◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 通販の賞味期限管理は、在庫管理ではなく得意先との納品条件を出荷判定に落とし込む設計の問題です。
- 消費者庁のガイドラインは、返品在庫の再出荷や期限の延長・貼替えについて明確な考え方を示しています。
- 農林水産省は納品期限の緩和に取り組む事業者数を公表しており、得意先条件の見直しが進んでいます。
目次
通販の賞味期限管理とは(出荷との関係)
通販の賞味期限管理とは、複数の期限が混在する在庫を期限ごとに識別し、受注から出荷のどの時点でどの期限を割り当てるかを得意先条件に合わせて決めておく業務です。2024年度の食品卸売業では、期限切れなどによる食品ロスが9万トン発生しています*1。
「賞味期限を管理していない」という卸売業・通販事業者はほとんどいません。しかし、どのデータ単位で期限を持ち、出荷のどの瞬間に判定し、得意先ごとの違いをどう吸収するかまで決まっている会社は多くないでしょう。この3点が決まっていないと、現場の目視確認に頼る運用から抜け出せません。
賞味期限管理が「出荷条件の管理」である理由
賞味期限は商品そのものの属性であると同時に、得意先と交わす納品条件でもあります。得意先は「あと何日残っている商品を受け取るか」を取引条件として求めるため、期限管理は在庫の保管作業ではなく、受注・出荷の判定ルールとして設計する必要があります。
商品コード単位では期限を持てない
同じ商品コードの在庫でも、入荷のタイミングが異なれば期限も異なります。1つの商品コードに複数の期限が同時に存在する状態が通常であり、期限を商品マスタの属性として1つだけ持たせる設計では実態を表せません。
最初に決める3つのこと
設計に着手する前に、次の3点を決めておく必要があります。第一に期限を持つデータ単位、第二に出荷順のルール、第三に得意先別の残日数条件です。この3点は次章以降で順に扱います。
賞味期限と消費期限は何が違うか
食品表示基準では、消費期限と賞味期限が別の号で定義されています。この違いを理解しないまま出荷判定を設計すると、日付の扱いを誤る原因になります。
食品表示基準の定義
消費期限は、食品表示基準第2条第1項第7号で定義されています。条文は「定められた方法により保存した場合において、腐敗、変敗その他の品質の劣化に伴い安全性を欠くこととなるおそれがないと認められる期限を示す年月日」としています*4。賞味期限は「定められた方法により保存した場合において、期待される全ての品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日」です(同第8号)*4。
消費期限は微生物試験などの安全性に係る試験・検査の結果を優先し、賞味期限は理化学試験や官能検査など品質の試験・検査の結果を優先して設定されます*3。
賞味期限は「過ぎたら食べられない」ではない
賞味期限の定義には続きがあり、「当該期限を超えた場合であっても、これらの品質が保持されていることがあるものとする」とされています*4。この記述は期限設定の性質を説明したものであり、読者に期限超過後の消費を促す趣旨ではありません。出荷判定の基準として用いるべき値は、あくまで表示された期限そのものです。
期限は安全係数を掛けて設定されている
期限は、客観的な項目・基準から得られた期限に対し、食品の特性に応じて1未満の係数(安全係数)を掛ける、または特定の日数を差し引くなどの方法で設定されます*3。安全係数は1に近づけることが望ましいとされ、レトルトパウチ食品や缶詰などでは考慮不要な場合もあります*3。表示責任者は、期限設定の根拠資料を整備・保管する努力義務を負います*3。
年月表示という選択肢
賞味期限が3か月を超える場合、期限の表示は年月までで足りるとされています*3。年月をもって表示する場合、期限は月末までと解されます。品質保持期間が100日の食品を4月10日に製造すると期限日は7月18日ですが、表示は「7月」ではなく「6月」となります*3。この丸めのルールは、後述する出荷判定の粒度に直結します。
期限管理を誤ると何が起きるか
期限管理の設計が甘いと、廃棄コストと出荷トラブルの両方が発生します。ここでは一次情報で確認できる規模感を示します。
廃棄コストとして残る食品ロス
2024年度の事業系食品ロス量は237万トン(前年度比プラス6万トン)でした*1。業種別では食品製造業が110万トン、食品卸売業が9万トン、食品小売業が48万トン、外食産業が70万トンです*1。2000年度比では57パーセント削減となっており、政府は2030年度までに60パーセント削減を目標としています*1。
逆転出荷による受領拒否
前回の納品より期限の古い商品を後から届ける「逆転出荷」は、得意先の受領拒否や返品の原因になります。出荷順のルールが決まっていない現場では、担当者の目視確認だけが最後の砦になり、繁忙期ほど見落としが起きやすくなります。
3分の1ルールが生む行き場のない在庫
サプライチェーンには、賞味期間の3分の1以内で小売店舗に納品する「3分の1ルール」という商慣習があります*2。この慣行のもとでは、3分の1以内に納品できなかった商品は、賞味期限まで日数を残していても行き場がなくなり、廃棄となる可能性があります*2。
EC上の在庫数と「実際に出せる在庫」の乖離
ECサイトの在庫数は総数を表示していても、得意先の残日数条件を満たさないロットは実際には出荷できません。この乖離が受注後のキャンセルや欠品連絡の原因になります。
賞味期限を管理して出荷するまでの5ステップ
ここからは、期限管理を出荷業務へ落とし込む手順を5つに分けて示します。番号付きの手順であり、上から順に検討することを想定しています。
ステップ1:期限を持つデータ単位を決める
最初に決めるべきは、期限を商品ではなくロット・入荷単位で持つという前提です。同じ商品コードでも入荷ごとに期限が異なるため、在庫はロット単位に分けて管理する必要があります。
ここでいう「ロット」は製造ロット、つまり期限を識別する単位です。発注時の最小発注単位を指す発注ロットとは意味が異なるため、社内で語を混同しないよう注意が必要です。発注単位の設計は別記事で扱います。
ステップ2:出荷順のルールを決める
出荷順は、入荷順に出す先入先出と、期限の古い順に出す方式のどちらかで決めます。この2つは常に一致するとは限りません。入荷が遅れた商品の方が期限は古い、という逆転が起こり得るためです。
賞味期限が年月までしか表示されない商品は、日単位で古い順に並べることができません。この場合は、同月内であれば入荷順で出すという補助ルールを添えておく必要があります。
ステップ3:得意先別の納品期限を一覧化する
得意先ごとに求める残日数の条件は異なります。商品区分・必要残日数・判定基準日・例外の扱いを一覧化した条件表を作ることが、次のステップの前提になるでしょう。条件表の作り方は次章で詳しく扱います。
ステップ4:判定を受注・引当時へ前倒しする
期限条件の判定を出荷作業の直前で行うと、現場で欠品が発覚してから代替対応を検討することになり、対応が後手に回ります。受注を受けた時点、つまり在庫を引き当てる瞬間に期限条件を照合しておけば、出荷前の手戻りを防げます。
ステップ5:逆転出荷と期限切れ出荷を止める
最後に、システム上で逆転出荷や期限切れ出荷を止める仕組みを組み込みます。すべてを一律禁止にすると現場が動けなくなる場面もあるため、通常は警告にとどめ、例外的に出荷する場合のみ承認を要する経路を分けて設計するのが現実的です。
現状のやり方をこのまま続けた場合の廃棄コストと出荷トラブルを、無料相談で自社の数字に置き換えて確認することができます。
得意先別の「納品期限」をどう決めるか
得意先が求める納品期限は、社内の一存では決められません。まずは業界で広く知られている商慣習の実態を押さえたうえで、自社の条件表を作る流れになります。
3分の1ルールとは
3分の1ルールは、賞味期間の3分の1以内で小売店舗に納品するという商慣習です*2。このルールが厳格に運用されるほど、納品できなかった在庫の廃棄リスクが高まります*2。
緩和の動き
農林水産省によると、納品期限を緩和(または予定)している食品小売事業者は、令和7年10月時点で377事業者となり、令和6年度から38事業者増えました*2。あわせて、賞味期限表示の大括り化に取り組む食品製造事業者は365事業者、賞味期限の延長に取り組む食品製造事業者は393事業者と公表されています*2。いずれも取り組む事業者数が増えている状況であり、緩和が業界標準になったと断定できる段階ではありません。
自社の条件表をどう作るか
条件表には、得意先・商品区分・必要残日数・判定基準日・例外の扱いを列として持たせます。具体的な日数の水準を定める公的な基準は存在しないため、各得意先との取り決めをそのまま条件表へ写す作業から始めることになります。
条件表を作るときに確認する優先順4点(順位根拠:着手順序の依存関係)
- 得意先ごとの必要残日数を、既存の受発注のやり取り(発注書・仕様書)から洗い出します。
- 残日数を「日数指定」「賞味期間に対する割合指定」のどちらで求められているかを区別します。
- 年月表示の商品については、月末までの丸めを踏まえた判定基準日を決めます。
- 例外(緊急出荷・得意先了承済みの短納期)の扱いと承認経路を条件表に明記します。
| 条件の型 | 判定のしやすさ | 運用上の注意 |
|---|---|---|
| 残日数を日数で指定 | 日付同士の引き算で判定でき、システム化しやすい形式です。 | 年月表示の商品には日単位の起点が無いため、そのままでは適用できません。 |
| 賞味期間に対する割合で指定 | 3分の1ルールに準じた設計と相性がよい形式です。 | 商品ごとの賞味期間が違うため、商品マスタに賞味期間の値を保持しておく必要があります。 |
| 年月表示商品の扱い | 月末丸めを起点にすれば、他の型と同じ考え方で判定できます。 | 丸めの基準(表示月の月末)を得意先と揃えておかないと、認識の食い違いが起きます。 |
期限データをどう持つか(表示・コード・粒度)
期限管理を仕組み化するには、システム上でどの識別子にどの意味を持たせるかを決める必要があります。ここでは国際的な標準化団体であるGS1が定めるアプリケーション識別子を参考に整理します。
賞味期限と消費期限はデータ上も分ける
GS1のアプリケーション識別子(AI、製品コードに付随する情報の種類を示す番号)では、期限の種類が区別されています。AI(15)は品質保持期限日(賞味期限日)、AI(17)は有効期限日(消費期限日)です*5。AI(15)は「使用は可能な場合もある」期日と説明されています*5。一方のAI(17)は「これ以降の使用・消費は直接または間接的なリスクを生じる可能性がある期日」です*5。両者は性質が異なります。データ設計でこの2つを1つの項目にまとめてしまうと、判定ロジックが賞味期限・消費期限のどちらの食品にも同じ扱いをしてしまう恐れがあります。
ロットと期限は別の情報として持つ
AI(10)はバッチ・ロット番号、AI(11)は製造年月日を表す識別子です*5。ロット番号と期限日は別々の項目であり、両方を紐づけて初めて「どのロットがいつまでの期限か」を追跡できます。
出荷梱包単位で追跡する
AI(00)は出荷梱包シリアル番号で、出荷した梱包を個体として識別する識別子です*5。ロット単位の期限管理に加えて出荷梱包単位の追跡を組み合わせると、逆転出荷が発生した際の原因追跡がしやすくなります。
年月表示の在庫をシステムでどう扱うか
年月表示の商品は、表示された月の月末に丸めて期限日を保持し、丸めた事実を記録として残す設計が実務的です。丸めの根拠が残っていれば、得意先から問い合わせを受けた際にも説明ができます。
| 識別子 | 意味 | 書式 |
|---|---|---|
| AI(15) | 品質保持期限日(賞味期限日)。 | n2+n6(YYMMDD) |
| AI(17) | 有効期限日(消費期限日)。 | n2+n6(YYMMDD) |
| AI(10) | バッチ・ロット番号。 | n2+an…20 |
| AI(11) | 製造年月日。 | n2+n6(YYMMDD) |
出典:GS1 Japan(一般財団法人流通システム開発センター)「GS1 アプリケーション識別子(AI)リスト」(2025年10月)*5
返品された在庫は再出荷してよいか
返品在庫の扱いは、消費者庁のガイドラインQ&Aで具体的に示されています。ここは判断に迷いやすい論点のため、原文の考え方に沿って整理します。
保存方法が定められた食品の再出荷は難しい
消費者庁のガイドラインは、「冷凍や冷蔵保存品等の保存方法が定められている食品は、一度出荷した後返品された場合、定められた方法により保存されていたかを確認することは通常困難であり、再出荷することは難しいと考えます」としています*3。
例外が成り立つ条件
ただし、出荷後も定められた方法で保存されていたことが確認でき、かつその保存方法であれば品質劣化がほとんど生じない場合には、再出荷が可能とされています*3。この例外を成立させるには、返品時点で保存条件を客観的に確認できる記録が必要です。
期限の延長は認められない
返品された商品に対し、出荷時に付した期限を延長して付すことは、科学的・合理的根拠がないため認められないと明記されています*3。
陳列後の期限貼替えも慎むべき行為
ガイドラインは、「科学的・合理的な根拠をもって設定した期限より短い期限を商品に表示し、これを陳列した後に、表示ラベルを貼り替えて期限を延長すること」は、当初設定していた期限の範囲内であっても慎むべきとしています*3。返品在庫の再出荷可否や期限の扱いは自社の保存条件と設定根拠に依るため、個別の判断は表示責任者である製造者等の基準に従う必要があります。
BtoB通販の受発注へ落とし込む
ここまでの整理を、BtoB通販の受発注の仕組みへどう反映するかを最後にまとめます。
EC画面の在庫数を「出せる在庫」に揃える
EC画面に表示する在庫数は、期限条件を満たすロットだけを引当対象とした数値に揃える必要があります。総在庫数をそのまま表示すると、受注後に出荷できない事態が発生しやすくなります。
出荷可能日・出荷案内で期限情報をどこまで伝えるか
得意先へ伝える出荷可能日や出荷案内に、期限に関する情報をどこまで含めるかも設計事項です。得意先が受入時に確認する内容と、社内で保持する情報の粒度を揃えておくと、問い合わせ対応の負担を抑えられます。
一度に全商品をやらない
条件表の整備と引当ロジックの見直しを全商品で同時に進めると、検証範囲が広がり過ぎて運用が止まりかねません。期限管理が最も厳しい商品群で先行して条件表を確定させ、そのやり方を他の商品群へ横展開する進め方が現実的です。
見直しのトリガー
条件表は一度作って終わりではありません。得意先条件の改定、商品の期限設定変更、商慣習の見直しがあった際には、条件表を更新する運用ルールをあらかじめ決めておく必要があります。
このように、条件表の作成自体は自社で進められても、EC上の在庫表示・引当ロジック・WMS連携まで一気通貫でつなぐには、受発注システム側の要件整理が欠かせません。得意先ごとに異なる納品期限は日本の商慣習に固有の要件であり、汎用パッケージの標準機能だけでは対応しきれない場面もあります。
まとめ:賞味期限管理を出荷ルールへ落とし込む3つの判断軸
本稿では、通販の賞味期限管理を出荷業務へ落とし込む考え方を整理しました。要点を3つに集約すると次の通りです。第一に、期限は商品単位ではなくロット単位で持つ必要があります。第二に、出荷順の判定は出荷直前ではなく受注・引当時点に前倒しするほうが手戻りを防げるでしょう。第三に、得意先ごとの納品期限は条件表として一覧化し、年月表示の丸めルールを含めて明文化しておく必要があります。
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
よくある質問
先入先出と期限の古い順は、どちらで出荷すべきですか。
どちらか一方に固定するのではなく、入荷順と期限順が一致しない場合があることを前提に決める必要があります。年月表示の商品は日単位で古い順に並べられないため、同月内は入荷順で出すといった補助ルールを添えて運用します。
賞味期限が年月までしか表示されていない商品は、残日数をどう数えますか。
表示された月の月末を期限日とみなして数えます。消費者庁のガイドラインでは、年月をもって表示する場合の期限は月末までと解されるとされています*3。
得意先から求められる納品期限は、何日と決めればよいですか。
具体的な日数を一律に定める公的な基準はありません。3分の1ルールなどの商慣習を踏まえつつ、得意先ごとの取り決めを条件表に反映して決めることになります*2。
返品された在庫は、期限を延ばして出荷できますか。
できません。返品された商品に出荷時の期限を延長して付すことは、科学的・合理的根拠がないため認められないとされています*3。陳列後の期限貼替えによる延長も慎むべき行為とされています*3。
賞味期限の管理は商品マスタで足りますか。
足りません。商品コードには複数の期限が同時に存在するため、期限はロット・入荷単位で持つ必要があります。商品マスタには賞味期間などの基礎情報を持たせ、期限そのものはロット単位のデータで管理します。
- *1 出典:農林水産省「事業系食品ロス量(2024年度推計値)を公表」(令和8年6月30日)https://www.maff.go.jp/j/press/shokuhin/recycle/260630.html
- *2 出典:農林水産省「商慣習検討」(令和7年10月30日公表)https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/161227_3.html
- *3 出典:消費者庁食品表示課「食品期限表示の設定のためのガイドライン」(令和7年3月)https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_250328_1029.pdf
- *4 出典:消費者庁食品表示課「資料3-5 期限表示(消費期限・賞味期限)について」(令和6年5月)https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_education/meeting_materials/assets/consumer_education_cms201_20240508_11.pdf
- *5 出典:GS1 Japan(一般財団法人流通システム開発センター)「GS1 アプリケーション識別子(AI)リスト」(2025年10月)https://www.gs1jp.org/standard/identify/ai/GS1_Application_Identifiers.pdf
画像の出典元
- 通販のイメージ/Photo by Vitaly Gariev on Unsplash
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- 出荷のイメージ/Photo by Jimmy Liu on Unsplash
- 得意先のイメージ/Photo by Vitaly Gariev on Unsplash
- 納品のイメージ/Photo by Rohit Choudhari on Unsplash