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産直ECの仕組み|生産者直送の商流・売主・表示の基本

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 産直ECの仕組みは物流ではなく商流で決まり、誰が売主になるかで負う義務が変わります。
  • 産直ECにはモール型・買取型・自社型があり、在庫リスクと集客責任の置き方が異なります。
  • 生産者が直接発送する場合も、表示・記録の義務や営業許可・届出の要否を確認する必要があります。
配送管理:段ボール箱を積み重ねた流通センター
▽ 写真の出典元

産直ECの仕組みとは — 商流と物流を分けて捉える

産直ECとは、生産者と買い手がインターネット上の場を介して直接売買契約を結び、商品が卸売市場を経由せず生産者から直送される仕組みです。集荷・価格形成・代金決済・情報伝達という中間流通の機能は消えず、プラットフォームと生産者が分担して担います。

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卸売市場が果たす4つの機能は、産直ECでも担い手を変えて存続する

商流と物流は別の論点である

商流とは、誰が売主で誰が買主かという契約上の流れです。物流とは、商品が実際にどの経路で運ばれるかという配送上の流れを指します。産直ECの核心は物流ではなく商流の設計にあり、直送という配送形態は結果にすぎません。

卸売市場を経由する流通と産直の位置関係

農林水産省が整理する生鮮食料品等の流通経路には、卸売市場を経由する経路のほかに2つの経路が示されています*1。1つは「産地直接取引など」、もう1つは「直売所、青空市場、宅配など」です。産直ECは、このうち市場を経由しない経路に位置づけられます。

「中間業者がいない」の正確な意味

産直ECで省かれるのは卸売市場という経由地であり、集荷・分荷、価格形成、代金決済、情報受発信という4つの機能そのものは消えません*1。これらの機能を、プラットフォーム運営者と生産者自身が分担して引き受けているのが実態です。手数料や送料、梱包・出荷の手間という形でコストの所在が変わっただけと捉えるほうが、実務の設計には役立ちます。

数字で見る産直ECの位置

物販ECで市場規模が最も大きい分野は食品・飲料・酒類

経済産業省の令和6年度電子商取引に関する市場調査によると、2024年の国内BtoC-EC市場規模は26.1兆円でした*2。この26.1兆円は物販系・サービス系・デジタル系を合算した値であり、このうち物販系分野のEC化率は9.8%です*2。物販系分野で市場規模が最も大きいのは「食品、飲料、酒類」で、3兆1,163億円です*2

同調査でEC化率が高い分野として挙げられているのは「書籍、映像・音楽ソフト」「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」などです*2。同調査は物販系の分類ごとにEC化率を掲載しており、食品分野のEC化率はこれらの分野を大きく下回る水準にとどまります*2。市場規模が大きいことと、EC化率が高いことは別の話として扱う必要があります。

BtoB-ECはすでに4割超が電子化

同調査は、2024年のBtoB-EC市場規模を514.4兆円、EC化率を43.1%としています*2。事業者間の商取引は、消費者向け取引よりも高い水準で電子化が進んでいます。飲食店や小売バイヤー向けの産直ECを検討する場合、この水準が業界の土台になります。

農産物直売所の年間販売金額は1兆1,344億円

農林水産省の6次産業化総合調査(令和6年度)によると、農産物直売所の年間販売金額は1,134,381百万円でした*3。農業生産関連事業全体では2,224,434百万円でした*3。億円に換算すると、それぞれ1兆1,344億円、2兆2,244億円です。

産直ECの市場規模そのものを名指しした統計は存在しません。経済産業省の調査と農林水産省の調査は対象・調査方法が異なるため、単純に比較・合算はできません。本記事ではこの直売所の数値を、市場外流通の規模感を示す目安として扱います。

卸売市場経由率は青果50.5%・水産物43.2%

農林水産省「卸売市場をめぐる情勢について」(令和7年9月)は、卸売市場経由率を青果で50.5%、水産物で43.2%としています。いずれも令和4年度・重量ベースの推計値です*1。国産青果物に限ると72.4%まで上がります*1

裏を返せば、青果の半分弱、水産物の5割台後半は卸売市場を経由せずに流通していることになります。産直ECは、この市場外流通の一部を担う存在といえます。

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卸売市場をめぐる情勢では、市場を経由しない経路として「産地直接取引」等が併記されている

産直ECの3類型 — モール型・買取型・自社型

産直ECは、誰が売主になるかによって大きく3つの型に分かれます。型が違えば、負う法的義務も在庫リスクの所在も変わります。

モール型:売主は生産者、場を提供するのがプラットフォーム

モール型では生産者が売主となり、プラットフォームは取引の場と決済機能を提供します。手数料は販売額に対する料率で発生し、在庫リスクと売主としての責任は生産者が抱えます。

買取型:プラットフォームが仕入れて売る

買取型では、プラットフォームが生産者から商品を買い取ったうえで販売します。仕入れた時点で在庫リスクと売主としての責任がプラットフォーム側に移る点が、モール型との大きな違いです。

自社型:産地・農業法人・卸が自らECを構築する

自社型は、産地や農業法人、食品卸が自らECサイトを構築し、売主として直接販売する形態です。集客もシステムの運用も、すべて自社の役割になります。

3類型の選び方は集客力ではなく責任の置き方で決まる

3つの型を分けるのは、集客力の差ではありません。在庫リスクと売主責任をどこに置くかという判断です。次のリストは、その判断で確認する3つの軸を重要度の高い順にまとめたものです。

産直ECの類型を選ぶときに確認する3つの軸(順位根拠:契約責任の重さ)

  1. 売主は誰か——モール型は生産者、買取型と自社型はプラットフォームまたは自社が売主となり、特定商取引法上の広告表示義務を負う主体が変わります。
  2. 在庫リスクの所在——モール型は生産者が抱え、買取型は仕入れた時点でプラットフォームに移り、自社型は自社が最初から抱えます。
  3. 集客責任の所在——モール型・買取型はプラットフォームが集客を担い、自社型は自社の集客施策が販売量を左右します。

類型 売主 在庫リスク 手数料の発生点 主に適用される法令 集客責任
モール型 生産者 生産者 販売額に対する料率 特定商取引法(生産者が販売業者)。
個人の買い手が対象なら、取引の場の運営者に努力義務を課す取引デジタルプラットフォーム消費者保護法も適用されます。
プラットフォーム
買取型 プラットフォーム プラットフォーム 仕入価格と販売価格の差 特定商取引法(プラットフォームが販売業者) プラットフォーム
自社型 自社 自社 自社の構築・運用費 特定商取引法(自社が販売業者)。
取引デジタルプラットフォーム消費者保護法上は、自社サイトでの自社販売として「販売業者等」から除外されます。
自社

誰が売主かで変わる法的な義務

3つの型のどれを選ぶかは、負う法的義務の違いに直結します。ここでは特定商取引法と、取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律(取引DPF消費者保護法。オンラインの取引の場を提供する事業者に努力義務や開示義務を課す法律)を、条文に沿って整理します。

特定商取引法第11条が求める通信販売の広告表示

通信販売をする場合、広告に表示すべき事項が定められています*4。具体的には、商品の販売価格(送料が価格に含まれないときは送料も)、代金の支払時期・方法、商品の引渡時期です。

申込みの期間に関する定めがあるときはその旨と内容、申込みの撤回または解除に関する事項なども含まれます*4。この義務を負うのは「販売業者」、つまり売主です。

取引DPF消費者保護法第3条が定める3つの努力義務

取引デジタルプラットフォーム提供者には3つの努力義務が定められています*5。1つ目は、消費者が販売業者等と円滑に連絡できるようにする措置です。2つ目は、表示に関する苦情の申出があったときの事情調査等の措置が挙げられます。

3つ目は、販売業者等に対して所在等の特定に資する情報の提供を求めることです*5

同条第2項では、講じた措置の概要と実施状況を消費者へ開示することも定めています*5

第5条:販売業者等情報の開示請求

消費者は、内閣府令で定める額を超える金銭債権を行使するために必要な場合に限り、プラットフォーム提供者へ販売業者等の氏名・住所等の開示を請求できます*5。信用毀損など不正の目的による請求は除かれます*5

BtoBの産直ECは取引DPF消費者保護法の対象外である

同法が定める「消費者」は、個人(商業、工業、金融業その他の事業を行う場合におけるものを除く)に限られます*5。飲食店や小売バイヤーが仕入れとして利用する産直ECには、この法律による保護が及びません。取引の連絡手段の確保や、販売業者等情報の開示請求といった仕組みが使えないため、契約条件や与信、返品の取り決めを自社で設計しておく必要があります。

この設計を欠いたまま取引を始めると、代金回収や返品条件をめぐるトラブルが起きた際に、判断の根拠となる合意文書がなく交渉が長引く事態を招きかねません。

自社型は「取引DPF提供者」ではない

同法は「販売業者等」の定義から、自らが提供する取引デジタルプラットフォームを利用して自ら商品を販売する場合を除いています*5。自社型の産直ECはこの除外に当たり、取引DPF消費者保護法上の努力義務の対象ではなく、特定商取引法上の販売業者そのものとして義務を負う立場になります。

自社の数字で確かめるには、無料相談で要件を整理するのが近道です。

産地・鮮度を成立させる表示と記録

受注のイメージ
▽ 写真の出典元

産地や鮮度をうたう表示は、宣伝文句ではなく食品表示基準(食品の表示方法を定める内閣府令)と米トレーサビリティ法が求める義務です。

食品表示基準第18条:一般用生鮮食品の名称・原産地

食品関連事業者が一般用生鮮食品(消費者向けに販売する生鮮食品)を販売する際は、名称と原産地の表示が必要です。農産物の原産地は、国産品なら都道府県名、輸入品なら原産国名を表示します*6

第24条・第27条:業務用生鮮食品は帳票への表示でもよい

業務用生鮮食品(飲食店や小売など事業者向けに取引される生鮮食品)を販売する際も、名称・原産地などの表示義務があります*6。別表に掲げる一部の事項を除き、表示先は容器包装に限られず、送り状や納品書等、規格書等でもよいとされています*6。つまりBtoBの産直では、この表示義務は帳票の設計そのものに直結します。

米トレーサビリティ法:取引記録と産地情報の伝達

米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律(米トレーサビリティ法)は、米穀事業者に取引の記録作成を義務づけています(第3条)*7。指定米穀等を他の米穀事業者に譲渡する際は、包装・容器・送り状への表示その他の方法で産地情報を伝達しなければなりません(第4条)*7。記録の保存も義務づけられ(第6条)、一般消費者への販売時にも産地情報の伝達が求められます(第8条)*7

食品衛生法:許可と届出の要否

食品を販売する営業の多くは、都道府県知事の許可(第55条)または届出(第57条)の対象です*8。生産者が何をどのように販売するかによって、許可と届出のどちらが必要かが変わります。産直ECへの出品や自社構築に着手する前に、この確認が欠かせません。

受注から出荷・精算まで — 直送オペレーションの流れ

産直ECの標準的な運用は、次の5段階で進みます。

図
受注から精算までは5段階で進む

買い手の注文をプラットフォームが受け付け、代金決済を代行して回収します。続いて受注情報が生産者へ通知され、ここで初めて生産者側の出荷作業が始まる流れです。

生産者は梱包・発送のうえ、送り状番号をプラットフォームへ戻します。この情報が戻らないと、買い手への配送状況の案内が止まってしまうため注意が必要です。

天候や生育状況で数量が揃わない場合や、複数の生産者にまたがる注文を分割配送する場合には、送料の按分や同梱可否の判断が必要になります。最後にプラットフォームが手数料を差し引いたうえで生産者へ支払います。この支払サイト(入金までの期間)は、生産者の資金繰りに直結する要素です。

BtoB産直ECを自社構築するときの要件

産地や卸売業者が自らBtoB向けの産直ECを構築する場合、次の5点を整備する必要があります。

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自社構築で整備する5つの要件
  1. 取引先別価格・掛率——バイヤーごとに単価が異なる前提で価格マスタを持てるかを確認します。
  2. 掛売・与信・請求——取引DPF消費者保護法の保護が及ばない以上、与信の判断基準を自社で設計する必要があります。
  3. 直送の伝票名義——納品書・請求書を誰の名前で発行するかを取り決めます。
  4. 温度帯・リードタイム・出荷可能日の管理——生鮮品特有の制約を受発注の仕組みに反映します。
  5. 産地マスタと帳票出力——食品表示基準が求める名称・原産地の表示を、送り状や納品書に自動反映できる設計にします*6

これらを内製で整備するには、EC受発注システムの要件定義、価格・与信ロジックの設計、食品表示基準への対応という複数領域の知識が求められます。内製で全工程を担う場合は、要件定義から運用開始までを自社の担当者が通しで管理することになります。

専門的な知見を持つ人材の確保が難しければ、要件定義の段階から外部パートナーに相談するという選択肢もあるでしょう。BtoB受発注システムの構築実績を持つ相手であれば、取引先別価格や与信ロジックの設計を分担できます。

まとめ|産直ECの仕組みを見極める3つの判断軸

本稿では、産直ECの仕組みを「誰が売主か」という商流の視点から整理しました。要点を3つに集約すると次の通りです。第一に、売主はモール型なら生産者、買取型と自社型ならプラットフォームまたは自社であり、負う法的義務が変わります。第二に、中間流通が担う集荷・価格形成・代金決済・情報伝達という機能は消えず、手数料・送料・工数という形で誰かが引き継いでいます。第三に、産地や鮮度の表示、営業許可・届出は帳票とマスタの設計問題として扱う必要があるでしょう。この3点を判断軸にすれば、モール出品と自社構築のどちらを選ぶべきかを検討しやすくなります。


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よくある質問

産直ECでトラブルが起きたとき、責任を負うのは生産者とプラットフォームのどちらですか。

通信販売の広告表示義務など特定商取引法上の責任は、その取引の「販売業者」が負います*4。モール型では売主である生産者が、買取型では売主であるプラットフォームが該当します。まず自社の型でどちらが売主かを確認することが起点になります。

飲食店向けの産直ECにも取引DPF消費者保護法は適用されますか。

適用されません。同法が定める「消費者」は個人(事業を行う場合を除く)に限られるため*5、飲食店や小売バイヤーが事業として仕入れる取引には保護が及びません。契約条件や与信、返品条件を自社で取り決めておく必要があります。

生産者が自分で食品を発送する場合、営業許可や届出は必要ですか。

必要になる場合があります。食品を販売する営業の多くは、都道府県知事の許可(食品衛生法第55条)または届出(同法第57条)の対象です*8。何をどのように販売するかによって許可・届出のどちらが必要かが変わるため、出品前に確認してください。

産地はどこまで表示する義務がありますか。

一般用生鮮食品では、名称と原産地(国産品は都道府県名、輸入品は原産国名)の表示が必要です*6。業務用生鮮食品でも同様の表示義務があり、容器包装に限らず送り状や納品書等での表示も認められています*6。米については別途、米トレーサビリティ法が産地情報の伝達を義務づけています*7

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

  1. *1 出典:農林水産省 大臣官房 新事業・食品産業部 食品流通課「卸売市場をめぐる情勢について」(令和7年9月)
  2. *2 出典:経済産業省 商務情報政策局 情報経済課「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2025年8月26日公表)
  3. *3 出典:農林水産省統計部「6次産業化総合調査(6次産業化の動向)」(令和6年度)
  4. *4 出典:e-Gov法令検索「特定商取引に関する法律」第11条
  5. *5 出典:e-Gov法令検索「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律
  6. *6 出典:e-Gov法令検索「食品表示基準
  7. *7 出典:e-Gov法令検索「米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律
  8. *8 出典:e-Gov法令検索「食品衛生法

画像の出典元

  1. 配送管理:段ボール箱を積み重ねた流通センター/Photo by Jacques Dillies on Unsplash
  2. 受注のイメージ/Photo by Lucas on Unsplash

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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