◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 「注文管理システム」の違いは、注文データが通る4つの層(受け取る・処理する・売上にする・保存する)のどこを覆うかで決まります。
- 受注管理・在庫管理・販売管理・ERP・受発注・WMSとの境界は、この層のどこを持つかで説明できます。
- 4つの層のうち保存の層だけは、製品仕様ではなく電子帳簿保存法が義務づける対象です。
目次
注文1件の状態遷移を追う — 注文管理システムの実質的な線引き
注文管理システムとは、取引先から受け取った注文を1件ずつ記録し、内容の確認・在庫の引き当て・出荷指示までを注文単位で扱う業務ソフトウェアです。ただし「注文管理システム」は製品側の呼称であり、法令や公的統計に定義のある区分ではないため、どこまでを覆うかは製品によって異なります。
注文管理システムと隣接システムの違いは、まず「何を単位に業務を見ているか」に表れます。注文管理システムの単位は注文(オーダー)1件です。これに対し、販売管理システムの単位は伝票と金額であり、在庫管理システムの単位は品目と数量です。同じ受発注業務を、製品ごとに別の単位で見ているのが区分の出発点になります。
もう一つの実質的な線引きは、注文の状態が変わり続けることを前提にしているかどうかです。受付済・確認中・欠品・一部出荷・出荷済・キャンセルという状態は、注文が進むたびに変化します。この状態遷移を扱う仕組みを持つかどうかが、注文管理システムであるかを見分ける実質的な基準になります。
用語の確認
注文管理システム(OMS:Order Management System)は、注文の受付から出荷指示までを注文単位で管理するソフトウェアを指す呼び方です。受注管理は同じ業務を売り手側の視点で呼ぶ言い方であり、引当は在庫を特定の注文に割り当てる処理、出荷指示は倉庫側へ出荷を指示する情報を指します。取引情報とは、注文書・契約書・見積書等に通常記載される事項のことで、電子取引とは、その取引情報の授受を電磁的方式で行う取引のことです*1。これらの用語は後段の層の説明でも使うため、ここで押さえておきましょう。
受け取る・処理する・売上にする・保存する — 注文データが通る4つの層
注文データは、受け取ってから保存し続けるまでの間に4つの層を通ります。この層のどこを製品が覆っているかが、その違いを見分ける物差しです。
| 層 | この層で発生する業務 | 主な成果物 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 第1層 受け取る | 電話・FAX・メール・Excel・自社EC・EDI・LINE等複数の入口から注文を受け付けます。 | 受注データ(入口ごとに形式が異なります) | 入口が複数あるBtoBの実態を前提とする層です。 |
| 第2層 処理する | 内容確認・在庫の引当・出荷指示・変更やキャンセルの反映を担います。製品の中核はこの層にあります。 | 引当結果・出荷指示書 | 状態遷移を伴う実務上の中心工程です。 |
| 第3層 売上にする | 出荷実績を売上に計上し、請求・売掛・回収へつなげます。ここから先は販売管理システムの領分です。 | 売上計上データ・請求書 | 会計処理へ引き継ぐ層です。 |
| 第4層 保存し続ける | 取引情報の電磁的記録を保存し続けます。製品仕様ではなく法令が求める層です。 | 電子取引データの電磁的記録 | 電子帳簿保存法第二条第五号・第七条*1*2 |
この4層のどこで注文を1本に束ねるかは、そのまま「どのシステムを注文の正本とするか」の決定になります。第1層で束ねれば受発注システムやEC側が正本になり、第2層で束ねれば注文管理の仕組みが正本になります。第3層で束ねれば販売管理システムや基幹システムが正本になる、という関係です。
複数の受け口があるBtoBの現場では、この決定を先送りにすると同じ注文をExcelと基幹の両方へ入力するような二重入力が残ります。この状態を放置すると、受注担当者の作業量が増え続けるだけでなく、どちらのデータを正としてよいか分からない誤出荷のリスクも生まれます。無料相談で束ねる層を整理するのが、この状態を早く解消する近道です。
受注管理・在庫管理・販売管理・ERP・受発注・WMS — 隣接システムとの境界
ここからは、名前が似ている、あるいは機能が重なる隣接システムとの境界を1つずつ確認します。いずれも同じ粒度で扱い、特定の1軸だけを深掘りしません。
受注管理システムとの違い — 呼称の差であることが多い
「受注」は売り手側から見た呼び方であり、「注文」は取引そのものを指す呼び方です。実務上、両者は呼称の差であって区分の差ではないことがあります。製品名で判断するのではなく、第2層の状態遷移(欠品・一部出荷・変更・キャンセルの反映)を持つ製品かどうかで見分けます。この軸をさらに深掘りする実務上の論点は、別記事で扱う予定です。
在庫管理システムとの違い — 引当と現物合わせの違い
注文管理側は「売るために在庫を引き当てる」ことを扱い、在庫管理システムは「現物を合わせる」ことを扱います。引当は第2層の業務であり、入出庫・実地棚卸・ロケーション管理は在庫管理システム側の業務です。在庫連携の設計は、リアルタイム連携を扱う別記事で詳しく説明しています。
販売管理システムとの違い — 第1〜2層と第3層の違い
注文管理システムは第1〜2層が中核であり、販売管理システムは第3層(売上計上・請求・売掛回収)が中核です。両者が重なるのは「受注」の一点だけであり、その先の会計処理は販売管理システムの領分になります。販売管理システムとの境界の詳細は、区分の物差しを扱う別記事も参考になります。
基幹システム・ERPとの違い — 層の広さではなく基盤を1つにするかの違い
ERPは4つの層を1つのデータ基盤に載せるという考え方であり、注文管理システムより「覆う層が広い」という話ではありません。既存の基幹を刷新するかどうかの判断は別の論点であり、判断基準を扱う別記事に譲ります。
受発注システム・BtoB ECとの違い — 入口を持つか持たないか
受発注システムやBtoB ECは、取引先が自分で注文を入れる第1層の入口です。注文管理システムは、入れられた注文を処理する第2層を担うため、入口を持たない製品も存在します。製品選定の軸は選び方を扱う別記事、ECの効果は導入メリットを扱う別記事で扱います。
倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System)との違い — 出荷指示の先を扱う
注文管理システムが出す出荷指示を受けて、ピッキング・梱包・検品といった庫内作業を扱うのがWMSです。両者は第2層の出口で接しており、同システム自体が庫内作業まで扱うことは通常ありません。
| 隣接システム | 扱う単位 | 主に覆う層 | 注文管理との境界の引き方 |
|---|---|---|---|
| 受注管理システム | 注文(オーダー)1件 | 第1〜2層 | 呼称の差であることが多い。第2層の状態遷移を持つかで見分けます。 |
| 在庫管理システム | 品目と数量 | 第2層(在庫側) | 引当は注文管理側。入出庫・実地棚卸は在庫管理側です。 |
| 販売管理システム | 伝票と金額 | 第3層 | 売上計上・請求・売掛回収を担います。重なるのは受注の一点です。 |
| 基幹システム・ERP | 全社の業務データ | 第1〜4層を1基盤に統合 | 層の広さではなく、基盤を1つにするかどうかの違いです。 |
| 受発注システム・BtoB EC | 取引先からの入力 | 第1層 | 注文の入口を担います。注文管理システムは入口の先を処理します。 |
| 倉庫管理システム(WMS) | 庫内作業(ピッキング等) | 第2層の出口以降 | 出荷指示を受けて庫内作業を担います。第2層の出口で接します。 |
見積もり前に確認する5項目(順位根拠:確認の実施順序)
- 注文が入ってくる経路をすべて書き出したか(電話・FAX・メール・自社EC・EDI・LINE等)。
- その経路ごとに、いまどこで台帳へ載せているかを確認したか(担当者のExcel・基幹への直接入力・未管理のいずれか)。
- 注文を1本に束ねる層(第1層・第2層・第3層のいずれか)を決めたか。
- すでに動いている販売管理・在庫管理・基幹が、どの層を覆っているかを重ねて確認したか。
- 第4層(保存)を誰が持つかを明記した状態で見積を依頼できるか。
電子帳簿保存法第二条第五号・第七条が定める保存の層
ここまでの3層は業務上の区分ですが、第4層(保存)だけは事情が異なります。法令が保存を義務づけているためです。
電子帳簿保存法第二条第五号は、電子取引を「取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいう。)の授受を電磁的方式により行う取引」と定義しています*1。注文書は、この条文が取引情報の筆頭に挙げている書類です。注文は業務上のデータであると同時に、法令上の証跡でもあります。
同法第七条は、その保存を義務づけています。「所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない」と定めているためです*2。紙に出力して保存する選択肢は残されていません。
BtoB EDIや受発注サイトでの注文は、明確にこの電子取引に当たります。国税庁は一問一答の中で「いわゆるEDI取引、インターネット等による取引、電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含みます。)、ペーパーレス化されたFAX機能を持つ複合機を利用した取引、インターネット上にサイトを設け、当該サイトを通じて取引情報を授受する取引等をいいます」と説明しています*3。自社ECやWeb受発注で受けた注文は、受けた時点でこの対象になります。
この電子取引は、決して例外的な出来事ではありません。2024年の国内BtoB-EC市場規模は514.4兆円でした(前年465.2兆円、前々年420.2兆円、前年比10.6%増)*5。同じ調査によれば、BtoB-ECのEC化率は43.1%(前年比3.1ポイント増)です*5。この調査のEC化率は、業種分類上「その他」以外の業種を算出対象とした、全商取引金額に対する電子商取引の金額比率を指します*5。この数値は取引の電子化が進んでいることを示す指標であり、特定の注文管理システムの普及率を示すものではありません。ただし、企業間取引の電子化が進むほど、第4層の義務が現に効いてくる企業は増えていくと考えられます。
だからこそ、注文を受ける機能と、注文データを保存し続ける機能が同じ製品にあるとは限らない前提で考える必要があります。見積の段階で「第4層を誰が持つか」を確定させることが、抜け漏れを防ぐ第一歩です。保存の具体的な要件を確認する段階では、電子帳簿保存法への対応実務を扱う別記事を参照してください。
自社に必要な範囲を決める7つの手順
ここまでの層の整理を、自社の検討に落とし込む手順を示します。番号順に進めることで、重複購入と抜け漏れの両方を防げます。
- 注文が入ってくる経路をすべて書き出します(電話・FAX・メール・Excel・自社EC・EDI・LINE・訪問)。
- 経路ごとに、いまどこで台帳に載せているかを書き出します(担当者のExcel・基幹への直接入力・未管理のいずれか)。
- 注文を1本に束ねる層を決めます。第1層・第2層・第3層のどれにするかが、正本の決定です。
- 第2層の状態遷移(欠品・一部出荷・変更・キャンセル)が日常的に起きるかを確認しましょう。
- すでに動いているシステムがどの層を覆っているかを重ねます(販売管理・在庫管理・基幹)。
- 重ねた結果、空いている層を特定します。ここが導入対象であり、重複購入を防ぐ一次スクリーニングになります。
- 第4層を誰が持つかを明記して見積を依頼しましょう。「注文管理システム一式」ではなく「第1層のうちEDIとEC、第2層の全域、第4層は既存の仕組みで持つ」のように、層の言葉で範囲を書きます。
この作業を自社だけで内製する場合、業務フローの棚卸しと既存システムの機能範囲の両方を把握できる担当者が欠かせません。特に複数の受け口が混在する現場では、どの層で束ねるかの判断が難しく、判断を誤ると導入後に二重管理へ逆戻りしかねないでしょう。要件を文書にまとめる段階では、RFPの作り方を扱う別記事が参考になります。導入全体の進め方は、導入の進め方を扱う別記事で確認できます。
まとめ:注文管理システムの違いを見分ける3つの判断軸
本稿では、この違いを、注文データが通る4つの層で整理しました。要点を3つに集約すると次の通りです。第一に、違いは製品名ではなく、注文データが通る4つの層のどこを覆うかで決まります。第二に、第1〜3層は業務上の区分であり、隣接システムとの境界は覆う層の違いとして説明できるでしょう。第三に、第4層(保存)だけは電子帳簿保存法が義務づけており、製品選定の対象ではなく確認すべき義務にほかなりません。
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
よくある質問
注文管理システムと受注管理システムは違うものですか。
実務上、両者は呼称の差であり、区分の差ではないことがあります。製品名ではなく、注文の状態遷移(受付済・確認中・欠品・一部出荷・出荷済・キャンセル)を扱う機能を持つかどうかで判断します。
販売管理システムがあれば注文管理システムは不要ですか。
不要とは限りません。販売管理システムの中核は売上・請求・回収を扱う第3層であり、欠品や一部出荷への対応が日常的に発生するなら、第2層を扱う機能が別途必要になります。
在庫管理システムと機能が重複しませんか。
重複する場合があります。引当は注文管理システム側の機能であり、入出庫・実地棚卸は在庫管理システム側の機能です。重複が疑われる場合は、どちらを正とするかを先に決めておく必要があります。
自社ECで受けた注文も保存が必要ですか。
必要です。インターネット上にサイトを設けて取引情報を授受する取引は電子取引に該当し*3、その電磁的記録の保存が義務づけられています*2。具体的な保存の方法は電子帳簿保存法への対応を扱う別記事を参照してください。
FAXや電話の注文しかない場合も導入する意味はありますか。
意味はあります。中小企業庁「令和3年度取引条件改善状況調査」(受注側約8万600社・製造業/サービス業/建設業/卸売業・小売業/金融業の5分野)では、2021年時点で電子受発注システムを導入していた受注側企業は48.5%でした*4。注文の受け口が紙や口頭であっても、台帳を1本にまとめる第2層の効果は、電子化の有無とは独立して得られます。
- *1 出典:デジタル庁「e-Gov法令検索 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(電子帳簿保存法)第二条第五号」(平成十年法律第二十五号・現行2025年4月1日施行)
- *2 出典:デジタル庁「e-Gov法令検索 同法第七条」(同上)
- *3 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問2」(令和8年7月)
- *4 出典:中小企業庁「中小企業の受発注デジタル化」(令和3年度取引条件改善状況調査・中小企業庁,2021)
- *5 出典:経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」(2025年8月26日公表・2024年実績)
画像の出典元
- 管理のイメージ/Photo by Pandu Genius on Unsplash
- 受注のイメージ/Photo by Giorgio Tomassetti on Unsplash
- 在庫管理のイメージ/Photo by Adrien Olichon on Unsplash
- 在庫のイメージ/Photo by Ries Bosch on Unsplash