◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- BtoB ECの受注が特定の時間帯に集まる原因を、締め時間の設定と切り分けて整理します。
- 自社の受注時刻を経路別に測る方法と、見るべき4つの指標を紹介します。
- 受け方・処理・出し方の3層で、取引先に無理を求めない分散の打ち手を整理します。
目次
BtoB ECの受注の時間帯集中とは
BtoB EC(企業間電子商取引)の受注の時間帯集中とは、1営業日の中で注文が特定の時刻帯に偏って入り、その時刻に受注処理・出荷指示・問い合わせ対応が同時に立ち上がる状態です。対策の要点は締め時間の前倒しではなく、早い時刻に注文できる選択肢を増やして時刻をずらすことにあります*2。
3つの語を切り分ける(時間帯集中・出荷波動・締め時間)
国土交通省の荷主の判断基準では、物量の山谷をならす「繁閑差の平準化、納品日数の集約」は①積載効率の向上等に、1日の中の時刻をずらす「混雑時間を回避した日時指定」は②荷待ち時間の短縮に置かれています*2。物量の山谷と時刻の偏りは、制度上も別の措置として整理されているわけです。4区分の全体像は後半の制度の章で確認します。
本記事が扱う「時間帯集中」は1営業日の中の時刻の偏りであり、年・月・週単位の物量の山谷である「出荷波動」とは別の論点です。当日出荷の受付を打ち切る基準時刻そのものである「受注締め時間」とも異なります。締め時間そのものの決め方は本記事では扱わず、時刻をずらすという発想までを対象とします。
なお請求の「締め日」は月次の会計上の区切りを指し、本記事が扱う受注の締め時間(日次)とは別の概念です。混同しないよう、ここで切り分けておきます。
24時間受注と営業時間内出荷の非対称
2024年のBtoB-EC市場規模は514.4兆円(前年465.2兆円、前年比10.6%増)、EC化率は43.1%(前年比3.1ポイント増)でした*1。市場が拡大するほど、受注の入口が24時間開いている一方で、倉庫の稼働や運送会社の集荷は営業時間内にしかないという非対称が目立つようになります。
受注の入口が広がっても、出荷の出口の時間帯は変わりません。この非対称が、締め直前の駆け込みと始業直後の一斉投入という2つの山を生む土台になっています。
集中はどこで詰まるのか(影響範囲の5か所)
受注が特定の時刻に集まると、次の5か所で処理が同時に競合します。第一に受注内容の確認・与信、第二に在庫引当、第三に倉庫への出荷指示のバッチ処理です。第四に問い合わせ電話の重なり、第五に運送会社の集荷待ちが挙げられます。
与信や在庫引当は人が確認する工程であるため、時刻に張り付きやすい構造です。集中は受注入力のミスの温床にもなり、問い合わせ電話の増加を通じて後工程の時間も奪います。この5か所を、次章以降で順に扱っていきます。
自社の受注時刻を測る
ここでは、締めを動かす前に自社の受注時刻を数値で把握する方法を示します。業界共通の相場データではなく、自社データを測る手順そのものが本章の主題です。
受注日時を「時刻」で数える(経路別に分ける)
受注データの日時項目を、0〜23時、できれば30分刻みの時刻で集計します。重要なのは受注経路ごとに分けて数えることです。Web・電話・FAX・EDI・CSV取込では、ピークになる時刻が違うためです。
経路を混ぜたまま集計すると、どの打ち手を選べばよいか判断できません。とくに電話・FAX受注は担当者が受けた時刻がそのまま記録に残らないことがあるため、集計の前に記録方法を確認しておきます。
見るべき4つの指標
時刻を集計したら、次の4つの指標を確認します。第一にピーク時刻(最も件数が多い30分)、第二にピーク時間帯の構成比(1日のうち何割がその時間帯に集中しているか)です。
第三に締め前60分の構成比(駆け込みの厚み)、第四に経路別の時刻差(Webは早く、電話は遅い、といった違い)です。第一・第二の指標は人員シフトの検討材料になり、第三の指標は締めの設計に、第四の指標は経路の寄せ方にそれぞれ対応します。指標と打ち手を1対1で結びつけて確認するのが本節の役割です。
測らずに締めを動かすと何が起きるか
締めの前倒しは、取引先の発注可能な時間が短くなるという不利益として先に現れます。分布を見ないまま動かすと、削った時間にそもそも注文がなかった、あるいは主要取引先の発注時刻を直撃した、のどちらかになりかねません。
したがって、測る、ずらす、効果を見るという順番を崩さないことが大切です。着手する順番の具体は、本記事の後半でまとめて示します。
集中が起きる3つの構造
受注が特定の時刻に集まる背景には、次の3つの構造があります。取引先を一方的に責めるのではなく、それぞれが持つ誘因として整理します。
締め直前の駆け込み
当日出荷の可否が締め時刻で決まる仕組みでは、取引先は締め直前まで発注を確定させない誘因を持ちます。出荷日が読めない状態では、ぎりぎりまで様子を見るほうが合理的な判断になるためです。
この誘因をどう弱めるかは、後述する取引先の利便を落とさない対策で扱います。締め時刻そのものを何時に置くかという設計は、本記事では扱いません。
始業直後の一斉投入
前日の夜に発注内容を決め、翌朝の始業時にまとめて入力する運用が取引先側にあると、始業直後に注文の山ができます。これは自社の締め設定では動かせない、取引先の業務時間の写しです。
前日夜のうちに受け取れる導線があれば、この山を崩せます。取引先の入力時刻を変えさせるのではなく、受け取れる時間を広げる方向で対処します。
EDI・CSVのバッチ送信時刻の集中
EDI(電子データ交換。受発注データを企業間で定型フォーマットのまま自動的にやり取りする仕組み)やCSV連携は、送信・取込の時刻があらかじめ固定されています。複数の取引先の送信時刻が同じ時刻に重なると、その時刻だけ処理が跳ね上がります。
この構造は、取込のスケジュールをずらすだけで解けます。取引先に発注の仕方を変えてもらう必要がなく、システム側だけで完結する点が他の2つと違います。具体策は次章で示します。
時刻を分散させる3層の打ち手
ここからが本記事の中核です。時刻の分散は、受け方・処理・出し方の3層に分けて考えると、どの原因に対応する手なのかが明確になります。
注文が来る時刻をずらす受け方の4手(第1層)
第一に、締めを階層化する方法です。全社一律の締め時刻ではなく、配送コース別・エリア別・出荷拠点別に締め時刻をずらすと、同じ時刻に全件が寄る事態を防げます。何時に置くかという設計には踏み込まず、ここでは「一律にしない」という発想までを示します。
第二に、先付け・予約受注を受け付ける方法です。翌日以降の出荷を前提とした注文を、前日の夜や数日前に受けられるようにすると、始業直後の山に直接効きます。
第三に、定期発注・テンプレート発注を用意する方法です。毎回同じ品目を発注する取引先の入力負荷を下げ、発注のタイミングを締め依存から外せます。第四に、出荷可能日を注文前に見せる方法もあります。今出せばいつ届くかが分かれば、締め直前に張り付く必要がなくなります。
同じ時刻に来ても詰まらせない処理の4手(第2層)
第五に、与信・在庫引当を自動化する方法です。人の確認を待つ工程が時刻に張り付く原因になるため、仕組みで外す効果があります。
第六に、CSV・EDIの取込をスケジュール実行にする方法です。取引先ごとに取込時刻をずらせば、バッチ送信時刻の重なりを解けます。
第七に、電話・FAXの受注をECへ寄せる方法です。経路が変わると受注時刻の分布も変わります。第八に、出荷指示のバッチを複数回に分ける方法です。1日1回の指示だと締め後に全量が降りてしまうため、時刻を分けて複数回に降ろします。
与信・引当の自動化のような処理層の投資は、実際に選ばれている領域です。2026年版中小企業白書(資料:株式会社帝国データバンク「令和7年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」)によると、2019年以降の省力化投資でAI活用に「取り組んだ」と回答した中小企業は30.3%(n=5,645)でした*6。取り組んだと回答した事業者のうち該当部門を持つ層に限って部門別の状況を見ると、「活用している」と答えた割合はバックオフィス部門73.4%(n=1,577)、営業・販売・顧客対応部門68.2%(n=1,605)、製造・生産管理・物流部門57.2%(n=1,210)です*6。いずれも活用の有無を示す割合であり、受注業務の削減効果を示すものではありません。
出荷・引渡の時刻をずらす2手(第3層)
第九に、混雑時間を回避した日時指定にする方法です。荷主の判断基準の「②荷待ち時間の短縮」には「混雑時間を回避した日時指定等」が置かれています*2。受注の時刻そのものをずらせない場合でも、引渡の時刻はずらせる余地があります。
第十に、トラック予約受付システムを導入する方法です。同じ項目に「トラック予約受付システムの導入」があり*2、待ちを時刻で管理する手段になります。集荷時刻を複数化する方法も同じ層に含まれますが、これは運送会社との契約事項であり、自社だけで決められるものではありません。なお物量の波動、つまり年・月・週単位の平準化は判断基準①の領域であり、本記事では扱いません。
自社の数字で確かめるには、無料相談で要件を整理するのが近道です。
取引先の利便を落とさない線引き
時刻の分散は、取引先に不便を強いる形で進めると本末転倒になります。ここでは、進めてよい範囲とやってはいけない運用を整理します。
締めの前倒しは最後の手段
締めを早めることは、取引先の発注可能時間を削るという一方的な不利益になります。前の章で示した3層をすべて検討したうえで、なお足りない場合の最後の手段として位置づけるべきです。まず締めを早める、という順序は採りません。
分散は「早く出す誘因」で作る
締め直前に張り付く理由は、当日出荷の可否が分からないことにあります。注文時点で出荷日・納期が確定して見えるようになれば、早い時刻に注文を出す動機が生まれます。制限で縛るのではなく、誘因で分散させるという考え方が本節の主張です。
やってはいけない運用
避けるべき運用は3つあります。第一に、担当者の裁量で締めを延ばすことです。分布が測れなくなり、打ち手の効果を検証できなくなります。第二に、時間帯によって取引先を選別することです。特定の取引先だけ遅い受注を通す運用は、取引条件の不透明化につながります。
第三に、遅い受注を受けたうえで出荷を翌日に回し、取引先へその旨を伝えないことです。受けた時点で出荷日が変わるなら、注文の完了画面や確認メールでその場で伝える必要があります。
制度上の位置づけ
ここでは、施行日・基準・求められる措置という事実の範囲に限って、制度上の位置づけを整理します。
荷主の判断基準は「時刻」と「波動」を別項目に置いている
荷主の判断基準(物流効率化法にもとづき国土交通省が定める、荷主・物流事業者等が取り組むべき措置の基準)は、4区分で構成されます*2。①積載効率の向上等、②荷待ち時間の短縮、③荷役等時間の短縮、④実効性の確保のための事項です*2。
①には「繁閑差の平準化、納品日数の集約」「発送量等の適正化等に向けた物流・販売・調達等の関連部門の連携」が、②には「トラック予約受付システムの導入」「混雑時間を回避した日時指定」が置かれています*2。本記事が扱うのは②の側であり、①にあたる年・月・週単位の平準化は本記事の対象外です。
待ち時間の実態と、受け手側の時間の上限
2026年7月10日公表の国土交通省の調査結果によると、1運行当たりの平均拘束時間は10時間13分、うち荷待ち・荷役等時間は2時間2分でした(調査期間2025年11月25日〜12月24日、対象期間2025年4月〜8月の通常期)*3。前年度と比べ、拘束時間は1時間33分、荷待ち・荷役等時間は1時間16分、それぞれ短くなっています*3。
改善基準告示(トラック運転者の拘束時間・休息期間の上限を定める厚生労働大臣告示)は2024年4月1日以降適用され、拘束時間は1年原則3,300時間以内(例外3,400時間以内)、1か月原則284時間以内(例外310時間以内・年6か月まで)です*4。休息期間は継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らないとされています*4。遅い時刻の受注を受け続けることのコストは、自社の外側にある時間の制約として現れるわけです。
業界側も同じ論点を扱っています。全日本トラック協会は、特別積み合わせ運送における集配時の待機時間や附帯作業の発生が長時間労働の主な要因になっているとして、物流ネットワーク委員会のワーキング委員会に「待機時間・附帯業務の適正化推進検討チーム」を設置し、荷主等に向けた普及啓発資料を作成しています*7。受け手の時間は制度と業界の双方から問われている、と捉えておくのが実務的です。
自社が特定事業者に当たるかで優先度が変わる
改正後の物流効率化法では、特定荷主・特定連鎖化事業者は取扱貨物の重量9万トン以上(上位3,200社程度)、特定倉庫業者は保管量70万トン以上(上位70社程度)、特定貨物自動車運送事業者等は保有車両台数150台以上(上位790社程度)が対象とされています*5。この指定基準は2025年6月時点で施行予定として示されたもので、特定事業者に関する規定は2026年4月に施行されました*5。指定を受けた場合は中長期計画の作成と定期報告が求められるため、時刻の分散に取り組む優先度も上がります。
何から着手するか
最後に、着手する順番と、内製・外部確認の目安を整理します。
順番は「測る→1つずらす→効果を見る」
まず自社の受注時刻の分布を測ります。次に着手するのは、取引先への影響がなく自社だけで完結する第2層(処理)です。取込のスケジュール分散や出荷指示の複数回化がこれにあたります。
その後に第1層(受け方)へ進み、運送会社との調整が要る第3層(出し方)は最後に置きます。取引先を巻き込む前に、自社側で効果を確認しておくと、その後の調整がしやすくなります。
着手順の優先順5点(順位根拠:実施順序と取引先への影響の少なさ)
- CSV・EDIの取込スケジュールをずらす。自社だけで完結し、取引先への影響がありません。
- 出荷指示バッチを複数回に分ける。同じく処理層で完結し、着手のハードルが低い対策です。
- 締めを階層化する(コース・エリア別)。システム改修を要するため、次の段階に位置づけます。
- 先付け・予約受注を受け付ける。取引先の発注行動が変わるため、合意形成を伴います。
- 混雑時間を回避した日時指定やトラック予約受付システムの導入を検討します*2。運送会社との調整が要る最後の段階です。
システム改修が要るもの・要らないもの
改修が要らない対策は、取込スケジュールの変更、出荷指示バッチの分割、集計による分布の把握です。担当者がデータの取り扱いに慣れていれば、自社の情報システム部門だけで着手できます。
一方で、締めの階層化、先付け・予約受注、出荷可能日の表示、自動与信・自動引当は、受注・在庫の仕組みそのものに手を入れる対策であり、システム改修を要します。どこまでが標準機能で吸収できるかは、いまの受注・引当の作りによって変わるため、案件ごとの確認が欠かせません。自社の受注・引当の作りを外部の専門パートナーと確認すると、標準機能で吸収できる範囲を早い段階で見極められます。
まとめ:時間帯集中対策の3つの判断軸
本稿では、BtoB EC受注の時間帯集中について、原因の切り分けから分散の打ち手までを整理しました。要点を3つに集約すると次の通りです。第一に、時間帯集中は出荷波動や締め時間とは別の論点であり、締めの前倒しに飛びつく前に自社の受注時刻を測ることが出発点になります。第二に、打ち手は受け方・処理・出し方の3層に分けて考えると、どの原因に対応するかが明確になります。第三に、取引先への影響がない処理層から着手し、運送会社との調整が要る対策は最後に回す順番が現実的です。
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
よくある質問
受注の時間帯集中と、出荷の波動は同じ問題ですか。
別の問題です。時間帯集中は1営業日の中の時刻の偏りであり、出荷波動は年・月・週単位の物量の山谷を指します。国土交通省の荷主の判断基準でも、両者は別の項目として整理されています*2。
締め時間を早めれば解決しますか。
締めの前倒しは、取引先の発注可能時間を削る一方的な不利益になるため、最後の手段です。まずは受け方・処理・出し方の3層で打ち手を検討し、それでも足りない場合に限って検討します。
自社の集中の度合いは、どう測ればよいですか。
受注日時を時刻単位で、かつ受注経路別に集計します。確認する指標は、ピーク時刻、ピーク時間帯の構成比、締め前60分の構成比、経路別の時刻差の4つです。
遅い時刻の注文を受け続けると、何が問題になりますか。
荷待ち・荷役等時間2時間2分という待ち時間の側にしわ寄せが出ます*3。トラック運転者の拘束時間には、1年原則3,300時間、1か月原則284時間という上限もあります*4。
自社だけで着手できる対策はありますか。
あります。CSV・EDI取込のスケジュール分散と、出荷指示バッチの複数回化です。いずれも取引先への影響がなく、最初に着手できる対策です。
- *1 出典:経済産業省 商務情報政策局 情報経済課「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2025年8月26日公表)
- *2 出典:国土交通省「「物流効率化法」理解促進ポータルサイト|荷主(第一種・第二種)の判断基準等」(令和8年3月30日 解説書・Q&A更新)
- *3 出典:国土交通省「トラックドライバーの1運行当たりの平均拘束時間に関する調査結果の公表」(令和8年7月10日公表)
- *4 出典:厚生労働省「はたらきかたススメ|トラック運転者(改善基準告示)」(2024年4月1日以降適用)
- *5 出典:経済産業省「改正物流効率化法の概要について」(2025年6月6日)
- *6 出典:中小企業庁 調査室「2026年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要」(2026年4月24日閣議決定、資料:株式会社帝国データバンク「令和7年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」)
- *7 出典:公益社団法人全日本トラック協会「「2024年問題 待機時間・附帯業務の適正化推進に係るリーフレット」について」
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