◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- BtoB ECの帳票出力は、見積書・注文書(注文請書)・納品書・請求書・領収書の5種類を、受注データから交付できる状態にすることです。
- 納品書は単票で完結させる必要はなく、請求書と記載事項を分担できます。分担のさせ方が設計の分かれ目になります。
- ECのダウンロード交付は電子取引に当たり、検索できる状態での保存義務が発生します。出して終わりにはできません。
目次
BtoB ECの帳票出力とは、5種の帳票を交付し法定要件で保存できる状態にすること
BtoB ECの帳票出力とは、受注データをもとに見積書・注文書(注文請書)・納品書・請求書・領収書を生成することです。取引先へ交付できる状態にするとともに、交付した書類の写しとECを通じて授受した取引データを法定の要件で保存できる状態にすることを含みます*1*5。中心となる納品書は3点で設計します。①適格請求書の記載事項を請求書とどう分担して満たすか、②交付した写しを保存できるか、③ECを通じて授受したデータを電子帳簿保存法の要件で保存できるか、です。ECサイトを通じて取引情報を授受する取引は電子取引に該当するため、PDFをダウンロードさせる方式でも保存義務が発生します*5。
BtoB ECで扱う帳票は5種類
BtoB ECの帳票は、見積書・注文書(注文請書)・納品書・請求書・領収書の5種類に整理できます。見積書は取引条件の提示、注文書・注文請書は発注内容の確定、納品書は納品の事実の証明、請求書は代金請求の意思表示、領収書は受領の証明という役割を担います。
このうち検索されやすい主題は納品書です。EC側で最も設計判断が集中し、かつ請求書と役割が混同されやすい帳票だからです。次章から納品書を軸に、記載事項・保存・検索の3層で要件を整理します。
納品書の設計で決める3つのこと
納品書の設計で決める3つのこと
- 記載事項の分担:適格請求書の記載事項を、納品書と請求書のどちらに寄せるか
- 交付方法:画面ダウンロード・メール添付・クラウド経由のいずれで交付するか
- 保存方法:交付した写しと、受領側が保存すべき電子取引データをどう保存するか
BtoB ECで必要な帳票と、それぞれの役割
BtoB ECの受注データから交付する帳票は、発行タイミングと根拠となる制度が異なります。まず全体像を一覧で押さえ、そのうえでEC側と基幹・販売管理側のどちらで出すかを判断します。
| 帳票 | 発行タイミング | 主な記載項目 | 根拠となる制度 |
|---|---|---|---|
| 見積書 | 受注前の条件提示時 | 品目・数量・単価・有効期限 | 法定の記載要件なし(商慣習) |
| 注文書・注文請書 | 発注確定時 | 品目・数量・納期・代金額 | 中小受託取引適正化法4条明示*13 |
| 納品書 | 出荷・納品時 | 記載事項6項目のうち分担分 | 消費税法上の請求書等*2 |
| 請求書 | 締め日後 | 登録番号・税率区分・消費税額等 | 適格請求書等保存方式*1 |
| 領収書 | 入金確認後 | 受領金額・受領日・宛名 | 印紙税法(該当時)*11 |
納品書と請求書はどう違うのか
納品書は納品の事実を証明する書類で、請求書は代金の請求の意思表示です。役割が異なるため、記載する内容も本来は別に設計できます。ECの現場では「納品書に全部載せて請求書は金額だけ」という単票完結の発想になりがちですが、これは記載事項を漏れなく載せようとするあまり過剰な設計になりやすい進め方です。
納品書は消費税法上の「請求書等」に含まれる
国税庁No.6497は、適格請求書について「イからヘまでに掲げる事項が記載されている請求書、納品書その他これらに類する書類をいいます」と定義しています*2。つまり納品書は、請求書と並ぶ「請求書等」の一形態として法令上位置づけられています。この位置づけが、次章で扱う記載事項の分担の前提になります。
EC側で出すか、基幹・販売管理側で出すかの判断軸
帳票をEC側で出すか基幹・販売管理システム側で出すかは、マスタの所在で判断します。取引先ごとの税率区分・登録番号・与信条件を基幹側が持つ場合は、基幹側で最終出力する設計が整合しやすくなります。EC側と基幹側のどちらが正とするデータかを先に決めないまま帳票要件を書き始めると、後で項目の二重管理が発生します。
連携方式そのものの設計論点は、EC側と基幹側のシステム間連携の記事で扱っています。ここでは帳票ごとにどちらの系で確定させるべきかという判断軸に絞ります。
納品書に載せる項目をどう決めるか
納品書と請求書のどちらに何を載せるかは、決め打ちではなく設計事項です。まず適格請求書の記載事項を確認し、そのうえで分担のパターンを見ていきます。登録番号の管理やインボイス制度全体への対応は別記事で扱っており、本章では帳票の記載事項に絞ります。
適格請求書の記載事項6項目
国税庁No.6625は、適格請求書の記載事項として次の6項目を挙げています*1。①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号、②取引年月日、③取引内容(軽減税率の対象品目である旨を含む)、④税率ごとに区分して合計した対価の額及び適用税率、⑤税率ごとに区分した消費税額等、⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称です。
納品書と請求書で記載事項を分担できる
国税庁の質疑応答(インボイス制度Q&A問67)は「一の書類のみで全ての記載事項を満たす必要はなく、交付された複数の書類相互の関連が明確であり、適格請求書の交付対象となる取引内容を正確に認識できる方法(例えば、請求書に納品書番号を記載する方法など)で交付されていれば、これら複数の書類に記載された事項により適格請求書の記載事項を満たすことができる」としています(消費税法基本通達1-8-1)*4。同資料の設例では、納品書に税率ごとの対価の額・適用税率・消費税額等を追加し、請求書に登録番号を記載する組み合わせで、納品書と請求書を合わせて記載事項を満たす方法が示されています*4。
ここが単票完結の発想と異なる点です。納品書に無理に登録番号まで詰め込む必要はなく、請求書番号や納品書番号で書類間の対応関係を明確にできれば分担が成立します。
| 分担パターン | 納品書に載せる項目 | 請求書に載せる項目 | 留意点 |
|---|---|---|---|
| ①品目・税率区分を納品書に寄せる | 取引年月日・取引内容・税率ごとの対価の額及び適用税率・消費税額等 | 発行事業者名・登録番号・合計金額 | 納品書側での端数処理を税率ごとに1回行う必要があります*4。 |
| ②請求書に集約する | 取引年月日・取引内容・数量のみ | 発行事業者名・登録番号・税率ごとの対価の額及び適用税率・消費税額等 | 請求書が締め単位のため、個々の納品との対応関係を番号で結ぶ必要があります。 |
| ③納品書のみで完結させる | 記載事項6項目すべて | 合計金額の確認用途にとどめる | 納品書のマスタに登録番号・税率区分を保持する必要があり、システム側の負荷が最も大きくなります。 |
自社の数字に当てはめて分担案を検証したい場合は、無料相談で要件を整理する方法もあります。マスタの持ち方によって適した分担パターンは変わるため、個別の確認が近道になる場面があります。
交付した適格請求書等の写しの保存義務
適格請求書発行事業者には、交付義務に加えて「交付した適格請求書等の写しを保存する義務」が課されます*3。保存期間は、課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間です*1。ただし6年目・7年目については、帳簿又は請求書等のいずれか一方を保存すればよいとされています*1。ECで出した納品書・請求書のPDFも、この写しの保存義務の対象です。
ECから出した帳票は「電子取引」になる
納品書をPDFでダウンロードさせる方式は便利ですが、それ自体が電子帳簿保存法上の保存義務を発生させる行為になります。まず電子取引の定義を確認します。
電子取引の定義とBtoB ECが含まれる根拠
電子帳簿保存法における電子取引とは「取引情報の授受を電磁的方式により行う取引」を指します(電子帳簿保存法2条五号)。国税庁「電子帳簿保存法の概要」は、電子取引の例として「インターネット上にサイトを設け、そのサイトを通じて取引情報を授受する取引」を挙げています*5。ECサイトのマイページから納品書をダウンロードさせる方式は、この定義に該当します。
電子取引に該当すると、所得税及び法人税に係る保存義務者は、電子帳簿保存法が定める要件(真実性・可視性の確保)の下でその電磁的記録を保存しなければなりません*5。なお令和3年度の税制改正により、電磁的記録を出力した書面等を保存する措置は廃止されています*9。
マイページからのダウンロード・メール添付・クラウド経由のいずれも対象
国税庁の電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】(令和8年7月版)問36は、保存方法の類型を示しています*7。発行者のウェブサイトでPDFをダウンロードできる場合は、ウェブサイト上に保存するか、ダウンロードしてサーバ等に保存する方法が認められます。HTMLデータで表示される場合は、スクリーンショットやPDF変換による保存も認められます*7。一方、取引情報のみを確認して自ら再入力する方法は、電磁的記録の保存として認められません*7。
保存時に満たすべき要件
電子取引データの保存に当たっては、真実性と可視性を確保する要件を満たす必要があります*6。具体的には次の4種類です。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| システム概要書類の備付け | 自社開発システムを使用する場合、電子計算機処理システムの概要書類を備え付けます*6。 |
| 見読可能装置の備付け | ディスプレイ・プリンタ等を備え付け、速やかに出力できる状態にします*6。 |
| 検索機能の確保 | 取引年月日その他の日付・取引金額・取引先で検索できる状態にします*6。 |
| 改ざん防止措置(4択のいずれか) | タイムスタンプの付与、訂正削除の記録が残るシステムの利用、又は事務処理規程の整備・運用のいずれかします*6。 |
このうち検索機能の確保は、EC側のファイル名・索引の設計に直結します。次章で具体的な設計手順を扱います。
納品書データの検索要件をどう設計するか
電子取引データの検索要件は「取引年月日その他の日付・取引金額・取引先」の3項目です*6。ここまでは制度の説明ですが、実際にECのファイル名や索引簿へどう落とすかは、各社の設計判断に委ねられています。ここが本記事で最も掘り下げる論点です。
1か月分をまとめた納品書データの場合
BtoB ECでは、1か月分の取引をまとめて記録した納品書データを発行するケースが少なくありません。この場合の検索記録項目について、一問一答問55は次のように回答しています*8。「個々の取引ごとの取引年月日及び取引金額として記録されているものをそれぞれ用いる方法のほか、その電子取引データを授受した時点でその発行又は受領の年月日として記録されている年月日及びその電子取引データに記録された取引金額の合計額を用いる方法としても、その取扱いが各課税期間において自社で一貫した規則性を持っていれば差し支えありません」*8。
つまり、個々の取引で取る方法と、発行日・合計額でまとめて取る方法のどちらも認められています。重要なのは、課税期間を通じて自社内で規則性を一貫させることです。
日付の取り方と金額の取り方はそろえる
一問一答問55は、日付と金額の取り方をそろえる必要があるとしています*8。日付を個々の取引で検索できるようにしているなら、金額も個々の取引金額で検索できるようにします*8。日付を発行・受領日で検索できるようにしているなら、金額も合計額でそろえます*8。日付は個別、金額は合計額という組み合わせは認められません。ECの索引設計では、この対応関係を先に決めてから項目定義に落とす順序が欠かせません。
ファイル名・索引簿での実装
一問一答問19は、ファイル名の命名例を示しています*9。「2021年1月31日に株式会社霞商店から受領した110,000円の請求書」は「20210131_㈱霞商店_110000」という形式で保存できます*9。任意のフォルダに格納する方法や、索引簿を作成してデータを検索する方法も認められています*9。納品書データについても同じ考え方で、発行日・取引先・金額(又は合計額)を規則性を持った形でファイル名に組み込む設計が実務的です。
検索機能の確保が不要になる場合
検索機能の確保が不要になる場合もあります。判定期間に係る基準期間(通常は2年前)の売上高が5,000万円以下であり、税務調査時のダウンロードの求めに応じられる場合が一例です*9*10。電磁的記録を出力した書面を、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理して提示・提出できるようにしている場合も同様です*9*10。なお令和5年度税制改正前(令和5年12月31日までに行う電子取引)は、この基準が1,000万円以下でした*9。基準額の新旧を混同しないよう注意が必要です。
PDFを取引ごとに分割する方法も認められる
1か月分をまとめた納品書データを取引ごとに分割して保存する方法も検討できます。一問一答問54によると、データの同一性を保ったまま記録事項を変更せずに単純に分割することは、合理的な方法による編集の範囲内として認められます*15。分割後のPDFファイル名に規則性を持った形で記録項目を入力して一覧管理し、ダウンロードの求めに応じられるようにしていれば検索要件を満たします*15。まとめ出力か個別分割かは、EC側の帳票生成の仕組みと運用負荷を踏まえて選ぶ設計判断です。
この検索要件の設計を内製で詰めるには、電子帳簿保存法の要件確認と自社の受注データ構造の両方の理解が必要になります。運用ルールが課税期間の途中でぶれると検索要件を満たせなくなるため、設計時点での判断が重要です。
印紙税と取適法 ― 帳票設計で見落としやすい2つの論点
納品書の記載事項と保存要件を押さえても、現場ではもう2つの論点が残ります。印紙税と、令和8年1月に施行された中小受託取引適正化法です。
納品書に「領収」「相済」等の記載があると第17号文書に該当しうる
国税庁の質疑応答事例は、金銭又は有価証券の受取書について「『領収書』、『受取書』と記載された文書はもちろんのこと『仮領収書』や『レシート』と称されるものや、相済、了、領収等と記載された『お買上票』、『納品書』等も第17号文書(金銭又は有価証券の受取書)に該当します」としています*11。第17号文書が対象とするのは金銭又は有価証券の受領事実を証明する文書であり、納品書という名称そのものによって課税文書になるわけではありません*11。代金の受領を示す文言が入ると扱いが変わる点に注意が必要です*11。
PDFを電子的に交付する限り課税文書の作成に当たらない
福岡国税局の文書回答事例は、注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係を扱っています*12。照会者は「注文請書の現物の交付がなされない以上、電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信しても課税文書を作成したことにはならない」との見解を示し、福岡国税局は「ご照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えありません」と回答しています*12。ただし「電子メールで送信した後に現物を別途持参するなどの方法により相手方に交付した場合には、課税文書の作成に該当する」とも付言されています*12。
この回答は「福岡国税局としての見解であり、事前照会者の申告内容等を拘束するものではありません」という留保付きです*12。回答年月日も平成20年10月24日と古く、個別の判断は所轄税務署又は税理士に確認することをおすすめします。
令和8年1月1日から下請法は「中小受託取引適正化法」へ
下請代金支払遅延等防止法は、令和8年1月1日に名称が変わりました。新名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」、通称は中小受託取引適正化法(取適法)です*13*14。委託事業者は、製造委託等をした場合、直ちに明示事項を書面又は電磁的方法により中小受託事業者に明示しなければなりません*13。明示事項は12項目です*13。委託事業者及び中小受託事業者の名称、委託した日、給付の内容、給付を受領する期日・場所、検査完了期日、代金の額・支払期日、一括決済方式や電子記録債権の場合の事項、有償支給原材料等の事項、未定事項がある場合の内容が含まれます*13。ECの注文確認画面やメールがこの12項目をすべて満たしているかは、帳票要件とは別に確認が必要です。
電磁的方法で明示しても、書面の交付を求められたら遅滞なく交付する
中小受託事業者から明示事項を記載した書面の交付を求められたときは、委託事業者は遅滞なく書面を交付しなければなりません*13。電磁的方法による提供を希望する旨の申出があった場合等、一部の例外はあります*13。ECの注文確認画面やメールだけで完結させる設計は避け、書面交付の求めに応じられる運用を用意しておく必要があります*13。
一定期間共通の事項はあらかじめまとめて明示できる
支払方法や検査期間等、一定期間共通である事項がある場合は、あらかじめこれらの共通事項をまとめて明示することで、その期間内は発注の都度の明示を省略できます*13。ただし発注の都度、共通事項の明示との関連性を明らかにする必要があります*13。継続取引が多いBtoB ECでは、この共通事項の扱いが運用負荷を左右します。
帳票要件は記載事項の分担から決める ― 発行側・保存側チェックリスト
ここまでの制度整理を、実際の要件定義に落とし込みます。発行側と保存側でチェックリストを分けて確認します。
帳票要件を検討する際に確認する優先順5点/順位根拠:後工程ほど手戻りの影響が大きい重要度
- 記載事項の分担:適格請求書の記載事項6項目を納品書と請求書のどちらに載せるかを先に決めます*4。
- 保存要件の充足:改ざん防止措置4択のうちどれを採用するかをシステム側で決めます*6。
- 検索項目の一貫性:日付と金額の取り方(個別か合計額か)を課税期間を通じて統一します*8。
- 印紙税・取適法の確認:領収文言の扱いと4条明示12項目の充足を確認します*11*13。
- 出力形式・命名規則の運用負荷:手作業での命名や索引簿更新が発生しないかを確認します。
発行側チェックリスト
- 納品書と請求書の記載事項の分担パターンを決めているか
- 交付した適格請求書等の写しを7年間保存する体制があるか*1
- 書類間の対応関係(納品書番号と請求書の紐づけ等)を明示しているか*4
保存側チェックリスト
- 検索の記録項目(日付・金額・取引先)の取り方を課税期間を通じて統一しているか*8
- 改ざん防止措置4択のいずれかを満たしているか*6
- 税務調査時のダウンロードの求めに応じられる状態か*9
RFP・要件定義に書くべき要件文の例
BtoB ECの選定時にRFPへ書く帳票要件は、帳票種別・出力形式・記載項目・命名規則・保存先の5点をセットで記述します。「納品書をPDFで出力できること」だけでは、記載事項の分担や検索要件まで踏み込めません。「納品書は税率ごとの対価の額・適用税率・消費税額等を記載し、ファイル名は発行日・取引先・金額を規則性を持って命名し、改ざん防止措置のいずれかを満たす形でサーバに保存すること」のように、制度要件と紐づけて書く必要があります。
自社対応か、パッケージ側で吸収するかの判断軸
記載事項の分担・検索項目の命名規則・改ざん防止措置の運用は、帳票の枚数が増えるほど手作業では回らなくなります。特に卸売業の商習慣では、締め請求・取引先別の単価・取引先ごとに異なる帳票様式の要望が絡み、汎用的なカートの標準帳票機能だけでは対応しきれない場面が出てきます。自社の運用体制で継続できるかどうかが、内製かパッケージ側の機能で吸収するかを分ける判断軸になります。
まとめ:帳票設計で押さえる3つの判断軸
本稿ではBtoB ECの帳票出力を、納品書を軸に整理しました。要点を3つに集約すると次の通りです。第一に、納品書は請求書と記載事項を分担でき、単票で全項目を満たす必要はありません*4。第二に、ECのダウンロード交付も電子取引に該当し、検索できる状態での保存義務が発生します*5。第三に、1か月分をまとめた納品書データの検索項目は、課税期間を通じて自社で一貫した規則性を持たせれば、個別でも合計額でも認められます*8。この3点を押さえたうえで、印紙税・取適法の周辺論点まで確認しておくと、RFP・要件定義の抜け漏れを防げます。
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
よくある質問
納品書を紙で同梱せず、ECのマイページからダウンロードさせる方式でも問題ありませんか。
制度上は問題ありません。ただしダウンロード方式は電子取引に該当し、検索できる状態での保存義務が発生します*5。取引先から書面を求められた場合の対応方針も別途決めておく必要があります。
納品書に「領収済」と印字したい場合、印紙は必要ですか。
「相済」「了」「領収」等の文言が入った納品書は第17号文書に該当しうるとされています*11。ただしPDFを電子的に交付する限り、課税文書の作成には当たらないとする文書回答事例があります*12。現物を別途交付すると課税対象になるため、交付方法とあわせて確認が必要です。
納品書と請求書のどちらに登録番号を載せればよいですか。
どちらか一方に載せれば足ります。国税庁の質疑応答は、納品書に税率ごとの対価の額・消費税額等を、請求書に登録番号を記載する分担例を示しています*4。書類間の対応関係を番号等で明確にすることが条件です。
1か月分をまとめた納品書データは、検索の取引金額を合計額で登録してよいですか。
よい場合があります。日付を発行又は受領の年月日で検索できるようにしているなら、金額も合計額でそろえる必要があります*8。課税期間を通じて自社内で規則性を一貫させることが条件です。
取引先から「納品書を書面で欲しい」と言われた場合、電子交付だけで足りますか。
納品書自体の書面交付を法令が一律に求めているわけではありませんが、中小受託取引適正化法の4条明示については、中小受託事業者から書面交付を求められたときは遅滞なく交付する必要があります*13。注文書・注文請書の運用は、電子交付のみで完結させない設計にすると、書面交付の求めにも対応できます。
- *1 出典:国税庁「No.6625 適格請求書等の記載事項」(令和7年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6625.htm
- *2 出典:国税庁「No.6497 仕入税額控除のために保存する帳簿および請求書等の記載事項」(令和7年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6497.htm
- *3 出典:国税庁「No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)」(令和7年4月1日現在法令等)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6498.htm
- *4 出典:国税庁「インボイス制度に関するQ&A(問67・複数書類で適格請求書の記載事項を満たす場合の消費税額等の端数処理)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/67.pdf
- *5 出典:国税庁「電子帳簿保存法の概要」https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/02.htm
- *6 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問18」(令和8年7月版)https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0026007-006_05.pdf
- *7 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問36」(令和8年7月版)https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0026007-006_05.pdf
- *8 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問55」(令和8年7月版)https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0026007-006_05.pdf
- *9 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問19」(令和8年7月版)https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0026007-006_05.pdf
- *10 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問52」(令和8年7月版)https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0026007-006_05.pdf
- *11 出典:国税庁「質疑応答事例(印紙税)金銭又は有価証券の受取書とは」(令和7年8月1日現在の法令・通達等)https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/19/10.htm
- *12 出典:福岡国税局「文書回答事例:請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について」(回答年月日 平成20年10月24日)https://www.nta.go.jp/about/organization/fukuoka/bunshokaito/inshi_sonota/081024/01.htm
- *13 出典:公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法テキスト」(令和7年11月)https://www.jftc.go.jp/toriteki/r7text.pdf
- *14 出典:公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)関係」https://www.jftc.go.jp/partnership_package/toritekihou.html
- *15 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問54」(令和8年7月版)https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0026007-006_05.pdf
画像の出典元
- BtoB EC 帳票 納品書 出力のイメージ/Photo by Kelly Sikkema on Unsplash
- BtoB EC 帳票 納品書 出力のイメージ/Photo by Alberto Rodríguez on Unsplash
- BtoB EC 帳票 納品書 出力のイメージ/Photo by Jakub Żerdzicki on Unsplash
- BtoB EC 帳票 納品書 出力のイメージ/Photo by Wesley Tingey on Unsplash
- BtoB EC 帳票 納品書 出力のイメージ/Photo by Berke Citak on Unsplash