◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- EDIとBtoB ECは、どちらか一方を選ぶ方式ではなく、取引先の性質に応じて使い分けるものです。
- 両者の違いの根は、画面の有無ではなく、取引先と事前に取り決めを合わせる必要があるかどうかにあります。
- EDIを使い続けるかどうかの判断には、公的に示された期限が関わってきます。
目次
EDIとBtoB ECの違いは「取引先と事前に取り決めを合わせるかどうか」にある
EDIとは、企業間で取引のためのデータを、通信回線を介してコンピュータ間で交換する仕組みです*4。一方のBtoB ECは、取引先の担当者がブラウザ画面から注文する仕組みで、両者は取引先の性質に応じて使い分けるものです。
EDIの定義——通信回線を介してコンピュータ間でデータを交換する方式
一般財団法人流通システム開発センター(GS1 Japan)は、流通業界のコード・EDI標準化を担う機関です。同法人は、EDIの正式名称をElectronic Data Interchange(電子データ交換)としています。
GS1 Japanは、EDIを「異なる企業間で取引のためのデータを、通信回線を介してコンピュータ間で交換すること」と定義しています*4。
この定義には、人が画面を見て操作するという要素が含まれていません。受発注データがコンピュータからコンピュータへ直接渡る点が、EDIの出発点です。
BtoB ECの定義——取引先がブラウザ画面から注文する方式
BtoB EC(企業間電子商取引)は、取引先の担当者がブラウザ上の画面から発注する仕組みです。注文だけでなく、履歴照会や見積依頼にも使われます。
相手に必要なものはブラウザと認証情報だけであり、専用の通信環境を新たに用意する必要はありません。
違いの根は「事前に取り決めを合わせるかどうか」にある
EDIは、メッセージ(電子取引文書)と通信プロトコル・セキュリティを取引先とあらかじめ合わせることが前提の方式です*5。流通BMS(流通ビジネスメッセージ標準)のような業界標準規格は、この取り決めを企業間で共通化するために策定されています*5。
BtoB ECは、こうした事前の合意を必要としません。相手がブラウザを開けば、その場で受発注のやり取りが始められます。以降で扱う立ち上げの重さも、取引先を選ぶ性質も、この違いから派生しています。
Web-EDI・マスタ・内示——本稿で使う用語の意味
本稿で使う用語をここで整理します。EDIは前述のとおり企業間のシステム間データ交換、BtoB ECは取引先がブラウザ画面から発注する仕組みです。Web-EDIは、ブラウザ画面を使いながらも取引先ごとの取り決めを前提とする中間的な形態で、次章で位置づけを説明します。
マスタとは、取引先・商品・価格などの基準データを指します。内示とは、確定発注の前に取引先へ伝える生産・出荷の見込み情報のことです。いずれも受発注の設計を検討する際に頻出する用語です。
5つの軸で違いを整理する
EDIとBtoB ECの違いは、次の5つの軸に沿って整理すると把握しやすくなります。いずれの軸も、前章で示した「事前に取り決めを合わせるかどうか」から派生する違いです。
| 比較軸 | EDI | BtoB EC |
|---|---|---|
| ①接続する主体 | システム対システムで接続します。 人がその都度操作する前提ではありません。 |
人対画面で接続します。 担当者がブラウザから直接操作します。 |
| ②事前の取り決め | メッセージ仕様・通信プロトコル・セキュリティを、標準規格または個別合意で取引先と合わせます*5。 導入時の調整が発生します。 |
取り決めは不要です。 アカウントを発行すればすぐに使い始められます。 |
| ③取引先側の負担 | 相手にも接続の準備と体制が要ります。 取引先が中小であるほど、この負担が効いてきます。 |
相手に必要なのはブラウザだけです。 取引先を選ばずに導入を進められます。 |
| ④扱える取引の型 | 定型・反復の受発注に向いています。 毎回同じ品目を継続的に取引する場面で強みを発揮します。 |
検索・見積依頼・新規商材の提案など、非定型の取引に向いています。 件数の少ない取引先にも対応できます。 |
| ⑤変化への追随 | 取り決めを変更する際は、取引先との再調整が必要になります。 変更の反映に時間を要します。 |
画面と設定の変更で対応できます。 自社側の裁量で調整しやすい面があります。 |
Web-EDIをどこに置くか——画面はECに似ていても前提はEDI側
Web-EDIは、ブラウザ画面から発注する点でBtoB ECに似た印象を与えます。しかし、取引先ごとに項目・様式・運用ルールをあらかじめ取り決めておく前提がある点では、性質としてEDI側に位置づけられます。
この点を混同すると、「画面があるからEC」と誤って分類しがちです。判断の軸は画面の有無ではなく、事前の取り決めを必要とするかどうかに置く必要があります。
EDIの標準規格そのものの中身や、CSV・API・EAIといった連携方式の詳細は、基幹システムとの連携設計を扱う別記事で解説しています。
どちらを当てるかは取引先ごとに決める
ここまでの5軸は、EDIとBtoB ECの性質の違いを示すものです。実務で必要なのは、この性質を踏まえて、自社の取引先ごとにどちらの方式を当てるかを決めることです。
前提の転換——企業単位ではなく取引先単位で決める
「自社はEDI企業だ」「自社はEC企業だ」という企業単位の二択で考える必要はありません。同じ社内で、主要取引先はEDI、それ以外の取引先はBtoB ECという併存が通常の姿になります。
分類の2軸——取引の定型度と件数・頻度
取引先を分類する際の軸は、取引の定型度(毎回同じ品目を反復するか、都度異なるか)と、取引の件数・頻度の2つです。この2軸の組み合わせで、どちらの方式が適するかが見えてきます。
| 取引先の分類 | 推奨される方式 | 前提条件 | 残る課題 |
|---|---|---|---|
| 品目が定型で反復し、件数の多い取引先 | EDI | 相手にも接続の体力と意思があること。 取り決めを合わせる投資が件数で回収できること。 |
既存EDIがある場合は、更改の要否をINSネットの期限から逆算して判断する必要があります。 |
| 件数が少ない、または非定型の取引が多い取引先 | BtoB EC | 相手にIT投資の体力がなくても始められること。 取り決めが不要なため導入までが早いこと。 |
受注データを基幹システム側でどう一本化するかの設計が必要です。 |
| 新規開拓中の取引先 | BtoB EC | 相手を選ばずに間口を広げられること。 | 取引が定型化・大量化した段階で、EDIへの移行を再検討する余地が残ります。 |
| 現状が電話・FAX・メールで残っている取引先 | まずアナログからの脱却 | EDI・ECどちらを選ぶかの前に、受注手段のデジタル化そのものが先に必要です。 | 脱却の進め方は別記事で扱っています。 |
判断を誤りやすい箇所——企業規模ではなく取引の定型度と件数で決める
「相手が大企業だからEDI」という判断は誤りやすいものです。企業規模が大きくても、取引が非定型であればBtoB ECの方が合う場合があります。判断の軸は、あくまで取引の定型度と件数に置く必要があります。
製品・サービスそのものの選び方は、受発注システムの比較を扱う別記事で解説しています。
併用するときに決めておく4つのこと
取引先ごとに方式を分けると、社内ではEDIとBtoB ECが常に併存する形になります。ここで決めずに進めると、あとから受注データの扱いが乱れやすくなります。
併用時に決めておく4項目(順位根拠:検討する順序)
- 受注データの正をどちらに置くか。EDI経由とEC経由の両方から受注が入るため、基幹システム側で一本化する設計を先に決めます。
- マスタ(取引先・商品・価格)をどちらで管理するか。二重管理になると、価格の食い違いや在庫の齟齬が生じやすい箇所です。
- 取引先が両方を使う場合の運用ルール。定番品はEDI、スポット品はECというように、用途で使い分ける形も想定します。
- 社内の受注処理を分岐させない仕組み。入口が2つでも、後工程の処理は1本にまとめておく必要があります。
受注データの正をどちらに置くかを決めないまま両方を稼働させると、入力の重複や在庫数の食い違いが起こりやすくなります。マスタを二重に持つ設計も、価格改定のたびに更新漏れが生じる原因になりがちです。
こうした重複や食い違いが自社でどの程度起こりうるかを確かめるには、無料相談で要件を整理するのが近道です。基幹システムとの連携設計そのものは、別記事で詳しく扱っています。
EDIには期限がある——INSネット提供終了までの時間軸
EDIを使い続けるかどうかの判断には、公的に示された期限が関わっています。既存のEDIがディジタル回線に依存している場合は、この時間軸を踏まえた検討が必要です。
ディジタル通信モードは段階的に終了済み
NTT東日本の公表では、INSネットの「ディジタル通信モード」は2024年1月から地域ごとに段階的にサービスを終了しています*3。同社の資料では、EDIは「メーカー・卸・小売間での商品受発注データ通信」の用途として、影響を受けるサービスに挙げられています*3。
補完策は用意されているが、恒久策ではない
提供終了までに移行が間に合わない事業者向けに、NTT東日本は補完策を用意しています。ただし、従来のディジタル通信モードより伝送遅延が生じ、処理時間が増大するとされています*3。料金は全国一律9.35円/3分です*3。
この補完策自体も、2028年12月31日にサービス提供を終了します*3。あくまで移行までの時限的な対応であり、恒久的に使い続けられる仕組みではありません。
INSネットの新規販売と提供終了の期限
NTT東日本の公表では、INSネット64・INSネット64ライト・INSネット1500は、2024年8月31日をもって新規販売を終了しています*2。サービス提供そのものの終了は2028年12月31日です*2。
本稿執筆時点(2026年8月)で、提供終了までの期間は残り約2年4か月です。ここで示した日付はいずれもNTT東日本の公表にもとづくものであり、NTT西日本の提供エリアについては同社の公表を別途ご確認ください*2。延期や前倒しの続報が出ていないかも、検討の都度あわせて確認することをおすすめします。
この期限は方式選択のタイミングでもある
ディジタル回線に依存する既存EDIを抱える企業にとって、この期限は単なる回線の話にとどまりません。EDIを更改するのか、対象の取引先をBtoB ECへ寄せるのか、その両方を組み合わせるのかを、この期限から逆算して決める必要があります。
移行の具体的な手順や、基幹システムとの連携再設計は、別記事で詳しく扱っています。
企業間取引の電子化はどこまで進んでいるか
EDIかBtoB ECかを問わず、企業間取引の電子化そのものが進んでいる点も、判断の前提として押さえておく必要があります。
経済産業省の令和6年度電子商取引に関する市場調査は、1998年度から毎年実施され今回で27回目です(2025年8月26日公表)。この調査によると、2024年の日本国内のBtoB-EC市場規模は514.4兆円で、前年の465.2兆円から10.6%増加しました*1。EC化率は43.1%で、前年比3.1ポイント増です*1。
同調査におけるEC化率とは、全ての商取引金額に対する電子商取引市場規模の割合を指します。BtoB-ECでは、業種分類上「その他」以外とされた業種を算出対象としています*1。
あわせて、2024年のBtoC-EC市場規模は26.1兆円、EC化率は9.8%でした*1。ただし同調査のEC化率は、BtoC-ECでは物販系分野を、BtoB-ECでは業種分類上「その他」以外の業種を算出対象としており*1、分母が同一ではありません。43.1%と9.8%をそのまま優劣として比べることはできない点に留意してください。BtoB-ECの市場規模の詳しい内訳は、別記事で解説しています。
電子化の趨勢は方式を問わず進んでいます。市場規模とEC化率がともに伸びているという事実は、特定の方式が置き換わったことではなく、電子的な受発注そのものが広がっていることを示すものです*1。EDIとBtoB ECは対立する概念ではなく、同じ電子化の流れの中で役割を分担する関係にあると捉えるのが実態に近いといえます。
自社の使い分けを決める6つの手順
ここまでの整理を踏まえ、自社の取引先ごとにEDIとBtoB ECを当てはめる手順を示します。そのまま社内検討のチェックリストとして使える形にまとめています。
使い分けを決める6つの手順(順位根拠:実施順序)
- 取引先を棚卸しする。社数、年間受注件数、品目の定型度、現在の受注手段を一覧化します。
- 件数の分布を見る。上位の取引先で受注件数の何割を占めるかを確認します。
- 上位の定型取引先にEDIを当てるか判断する。既存EDIがある場合は、提供終了の期限と合わせて更改の可否を検討します*2。
- 残りをBtoB ECに寄せる。取り決めが不要なため、対象の社数が多いほど効果を見込みやすくなります。
- 併用の設計を決める。受注データの正・マスタの管理・運用ルール・処理の一本化を、前章の4項目にもとづいて整理します。
- 期限から逆算してスケジュールを引く。2028年12月31日*2から、必要な検討・移行の実務期間を差し引いて計画します。
この手順を内製で進める場合、受発注データの集計・分析、EDIの規格や取引条件の把握、基幹システム側のマスタ整合の確認といった知識が同時に必要になります。取引先数が多い企業ほど、棚卸しと分類だけでも相応の検討期間を要します。
すべてを自社だけで進めることもできます。ただし、業種ごとの商習慣や取引先との調整のコツを踏まえた外部の知見を借りると、判断軸の整理を短い期間で終えられる場合があります。
まとめ:EDIとBtoB ECの使い分けを決める3つの視点
本稿では、EDIとBtoB ECの違いと使い分けを整理しました。要点は3つです。第一に、両者は選択の関係ではなく、取引先の性質に応じて併存させるのが実態に近いといえます。第二に、違いの根は事前に取り決めを合わせる必要があるかどうかにあり、この一点から接続の主体・負担・扱える取引の型が派生します。第三に、EDIを使い続けるかどうかの判断には、2028年12月31日という公的に示された期限が関わってきます*2。
取引先の棚卸しと分類は自社でも進められます。一方で、受注データの一本化やマスタ設計といった併用時の実務は、商習慣に合わせた個別の調整が必要になる場面が少なくありません。
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
よくある質問
EDIとBtoB ECはどちらかに統一すべきですか。
統一を前提にする必要はありません。取引先の定型度と件数で分けるのが実務上は現実的です。主要な定型取引先にはEDI、それ以外の取引先にはBtoB ECを当て、社内で併存させる形が基本の考え方になります。
Web-EDIはBtoB ECと同じものですか。
同じではありません。画面から操作する点は似ていますが、Web-EDIは取引先ごとの取り決めを前提とする点でEDI側の性質を持ちます*5。この前提の有無が、両者を分ける基準になります。
古いEDIはいつまで使えますか。
ディジタル回線に依存するEDIの場合、期限があります。NTT東日本の公表では、INSネット関連サービスと補完策のいずれも2028年12月31日にサービス提供を終了します*2 *3。この期限から逆算した検討が必要です。
取引先にEDIへの対応を求めるのは難しいですか。
EDIは相手側にも接続の準備と体制が求められる方式です*5。一方のBtoB ECは、相手にブラウザがあれば始められるため、対応を求めるハードルは相対的に低くなります*4。
BtoB ECにすればEDIの取引先も移行できますか。
一律の移行を前提にする必要はありません。定型・大量の取引はEDIの方が適する場合があり、取引の件数と定型度を踏まえて個別に判断することをおすすめします。
- *1 出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」(2025年8月26日公表)https://www.meti.go.jp/press/2025/08/20250826005/20250826005.html
- *2 出典:東日本電信電話株式会社(NTT東日本)「INSネットの新規申込受付・提供終了について」(2024年3月7日公表)https://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20240307_02.html
- *3 出典:東日本電信電話株式会社(NTT東日本)「INSネットをご利用の事業者さまへ(固定電話のIP網移行)」https://flets.com/2024ikou/business.html
- *4 出典:一般財団法人流通システム開発センター(GS1 Japan)「EDI(電子データ交換)」https://www.gs1jp.org/standard/edi/
- *5 出典:一般財団法人流通システム開発センター(GS1 Japan)/流通システム標準普及推進協議会(流通BMS協議会)「流通BMS(流通ビジネスメッセージ標準)」https://www.gs1jp.org/ryutsu-bms/
画像の出典元
- ステップのイメージ/Photo by Kanhaiya Sharma on Unsplash
- 手順のイメージ/Photo by Erik Mclean on Unsplash
- よくある質問のイメージ/Photo by Kelly Sikkema on Unsplash