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BtoB ECと電子契約の連携設計|取適法・電子署名法の要件

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • BtoB ECと電子契約サービスの連携設計は、契約が成立する時点をどのイベントに置くかを決める作業から始まります。
  • 制度の側から発注内容の明示項目・保存期間・支払期日が定められているため、法令の要件から連携の仕様を逆算できます。
  • 基本契約・個別契約・変更の3層に分けて設計すると、署名の要否や連携単位を層ごとに判断できます。
連携のイメージ
▽ 写真の出典元

注文と契約成立を分けて考える連携設計の出発点

BtoB ECにおける電子契約の連携設計とは、注文から契約の成立、記録の保存までの一連の工程を指します。どの時点でどのデータをもって契約が成立したとみなし、その記録をどこに何年保存するかを、事前に取り決める設計作業です。

図
契約が成立するまでは4つの工程に分けて設計する

決めるべきことは3つあります。①契約が成立する時点②電子署名を要する契約の範囲③記録の保存責任の所在です。2026年1月1日に施行された取適法では、書面交付義務の扱いが変わりました。

中小受託事業者の承諾の有無にかかわらず、電子メールなどの電磁的方法によることが可能になったのです*1。取適法は、発注内容(給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法)等の明示と、取引に関する記録を2年間保存することを義務づけています*1

電子署名法第3条は、本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときに、真正な成立を推定します*2

「注文」と「契約の成立」は別のイベントという整理

ECのカート確定を「注文(申込み)」、売り手の受注確定または注文請書の発行を「承諾」とする設計が実務上は一般的です。ただしこれは設計上の整理であり、民法上の到達時期や承諾の効力そのものを断定するものではありません。軸になるのは「意思表示が合致した時点はどこか」を1つに決めることです。

基本契約(取引条件を定める契約)、個別契約(発注ごとの契約)、注文請書(個別契約の成立を示す書面)は、本記事で繰り返し使う用語です。電子署名(電磁的記録に行う本人性・非改変性の証明措置*2)とあわせて、設計を議論するうえでの前提になります。

連携する対象は「文書」ではなく「工程」

電子契約サービスとの連携を「PDFを受け渡すこと」と捉えると、設計を誤ります。実際に繋ぐのは、上図の4工程、すなわち①相手方と対象の特定②締結の依頼と署名③成立の通知④記録の保存です。以降の各章はこの4工程に沿って構成します。

本記事が扱う範囲、扱わない範囲

本記事が扱うのは、契約の成立時点、署名を要する範囲、連携の単位とタイミング、例外時の状態、保存責任の分界です。一方で、電子帳簿保存法の保存要件そのもの、請求書の電子交付と同意、適格請求書の記載事項、社内の承認ワークフローは扱いません。これらはすでに専用の記事が担っている論点だからです。

取適法・電子署名法が定める連携設計の前提

本節は法令・政府の公表資料の記載内容を示すものであり、個別の取引が要件を満たすかどうかの法的判断ではありません。実際の適用可否は専門家や所管官庁にご確認ください。

取適法(2026年1月1日施行)で発注電子化の前提が変わった

下請代金支払遅延等防止法の改正法が2026年1月1日に施行され、法律名も「取適法(中小受託取引適正化法)」に変わりました*1。改正事項として、書面交付義務について、中小受託事業者の承諾の有無にかかわらず電子メールなどの電磁的方法によることが可能になる点が挙げられています*1

委託事業者に課される義務は4つです。まず①発注内容(給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法)等の明示義務があります*1②取引に関する記録を書類または電磁的記録として作成し、2年間保存する義務もあります*1

加えて③受領日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定める義務があります*1④支払遅延や減額等した場合には、年率14.6%の遅延利息を支払う義務もあります*1

ここから、ECの注文データに給付の内容・代金の額・支払期日・支払方法を漏れなく載せ、記録を2年間残すという設計要件が導かれます。

電子署名法が定める「電子署名」と推定効

電子署名法第2条第1項は、電磁的記録に記録できる情報について行われる措置を「電子署名」と定義しています。要件は2つあり、当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示す点と、改変が行われていないかどうかを確認できる点の両方に該当することが必要です*2

第3条は、電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く)について、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名が行われているときに真正に成立したと推定するとしています*2。条文はこの電子署名に限定を付しています。

その限定とは、「これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る」という一節です*2

推定効の鍵は署名の種類ではなく、符号及び物件の適正な管理にあります。この読み方は、ID発行・失効の手順や二要素認証(パスワードに加え端末やコードで本人確認する仕組み)の運用設計にそのままつながります。

立会人型についての政府のQ&Aと所管の移管

「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第3条関係)」という文書があります。これは令和2年9月4日に総務省・法務省・経済産業省が公表しました*3。同Q&Aは令和6年1月9日にデジタル庁・法務省が一部改定しています*3

現在の所管はデジタル庁および法務省です。電子署名法に基づく特定認証業務の認定に係る指針も、最終改正が令和7年6月30日のデジタル庁・法務省告示第4号であり、同じ2機関の連名で改正されています*5

この改定に追随していない二次情報も見られるため、公表・改定の事実を正確に押さえることが実務上の差になります。なお各設問の要件の具体的な内容は本企画の照合範囲外であり、本記事では公表・改定の事実の提示にとどめます。

電子契約で授受したデータも税法上の保存対象になる

国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」の最新版は令和8年7月版(全78頁)です*4。同資料の目次には、クラウドサービスで請求書等を受領した場合の電子取引該当性を問う設問があります。クラウドサービスを利用して雇用契約書を授受した場合に、そのデータを電子取引データとして保存する必要があるかを問う設問も置かれています*4

ここから導かれるのは、「電子契約サービスに記録が残っているから対応済み」ではなく、保存義務は自社に残るという前提です。保存要件そのものの中身は本記事では扱いません。

基本契約・個別契約・変更の3層で設計を分ける

取適法・電子署名法の要件は、すべての契約に一律で当てはめるものではありません。頻度と証拠力の違いを踏まえて、契約を3つの層に分けて設計します。

基本契約・個別契約・注文請書の3層

3層の性格は下表のとおりです。「電子署名の要否」は法的な要否ではなく、設計上の考え方として整理したものです。

頻度 電子署名の要否(設計上の考え方) ECとの連携の単位
基本契約層 取引基本契約、秘密保持契約 年1回〜数年に1回 電子署名を用いる設計が中心。取引開始の条件そのものであり、証拠力を厚く取ります。 ECの外側。取引先マスタの「契約締結済み」フラグとしてのみ連携します。
個別契約層 個別の発注、注文請書 日次・大量 基本契約で定めた方法に従う設計とします。件数が多く、都度の署名は運用が持ちません。 ECの注文データそのもの。取適法の明示項目*1を注文データで満たします。
変更・例外層 数量変更、キャンセル、単価改定 随時 層をまたぐため、扱いを個別に決めます。 変更履歴として注文に紐づけます。

3層を分けないと運用が破綻する理由

基本契約の重さを個別契約に持ち込むと、日次数百件の注文ごとに署名依頼が飛ぶことになります。逆に個別契約の軽さを基本契約に持ち込むと、取引条件の証拠が薄くなります。頻度と証拠力のトレードオフを層で吸収するのが設計の原則です。

図
頻度と証拠力は層ごとに異なる

どの層をECに載せるかの判断

判断は3点で行います。①取適法の明示項目*1を注文データで満たせるか、②相手方が個別契約に署名を求めているか、③改定の頻度はどの程度か、です。

EDI(電子データ交換。企業間で受発注データを電子的に交換する仕組み)で受発注している場合も、契約の成立時点をどこに置くかという論点は変わりません。

自社の受発注データが取適法の明示項目を満たしているか、現行のECでどこまで確認できているでしょうか。無料相談で要件を整理すると、層ごとの過不足が具体的に見えてきます。

連携設計を5ステップで決める

ここまでの前提を踏まえ、連携設計を5つのステップに分解します。各ステップで「決めること」と「決めた結果どうなるか」を対にして示します。

図
連携設計は5つの決定に分解できる

連携設計で決める5つの手順(順位根拠:実施順序)

  1. 契約の成立時点を1つに決めます。カート確定、受注確定、注文請書発行のいずれを成立時点とするかが定まらないと、以降の連携タイミングが決まりません。決めた時点は基本契約の条項と一致させます。
  2. 層ごとに署名の要否と方式を決めます。電子署名を用いる層については、符号及び物件の適正な管理*2をID発行・失効の手順や二要素認証、権限者の限定でどう担保するかを併せて決めます。方式の選択と管理の設計は切り離せません。
  3. 連携の単位とタイミングを決めます。単位は注文単位・締め単位・案件単位のいずれか、タイミングは成立と同時(同期)か日次バッチ(非同期)かです。取適法の明示は発注に当たって行う義務のため*1、明示のタイミングを後ろ倒しにする設計は取れません。
  4. 例外時の状態を定義します。連携の送信に失敗した場合に記録が無い状態を作らないこと、締結依頼が二重に送信された場合の一意性を保つこと、取消は削除ではなく取消の記録として残すことの3点です。連携方式の同期・非同期やリトライ、冪等性(同じ処理を繰り返しても結果が変わらない性質)の一般論は他記事に譲ります。
  5. 記録の保存先と年限を決めます。取適法の2年間保存*1と、電子取引データとしての保存義務*4は別の制度に基づく別の要件であり、年限も根拠も異なります。実務では長い方に合わせるのが帰結になりますが、具体の保存要件は別記事に委ねます。

例外時の状態を現行システムで持てるかどうかは、いまの受発注の作りを確認しないと判断できません。連携に失敗した契約を放置すると、成立の有無が不明な取引が残り、支払期日の起算にも影響します。

図
送信失敗・二重送信・取消は状態遷移として吸収する

内製で対応する場合は、成立時点の定義・署名運用・状態遷移設計・保存先設計の4領域を扱える体制が必要になります。

契約データの採番と締結権限を設計する

取適法のイメージ
▽ 写真の出典元

契約に紐づけるキーを決める

注文番号・契約番号・取引先コードのどれを主キーにするかを先に固めます。契約データは後から変えられない記録であるため、採番の規則を運用開始前に確定させる必要があります。基幹システム側の番号体系との整合は基幹連携の設計に委ねます。

誰が締結できるかを設計する

電子署名法第3条は「本人だけが行うことができることとなるものに限る」と限定しています*2。ここから、締結権限を持つIDを限定し、共有アカウントを使わないという設計要件が導かれます。権限管理の一般論は権限・アカウント管理の記事に譲ります。

社内の承認ルートと契約の締結権限は別の論点であり、混同すると権限設計が破綻します。

発注データに載せる項目

取適法の明示項目である給付の内容・代金の額・支払期日・支払方法*1が、ECの注文確定データと注文書PDFの両方に載っているかを点検します。支払期日は受領日から起算して60日以内という制約も設計に効いてきます*1

契約記録の保存責任をECと電子契約サービスで分ける

3つの置き場所とそれぞれの前提

置き場所は3つに整理できます。①電子契約サービスに置く(サービス解約時の取り出し方法を設計に含める)、②ECに置く、③基幹システムや文書管理システムに集約する、です。どれを選んでも、保存義務そのものは自社に残るという前提は変わりません*4

分界を決めるときの3つの問い

判断は3つの問いで整理します。①税務調査で提示を求められたとき、どのシステムから出すか、②サービスを乗り換えるとき、過去分をどう移すか、③取引先が閲覧できる範囲はどこまでか、の3点です。

保存要件そのものの中身は本記事では扱わない

真実性・可視性・検索要件といった保存要件そのものの中身には、本記事では踏み込みません。詳細は電子帳簿保存法対応の記事に譲ります。本記事が扱うのは、あくまで「どのシステムが記録を持つか」という分界の設計です。

まとめ:連携設計で決める3つの判断軸

本稿では、BtoB ECと電子契約サービスの連携設計を、契約が成立する瞬間をどのデータで表し、その記録を誰がどこに何年置くかを決める作業として整理しました。要点は3つに集約できます。

第一に、成立時点をカート確定・受注確定・注文請書発行のいずれかに1つ定めることです。第二に、基本契約・個別契約・変更の3層で署名の要否と管理方法を分けることです。第三に、保存責任をEC・電子契約サービス・基幹のどこに置くかを、税務調査対応や乗り換え時の移行を想定して決めることです。

個別の法的判断は専門家や所管官庁への確認を前提としつつ、自社の受発注導線がどこまで取適法の要件に沿っているかは、現状の仕組みを点検することでしか分かりません。


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よくある質問

取引先の承諾がなくても、発注書を電子化してよいのですか。

取適法では、書面交付義務について中小受託事業者の承諾の有無にかかわらず、電磁的方法によることが可能とされています*1。ただし請求書の電子交付は別の制度であり、相手方の同意が別途必要になる場合があります。

立会人型(事業者署名型)の電子契約でも法的に有効なのですか。

電子署名法第3条は、本人による電子署名について、符号及び物件が適正に管理され本人だけが行うことができる場合に真正な成立を推定すると定めています*2。立会人型についても政府のQ&Aが令和2年9月4日に公表され、令和6年1月9日にデジタル庁・法務省が一部改定しています*3。個別の有効性の判断は専門家や所管官庁にご確認ください。

電子契約サービスに保存されていれば、自社では保存しなくてよいのですか。

クラウドサービスを利用して受領した取引情報も電子取引に該当し得るとして、国税庁の一問一答に設問が置かれています*4。保存義務は自社に残るという前提で設計する必要があります。保存要件の詳細は電子帳簿保存法対応の記事をご覧ください。

発注データには何を載せる必要がありますか。

取適法の明示義務にもとづき、給付の内容・代金の額・支払期日・支払方法等を載せる必要があります*1。あわせて、取引に関する記録を2年間保存する義務があります*1

すべての注文を電子契約にするべきですか。

基本契約・個別契約・変更の3層で頻度と証拠力が異なるため、層ごとに方式を決めるのが実務的です。日次数百件の個別契約に基本契約と同じ重さの署名運用を課すと、運用が持たなくなります。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

  1. *1 出典:公正取引委員会「取適法リーフレット No.01『2026年1月から「下請法」は「取適法」へ!』」(令和7年8月)https://www.jftc.go.jp/file/toriteki_leaflet.pdf
  2. *2 出典:e-Gov法令検索「電子署名及び認証業務に関する法律(平成12年法律第102号)」第2条・第3条https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC0000000102
  3. *3 出典:デジタル庁・法務省(原公表:総務省・法務省・経済産業省)「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第3条関係)」(令和2年9月4日公表、令和6年1月9日一部改定)https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/517ca59b-6ea4-4179-a338-8d1b51a4d40b/4ae659c2/20240109_digitalsign_qa_01.pdf
  4. *4 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和8年7月)https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0026007-006_05.pdf
  5. *5 出典:法務省「電子署名及び認証業務に関する法律に基づく特定認証業務の認定に係る指針」(平成13年総務省・法務省・経済産業省告示第2号/最終改正:令和7年6月30日 デジタル庁・法務省告示第4号)https://www.moj.go.jp/MINJI/minji32.html

画像の出典元

  1. 連携のイメージ/Photo by kenny cheng on Unsplash
  2. 取適法のイメージ/Photo by 2H Media on Unsplash

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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