMSは、メッセージ(電子取引文書)と通信プロトコル・セキュリティに関するEDI標準仕様と定義されています*5。共通仕様があることで、取引先ごとに個別の接続方式を作り込む負担が下がります。
企業のクラウドサービス利用率は80.6%まで浸透
受発注をWeb化するには、社外からアクセスできる基盤が要ります。総務省「令和7年版 情報通信白書」は、通信利用動向調査をもとに、2024年時点で80.6%の企業がクラウドサービスを利用していると示しています*4。
母集団は企業向け調査の回答企業であり、EC専用の設備を持つ企業の割合ではありません。それでも、社外との電子的なやり取りを前提にした環境が広く整ってきたことは確認できます。
電子でやり取りした注文書・請求書はデータでの保存対象
受発注を電子に移すと、保存の要件も変わります。国税庁は、取引情報を含む電子データをやり取りした場合の保存義務や保存方法が電子帳簿保存法により定められていると案内しています*6。所得税法・法人税法上の保存義務者は、電子取引の扱いを確認する必要があります*6。
ここを詰めずにWeb受発注だけを先行させると、注文データの保存要件を満たせないまま運用が始まります。後から保存方式を作り直す事態になれば、切り替えの手戻りと税務対応の負担が同時に発生しかねない状況です。移行の設計段階で、保存要件を含めて要件定義しておきましょう。
市場規模を投資判断に落とす3つの視点:測定・要請確認・体制の判断
市場全体の数字は、そのままでは自社の投資判断になりません。公表データを自社の意思決定に接続する視点を3つ、着手すべき順序で示します。
市場データを自社の判断に落とす3つの視点
- 自社のEC化率を測ります。全受注金額に占める電子的に受注した金額の割合として計算し、経済産業省が示すBtoB-EC全体の43.1%(2024年)と並べて位置を確認します*1。
- 取引先からの電子化要請にどこまで応えられるかを確認します。EDIの標準仕様である流通BMSへの対応可否など、要請の中身を取引先ごとに整理します*5。
- 内製で抱える範囲を見極め、外部の知見を使うかを判断します。一括での切り替えではなく、反復発注が多い取引から順に電子受注へ移し、電子取引データの保存要件も同時に満たします*6。
視点1:自社のEC化率を全受注金額に占める電子受注金額の割合で測る
経済産業省の定義に合わせるなら、分母は自社の全商取引金額、分子は電子的な手段で受注した金額です*1。電話・ファクス・メールで受けた注文を担当者が基幹システムへ手入力している場合、その分は分子に入りません。
この計算をすると、自社の位置が全体の43.1%より上か下かが見えます。ただし経済産業省の43.1%は業種分類上「その他」以外の業種を算出対象とした値のため、自社の数値との比較は水準の厳密な突き合わせではなく目安として扱ってください*1。数字が小さいほど手作業の受注処理が残っているという意味になり、改善余地の大きさがそのまま示されます。
視点2:取引先からの電子化要請に応えられる範囲を確認する
企業間取引の電子化は、自社だけの都合では進みません。取引先が採用している受発注方式に合わせられなければ、注文の受け口が分断されたままになります。
確認したいのは、取引先が求める接続方式と、自社が対応できる範囲の差です。流通BMSのような標準仕様への対応可否、既存の受発注システムとの接続可否を、取引先ごとに棚卸しします*5。
視点3:内製で抱える範囲を見極め、外部の知見を使うかを判断する
BtoBの受発注は、消費者向けの通販と要件が異なります。内製で作り切ろうとすると、押さえるべき範囲が一気に広がります。
具体的には、取引先別価格・掛売と与信管理・承認フロー・出荷単位や荷姿の制約が対象になります。範囲はさらに広く、EDIの通信方式とメッセージ仕様、電子取引データの保存要件まで及びます*6。業務と技術の双方を理解した担当者の確保が欠かせません。
この範囲を社内の限られた要員だけで設計すると、商習慣の例外処理が仕様から漏れやすくなります。仕様の漏れは稼働後の受注ミスや請求の不一致につながり、切り戻しのコストは初期構築の負担を上回りかねません。
外部のパートナーに設計を委ねる利点は、BtoB特有の商習慣を扱った実装知見を最初から前提にできる点にあります。内製と比べて、要件の抜けを早い段階で潰しやすくなります。可視化したコストを自社の数字で確かめるには、無料相談で要件を整理するのが近道です。
引用時に取り違えやすい2点:対象年・データの更新頻度
第2節ではEC化率の定義そのものを扱いました。定義ではなく、社内資料や稟議で数字を使うときの実務上の注意点を3つ挙げます。
| 取り違えやすい点 | 正しい扱い方 | 確認先 |
|---|---|---|
| 年度表記と対象年のずれ | 「令和6年度調査」は2024年の取引を対象とし、公表は2025年8月26日です。 資料には対象年と公表日の両方を書きます。 |
経済産業省の報道発表*1 |
| EC化率の算出対象 | 引用時は「算出対象:業種分類上『その他』以外の業種」を数値のすぐ横に併記します。 自社の業種が算出対象に含まれるかを、報告書本編で確認してから引用します。 |
同上の注記部分*1 |
| 市場規模の意味 | 514.4兆円は既存取引の電子化分を含む金額です。 「未開拓の需要が514兆円ある」という読み方はしません。 |
調査のEC化率の定義*1 |
年度表記と対象年のずれを資料に明記する
調査名は「令和6年度」ですが、集計対象は2024年の取引です*1。公表は2025年8月26日のため、資料の作成時期によっては3つの年が混在します。
ここを曖昧にしたまま稟議へ回すと、数字の前提を問われた際に説明できません。前提が崩れた資料は投資判断の材料として扱われにくくなります。表や図の脚注に、調査名・対象年・公表日をそろえて記載してください。
データは年1回更新されるため、引用前に最新版を確認する
本調査は1998年度から毎年実施されています*1。過去の年度の公表資料と報告書は、経済産業省の「電子商取引実態調査」のページにまとめて掲載されています*3。
市場規模を引用した資料を使い回す場合、更新の有無を確認しないまま古い値が残ることがあります。前年度の465.2兆円と最新の514.4兆円では、示せる伸びの大きさが変わってきます。
まとめ:市場全体の規模ではなく自社の電子受注比率から判断する
BtoB通販の市場規模を経済産業省の最新調査にもとづいて整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、2024年のBtoB-EC市場規模は514.4兆円で前年比10.6%増、EC化率は43.1%でした*1。いずれも公表日と対象年をセットで扱う数字です。第二に、EC化率は全ての商取引金額を分母とする比率であり、伸びの中身は新規需要ではなく既存取引の電子化だという点になります。第三に、判断の起点は市場全体の金額ではなく、自社の全受注金額に占める電子受注金額の割合です。この比率を測り、取引先からの要請を棚卸しし、取引先と商材の単位で段階的に移行する。この順序で進めれば、市場データは自社の投資判断につながる材料に変わります。
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
よくある質問
CtoC-EC(個人間の電子商取引)の市場規模はどれくらいですか。
2024年のCtoC-ECの市場規模は2兆5,269億円、前年比1.82%増と推計されています*2。同じ経済産業省の調査で公表されている数字です。なお同調査は、CtoC取引には実際にはBtoB・BtoCの取引も含まれる点に留意が必要だと注記しています*2。
越境ECの市場規模も同じ調査で公表されていますか。
公表されています。2024年の中国消費者による日本事業者からの越境EC購入額は2兆6,372億円で、前年比8.5%増でした*2。日本・米国・中国の3か国間の越境EC市場規模は、いずれの国の間でも増加しています*2。
BtoC-ECの物販系分野のEC化率はどれくらいですか。
2024年の物販系分野のEC化率は9.78%で、市場規模は15兆2,194億円です*2。2023年は14兆6,760億円・EC化率9.38%でした*2。BtoC-EC全体のEC化率は、この物販系分野を算出対象として計算されています*1。
BtoC-ECのサービス系・デジタル系分野の規模はどれくらいですか。
2024年はサービス系分野が8兆2,256億円(前年比9.43%増)、デジタル系分野が2兆6,776億円(前年比1.02%増)です*2。サービス系では旅行サービスが3兆5,249億円を占めています*2。これらはBtoC-ECの内訳であり、BtoB-ECの数字には含まれません。
過去の年度の調査結果はどこで確認できますか。
経済産業省の「電子商取引実態調査」のページで確認できます*3。公表資料と報告書が年度ごとに掲載されており、最新版の有無もこのページで確認できます。本調査は1998年度から毎年実施され、令和6年度調査で27回目にあたります*1。
- *1 出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」(2025年)
- *2 出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査 公表資料」(2025年)
- *3 出典:経済産業省「電子商取引実態調査」(2025年)
- *4 出典:総務省「令和7年版 情報通信白書「クラウドサービス」」(2025年)
- *5 出典:流通システム標準普及推進協議会「流通BMS」(一般財団法人流通システム開発センター)
- *6 出典:国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」
画像の出典元
- 段ボール箱とコンテナが天井まで積まれた物流倉庫の通路/Photo by Alberto Rodríguez on Unsplash
- 駐車場に置かれた空のショッピングカート/Photo by David Clarke on Unsplash
- 売上のグラフを印刷した資料と電卓を広げた机/Photo by Jakub Żerdzicki on Unsplash
- 付箋を挟んだ書類の束が積み上がった事務所の机/Photo by Wesley Tingey on Unsplash