◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- PB(プライベートブランド)商品を外部委託で作る際、管理対象を「商品情報・取引条件・生産/在庫・法令表示」の4領域で整理します。
- 2026年1月1日施行の取適法(旧・下請法)で、委託者に新たな義務と禁止行為が追加されます。
- JANコードの付番と食品表示の責任は、PBを持つ卸売事業者側に移る点を、システムの管理項目に落とし込んで解説します。
目次
卸売業の「PB商品 受託生産 管理」とは
卸売業のPB商品受託生産管理とは、自社ブランド(PB)の商品を外部の製造事業者へ委託して生産する際の管理業務です。管理対象は商品情報・取引条件・生産/在庫・法令表示の4領域で、委託者としての法的責任とあわせて一元的に統制します。
管理すべき対象は4つに整理できます。第一に商品情報(GTIN・入数・表示内容)、第二に取引条件(単価・支払期日・支給区分)です。第三に生産/在庫(発注数量・リードタイム・所有区分)、第四に法令表示(食品表示・製造所情報)です。この4領域を別々の台帳で管理すると、委託先が増えるほど整合性が崩れやすくなる点が課題です。
役割分担も明確にしておく必要があります。委託側(卸売業)はブランドを保有し、商品企画・価格決定・法令上の表示責任を負います。受託側(製造事業者)は仕様に基づいた製造と納期遵守を担いますが、商品情報や取引条件の最終的な管理責任は委託側から動きません。この非対称性を前提にシステムを設計することが、後述する取適法対応にも直結します。
管理すべきは「商品情報・取引条件・生産/在庫・法令表示」の4領域
4領域はそれぞれ独立した業務ではなく、商品マスタを軸に連動します。たとえば取引条件(有償支給か無償支給か)は原価計算だけでなく、後述する取適法上の禁止行為の判定にも影響します。領域をまたいだ整合性の確保が、管理設計の出発点です。
委託側(卸)と受託側(製造)の役割分担
委託側は発注内容の明示、代金の支払期日設定、書類の保存という義務を負います*2。受託側は製造工程の管理と納期対応が中心ですが、委託先ごとに条件が異なると、委託側の管理台帳が煩雑になりがちです。次章では、この構造が2026年からどう変わるのかを見ていきます。
なぜ今、管理の作り直しが必要か
卸売業のPB受託生産では、電子化された取引の広がりと法改正という2つの変化が同時に起きています。どちらも管理の作り直しを迫る要因です。
BtoB-EC市場は514.4兆円・EC化率43.1%へ拡大
経済産業省の令和6年度電子商取引に関する市場調査によれば、2024年の日本国内BtoB-EC市場規模は514.4兆円です*1。前年(465.2兆円)比では10.6%増となりました*1。EC化率も43.1%(前年比3.1ポイント増)に達し、受発注の電子化が前提の取引形態になりつつあります*1。Excelや紙の個別台帳では、この規模の電子取引を正確に追跡し続けることが難しくなります。
2026年1月1日、下請法が「取適法」へ改正
もう一つの変化が法改正です。下請代金支払遅延等防止法(下請法)は、2026年1月1日に法律名が変わります*2。新名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(通称:取適法〈とりてきほう〉)です*2。用語も「親事業者→委託事業者」「下請事業者→中小受託事業者」「下請代金→製造委託等代金」に変わります*2。PB商品の受託生産は「製造委託」に該当しうる取引類型であり、委託者側の実務に直接影響します。
価格協議の経緯を残すこと自体が管理業務になった
改正では「協議に応じない一方的な代金決定」が新たに禁止行為に加わりました*2。価格交渉の申し入れがあったかどうか、説明したかどうかという経緯そのものが、記録として残すべき管理対象になったといえます。感覚的な価格改定ではなく、協議の記録を伴う仕組みが必要です。
管理体制を見直す際に優先すべき5つの視点(順位根拠:重要度)
- 商品情報・取引条件・生産/在庫・法令表示の4領域を、同じ商品マスタで連動管理できているか*1。
- 取適法の適用対象に該当するか、取引類型と資本金・従業員基準の両面で判定できているか*2。
- JANコードの付番と食品表示の責任主体を、委託先任せにせず自社で把握しているか*3。
- 有償支給・無償支給の区分を取引ごとに記録し、原価計算と禁止行為の判定に使えるか。
- 受発注・在庫・原価のデータが、既存の販売管理システムやBtoB ECと連携しているか。
取適法でPB受託生産の委託者が負う義務と禁止行為
ここからは、取適法(2026年1月1日施行)がPB受託生産の委託者にどのような義務と禁止行為を課すのかを具体的に整理します*2。
適用判定:取引類型に該当し、かつ資本金・従業員基準のいずれかを満たせば対象
取適法の適用は、①取引の内容と②資本金基準または従業員基準の組み合わせで決まります*2。PB商品の製造委託は「製造委託」に該当する取引類型です。資本金基準に加えて、改正で従業員基準(300人・100人)が新設された点に注意が必要です*2。製造委託・修理委託・特定運送委託と、プログラム作成・運送・物品の倉庫における保管・情報処理に限った情報成果物作成委託・役務提供委託では、資本金3億円超または従業員300人超の事業者が委託事業者にあたります*2。これら4つを除く情報成果物作成委託・役務提供委託の基準は、資本金5千万円超または従業員100人超です*2。自社の資本金だけで「対象外」と判断せず、従業員数も合わせて確認する必要があります。
4つの義務:明示・保存・支払期日・遅延利息
委託事業者には4つの義務が課されます*2。1つ目は発注内容等を明示する義務で、給付内容・代金額・支払期日・支払方法を書面または電磁的方法で示します*2。2つ目は書類等を作成・保存する義務で、取引記録を2年間保存します*2。3つ目は支払期日を定める義務で、受領日から起算して60日以内のできる限り短い期間とします*2。4つ目は遅延利息を支払う義務で、遅延・減額時に年率14.6%を支払います*2。いずれも記録の作成と保存が前提になるため、台帳が分散していると履行の証跡を示しづらくなります。
11の禁止行為のうちPB受託生産で起きやすいもの
11の禁止事項のうち、PB商品の受託生産で特に関わりやすいものがあります。買いたたき、返品、不当な給付内容の変更・やり直し、有償支給原材料等の対価の早期決済です。これに加え、改正で新設された「協議に応じない一方的な代金決定」と、支払手段としての手形払等の使用も対象です*2。特に手形払は、支払期日までに代金相当額の満額を得ることが困難な支払手段として、他の電子記録債権等も含めて禁止対象に含まれます*2。
| 義務・禁止行為 | システム上どこで担保するか |
|---|---|
| 発注内容等の明示義務 | 発注データに給付内容・代金額・支払期日・支払方法を必須項目として登録し、電子的に発行する。 |
| 書類の作成・2年間保存義務 | 受発注履歴を取引完了後2年以上、検索可能な形式でシステム内に保持する。 |
| 60日以内の支払期日設定 | 受領日を起点に支払期日を自動計算し、60日超の設定を入力段階で警告する。 |
| 買いたたき・協議に応じない代金決定 | 単価改定の履歴と協議記録(申入日・回答日・説明内容)を代金決定と紐づけて残す。 |
| 有償支給原材料等の対価の早期決済 | 有償支給・無償支給を取引区分として記録し、対価決済日を製品代金の支払日と連動させる。 |
| 支払手段としての手形払等 | 支払方法マスタから手形払等の設定自体を除外し、振込等に限定する。 |
PB商品の商品情報管理、JANコードと表示責任
PB商品を持つということは、商品情報の管理責任が卸売業側に移ることを意味します。ここではJANコードの付番と食品表示の責任範囲を確認します。
誰がJANコードを付番するのか
GS1 Japan(一般財団法人流通システム開発センター)によれば、GTIN(JANコード)は「商品のブランドを持つ日本の事業者」が設定するものです*3。具体的には、商品の主体的な供給者が、GS1 Japanから貸与されたGS1事業者コードを用いて、商品ごとに設定します*3。つまり製造を委託していても、PBのブランドを持つ卸売業者自身がコードを付番する立場になります。委託先の工場に付番を任せる運用は、この原則と整合しません。
GS1事業者コードの桁数とSKU計画
GS1事業者コードは7桁・9桁・10桁のいずれかで貸与され、それぞれに対応する商品アイテムコードの桁数が異なります。新規申請では、申告した商品アイテムの利用予定数をもとに9桁または10桁が貸与されます*4。7桁の事業者コードなら商品アイテムコードは5桁、9桁なら3桁、10桁なら2桁です*4。商品アイテムコードは順番に設定する方法が推奨されています*4。桁数が少ないほど設定できるアイテム数(SKU数)は減るため、PBの品目展開計画は、事業者コードの桁数を踏まえて立てる必要があります。
食品PBの場合:製造所固有記号と表示責任
食品表示基準では、製造所の所在地及び製造者の氏名又は名称の表示が義務付けられています*5。製造所固有記号の表示は、原則として同一製品を2以上の製造所で製造している場合のように、包材の共有化のメリットが生じる場合にのみ認められます*5。複数の他社工場(製造所)に製造を委託している販売者が、自社の名称及び所在地を表示する場合があります。この場合、製造所固有記号を用いることで、委託先である製造者の名称及びその工場の所在地に代えて表示できます*5。ただし、乳、乳製品及び乳又は乳製品を主要原料とする食品については、この方式は認められていません*5。また、消費者に販売される加工食品又は添加物に製造所固有記号を表示する場合は、応答義務が課されます*5。つまり食品PBでは、委託先を増やすほど、表示責任者としての届出・応答対応が増える構造です。
商品マスタに持たせる項目
以上を踏まえると、商品マスタには少なくとも次の項目を持たせる必要があります。GTIN(JANコード)、入数、ケースJAN、原産国、食品表示情報、委託先の名称・所在地または製造所固有記号です。この項目群を委託先ごとの取引条件マスタと連動させることで、表示責任の所在を商品単位で追跡できます。
受発注・在庫・原価の管理設計
法令・商品情報の管理体制が整っても、日々の受発注・在庫・原価を回す設計が伴わなければ実務は動きません。この章では運用面の管理設計を扱います。
MOQ(最小ロット)とリードタイムを前提にした発注計画
受託生産では、委託先ごとにMOQ(Minimum Order Quantity、最小発注ロット)とリードタイムが異なります。この2つを商品マスタや委託先マスタに持たせずに発注を続けると、欠品や過剰在庫が発生しやすくなります。委託先条件を属人的な記憶やメールのやり取りに依存させず、システム上のマスタとして一元管理することが前提条件です。
有償支給と無償支給の切り分け
原材料等を委託先に供給する形態には、有償支給と無償支給があります。この区分は原価計算に影響するだけでなく、有償支給原材料等の対価を早期に決済させる行為が取適法の禁止行為に含まれるため、法令順守の観点でも重要です*2。取引ごとに支給区分を記録し、対価の決済日を代金の支払日と連動させる設計が必要になります。
在庫の所有区分:自社在庫・預け在庫・仕掛の見え方を分ける
受託生産では、自社倉庫にある在庫、委託先に預けている在庫(預け在庫)、製造途中の仕掛品が混在します。これらを区分せずに一つの在庫数量として扱うと、販売可能数量を誤って把握するおそれがあります。所有区分ごとに在庫を可視化し、BtoB ECの在庫表示に反映できる設計が求められます。
Excelや個別台帳による管理は、委託先が数社程度であれば機能します。しかし委託先条件・支給区分・在庫所有区分が組み合わさると、担当者一人の記憶や個別ファイルでは整合性を保てなくなります。無料相談で自社の管理体制を整理することが、どの領域から仕組み化すべきかを見極める近道です。
システムで回すための導入5ステップ
ここまでの管理項目を実際にシステムへ落とし込む際の進め方を、5つのステップで整理します。
①現状棚卸から⑤運用定着までの流れ
最初のステップは現状棚卸です。委託先ごとの台帳・Excelを洗い出し、どの管理項目が抜けているかを確認します。次に要件定義で、商品情報・取引条件・生産/在庫・法令表示の4領域と、取適法が求める義務・禁止行為の担保箇所を要件として整理します。続いてマスタ整備で商品マスタと委託先マスタを統合し、既存システム連携で販売管理システムやBtoB ECと受注・在庫・単価をつなぎます。最後の運用定着では、入力ルールとマスタ更新の体制を現場に根付かせます。
販売管理・基幹システムとBtoB ECの連携ポイント
連携で特に重要なのは、受注・在庫・単価の3つのデータです。受注データが二重入力にならないこと、在庫が所有区分ごとに正しく反映されること、委託先別・取引条件別の単価が販売価格の計算に正しく連動することを確認します。この3点が崩れると、現場が結局Excelでの二重管理に戻ってしまう点に注意が必要です。
スモールスタートの範囲の決め方
全委託先・全SKUを一度にシステム化するのは現実的ではありません。取引量の多い委託先や、取適法上のリスクが高い取引条件(有償支給あり・手形払の慣行があった取引等)から着手する進め方が着実です。範囲を区切ることで、要件定義とマスタ整備の負荷を管理しながら進められます。
内製で進める場合に必要な知識と工数
この仕組み化を内製で進めるには、異なる領域の知識が必要になります。商品マスタ設計の知識、取適法をはじめとする取引法令の理解、既存の販売管理・基幹システムとの連携(API・EDIの知識を含む)の3つです。委託先や商品数が多いほど、要件定義からマスタ整備までの工数も比例して増えます。専門パートナーに要件整理を依頼した場合は、4領域の管理項目と取適法要件を前提とした設計が最初から反映されるため、内製で試行錯誤する工程を圧縮できる点が利点です。
よくある3つのつまずきと回避策
PB受託生産の管理をシステム化する過程で、繰り返し発生しやすいつまずきを3つ紹介します。
商品マスタが二重管理になる
販売管理システムの商品マスタと、EC側の商品情報が別々に更新されると、GTINや表示情報にずれが生じます。マスタの更新経路を一本化し、どちらのシステムを正としてデータを流すかを事前に決めておくことが回避策です。
委託先ごとに条件が属人化する
MOQ・リードタイム・支給区分といった委託先条件が、担当者個人のメールやメモに残っている状態では、担当者の異動や退職で情報が失われます。委託先マスタとして条件を記録し、誰でも参照できる状態にしておく必要があります。
価格改定の記録が残らない
口頭や電話での価格交渉は、後から経緯を示せません。取適法が禁止する「協議に応じない一方的な代金決定」に該当しないことを示す必要があります*2。そのためにも、価格協議の申し入れ日・回答日・改定理由をシステムまたは記録として残す運用が欠かせません。
まとめ、PB受託生産管理を軌道に乗せる3つの判断軸
本稿では、卸売業がPB商品を受託生産で作る際の管理項目と、2026年1月施行の取適法対応を整理しました。要点は3つに集約できます。第一に管理対象を商品情報・取引条件・生産/在庫・法令表示の4領域で捉え直すことです。第二に取適法の適用判定と4つの義務・禁止行為を、システム上の担保箇所へ落とし込むことです。第三に、JANコードの付番と食品表示の責任がPBを持つ卸売業側にあることを前提に商品マスタを設計することです。この3つの判断軸をもとに、現状棚卸から着手することが、管理体制を作り直す最初の一歩になります。
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
よくある質問
PB商品のJANコードは委託先の工場が付けてもよいですか
認められません。GS1 Japanによれば、JANコード(GTIN)は商品のブランドを持つ事業者が、自社のGS1事業者コードを用いて商品ごとに設定するものです*3。製造は委託先に任せても、PBのブランドを持つ卸売業者自身が付番の主体になります。
取適法の対象になるかは資本金だけで判断してよいですか
資本金だけでは判断できません。取適法は取引の内容と、資本金基準または従業員基準(300人・100人)のいずれかへの該当で適用対象が決まります*2。資本金基準を下回っていても、従業員基準に該当すれば規制対象になる場合があります。取引類型ごとに基準が異なるため、公正取引委員会のリーフレット等で自社の取引を確認することが必要です*2。
手形での支払いは2026年1月以降どうなりますか
手形払は禁止行為に含まれます。取適法では支払手段としての手形払に加え、支払期日までに代金相当額の満額を得ることが困難な電子記録債権等の支払手段も禁止対象です*2。振込等、支払期日までに満額を受け取れる支払方法への切り替えが必要になります。
食品PBのパッケージに委託先の工場名を書く必要はありますか
原則として同一製品を2以上の製造所で製造している場合に限り、製造所固有記号を用いて、委託先である製造者の名称・所在地に代えて表示できます*5。ただし乳、乳製品及び乳又は乳製品を主要原料とする食品はこの方式が認められておらず、消費者に販売される加工食品・添加物では応答義務が課されます*5。品目によって扱いが異なるため、対象食品ごとの確認が必要です。
受託生産を受ける側(製造業)は何を準備すべきですか
委託側から提示される発注内容(給付内容・代金額・支払期日・支払方法)を書面または電磁的方法で受け取り、取引記録として保存できる体制を整えることが基本です*2。価格協議の申し入れがあった際の対応履歴を残すことも、委託側・受託側双方にとって重要な準備になります*2。
- *1 出典:経済産業省 商務情報政策局 情報経済課「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2025年8月26日公表)
- *2 出典:公正取引委員会「取適法リーフレットNo.01」(令和7年8月)
- *3 出典:GS1 Japan(一般財団法人流通システム開発センター)「GS1事業者コード・GTIN(JANコード)とは」
- *4 出典:GS1 Japan(一般財団法人流通システム開発センター)「GTIN(JANコード)の作成手順」
- *5 出典:消費者庁 食品表示企画課「食品表示基準Q&A 別添「製造所固有記号」」(消費者庁ウェブサイト掲載版・2026年8月26日確認)
画像の出典元