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BtoB ECの安全在庫と欠品対応|決め方と手順

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 安全在庫は計算式から始めるものではなく、先に「どこまで欠品を許すか」という許容水準を決める設計です。
  • 安全在庫を算出する入力は、需要のばらつき・調達リードタイムのばらつき・許容水準の3つです。BtoB ECでは調達側のばらつきの影響が大きいことが多く、測り方に注意が必要です。
  • 欠品後の分納・代替品・納期変更・キャンセルは自社の裁量だけで決められるものではなく、民法や独占禁止法が枠を定めています。
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BtoB ECの安全在庫と欠品対応|決め方と手順

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BtoB ECの安全在庫は、欠品の許容水準を先に決めれば逆算できます。欠品後の分納・代替品・納期変更は民法が定める手順に沿い、仕入先への転嫁には独占禁止法の線引きがあります。決め方と対応手順を一次情報で解説します。

在庫のイメージ
▽ 写真の出典元

安全在庫と欠品対応の定義 ― BtoBはBtoCと効き方が違う

BtoB ECの安全在庫とは、需要と調達リードタイムのばらつきで在庫が尽きるのを避けるため、平均的な必要量に上乗せして持つ在庫です。欠品対応とは、それでも在庫が尽きたときに、取引先へ何をいつ伝え、出荷をどう組み替えるかをあらかじめ決めておいた手順を指します。BtoB-EC市場は2024年に514.4兆円(前年比10.6%増)へ拡大し、EC化率も43.1%(前年比3.1ポイント増)に達しています*4。Web受発注の比率が上がるほど、欠品を電話で謝る運用では追いつかなくなります。

図
安全在庫は許容水準を起点に、需要と調達のばらつきから逆算して決まります

電話連絡と勘頼みの積み増し ― 決めていない現場に残る運用

安全在庫を決めていない現場には、独特の運用が残ります。欠品するたびに営業が電話で謝罪し、担当者の勘で「あの商品は多めに持つ」という調整が積み重なる状態です。基準がないため、担当者が異動すると同じ欠品が繰り返されます。

安全在庫・発注点など11の用語を切り分ける

本題に入る前に、用語を切り分けておきます。安全在庫は需要・調達のばらつきに備えて上乗せする在庫、適正在庫は安全在庫を含めて持つべき総量です。発注点は補充を起こす在庫水準、発注量は1回に補充する数量を指します。

調達リードタイムは発注から入荷までの日数、需要のばらつきは出荷量の標準偏差で表します。許容水準(サービス水準)はどこまで欠品を許すかの割合、欠品率充足率は結果を測る指標です。分納は出せる分だけ先に出荷すること、注残は未出荷のまま残る受注、不動在庫は動かないまま滞留する在庫を意味します。

1注文の数量・月末集中・相手の停止 ― BtoBで効き方が異なる3点

BtoBの在庫計画がBtoCと違って現れるのは3点です。第一に、1注文の数量が大きく、1件の欠品が与える影響がBtoCと桁で異なります。第二に、注文が平らではなく、月末や締め前にまとめ発注が集中します。第三に、欠品の損失が取引先の生産・販売の停止に直結し、次回以降の取引にも響きます。

在庫の4区分と受け方の設計は本記事の範囲外

在庫データの区分そのもの(実在庫・引当済・有効在庫・入荷予定)や、その見せ方・更新の鮮度は本記事の範囲外です。同様に、在庫が無い注文の受け方(取り置き・バックオーダー・引当の状態遷移)も別の論点として扱います。

在庫データが実物と合っていることが議論の前提

ここまでの前提として、在庫データが実物と一致していることが欠かせません。台帳の数字と現物がずれていれば、どれほど精緻な計算式を使っても安全在庫は意味を持ちません。棚卸や在庫差異の是正手順そのものは、本記事の範囲外として扱います。

欠品ゼロを目標にしない ― 許容水準を先に決める

許容水準99%から99.9%でサービス係数が3割超伸びる

欠品をゼロに近づけるほど、必要な安全在庫は急に増えます。正規分布の性質から、許容水準(サービス水準)に対応するサービス係数は、99%でおよそ2.33、99.9%でおよそ3.09になります。0.9ポイントの改善に対して、係数はおよそ3割増えることになります。だからこそ「欠品ゼロを目指す」という目標は、経営判断としては選ばれにくいものです。

持つ費用と欠品の損失を並べて許容水準を決める

許容水準は、持つ費用と欠品の損失を並べて決めます。持つ費用には保管・金利・陳腐化・不動在庫化のコストが含まれます。欠品の損失には失注、取引先の生産停止、次回以降の取引減、代替調達の割高分が含まれます。この2つを並べて初めて、どこで折り合いをつけるかが見えてきます。

看板商品は高く、汎用品は低く ― 商品ごとに許容水準を変える

許容水準は全商品で一律にする必要はありません。看板商品や代替できない商品は高く設定し、代替できる汎用品は低く抑えるという判断が成り立ちます。全商品一律の水準は、実質的に「決めていない」のと同じ状態です。

許容水準は部門をまたいで文書に残す

決めた許容水準は、文書にして部門をまたいで合意します。営業は欠品を嫌い、財務は在庫を嫌う傾向があります。数字で合意していない限り、欠品が起きるたびに同じ議論が繰り返されることになります。

中小機構が位置づける、リードタイム短縮という減らし方

許容水準を下げずに在庫そのものを減らす方向も存在します。独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21は、適正な在庫量の考え方を次のように説明しています。「基本的には『注文の受注から納期までの期間』と『生産のリードタイム』によります」*5

そのうえで、「生産リードタイムの短縮が、在庫量を減らす最良の方法」と位置づけています*5。リードタイムを短くする取り組みこそ、許容水準を犠牲にせずに在庫を減らせる数少ない方向です。

商品ごとに許容水準を変えるときの判断軸3点(順位根拠:重要度)

  1. 看板商品・代替できない商品は、欠品時の損失が大きいため許容水準を高く設定します。
  2. 汎用品・代替できる商品は、他商品での穴埋めが利くため許容水準を抑えられます。
  3. 取引先ごとの契約条件(指定日納品の有無など)が重い商品は、許容水準を個別に見直します。

安全在庫を決める3つの入力 ― 需要・調達・許容水準

需要・調達・許容水準 ― 3つの入力の一覧

安全在庫を決める入力は、需要のばらつき・調達リードタイムのばらつき・許容水準の3つです。まず全体像を表で整理します。

入力 何を測るか BtoB ECでのデータの取り方 よくある間違い
需要のばらつき 一定期間の出荷量の標準偏差 調達リードタイムと同じ長さの期間で測ります。
週次・旬次に丸め、月末集中の影響を平します。
取引先込みの日次で測り、1社の大口注文に引きずられます。
調達リードタイムのばらつき 発注から入荷までの日数の分散 仕入先ごと・商品ごとに、発注実績と入荷実績の差を残します。 リードタイムをカタログ値の定数として置いてしまいます。
許容水準 どこまで欠品を許すか 前段(H2-2)で決めた水準を、商品区分ごとに当てはめます。 水準を決めずに、慣習的な係数を全商品へ一律で使ってしまいます。

計算式の考え方とサービス係数の位置づけ

計算式の考え方は、「許容水準に対応する係数×ばらつき×調達期間の平方根」で表されます。式そのものは道具であり、結果の精度は3つの入力の質で決まります。この係数(サービス係数)はサービス水準に応じて変わる数学的な値で、99%ならおよそ2.33、99.9%ならおよそ3.09です。この式や係数は特定の機関の定義ではなく、正規分布の性質から確認できる計算上の値として扱います。

需要よりリードタイムのばらつきの影響が大きいことが多い

実務では、需要のばらつきよりも調達リードタイムのばらつきの影響が大きいことが少なくありません。入荷が3日遅れるほうが、需要が1割増えるより在庫を食うケースがあるためです。遅れの実績を記録していない会社は、この項目を実質的にゼロとして扱っていることになります。

締め時間・まとめ発注・専用在庫 ― BtoB EC固有の補正3点

BtoB EC固有の補正も必要です。当日出荷の締め時間、月に1回まとめて発注が入る取引先、他の注文に食われない専用在庫の3点です。安全在庫・発注点・リードタイムは、商品マスタに項目として持たせます。どちらのシステムを正とするかは、基幹連携の設計側の論点です。

需要予測の手法は範囲外 ― ばらつきの実績値まで

需要の「予測」そのものは本記事の範囲外です。本記事で扱うのは、過去実績のばらつきを安全在庫の入力として使うところまでにとどめます。

商品を区分して手のかけ方を変える

手順のイメージ
▽ 写真の出典元

全商品を計算し切れない ― 動きの速い上位に手をかける

アイテム数が多いBtoB ECでは、全商品を同じ精度で計算し切ることは現実的ではありません。出荷金額・出荷頻度の上位(動きの速い商品)に手をかけ、下位は簡便法で回すという割り切りが必要です。

区分は「動きの速さ」と「ばらつきの大きさ」の2軸で切ります。

ばらつき小 ばらつき大
動きが速い 発注点で自動化し、手をかけずに回します。 最も手をかける区分です。許容水準を高く置き、リードタイム短縮も併せて狙います。
動きが遅い 最小在庫だけを持ちます。 在庫を持たず、受注後手配・都度回答にします。持てば不動在庫になりやすい区分です。

在庫を持たない設計も選択肢の一つ

「安全在庫を持たない」という選択も設計の一つです。受注生産や都度見積のほか、メーカー直送(ドロップシッピング)は自社で在庫を持たない選択肢になります。ただし納期の確度は仕入先に依存する点に注意が必要です。

区分は季節・商流で定期的に見直す

区分は一度決めて終わりにできません。動きの速さは季節や商流の変化で動くため、見直さない区分は1年もすれば実態と合わなくなります。

発注点と発注量に落とす

発注点は補充の合図、安全在庫は持つ量

発注点は「調達期間中に売れる見込み量+安全在庫」で求めます。安全在庫が「持つ量」であるのに対し、発注点は「補充を起こす合図」です。この2つを混同すると、発注のタイミングそのものが遅れてしまいます。

定量発注と定期発注を動きの速さで使い分ける

発注方式は動きの速さで使い分けます。動きが速く安定した商品には定量発注、動きが遅くまとめて仕入れる商品には定期発注が向きます。

発注単位・ロットが理論値を丸める

発注単位や最小ロットは、理論値をそのまま反映できるとは限りません。理論値と発注単位が一致しないほうがむしろ普通であり、丸めた分は在庫の上振れとして把握しておく必要があります。

入荷予定を在庫に数えるかどうかを決める

入荷予定を在庫として数えるかどうかも、事前に決めておく事項です。数えるなら遅れの反映が必須になり、遅れが反映されない入荷予定は実在庫より扱いが危うくなります。

出荷の波動を平らにすれば安全在庫は減る

出荷量の山谷を平らにできれば、必要な安全在庫そのものを減らせます。安全在庫の設計と出荷平準化は、互いを補い合う対の関係にあります。

発注点と発注量を整えても、欠品そのものをゼロにはできません。起きたときにどう動くかを自社の数字で確かめるには、無料相談で要件を整理するのが近道です。

欠品が起きた後の手順を先に決める

検知→確認→選択→連絡→記録 ― 5段階の手順

欠品が起きた後の手順は、次の5段階で決めておきます。

  1. 検知(受注時点で足りないと分かる仕組み)
  2. 在庫と入荷予定の確認
  3. 打ち手の選択(分納・代替品・納期変更・キャンセル)
  4. 取引先への連絡(何を、いつ、誰が伝えるか)
  5. 記録
図
欠品は検知から記録までを5段階の手順として先に決めておきます

分納・代替品・納期変更・キャンセル ― 4つの打ち手と法的な位置づけ

4つの打ち手には、それぞれ取引先が持つ権利が違います。この違いを踏まえずに「柔軟に対応する」とだけ決めておくと、現場の対応がその場しのぎになります。

打ち手 どんなときに選ぶか 取引先に伝えること 法的な位置づけ
分納(出せる分だけ先に出す) 一部の在庫があり、相手が一部でも使える 今回の出荷数と、不足分の出荷予定 引き渡した目的物が数量に関して契約の内容に適合しない場合、買主は不足分の引渡しによる履行の追完を請求できます(民法第562条第1項)*1
分納は追完の履行にあたり、出荷した時点で完了するわけではありません。
代替品の提案 同等品があり、相手の用途に合う 代替品の仕様差と、価格・納期の差 相手の承諾が必要です。承諾がなければ、契約の内容に適合した給付とはいえません。
納期変更(待ってもらう) 入荷予定が立っており、相手が待てる 確定した入荷予定日と、確定でない旨 一方的には決められません。特定の日時までに履行しなければ契約の目的を達成できない取引では、催告なしに解除されうるためです(民法第542条第1項第4号)*1
キャンセル(受けない・受けられない) 入荷の見込みが立たない 見込みが立たない旨を、判明した時点で 履行が不能な場合、債権者は履行を請求できません(民法第412条の2第1項)*1。ただし損害賠償の請求は妨げられません(同条第2項・第415条)*1

追完を放置すると代金減額、さらに解除・損害賠償も可能

分納の追完を放置すると、次の段階に進みます。買主が相当の期間を定めて履行の追完を催告し、その期間内に追完がないときは、買主は不適合の程度に応じて代金の減額を請求できます(民法第563条第1項)*1。追完が不能なときなどは、催告なしに減額請求できます(同条第2項)*1。さらに、損害賠償の請求と解除権の行使も妨げられません(同第564条)*1

軽微な遅れは解除できない、一部不能は催告なしで解除できる

「軽微な遅れ」と「解除される遅れ」には境目があります。催告して期間内に履行がなければ解除できます。ただし、期間経過時の不履行が契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、解除できません(民法第541条)*1。他方、債務の一部の履行が不能な場合は、催告なしに一部の解除ができます(同第542条第2項第1号)*1

数量不足は品質クレームと同じ時間軸で考えない

数量不足の記録は、品質クレームと同じ時間軸で考えるべきではありません。担保責任の期間制限を定める民法第566条は「目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限」という見出しを持ちます*1。条文も「種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物」という文言であり*1、「数量」は含まれていません。

この違いを踏まえて、数量不足の記録・突合をいつまで残すかは自社で確認する必要があります。個別の該当性は専門家に相談することをおすすめします。

欠品連絡は定型化し、個人裁量にしない

欠品連絡は営業の個人裁量にしてはいけません。連絡の文面と、伝える項目(今回数量・不足数量・入荷予定・確定か未確定か)を定型にしておく必要があります。

画面と通知は『分かる』『残る』の2点に絞る

ECの画面と通知に落とし込む範囲は、「受注時点で足りないと分かる」「欠品連絡と入荷予定が履歴として残る」の2点に絞ります。在庫表示の粒度そのものは別の論点です。

欠品率・充足率・連絡から出荷までの日数で測る

最後に、欠品率・充足率(オーダーのうち満たせた率)・欠品連絡から出荷までの日数を測ります。数で言えなければ、許容水準の見直しそのものができません。

欠品を仕入先・取引先へ転嫁するときの線引き

水のイメージ
▽ 写真の出典元

一方的な納期延期・発注取消は受領拒否になりうる

自社の欠品を、仕入先への一方的な納期延期や発注取消で埋める運用には注意が必要です。私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)第2条第9項第5号ハは、次の行為を禁じています*2。「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に」行う行為です*2

その一つが次の記載です*2。「取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み…その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引すること」*2

『受領を拒む』の意味は公正取引委員会の指針が定める

「受領を拒む」の意味は、公正取引委員会の指針に明記されています。「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」は、「『受領を拒む』とは,商品を納期に受け取らないことである。納期を一方的に延期すること又は発注を一方的に取り消すことにより納期に商品の全部又は一部を受け取らない場合も,これに含まれる」としています*3。需要が読み切れなかった分の在庫を、仕入先側に持たせる運用はこの記述に触れる可能性があります。

優越的地位と『受け入れざるを得ない』状況が前提

ただし、この規制には前提があります。同指針は、取引上の地位が相手方に優越する事業者が、正当な理由なく受領を拒む場合を挙げます*3。問題となる条件はもう一つあります。「当該取引の相手方が,今後の取引に与える影響等を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合」であることです*3

すべての納期変更や発注取消が直ちに問題になるわけではありません。優越的地位の有無と、相手方が受け入れざるを得ない状況かどうかが前提になります。

欠品ペナルティの一方的な設定・変更も避ける

欠品ペナルティ(違約金やチャージバック)を一方的に設定・変更することにも注意が必要です。同号ハの「取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し,若しくは変更し」*2に該当する可能性があるためです。取引基本契約に置く場合は、双方の協議と合意を記録に残す運用が望まれます。

合意の記録として残す設計への落とし込み3点

設計への落とし込みは3点に整理できます。第一に、仕入先への発注変更は協議して合意した記録として残します。第二に、取引先への納期変更も同じく合意の記録として残します。

第三に、欠品の原因を需要・調達・在庫差異に分けて記録します。これは、後から「誰の責任か」を言い合わないためのログ設計です。

該当性の判断は専門家に相談する

個別の取引が優越的地位の濫用に当たるかどうかは、事案ごとの判断になります。同指針は、公正な競争を阻害するおそれがあると認められるかどうかについて、「問題となる不利益の程度,行為の広がり等を考慮して,個別の事案ごとに判断することになる」としています*3。自社の運用が該当するかどうかは、専門家への相談を通じて確認することをおすすめします。なお、受領後の返品運用は別の論点として扱います。

安全在庫と欠品対応の設計手順12ステップ

ここまでの内容を、実行する順序に沿って整理します。

図
12ステップのうち土台となる前半5段階(在庫精度の確認から発注点への反映まで)
  1. 在庫データが実物と合っていることを確認します。合っていなければ、安全在庫の計算そのものが成立しません。
  2. 商品を区分します。動きの速さとばらつきの大きさで分け、上位に手をかけ、下位は簡便法へ回します。
  3. 区分ごとに欠品の許容水準を決め、文書にして部門で合意します。
  4. 3つの入力を測れるようにします。需要のばらつきは調達期間と同じ長さで測り、リードタイムの遅れの実績を残し、許容水準を当てはめます。
  5. 安全在庫と発注点を算出し、商品マスタに項目として持たせます。
  6. 発注単位・最小ロットで丸め、上振れ分を把握します。
  7. 欠品検知の仕組みを決めます。受注時点で足りないと分かるかどうかを確認します。
  8. 欠品時の打ち手4つと、その判断軸を決めます(分納・代替品・納期変更・キャンセル)。
  9. 連絡の定型を作ります。伝える項目と、誰が連絡するかを決めます。
  10. 仕入先・取引先への変更を「合意の記録」として残す仕組みにします。
  11. 欠品率・充足率を測り、許容水準を見直す周期を決めます。
  12. 取引先を巻き込んだテストを行います。

在庫理論・法務・システム設計 ― 内製に必要な3領域の知識

この手順を内製だけで最後まで通すには、在庫理論・法務・システム設計にまたがる知識が必要です。安全在庫の計算式を扱える担当者と、契約不適合責任や独占禁止法の要件を理解できる担当者、商品マスタや基幹連携の仕様を握る担当者は、通常別の部門に分かれています。

手順を誤ると、分納すべき場面で一方的にキャンセルを伝えてしまうことがあります。あるいは、仕入先への納期変更が合意の記録なく進んでしまうこともあります。どちらも取引先との関係や監督官庁からの指摘に直結しかねません。

安全在庫は許容水準の決定から始め、欠品後の打ち手は法令の枠内で先に決める

本稿では、BtoB ECの安全在庫と欠品対応について整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、安全在庫は計算式ではなく、欠品の許容水準を先に決める設計です。第二に、算出の入力は需要のばらつき・調達リードタイムのばらつき・許容水準の3つであり、BtoB ECでは調達側のばらつきの影響が大きいことが多くあります。第三に、欠品が起きた後の打ち手は自社の裁量だけでは決まらず、民法や独占禁止法が枠を定めています。この3点を先に決めておけば、欠品が起きるたびに同じ議論を繰り返す必要はなくなります。


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よくある質問

安全在庫はどうやって決めればよいですか(何から決めるのですか)

最初に決めるのは計算式ではなく、欠品をどこまで許すかという許容水準です。許容水準を商品区分ごとに決めたうえで、需要のばらつきと調達リードタイムのばらつきを測れば、安全在庫は逆算で求められます。

欠品したとき、出せる分だけ先に出荷してよいですか

分納自体は選べますが、注意点があります。引き渡した目的物が数量に関して契約の内容に適合しない場合、買主は不足分の引渡しによる履行の追完を請求できます(民法第562条第1項)*1。分納は追完の履行であり、出荷した時点で完了とはみなされません。不足分の出荷予定を併せて伝える必要があります。

「入荷まで待ってほしい」と一方的に伝えてよいですか

一方的には決められません。特定の日時や一定期間内に履行しなければ契約の目的を達成できない取引では、その時期を過ぎたときに催告なしで解除されうるためです(民法第542条第1項第4号)*1。確定した入荷予定日と、確定でない旨をあわせて伝える必要があります。

自社の欠品を理由に、仕入先への発注を取り消してよいですか

一方的な取消しには注意が必要です。公正取引委員会の指針は、「受領を拒む」に「納期を一方的に延期すること又は発注を一方的に取り消すこと」も含まれるとしています*3。取引上の地位が優越し、相手方が受け入れざるを得ない状況であれば、独占禁止法第2条第9項第5号ハに触れる可能性があります*2。発注変更は協議のうえ、合意の記録を残す運用が望まれます。

安全在庫を増やしたのに欠品が減りません。どこを見ればよいですか

まず、需要のばらつきだけでなく調達リードタイムのばらつきを測れているかを確認します。実務では需要より調達側のばらつきが効いていることが少なくありません。あわせて、在庫データが実物と一致しているか、商品区分と許容水準が実態に合っているかを見直す必要があります。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

  1. *1 出典:デジタル庁「e-Gov法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)」第562条・第563条・第564条・第566条・第541条・第542条・第412条の2・第415条(https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
  2. *2 出典:デジタル庁「e-Gov法令検索 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)」第2条第9項第5号ハ(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000054
  3. *3 出典:公正取引委員会「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(平成22年11月30日策定・平成29年6月16日改正)(https://www.jftc.go.jp/hourei_files/yuuetsutekichii.pdf
  4. *4 出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」(2025年8月26日公表)(https://www.meti.go.jp/press/2025/08/20250826005/20250826005.html
  5. *5 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「J-Net21 ビジネスQ&A『現場での在庫管理の方法と、適正な在庫量の考え方について教えてください。』」(https://j-net21.smrj.go.jp/solution/qa/procurement/Q0277.html

画像の出典元

  1. 在庫のイメージ/Photo by Lance Chang on Unsplash
  2. 手順のイメージ/Photo by Erik Mclean on Unsplash
  3. 水のイメージ/Photo by Skye Whisler on Unsplash

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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