◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- BtoB ECの定着を、サイトの公開状態ではなくWeb受注比率という指標で捉え直します。
- 現場が使わない原因を、抵抗ではなく二重運用と評価設計の問題として整理します。
- 営業・受注事務・情報システムを巻き込む進め方と、月次で回す運用手順を解説します。
目次
BtoB EC定着はWeb受注比率で測り、営業・受注事務・情シスの三者で回す
BtoB ECの定着は、現場のやる気ではなく指標・体制・評価の設計で決まります。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「DX動向2026」報告書(2026年7月30日公開・国内企業1,799社が回答)によれば、DXの成果が出ている企業では経営者・IT部門・業務部門の協調が「十分にできている」「まあまあできている」の合計が72.9%であるのに対し、成果が出ていない企業では37.1%にとどまります*1。
BtoB ECの定着とは、サイトが公開されている状態を指すのではありません。これまで電話・FAX・メールで受けていた注文が実際にWeb経由へ置き換わり、現場の担当者がその手順を日常の業務として続けている状態を指します。
「公開した」と「定着した」は別の到達点だと理解することが、以下で扱う指標・体制・評価の話の前提になります。定着は、導入の進め方を解説した記事で扱う一連の工程のうち、最終段に位置づけられます。
定着の到達点は公開日ではなく「手段別の受注件数がWebへ移った状態」である
公開直後は、電話・FAX・メールとWebの受注が並行して走る期間になります。この並行期間そのものは避けられませんが、問題は並行運用が終わらないまま数か月・数年が過ぎるケースです。
商取引全体で見れば、企業間取引の電子化そのものは進んでいます。経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2025年8月26日公表)によれば、2024年の国内BtoB-EC市場規模は514.4兆円(前年比10.6%増)、EC化率は43.1%(前年比3.1ポイント増)です*11。ここでのEC化率は全商取引金額に対する電子商取引市場規模の割合であり、個社のBtoB ECがどれだけ使われているかを示す数値ではありません。それでも、取引先側にもWeb発注という手段が広がりつつある環境であることを示しています。
定着したかどうかは、Web受注比率(Web受注件数÷全受注件数)という具体的な数値で判断できます。この指標の定義と取得方法は、後段の「定着は4つの指標で測り、月次のサイクルで回す」で詳しく扱います。
定着を測る指標を決めている企業は4社に1社に満たない
同報告書によれば、DXに取組んでいる企業のうち、DXの成果指標を「設定している」と回答した割合は23.9%にとどまります*2。成果を測る指標の設定は4社に1社にも満たない状況が続いており、取組の成果を適切に把握できていない企業が多い状況にあるとされています*2。BtoB ECの定着でも同じことが起こりやすく、「使われているはずだ」という感覚だけで判断している状態は、指標が無いまま議論しているのと変わりません。
経営者・IT部門・業務部門の協調ができている企業ほど成果が出ている
同報告書は、経営者・IT部門・業務部門の協調状況とDXの成果を関連づけて示しています。協調が「十分にできている」「まあまあできている」の合計は、成果が出ている企業で72.9%、成果が出ていない企業で37.1%です。部門間の協調とDXの成果創出が強く関係していると分析されています*1。
この調査はデジタル施策全般を対象としたものであり、BtoB ECを対象とした調査ではありません。ただし部門間の協調が成果を左右するという構図は、営業・受注事務・情報システムの三者が関わるBtoB EC定着にもそのまま当てはまると考えられます。
現場が使わない原因は抵抗ではなく、電話・FAXとWebの二重運用にある
電話・FAXとWebの並行運用は、現場の作業量をむしろ増やす
Web受注の窓口を新設しても、電話・FAXの窓口をすぐには閉じられない企業が大半です。取引先ごとに移行のタイミングが異なるため、受注事務の担当者は「Webで来た注文」と「電話で来た注文」の両方を、同じ基幹システムへ入力し続けることになります。
この二重の入力作業は、システム導入前より業務量が増えて見える時期を作り出します。ここで「現場がECを嫌がっている」と受け取ってしまうと、原因の特定を誤ります。
デジタル施策全般でも、現場業務に近い部署ほど取組が遅れる傾向がある
IPA「DX動向2026」報告書の図表3-7は、生成AIを導入・試験利用・検討中と回答した企業を対象に、その利用部署を調べたものです*5。ITシステム部門で71.9%、経営企画部門で69.0%が利用しています。
一方で調達部門は31.3%、流通部門は23.9%、製造部門は35.7%にとどまり、現場業務に近い部署では利活用が相対的に低い水準にあるとされています*5。この数値は生成AIの利用部署を対象とした調査であり、BtoB ECの利用率を示したものではない点に注意が必要です。
あくまで「デジタル施策一般では、管理部門が先行し現場業務に近い部署が遅れやすい」という傾向を示す参考値として捉えてください。
個人任せでは、組織的な取組にならない
総務省の「令和8年版 情報通信白書」(2026年7月公表)は、2026年1〜2月にインターネットアンケートで、従業員10名以上かつ2025年までにデジタル化の取組を開始した企業の管理職以上を対象に、生成AIによる業務変革への組織的な取り組み状況を国別に調べています。日本では「組織的な取り組みはない」と回答した割合が27.0%となり(日本 n=497)、他の3か国より高い水準にあると報告されています*3。
この調査も生成AIによる業務変革を対象としたものであり、BtoB EC専用の調査ではありません。それでも「担当者個人の努力に依存し、組織としての体制が整わない」という構図は、BtoB EC定着の停滞理由としてよく見られるものと重なります。
原因は3つに切り分けられる
現場が使わないという現象は、ひとまとめにせず3つに切り分けて捉える必要があります。第一に電話・FAXとの二重運用が残っていること、第二に営業や受注事務の評価にEC経由の実績が反映されていないこと、第三に運用手順が現場まで具体的に渡っていないことです。次章以降では、この3つのうち体制と評価の設計に焦点を当てて解説します。
なお、取引先への案内文や操作手順の整備など、取引先側の移行そのものは本記事では扱いません。取引先を電話・FAXからWebへ移す進め方は、電話・FAX受注からの脱却方法を解説した記事で扱っています。
巻き込みの起点は推進部門の要件ではなく、現場の課題認識に置く
推進部門が要件を作り、現場が受け取る形では動かない
BtoB ECの多くは、情報システム部門や事業企画部門が要件を定義し、営業・受注事務へ完成形として提示する進め方で導入されます。この順番自体は要件定義の効率という点では合理的です。
しかし現場が「自分たちの課題を解決するもの」だと認識しないまま公開日を迎えると、日常業務への組み込みが進みません。巻き込みの起点は、要件の完成度ではなく現場の課題認識に置く必要があります。
先進企業は「現場の課題認識」を起点に、推進部門が伴走支援する形をとる
総務省「令和8年版 情報通信白書」は、AI活用を進める先進企業や有識者へのヒアリングから得られた示唆として、次の点を挙げています。「事業部門の現場におけるニーズや課題意識を検討の起点とし、DX推進部門が伴走支援」する形が有効だという内容です*6。
BtoB EC定着でも、営業や受注事務が抱える具体的な困りごと(取引先ごとの価格差異の反映、承認フローの煩雑さなど)を先に拾い上げることが大切です。推進部門がその解決策としてシステムの使い方を提示する順番のほうが、定着しやすいと考えられます。
巻き込む相手は3層に分かれる
「現場」とひとくくりにすると、必要な対応が曖昧になります。営業部門・受注事務(業務部門)・情報システム部門の3層に分け、それぞれが抱える不安の中身と、握るべき合意を切り分けて整理します。
| 関与部門 | 不安の中心 | 渡す材料 | 握る合意 |
|---|---|---|---|
| 営業部門 | EC経由の受注が自分の実績にならないのではないかという不安。 | EC受注の実績計上ルールと、担当者別のWeb受注比率のデータ。 | EC経由の受注も担当者の実績として計上する合意。 |
| 受注事務(業務部門) | 新しい操作を覚える負担と、入力ミスへの不安。 | 操作手順書と、例外対応(価格個別交渉・分割納品など)のフロー。 | 並行運用を残す取引先の範囲と、その終了時期の合意。 |
| 情報システム部門 | 運用保守の負荷増加と、障害発生時の対応範囲への不安。 | 障害対応の体制図と、ログ・問い合わせ内容の運用ルール。 | 保守・問い合わせ対応の役割分担についての合意。 |
学ぶ環境の整備が定着を左右する
総務省の同白書では、「業務プロセスの見直しや生成AI活用検討に必要なスキルやノウハウを学ぶ環境がある」と回答した日本企業は39.9%です(日本 n=326)。この割合は他の3か国より低い水準にあると報告されています*7。この数値も生成AI活用に関する調査結果であり、BtoB EC専用の調査ではありません。
それでも、新しい業務の進め方を学ぶ環境そのものが用意されていなければ、現場は自発的に使い方を習得しにくくなります。学ぶ環境の有無が習得の度合いを左右するという関係は、BtoB EC定着にもあてはまります。
自社の商習慣(取引先別価格・掛売・承認フロー・例外対応)がシステムの標準機能に載りきっていないことが、現場が学びきれない一因になっている場合があります。二重運用が長引く背景に要件の積み残しがないか、無料相談で要件を整理することで確認できます。
営業部門の巻き込みは説得ではなく、EC受注の評価設計で決まる
EC経由の受注が営業の実績に計上されないと、担当者はWebを避ける
営業担当者が電話受注へ誘導してしまう背景にあるのは、「取引先が電話を好むから」という表面的な理由だけではありません。EC経由の受注が自分の実績として扱われないという制度上の問題も隠れています。
担当者は自分の評価を守るために、慣れた電話受注のほうを優先しやすくなります。この点に踏み込まないまま「現場の意識改革」を呼びかけても、営業行動は変わりません。
先に決めるべきは3点である
営業部門を巻き込む際に、抽象的な協力依頼から入るのではなく、次の3点を先に決めて提示することが有効です。第一にEC受注の実績計上先(担当者個人か、部門全体か)、第二にインセンティブの扱い(電話受注と同等に評価するか)、第三にWeb受注比率の目標値です。この3点が未決定のまま「ECも使ってください」と依頼しても、担当者にとっては行動を変える理由がありません。
スキルの奨励と評価にはギャップがある
IPA「DX動向2026」報告書の企業文化・風土に関する調査では、「新しいスキル等を習得することが奨励される」への回答率は54.0%です。一方で「高いスキルを持っていることが報酬に反映される」は32.3%、「学習を支援する制度やプログラムが充実している」は35.1%にとどまっています*8。この調査はDX全般を対象としたものであり、BtoB ECに限った数値ではありません。ただし「新しい取組を奨励はするが、評価には反映しきれていない」というギャップは、営業がECを敬遠する構造と重なる部分が大きいと言えます。
営業の仕事は「受注を取る」から「取引先をWebへ案内する」へ置き換わる
EC受注の実績計上とインセンティブの扱いが決まれば、営業担当者の役割は徐々に変化していきます。従来のように電話一本一本で注文を受ける仕事から、取引先にWeb発注の使い方を案内し、移行を後押しする仕事へと重心が移ります。この役割の変化自体を評価制度に組み込むことが、営業部門の巻き込みを説得ではなく設計として成立させる鍵になります。役割の変化がなぜ起きるのかは、Web受発注システム導入のメリットを解説した記事で扱う内容とも重なります。
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
定着は4つの指標で測り、月次のサイクルで回す
定着を測る4つの指標
定着を「なんとなく浸透してきた」という感覚ではなく、数値で報告するには、次の4つの指標を定義しておく必要があります。取得元と見る頻度もあわせて決めておくことで、月次の運用に組み込めます。
| 指標 | 定義(計算式) | 取得元 | 見る頻度 |
|---|---|---|---|
| Web受注比率 | Web受注件数 ÷ 全受注件数 | 受注システムの実績データ | 月次 |
| 取引先別の移行率 | Webで発注した取引先数 ÷ 対象取引先数 | 顧客管理台帳と受注記録の突合 | 月次 |
| 問合せ・差戻し件数 | Web受注に対する電話での確認・修正の件数 | 受注事務の問い合わせ記録 | 週次〜月次 |
| 受注1件あたりの処理時間 | 受注受付から出荷指示までの所要時間 | 受注システムのタイムスタンプ | 月次 |
指標を設定できない理由の上位は「決め方がわからない」36.0%——まず2指標から始める
IPA「DX動向2026」報告書によれば、成果指標を設定していない理由は「評価指標の設定方法がわからない」が36.0%で最も高くなっています。この割合は前年度の28.7%から上昇しています*4。この調査もDX全般を対象としたものであり、BtoB ECの指標設定率を示す数値ではありません。それでも「指標を決める手順自体が分からない」というつまずきは、業種を問わず起こりやすいと考えられます。迷った場合は、上表の4指標のうちWeb受注比率と取引先別の移行率の2つから着手し、運用に慣れてから残り2つを加える順序が現実的です。
月次で見るのは平均値ではなく「止まっている取引先」と「使っていない担当者」である
Web受注比率を全社平均だけで見ると、一部の取引先や担当者の停滞が埋もれてしまいます。月次で確認すべきは平均値の推移に加えて、移行率が伸びていない取引先と、Web受注比率が上がらない担当者を個別に特定することです。この特定作業があって初めて、次章で扱う対応(教育の再実施・例外扱いの見直しなど)につなげられます。
指標を設定している企業ほど投資対効果が出ている
同報告書は、DX投資対効果と成果指標の設定状況の関係も示しています。投資・費用を大幅に上回る、または上回る効果が出ている企業の合計は14.6%です。成果指標を「設定している」企業は「設定していない」企業と比べて、10ポイント程度の差があるとされています*9。この数値もDX全般の調査結果であり、BtoB EC専用の数値ではありません。それでも「指標を決めて運用するかどうかが、投資の効果に跳ね返る」という関係は、BtoB EC定着の投資判断にも参考になる考え方だと言えます。
月次で回す5ステップ/順位根拠:実施順序
- 今月のWeb受注比率・取引先別移行率・問合せ件数・処理時間を集計します。
- 4指標のうち、移行率が伸びていない取引先と、比率が上がらない担当者を特定します。
- 特定した取引先・担当者へ、営業または受注事務の担当者が個別に連絡します。
- 連絡で分かった障壁(例外対応の未整備・操作の不明点など)に応じて運用を直します。
- 翌月のWeb受注比率の目標値を更新し、次のサイクルへ引き継ぎます。
定着を止める5つの落とし穴と、手を打つべき時期
公開日をゴールに置き、公開後の体制を用意していない
要件定義の段階で公開日までのスケジュールは細かく管理されますが、公開後の運用体制(誰が指標を見るか・誰が取引先に連絡するか)まで決めているケースは多くありません。独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業のDX推進に関する調査(2025年)」(2026年2月公表・全国の中小企業経営者および経営幹部1,000社が回答)では、DX推進のためのビジョンや経営戦略・ロードマップが「未策定」と回答した企業が66.0%です*12。この調査は中小企業のDX全般を対象としたものであり、BtoB ECの運用体制を直接示す数値ではありません。それでも、公開後に何をどう進めるかを文書として持たないまま走り出す企業が多いことを示す参考値になります。この落とし穴に手を打つべき時期は要件定義期です。公開後の月次運用まで見据えて、担当者と役割を先に決めておく必要があります。
例外対応をすべて残し、電話受注の逃げ道を閉じない
取引先ごとの個別条件をすべて例外として残してしまうと、いつまでも「電話のほうが早い」という選択肢が消えません。手を打つべき時期は要件定義期から構築期にかけてで、どこまでの例外をシステムに載せ、どこから先を残すのかという線引きをあらかじめ決めておくことが必要です。この線引きの具体的な進め方は要件定義の範囲になるため、詳しくは要件定義の進め方を解説した記事で扱っています。
教育を一度きりの説明会で終える
公開直前に一度だけ説明会を開き、その後は現場任せにしてしまう進め方も、定着を止める要因になります。IPA「DX動向2026」報告書では、「学習を支援する制度やプログラムが充実している」への回答率は35.1%にとどまっています*8。この数値はDX全般を対象とした調査であり、BtoB ECの教育体制を直接示すものではありません。それでも一度きりの説明で終わらせず、継続的に学べる場を用意する必要性を裏づける参考値と言えます。手を打つべき時期は公開直前から公開後1〜3か月です。
指標を決めないまま「浸透しない」と会議で議論する
前章「定着は4つの指標で測り、月次のサイクルで回す」で挙げた4指標を決めないまま、「最近ECが浸透してきた気がする」「まだ浸透していないようだ」という印象論で会議が進んでしまうケースも見られます。中小企業基盤整備機構の同調査では、DXに「既に取組んでいる」と回答した企業においても、取組の課題として「具体的な効果や成果が見えない」を挙げた割合が18.5%に上ります*13。効果を語る指標が無いまま議論が続く状態は、取り組んでいる企業でも起こり得ます。手を打つべき時期は公開後1〜3か月で、この時期までに指標の集計と報告のフローを軌道に乗せておく必要があります。
推進を兼務1名に任せる
BtoB EC定着の推進担当が、他業務との兼務で1名しか置かれていないケースも珍しくありません。IPA「DX動向2026」報告書では、DXを推進する人材の「量」が不足していると回答した企業が85.5%に達しています*10。この数値はDX人材全般に関する調査結果であり、BtoB EC推進担当者数を示したものではありません。それでも、推進体制の人員不足が広く共通する課題であることを示す参考値になります。1名体制のまま月次運用まで担わせると、指標の集計や個別の取引先対応が後回しになりやすいため、公開後1〜3か月の時期に体制の見直しを検討する必要があります。落とし穴が積み重なり作り直しを検討する場合の判断材料は、リプレイス・移行の手順を解説した記事で扱っています。
まとめ:定着を測る指標と営業の評価で成否が決まる
本稿では、BtoB EC定着の進め方を整理しました。要点を3つに集約すると次の通りです。第一に、定着はWeb受注比率をはじめとする4つの指標で測るものであり、公開の有無では判断しないことです。第二に、現場が使わない原因は抵抗ではなく、電話・FAXとの二重運用や評価の不整合という設計上の問題であることです。第三に、営業部門の巻き込みは説得ではなく、EC受注の実績計上・インセンティブ・目標値という評価の設計で決まることです。まず今月のWeb受注比率を数え、営業のEC受注をどう実績計上するかを決めることから着手できます。
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
BtoB EC定着に関するよくある質問
BtoB ECが定着したかどうかは、何をもって判断すればよいですか。
Web受注比率(Web受注件数÷全受注件数)を基準に判断します。あわせて取引先別の移行率、問合せ・差戻し件数、受注1件あたりの処理時間の4指標を月次で確認すると、感覚ではなく数値で定着状況を把握できます。指標を設定している企業は投資対効果でも差が出やすいことが、IPA「DX動向2026」報告書の分析で示されています*9。
営業部門がECの利用に消極的な場合、まず何を決めればよいですか。
最初に決めるべきは、EC経由の受注の実績計上先、インセンティブの扱い、Web受注比率の目標値の3点です。この3点が未決定のままでは、営業担当者にとって行動を変える理由がなく、電話受注を優先し続ける状態が続きます。
電話・FAXでの受注はいつまで残してよいですか。
一律の期限を決める前に、どこまでの例外をシステムに載せ、どこから先を電話・FAXに残すかという線引きを要件定義の段階で決めておくことが前提になります。線引きが曖昧なまま並行運用を続けると、電話受注の逃げ道が閉じないまま長期化しやすくなります。
社内向けの説明会や研修はどのくらいの頻度で行うべきですか。
公開直前の一度きりで終わらせず、公開後1〜3か月の間も継続的に学べる場を用意することが望まれます。IPA「DX動向2026」報告書では、学習を支援する制度やプログラムが充実していると回答した企業は35.1%にとどまっています*8。一度きりの説明会で終える運用は珍しくありません。
定着の推進担当は専任を置く必要がありますか。
専任が望ましいものの、体制は企業規模により異なります。IPA「DX動向2026」報告書では、DXを推進する人材の「量」が不足していると回答した企業が85.5%に達しています*10。兼務1名体制のまま月次の指標運用まで担わせると、業務が滞りやすくなる点には注意が必要です。
- *1 出典:独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2026報告書」図表2-11(2026年7月30日公開)
- *2 出典:独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2026報告書」図表2-14(2026年7月30日公開)
- *3 出典:総務省「令和8年版情報通信白書(企業等におけるAI利用の進展)」(2026年7月公表・企業向けアンケート日本n=497)
- *4 出典:独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2026報告書」図表2-16(2026年7月30日公開)
- *5 出典:独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2026報告書」図表3-7(2026年7月30日公開・生成AI利用部署の調査)
- *6 出典:総務省「令和8年版情報通信白書(企業等におけるAI利用の進展)」先進的な取組を進める企業や有識者へのヒアリングから得られる示唆(2026年7月公表)
- *7 出典:総務省「令和8年版情報通信白書(企業等におけるAI利用の進展)」業務変革の環境整備の状況(2026年7月公表・日本n=326)
- *8 出典:独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2026報告書」図表2-13(2026年7月30日公開)
- *9 出典:独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2026報告書」図表2-20(2026年7月30日公開)
- *10 出典:独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2026報告書」DXを推進する人材の「量」の確保(図表4-1・2026年7月30日公開)
- *11 出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」1.調査結果概要(1)国内電子商取引市場規模(2025年8月26日公表・2024年の市場規模/EC化率は全商取引金額に対する電子商取引市場規模の割合)
- *12 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業のDX推進に関する調査(2025年)アンケート調査報告書」図表21 ビジョンや経営戦略・ロードマップの策定状況(令和8年2月公表・n=1,000・単一回答)
- *13 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業のDX推進に関する調査(2025年)アンケート調査報告書」図表18 DXの取組み状況別の課題(令和8年2月公表・n=1,000・複数回答・DXに「既に取組んでいる」企業189社の回答)
画像の出典元
- 定着のイメージ/Photo by Vitaly Gariev on Unsplash
- 受注のイメージ/Photo by Lucas on Unsplash
- 原因のイメージ/Photo by Agence Olloweb on Unsplash