◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 定期便通販の原材料発注は、完成品の補充発注と違い、産地や調達先の切替えが食品表示の書き換えに直結します。
- 「又は表示」「大括り表示」を使うには、産地別の使用実績や使用計画という調達データが根拠資料として必要です。
- OEMへ原材料を有償支給する場合は、中小受託取引適正化法の4条明示の対象になります。
目次
定期便の原材料発注が完成品の補充発注と違う3つの点
定期便通販における原材料発注とは、継続中の定期便件数と次回配送日から必要な原料量を算出し、供給元へ書面または電磁的方法で明示して発注する業務を指します。原材料は重量割合上位1位の原材料が原料原産地表示の対象になるため*1、産地の切替えが完成品の補充発注にはない表示の書き換えを伴います。
完成品の補充発注では、注文数の見込みに応じて在庫を積むかどうかを判断すれば足ります。原材料の発注は、これとは別の制約を抱えています。
需要が「注文数」ではなく「継続件数×次回配送日」で決まる
定期便は都度の注文行動を経ずに出荷が確定するため、原材料の所要量は新規注文の予測ではなく、既に契約済みの継続件数と次回配送日から逆算できます。この点は完成品の需要予測とは前提が異なりますが、予測手法そのものは本稿の対象外です。
原材料の切替えが製品の表示を変える
完成品の補充発注では、同じ製品を同じ規格で仕入れ直すだけで表示は変わりません。原材料の場合は、産地や調達先を切り替えた瞬間に、容器包装の原料原産地表示や原産国名の記載内容が変わる可能性があります*1。発注判断が表示判断と分離できない点が、完成品の補充発注にはない制約です。
発注の記録が法令上の保管対象と重なる
原料原産地表示の「又は表示」を使うには、産地別の使用実績・使用計画という発注側のデータを根拠資料として保管する必要があります*1。中小受託取引適正化法でも、委託事業者には発注内容を明示した書類・電磁的記録を作成・保存する義務があります*2。発注記録を残す目的は業務効率だけでなく、この保管義務を満たすことにもあります。
産地・調達先を切り替えると何を書き換えることになるか
原料原産地表示の対象は、原材料に占める重量割合が最も高い原材料、つまり重量割合上位1位の原材料です*1。別表15の1に掲げる22食品群と5品目(農産物漬物・野菜冷凍食品・うなぎ加工品・かつお削りぶし・おにぎり)には個別の規定があり、上位1位以外の原材料が対象になる場合もあります*1。産地が変わりやすい原材料を使う事業者は、代表的な3つの表示方法のどれを使うかで、書き換えが必要になる範囲が変わります。制度の全体像と対象品目の一覧は、消費者庁の制度紹介ページで確認できます*4。
| 表示方法 | 内容 | 使える条件 |
|---|---|---|
| 国別重量順表示 | 原産国を重量順に並べて表示する原則の方法です。 | 産地の変動が見込まれない場合の基本形です。 |
| 又は表示 | 「国産又は輸入」のように、複数の産地を「又は」でつなぐ表示です*1。 | 製造日を含む1年間で重量順位の変動や産地切替えが見込まれ、国別重量順表示が困難な場合に限られます*1。産地切替えの都度、表示や包装を切替えられる場合は使えません*1。 |
| 大括り表示 | 3以上の外国の原産地を「輸入」などとまとめて表示する方法です*1。 | 又は表示と同様の条件下で、外国の産地が3以上ある場合に認められます*1。 |
「又は表示」「大括り表示」が使える条件
又は表示・大括り表示のいずれも、産地変動が見込まれ国別重量順表示が困難な場合に限って認められます*1。裏を返すと、産地切替えの都度、包装や表示ラベルを切り替えられる体制がある事業者は、これらの簡略表示を使う必要がありません*1。発注の柔軟性と表示の切替え頻度は、トレードオフの関係にあります。
5%未満の産地には個別の表示義務がある
「又は表示」をする場合、使用割合が極めて少ない産地、具体的には5%未満の産地については、原産地名の後ろに括弧を付して「(5%未満)」等と表示する義務があります*1。あわせて、産地別使用実績または産地別使用計画に基づく割合である旨の注意書きも必要です*1。一方、国別重量順表示をしている場合は「(5%未満)」等の表示は不要とされています*1。どの表示方法を採るかで、少量スポット調達の扱いが変わるということです。
「又は表示」を支えるのは調達データである
又は表示・大括り表示を使うために保管が条件とされる根拠資料は、実は発注業務が本来持っているはずのデータそのものです。産地切替えの都度、経理や表示担当が別途調べ直すのではなく、発注記録から自動的に導き出せる形にしておくことが実務上の要点になります。
過去の産地別使用実績
使用実績として認められるのは、表示しようとする時点、つまり製造日を含む1年間から遡って3年以内の中での1年以上の実績です*1。3年間分の発注記録を、産地別に集計できる状態で残しておく必要があります。
今後の産地別使用計画
使用計画として認められるのは、当該計画に基づく製造の開始日から1年間以内の予定に限られます*1。半年後・1年後の調達計画まで見通した発注計画が、そのまま表示の根拠になり得るということです。
保管すべき根拠資料と、発注システムで自動生成できる範囲
過去の使用実績と今後の使用計画は、いずれも産地・使用量・製造日を紐づけた形での保管が前提になります。
保管を条件とされる資料は4つに分かれます*1。第一に、製造日を含む1年間と、実績・計画の基礎となる期間がそれぞれいつからいつまでかを示す資料が必要です。第二に、その期間に原産地ごとの重量順位の変動や産地切替えがあることを示す資料を求められます。第三に、産地別使用実績または使用計画をどの単位で計上したかを示す資料が要ります。一製品ごとか、原料管理を共通化した製品単位ごとかという区分です。第四に、原産地ごとの使用割合の順を示す資料をそろえます*1。発注データ側でこの4区分に対応する項目を持たせておけば、立入検査で根拠書類の確認を受けた際にも、そのまま提示できる状態になります*1。
この4区分を発注データの必須項目として設計しておけば、根拠資料の作成は表示担当の手作業ではなく、発注システムからの出力作業に置き換えられます。逆に、発注記録に産地の項目が無ければ、根拠資料は事後的に人手で再構成するほかありません。産地別の管理単位の考え方は、農林水産省が公開する事業者向けの情報ページも参照できます*5。
又は表示・大括り表示が使えないケース
産地の切替えが見込まれても、その都度表示や包装自体を切り替えられる場合は、国別重量順表示が困難とは認められず、又は表示・大括り表示のいずれも使えません*1。少量多品種で包装替えが容易な事業者ほど、簡略表示に頼らない発注・表示の運用が前提になります。
発注記録の粒度を見直すきっかけとして、無料相談で自社の発注データ設計を整理するという選択肢もあります。
OEMへの有償支給は取適法4条明示の対象になる
OEM先へ原材料を有償で支給している事業者は、自社が中小受託取引適正化法上の委託事業者に立つ自覚が薄いことがあります。有償支給は、発注時に明示すべき事項として法令に明記されている項目です*2。
法律の名称変更と施行日
本稿でいう取適法は、従来の下請代金支払遅延等防止法(昭和31年法律第120号)です*7。改正により法律名は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」となり、略称を中小受託取引適正化法、通称を取適法としています*2*7。令和7年5月16日、下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律が成立し、同月23日に公布されました*2。改正では特定運送委託の追加、従業員基準の追加、協議に応じない一方的な代金決定の禁止、手形払等の禁止などが盛り込まれています*2。改正法の施行期日は令和8年1月1日で、それ以降に行う製造委託等に適用されます*2。委託事業者には、発注内容等の明示義務(4条)、支払期日を定める義務(3条)、書類等の作成・保存義務(7条)、遅延利息の支払義務(6条)の4つの義務があります*2。
明示事項12項目のうち原材料の有償支給は⑪
明示規則第1条第1項が定める明示事項12項目のうち、11番目の事項として「原材料等を有償支給する場合は、その品名、数量、対価、引渡しの期日、決済期日及び決済方法」が明記されています*2。ほかにも給付の内容、受領する期日、検査を完了する期日、代金の額、支払期日などが明示事項に含まれます*2。原材料を有償支給している事業者は、この⑪の項目を発注の都度、書面または電磁的記録で明示する必要があります。
継続取引は「一定期間共通である事項」の事前明示で軽くできる
明示事項のうち支払方法や検査期間のように一定期間共通である事項がある場合、あらかじめこれらの共通事項を書面の交付または電磁的記録の提供により明示しておけば、その期間内は当該事項を発注の都度4条明示することが不要になります(明示規則第1条第3項)*2。ただしこれは明示の省略ではありません。発注の都度、「代金の支払方法等については現行の『支払方法等について』によるものである」ことなどを4条明示し、発注の都度の4条明示と共通事項の明示との関連性を明らかにしなければならないとされています*2。加えて、共通事項の明示に係る書面または電磁的記録には、当該明示が有効である期間を明記する必要があります*2。継続的に同じ原料を同じ供給元へ発注する事業者ほど、この事前明示の設計がEC受発注の効率化に直結します。
原材料の滞留可能期間をどう見積もるか
原材料の発注量を決めるには、どれだけの期間、在庫として滞留させてよいかの見積もりが欠かせません。この見積もりの根拠となる期限の考え方は、令和7年3月に更新されています*3。
消費期限と賞味期限の定義
食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)第2条第1項第7号及び第8号は、いずれも「定められた方法により保存した場合において」を前提に、消費期限を「腐敗、変敗その他の品質の劣化に伴い安全性を欠くこととなるおそれがないと認められる期限」、賞味期限を「期待される全ての品質の保持が十分に可能であると認められる期限」と定義しています*3*6。消費期限は微生物試験等の安全性に係る試験・検査の結果を優先して設定し、賞味期限は理化学試験や官能検査等の品質の試験・検査の結果を優先して設定する期限です*3。
期限設定は表示責任者が自ら行う
表示責任者は、令和7年3月版のガイドラインを踏まえ、食品の特性等に応じて科学的・合理的な根拠に基づく期限の設定及び安全係数の設定を自ら考えて行うことが期待されています*3。指標には微生物試験・理化学試験・官能検査があり、HACCPに沿った衛生管理における危害要因の分析で特定した微生物の種類等から表示責任者が自ら決定します*3。現行ガイドラインは、安全係数について一律の数値を示していません*3。レトルトパウチ食品や缶詰のように品質のばらつきが少なく、客観的な指標と基準で安全性が担保されている食品は、安全係数を考慮する必要がないとされています*3。一方、微生物が増殖する可能性や品質のばらつきが大きい食品には、その特性等に応じた安全係数の設定が必要です*3。
根拠資料は整備・保管し、求めに応じて提供する
表示責任者は、期限設定の根拠に関する資料等を整備・保管し、消費者等から求められたときには情報提供するよう努めるものとされています*3。原材料の滞留可能期間を見積もる作業は、発注量の調整だけでなく、この根拠資料の裏付けとしても機能します。
原材料発注をEC・Web受発注へ移すときの要件
メール・電話・FAXでの発注は、明示事項の記録が担当者の手元やメールの本文に散在しやすく、根拠資料としての集約に手間がかかります。EC・Web受発注へ移す際は、法令が求める明示事項をそのまま発注画面の入力項目に落とし込む発想が実務の近道です。
この移行を内製で進める場合、原料原産地表示の制度理解、取適法の明示規則、電磁的方法の要件という3つの知識領域を、発注システムの設計担当と法務・表示担当の双方が共有する必要があります。理解が不足したまま設計すると、発注データに産地や有償支給の項目が抜け、後から根拠資料を再構成できなくなるという運用コストが発生します。専門知見を持つ外部パートナーに設計を依頼する場合は、この3領域の要件を仕様書に落とし込む工程を委ねられる点が、内製との主な違いになります。
EC・Web受発注へ移す際の優先順5点/順位根拠:法令要件の優先度
- 発注データに明示事項12項目を割り当てます。品名・数量・対価・引渡しの期日・決済期日・決済方法などを画面項目に対応させ、原材料の有償支給は⑪として扱います*2。
- 電磁的方法による明示の要件を満たします。明示事項が受信者の使用する電子計算機の映像面に文字・番号・記号で明確に表示される方式にします*2。
- 継続発注のテンプレートを用意し、共通事項の明示に有効期間を明記して管理します*2。
- 産地・ロット・使用実績の履歴を発注データに残し、又は表示の根拠資料に転用できる形式にします*1。
- 期限設定の根拠資料を整備・保管する体制を確認します*3。
電磁的方法による明示は、電子メール等を送信する方法も含まれます*2。ただし取引先から書面交付を求められた場合の対応まで含めて設計しておくと、後戻りが少なくなります。
要件を自社の発注フローに当てはめて整理したい場合は、無料相談で発注データの設計を確認することもできます。
まとめ:原材料発注の設計で押さえる3つの判断軸
本稿では、定期便通販の原材料発注を、完成品の補充発注とは別の業務として整理しました。要点を3つに集約すると次の通りです。第一に、原材料の産地切替えは食品表示の書き換えを伴うため、発注判断と表示判断を分離できません*1。第二に、「又は表示」「大括り表示」を使うための根拠資料は、発注記録から導き出せる調達データにほかなりません*1。第三に、OEMへ原材料を有償支給する事業者は取適法4条明示の対象であり、明示事項をEC・Web受発注の画面設計に落とし込むことが移行の要になります*2。
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
よくある質問
原材料の産地が急に変わった場合はどうすればよいですか。
原則は表示内容の変更で対応します。農産物の不作や為替の変動等による調達先変更の結果、表示内容と使用する産地が異なる場合は、原料原産地表示を変更するよう対応することとされています*1。急な調達変更を「又は表示」で常時吸収できるわけではない点に注意が必要です。
「又は表示」の根拠資料は何年分の実績が必要ですか。
過去の使用実績として認められるのは、表示しようとする時点を含む1年間から遡って3年以内の中での1年以上の実績です*1。3年分の産地別発注記録を、集計可能な形で保管しておく必要があります。
有償支給と無償支給で取適法の明示事項は変わりますか。
はい、異なります。明示事項12項目のうち11番目の事項は、原材料等を有償支給する場合に品名・数量・対価・引渡しの期日・決済期日及び決済方法を明示するよう定めています*2。無償で支給する場合は、この対価等の明示は前提が変わるため、支給形態ごとに発注データの項目を分けて設計する必要があります。
電子メールでの発注は取適法の明示として有効ですか。
有効です。電磁的方法による明示の要件として、電子メール等を送信する方法が認められています*2。ただし、明示事項が受信者の使用する電子計算機の映像面に文字・番号・記号その他の符号で明確に表示される必要があり、取引先から書面交付を求められた場合の対応も別途必要です*2。
継続的な取引でも発注の都度、明示事項をすべて記載する必要がありますか。
支払方法や検査期間のように一定期間共通である事項は、あらかじめ書面や電磁的記録で明示しておけば、その期間内は当該事項を発注の都度4条明示することが不要になります(明示規則第1条第3項)*2。ただし発注の都度、共通事項の明示との関連性を明らかにする4条明示は必要です*2。また共通事項の明示に係る書面・電磁的記録には、明示が有効である期間を明記する必要があります*2。
- *1 出典:消費者庁「食品表示基準Q&A 別添 新たな原料原産地表示制度」(PDF)
- *2 出典:公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法テキスト」令和7年11月(PDF)
- *3 出典:消費者庁「食品期限表示の設定のためのガイドライン」令和7年3月(PDF)
- *4 出典:消費者庁「新たな加工食品の原料原産地表示制度に関する情報」(制度紹介ページ)
- *5 出典:農林水産省「加工食品の原料原産地表示制度について」(事業者向け情報ページ)
- *6 出典:e-Gov法令検索「食品表示基準」(平成27年内閣府令第10号)(法令原文)
- *7 出典:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(昭和31年法律第120号)(法令原文)
画像の出典元
- 発注のイメージ/Photo by Annika Wischnewsky on Unsplash
- 通販のイメージ/Photo by Samuel Regan-Asante on Unsplash
- 取適法のイメージ/Photo by 2H Media on Unsplash
- 見積のイメージ/Photo by Giorgio Tomassetti on Unsplash
- 受発注のイメージ/Photo by 2H Media on Unsplash