◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 欠品時の代替品提案は、判断基準表・代替品マスタ・承諾記録の3点セットで標準化でき、担当者の経験への依存を抑えられます。
- 欠品には発生パターンがあり、パターンごとに代替品提案が適切か、納期回答など別の対応が適切かを見極める必要があります。
- BtoB ECでは欠品検知や代替候補の提示を自動化できますが、代替可否の最終判断と得意先との個別交渉は人が担う領域として残ります。
目次
卸売業の代替品提案とは — 返品・輸送能力・商慣習見直しが迫る理由
卸売業の代替品提案とは、受注した商品が欠品した際に、あらかじめ定めた基準に沿って同等の機能・規格を持つ別の商品を得意先へ提示することです。承諾を得たうえで受注へ振り替える、一連の運用を指します。加工食品の返品額は2021年度で421億円、日用雑貨は616億円と推計されており*2、欠品を放置した先のコストは業界全体の課題になっています。
返品・過剰在庫・緊急配送というコスト
公益財団法人流通経済研究所がまとめた製・配・販連携協議会のワーキンググループ報告があります。加工食品の返品率(卸売業からメーカーへの返品の割合)は2012年度の0.87%から2021年度には0.31%へ下がりました*2。日用雑貨の返品率も同期間で3.19%から2.03%へ下がっています*2。
改善は進んでいますが、返品額の推計は加工食品で421億円、日用雑貨で616億円にのぼります*2。両者は別集計のため単純比較はできません。返品発生理由は品目で異なり、加工食品では主に定番カット(商品改廃)と納品期限切れ、日用雑貨では主に年2回の棚替え・季節品が挙げられています*2。欠品時に代替品を提案できず、後から届いた商品が結果的に返品されるケースも、これらの理由の一部を占めていると見られます。
物流の輸送能力不足が「後から届ければいい」を許さない
経済産業省・農林水産省・国土交通省が2023年6月に連名で策定したガイドラインがあります。対策を講じなければ、輸送能力は2024年度に約14%、2030年度には約34%不足すると推計されています*3。輸送能力不足(トラック等の運ぶ力が、運びたい荷物の量に対して不足する状態)が拡大するほど、欠品分を後日改めて配送する対応の余地は狭まります*3。
2026年5月の卸売業販売額は前年同月比4.9%増の39兆1,020億円でした*5。取引量そのものが増える局面では、欠品と代替品対応が発生する回数も比例して増えやすくなります。
商慣習の見直しが業界全体のテーマになっている
製・配・販連携協議会は、2026年5月に「消費財サプライチェーン協議会」へリブランディングされる予定です*4。新協議会で継続議論の対象として挙げられた6項目には、データ連携による共同物流・最適在庫と、商慣習の合理化・適正化が含まれます*4。欠品時の代替品提案は、この2項目のいずれにも関わる実務です。
議論テーマとして挙げられた項目には、商品・事業所・貨物等の標準コードの普及、商品情報の一括登録・共同利用も含まれます*4。商流・物流の標準EDI(Electronic Data Interchange、企業間の受発注データを電子的に交換する仕組み)の普及も同様です*4。ユニットロード・物流資材の標準化・普及も挙げられています*4。欠品対応の標準化は、社内だけの改善にとどまらず、業界全体の方向性と重なっています。
需要変動・供給遅延・商品改廃・引当ミス — 欠品4パターン別の初動
欠品は原因によって初動が変わります。原因を4つのパターンに分けると、代替品提案が有効な場面と、納期回答や分納など別の対応が適切な場面を見分けやすくなります。
需要変動型(特売・季節品)と供給遅延型(メーカー欠品・物流遅延)
需要変動型は、特売や季節商品で見込みを超える受注が入り欠品する場合です。短期間で需要が落ち着く見込みがあるため、代替品提案と入荷後の再案内を併用する対応が有効です。
供給遅延型は、メーカー側の欠品や物流の遅延が原因で、卸側の需要予測とは無関係に発生します。復旧の見通しが立たない場合は、代替品提案を優先したほうが得意先の業務への影響を抑えられます。
商品改廃型(定番カット・棚替え)と引当ミス型(在庫データと実在庫の乖離)
商品改廃型は、メーカー側の定番カットや棚替えで、その商品自体が今後入荷しない場合です。前述の加工食品の返品理由として挙げられた定番カットは、この型に当たり*2、代替品への切り替えを前提とした案内が欠かせません。
引当ミス型は、在庫データと実在庫が食い違い、受注時点では確保できたはずの在庫が実際には確保できない場合です。この型の発生頻度を示す一次情報は確認できていないため、数値では示さず、発生時は在庫データの照合を優先する運用にとどめます。
緊急度・代替可否・取引条件 — 代替品提案の判断基準表
欠品対応を属人化させないための中核は、代替品を提案するかどうかを個人の経験に委ねず、基準として外に出しておくことです。
判断を分ける3つの軸
代替品提案の可否は、次の3つの軸で決めます。第一に得意先の緊急度と用途、第二に代替品としての可否(規格・法規・入数が合うか)、第三に取引条件(単価差・掛率〈卸売価格を掛け率で示す慣行〉・返品条件)です。
代替品の優先順位
代替品を選ぶ順序は、同一メーカーの同等品、自社PB(プライベートブランド、卸・小売側が企画する自社ブランド商品)が基本です。それでも合わない場合は、他社の同等品、上位グレード品の順に検討します。単価差が生じる場合は、差額を得意先負担にするか自社が吸収するかを、あらかじめ基準として定めておく必要があります。
提案してはいけないケース
指定銘柄での受注、法令上の規格が定められた商品、入数や荷姿が得意先の運用と合わない場合は、代替品を提案せず、欠品の連絡と納期回答に切り替えます。基準を明文化しておくことで、担当者ごとの判断のばらつきを抑えられます。
| 軸 | 確認する内容 | 代替品提案の目安 |
|---|---|---|
| 緊急度・用途 | 得意先の使用予定日と用途を確認します。 | 用途が変わらない範囲で急ぎの場合は提案対象になります。 |
| 代替可否 | 規格・法規・入数・荷姿が一致するかを確認します。 | 規格や法規が異なる場合は提案せず欠品連絡に切り替えます。 |
| 取引条件 | 単価差・掛率・返品条件の扱いを確認します。 | 差額の扱いを基準で決めてから提案します。 |
| 指定銘柄・規格品 | 得意先が銘柄を指定しているか、法令上の規格品かを確認します。 | 該当する場合は提案対象から外します。 |
ここまでの3軸を自社の商品群に当てはめると、判断がどこで割れるかが具体的に見えてきます。自社の欠品対応を今の基準と比べてみたい方は、無料相談で要件を整理するのが近道です。
欠品検知から承諾記録まで — 代替品提案の運用手順5ステップ
判断基準が定まったら、欠品の発生から承諾記録の保存までを一連の手順として設計します。次の5ステップに分けると、担当者が変わっても同じ流れで対応できます。
- 受注時点で欠品を検知します。在庫データと実在庫の突き合わせを含みます。
- 判断基準表に沿って代替品を提案できるかを振り分けます。
- 得意先へ提案します。代替品名・規格差・単価差・納期・元注文の扱いの5項目を提示します。
- 得意先から承諾を取得します。
- 承諾内容を注文に紐づけて記録に残します。
得意先への提案時に伝える項目は、代替品名、規格差、単価差、納期、元の注文の扱いの5点です。この5点が揃っていないと、得意先は代替品を受け入れるかどうかを判断できません。
承諾の取得方法はメール・電話のいずれでも構いませんが、後日の値差や返品トラブルを防ぐには、承諾した内容を文字で残すことが欠かせません。電話で承諾を得た場合も、内容をメールや受注システムの備考に転記しておく運用が望まれます。
承諾記録を注文に紐づけて残すことは、後から「誰が何を承諾したか」を追跡できる状態を作ることを意味します。この記録が、次章で扱う自動化の範囲と、着手順を考える際の起点になります。
自動化できる範囲とできない範囲 — BtoB EC化の前提となるマスタ整備
ここまでの5ステップのうち、どこまでをBtoB EC(企業間の受発注をインターネット上で行う仕組み)や受発注システムに任せられるかを整理します。
経済産業省の調査によると、2024年のBtoB-EC市場規模は514.4兆円で前年比10.6%増でした*1。BtoB-EC化率は43.1%で、前年比3.1ポイント増です*1。取引の電子化が進むほど、欠品対応の一部を自動化する土台も整いやすくなります。
自動化できる領域
欠品検知、代替候補の提示、単価差の自動計算、承諾ログの保存は、システム側で対応しやすい領域です。いずれも判断基準表と代替品マスタ(商品ごとに代替候補をあらかじめ登録した台帳)をシステムに持たせることが前提になります。
人が残る領域
代替可否の最終判断と、得意先との個別条件交渉は、人が担う領域として残ります。規格や法規の一致は機械的に照合できても、得意先ごとの事情を踏まえた最終判断は、担当者の確認を経る必要があります。
前提となるマスタ整備
自動化の前提になるのは、商品マスタへの代替品コードの付与、得意先別の単価、入数・荷姿の登録です。消費財サプライチェーン協議会でも、標準コードの普及と標準EDIの普及が議論テーマに挙げられています*4。マスタ整備の負荷を数値で示す一次情報は確認できていないため、ここでは定性的な位置づけとして扱います。
| 業務 | 自動化の可否 | 残る対応 |
|---|---|---|
| 欠品検知 | 自動化できる | 在庫データ連携で検知します。 |
| 代替候補の提示 | 自動化できる | 代替品マスタから候補を表示します。 |
| 単価差の計算 | 自動化できる | 法人別単価マスタから計算します。 |
| 承諾ログの保存 | 自動化できる | 得意先の回答を記録します。 |
| 代替可否の最終判断 | 人が判断する | 規格・法規・入数の一致を担当者が確認します。 |
| 得意先との個別条件交渉 | 人が判断する | 単価差・納期を担当者が交渉します。 |
代替品マスタの整備を後回しにしたまま自動化だけを進めると、システムが古い代替候補を提示し続け、得意先へ誤った提案をする恐れがあります。マスタの整備には、商品知識と得意先の取引条件の両方を理解した担当者の確認作業が欠かせません。
定番品のABC区分から始める — 代替品提案運用の着手順とチェックリスト
判断基準とマスタ整備を一度に全商品へ広げるのは負荷が大きいため、着手順を分けて進めます。
代替品提案運用の着手順3段階(順位根拠:着手順序)
- 出荷実績の上位ABC区分(出荷量の多い順にA・B・Cへ分類する管理手法の上位区分)に当たる定番品だけ、代替品コードを先に登録します。全商品を対象にするより早く効果を確認できます。
- 判断基準表を1枚にまとめ、受注担当者間で共有して運用に載せます。基準を個々の担当者の記憶ではなく共通のフォーマットに揃えることが、次段階への土台になります。
- 承諾記録を電子化し、BtoB ECへの移行を検討します。記録が電子化されていることが、システム連携の前提になります。
中小企業庁の2026年版中小企業白書によると、中小企業のデジタル化の取組段階は、紙・口頭中心の段階1が15.4%、段階2が57.3%です。段階3が24.5%、ビジネスモデル変革に当たる段階4は2.8%です(帝国データバンク「令和7年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」、n=12,215)*6。過半数が段階2にとどまっている状況を踏まえると、代替品提案の運用も一度に高度な自動化へ進めるより、着手順を分けたほうが実態に合います。
この3段階を内製で進めるには、商品知識に加えて、得意先ごとの取引条件を把握した担当者の確認作業が必要です。代替品マスタの整備工数を示す一次情報は確認できていないため、ここでは相応の確認作業を要する取り組みという定性的な位置づけにとどめます。
内製で進める場合は、既存の受発注システムとの連携方法を自社で検討する負荷が生じます。外部の専門パートナーに相談する場合は、判断基準表とマスタ設計の型を踏まえたシステム要件の整理を、対話しながら進められる点が異なります。
着手前に確認しておきたい項目を整理します。
- 出荷実績上位のABC区分を最新化しているか
- 定番品ごとに代替品コードを登録できているか
- 判断基準表を1枚のフォーマットにまとめているか
- 緊急度・代替可否・取引条件の3軸を基準表に反映しているか
- 指定銘柄・法令規格品を提案対象から除外しているか
- 得意先への提案5項目(代替品名・規格差・単価差・納期・元注文の扱い)を明文化しているか
- 承諾記録の保存先と保存方法を決めているか
- 単価差の扱い(得意先負担か自社吸収か)を基準として定めているか
- 入数・荷姿の一致を確認する手順があるか
- 承諾記録の電子化とBtoB EC連携の検討時期を決めているか
まとめ:卸売業の代替品提案運用、3つの判断軸
本稿では、卸売業における欠品時の代替品提案を、判断基準・運用手順・自動化の範囲という3つの観点から整理しました。要点を3つに集約すると次の通りです。第一に、代替品提案は緊急度・代替可否・取引条件の3軸で判断でき、基準を明文化すれば属人化を抑えられます。第二に、欠品検知から承諾記録までを5ステップに分けることで、担当者が変わっても同じ流れで対応できます。第三に、BtoB ECは欠品検知や代替候補の提示を自動化できますが、代替可否の最終判断と個別条件の交渉は人が担う領域として残ります。
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
よくある質問
代替品の単価が元の商品より高い場合、差額はどう扱うべきですか。
差額の扱いは、事前に定めた基準に沿って決めるのが基本です。得意先負担にするか自社で吸収するかを、取引条件の一部としてあらかじめ基準表に定めておくと、提案時の交渉がその場の判断に左右されにくくなります。差額を明示せずに提案すると、後日の請求時にトラブルになりやすい点にも注意が必要です。
得意先の承諾はメール・電話どちらで取るべきですか(記録の残し方)。
メール・電話のどちらでも構いませんが、承諾した内容を文字で残すことが欠かせません。電話で承諾を得た場合も、代替品名・規格差・単価差・納期・元注文の扱いの5項目を、メールや受注システムの備考欄に転記して保存する運用が望まれます。
代替品提案の可否は誰が決めるのが適切ですか。
判断基準表に沿っていれば受注担当者が決められますが、基準に当たらないケース(指定銘柄や法令規格品など)は、上位者や商品担当への確認を経る運用が適切です。基準表に「誰が最終判断するか」をあらかじめ明記しておくことで、担当者ごとの対応のばらつきを抑えられます。
代替品マスタはどの商品から整備すればよいですか。
出荷実績の上位ABC区分に当たる定番品から整備するのが現実的です。全商品を一度に対象にするより、取引頻度の高い商品から代替品コードを登録したほうが、早い段階で運用の効果を確認できます。
- *1 出典:経済産業省 商務情報政策局 情報経済課「令和6年度電子商取引に関する市場調査 公表資料」(2025年8月26日公表)
- *2 出典:公益財団法人流通経済研究所(製・配・販連携協議会WG報告/経済産業省 流通・物流政策審議会資料)「製・配・販連携およびサプライチェーン最適化に向けた課題」(2022年)/作成主体:公益財団法人流通経済研究所
- *3 出典:経済産業省・農林水産省・国土交通省「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」(2023年6月2日策定/輸送能力不足の推計値の出所は第3回 持続可能な物流の実現に向けた検討会 資料1)
- *4 出典:消費財サプライチェーン協議会・設立準備事務局/公益財団法人流通経済研究所(経済産業省 掲載資料)「商品情報連携に関する今後の検討体制について」(2026年3月)
- *5 出典:経済産業省 大臣官房調査統計グループ「商業動態統計速報 2026年5月分」(2026年6月29日公表)
- *6 出典:中小企業庁「2026年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要」(2026年4月/閣議決定2026年4月24日)
画像の出典元
- 卸売業の大型倉庫内に積み上げられた段ボール箱。在庫管理と代替品提案の対象となる商品群/Photo by Eric Prouzet on Unsplash
- 運用のイメージ/Photo by 1981 Digital on Unsplash
- 手順のイメージ/Photo by Kelly Sikkema on Unsplash
- マスタのイメージ/Photo by Gorilla ROI Data Connector on Unsplash
- チェックリストのイメージ/Photo by Jakub Żerdzicki on Unsplash