◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- Webオーダーシステムの費用は、システム利用料だけでなく、取引先を新しい注文経路へ移す費用や旧来の経路を並行して残す費用も含めて考える必要があります。
- 費用の大きさは機能の数ではなく、電話・FAX・メール・EDI・Webといった、注文を受ける経路の数によって決まります。
- 公表されている統計を基準にすると、ベンダーの提示額が妥当かどうかを客観的に確認できます。
目次
- Webオーダーシステムの費用とは、利用料に加えて移行費用・並行運用費用・保存費用を足した額である
- 費用を決めているのは機能の数ではなく、注文を受ける経路の数である
- 初期費用は、システムの構築費と取引先を乗せる費用に分かれる
- 継続費用は、クラウド利用料として毎月積み上がる形に移っている
- 旧来の注文経路を残す費用は、見積書に出てこないまま発生する
- 実際の予算額は、公表調査の分布で見ると50万円未満が最も多い
- 社内工数は、賃金統計で金額に換算して初めて費用として比較できる
- 予算は、補助金の枠組みを前提に組み立てられる
- まとめ:Webオーダーシステムの費用を自社の数字にするための3つの手順
- よくある質問
Webオーダーシステムの費用とは、利用料に加えて移行費用・並行運用費用・保存費用を足した額である
Webオーダーシステムの費用とは、受注機能そのものの利用料に加えて、取引先を新しい注文経路へ移す費用を足した額です。さらに旧来の注文経路を並行して残す費用と、注文データを保存する費用も合計に含まれます。中小企業の情報処理・通信費は2014年度を100とした指数で、2023年度に148まで上昇しています*1。
検索でよく見かける「Webオーダーシステムの費用相場」は、飲食店のモバイルオーダー・セルフオーダーを前提にした金額であることが少なくありません。法人間の受発注では客席タブレットやキッチンプリンタといった費用は発生せず、費用の出どころ自体が異なります。
4つの費用の発生源
1つ目はシステム利用料で、受注機能を使い続けるための月額・年額の費用です。2つ目は取引先の移行費用で、取引先ごとのアカウント発行や単価設定、操作説明にかかる費用にあたります。
3つ目は旧経路の並行運用費用で、移行期に電話・FAX・メールを残す間の人手が該当します。4つ目はデータ保存費用で、受け取った注文データを電子取引の記録として保存し続ける体制にかかる費用です*4。
「システムの値段」を調べても総額が出ない理由
ベンダーのシステム利用料だけを比較しても、総額の見通しは立ちません。なぜなら、取引先の移行や旧経路の並行運用にかかる費用は、システムそのものの価格表には含まれていないからです。
初期・継続・売上連動・社内工数という費用の4層モデルに沿って、BtoCの相場をBtoB向けに読み替える視点があります。この視点は費用の4層モデルとBtoC相場の読み替えで整理しています。本記事では、その中でも受注機能に限定した費用の発生源を扱う点が特徴です。
費用を決めているのは機能の数ではなく、注文を受ける経路の数である
Webオーダーシステムの費用を左右する主な要因は、搭載する機能の数ではありません。電話・FAX・メール・EDI・Webのうち、実際に何本の経路を並行して運用するかで費用は変わってきます。
経路ごとに受け口と処理が要る
電話注文には受電と聞き取りの人手が要り、FAX注文には受信票の確認と入力の手間が発生します。メール注文は本文の読み取りと転記が必要になり、EDIとWebにはそれぞれ専用の接続・保守が伴います。
経路が1本増えるごとに、その経路専用の受け口と処理が積み上がっていきます。Webオーダーシステムを導入しても、他の経路が残っていればその分の処理は消えません。
経路を減らせないまま導入すると、費用は減らずに積み上がる
取引先の一部がWeb発注に移行できない場合、Webと旧経路の両方を維持する体制が必要になります。この状態では、システム利用料に旧経路の運用コストが上乗せされる形になり、費用は導入前より増えることがあります。
受注経路を見直す際に確認する優先順4点(順位根拠:重要度)
- 現在使っている受注経路の数を数え、電話・FAX・メール・EDI・Webの組み合わせを洗い出します。
- 経路ごとに、電子取引に該当し保存の対象となっているかを確認します*4。
- 継続費用がクラウド利用料としてどこまで積み上がるかを見積もります*1。
- 取引先ごとに移行のタイミングと、操作説明が必要かどうかを整理します。
卸売業ではEDI標準化がEC化率を押し上げている
経済産業省の調査によると、卸売業のBtoB-EC市場規模は128兆8,684億円、EC化率は40.3%です*3。この背景には、流通BMSに代表されるEDI標準化(流通業界で使われる電子データ交換の共通規格)の普及があると推察されています*3。
EDI(Electronic Data Interchange、企業間で受発注データを電子的にやり取りする仕組み)が普及した業界では、経路の集約が進んでいる可能性があります。裏を返せば、経路が集約されていない状態でWebオーダーシステムだけを追加すると、経路数はむしろ増えることになります。
現状の受注経路にどれだけコストがかかっているかを可視化したうえで、無料相談で要件を整理すると、経路数と費用の関係を自社の数字で確認しやすくなります。
初期費用は、システムの構築費と取引先を乗せる費用に分かれる
Webオーダーシステムの初期費用は、大きく2つに分かれます。1つはシステムを構築する側の費用で、もう1つは取引先をシステムに乗せる側の費用です。
構築側の初期費用
構築側の初期費用には、要件定義や画面設計、商品と価格のマスタ整備、基幹システムとの連携、接続試験までの一連の工程が含まれます。これらは自社の業務フローを整理し直す作業でもあり、担当者だけでなく関係部門を巻き込む工数が発生する点に注意してください。
取引先側の初期費用
取引先側の初期費用には、取引先ごとのアカウント発行、単価設定、操作説明、稼働後の問い合わせ対応が含まれます。取引先の数が多いほど、この部分の工数は比例して増える傾向があります。
自社の担当者がこれらをすべて兼務する場合と、外部の専門パートナーに設計・接続を委ねる場合とでは違いがあります。社内で確保すべき時間の配分が変わってきます。
内訳の詳細と相場は個別記事で確認する
初期費用の内訳をさらに細かく知りたい場合は、初期費用の内訳と見積の読み方を参照してください。方式別の費用レンジについては、BtoB ECの費用相場で確認可能です。
継続費用は、クラウド利用料として毎月積み上がる形に移っている
Webオーダーシステムの継続費用は、クラウド利用料という形で毎月積み上がる傾向が強まっています。この傾向は公表統計でも確認できます。
情報処理・通信費指数は2014年度比で2023年度148
中小企業庁「2026年版 中小企業白書」(経済産業省「企業活動基本調査」の再編加工)によると、中小企業の従業者一人当たり情報処理・通信費は、2014年度を100とした指数で2023年度に148となっています*1。大企業では同じ指数が162.1です*1。この指数は金額そのものではなく、あくまで2014年度を基準にした伸び率である点に注意が必要です。
最も金額が増えた費目には、ソフトウェア購買費とクラウドサービス使用料が挙がる
2026年版中小企業白書に掲載された帝国データバンクの調査では、情報処理や通信に掛かる費用のうち最も金額が増加している費目を尋ねたところ、ソフトウェア購買費を挙げた企業が32.2%、クラウドサービス使用料を挙げた企業が28.6%でした*1。これは増加額の構成比ではなく、その費目を挙げた企業の割合です。資産計上されないクラウドサービスの活用が中小企業で進んでいることが示唆されています*1。
| 費目 | 最も増加した費目として挙げた企業の割合 |
|---|---|
| ソフトウェア購買費 | 32.2% |
| クラウドサービス使用料 | 28.6% |
| リース・レンタル料 | 20.3% |
| 保守料 | 12.9% |
| その他 | 5.9% |
出典:中小企業庁「2026年版 中小企業白書」第1-1-34図(資料:帝国データバンク「令和7年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」)*1
情報処理・通信費には保守料や回線使用料も含まれる
同白書の注記では、情報処理・通信費には導入諸掛りやリース・レンタル料、保守料、回線使用料、ソフトウェア委託料などが含まれています*1。そのため、この指数を「システム利用料の推移」とだけ読み替えるのは正確ではありません。
ベンダーから提示された金額がどの課金軸に基づくものかを確かめたい場合は、法人向けECの価格・課金軸4タイプを参照すると整理しやすくなります。
バージョンアップの費用は初年度の見積に載らない
導入時の見積には、稼働後数年で発生するバージョンアップの費用が含まれていないことがあります。中長期での追加費用の見通しは、BtoB ECのバージョンアップ費用と計画で確認してください。
旧来の注文経路を残す費用は、見積書に出てこないまま発生する
Webオーダーシステムを導入しても、電話やFAXでの注文をすぐにゼロにできる企業ばかりではありません。旧来の経路を残す期間の費用は、ベンダーの見積書には出てこないまま発生します。
移行期は二重運用になる
移行期にはWebと電話・FAXの両方の窓口を開けておく必要があり、その間は両方に人手を割くことになります。取引先ごとに移行が完了するタイミングが異なるため、二重運用の期間は数か月に及ぶこともあります。
電子取引に該当する経路はWebだけではない
国税庁の一問一答では、電子取引とは取引情報の授受を電磁的方式により行う取引を指すとされています*4。具体的には、EDI取引、インターネット等による取引、電子メールでの取引情報のやり取りが該当します*4。ペーパーレス化されたFAX機能付き複合機の利用や、サイトを通じた取引情報の授受も含まれます*4。
つまり、Webでの受注だけでなく、EDIやメール、複合機のFAX機能を使った注文の授受も電子取引に含まれます。旧経路を残すほど、電子取引に該当する経路の数自体が増えていきます。
電子取引した場合は電磁的記録による保存が必要になる
国税庁の一問一答では、電子取引した場合、その取引情報は電磁的記録により保存しなければならないと定められています*4。経路が増えるほど、保存の対象となるデータの範囲も広がることになります。
この保存要件を満たさないまま複数の経路を並行運用すると、法定の保存義務を欠いた状態が続くことになります*4。これは金額に表れにくい費用ですが、放置してよい論点ではありません。
経路ごとの実務は個別記事に委ねる
FAX経路を残す場合の具体的な手段はFAX-OCRの精度を、EDI経路の移行実務はインターネットEDIへの移行を参照してください。取引先が実際に使えるようになるまでの実務はインターネット受発注と年配担当者への対応で解説しています。
実際の予算額は、公表調査の分布で見ると50万円未満が最も多い
ベンダーが提示する「相場」ではなく、実際に企業がいくら支払っているかを示す公表調査があります。東京商工会議所の調査によると、直近1年間の予算額の分布で最も多い帯は50万円未満でした*2。
| 予算額帯 | 割合(新規システム導入・n=955) |
|---|---|
| 0円 | 13.1% |
| 50万円未満 | 37.0% |
| 50万円以上100万円未満 | 17.7% |
| 100万円以上500万円未満 | 20.5% |
| 500万円以上1,000万円未満 | 5.8% |
| 1,000万円以上 | 5.9% |
出典:東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査 集計結果」(2026年6月17日公表)*2
既存システムの維持・運営でも8割超が投資している
同じ調査では、既存システムの維持・運営についても81.2%の企業が何らかの投資をしており、0円と回答した企業は18.8%にとどまっています*2。導入して終わりではなく、稼働後も継続的な費用が発生する実態が読み取れます。
この数字の読み方には3つの注記が必要
この予算額の分布を自社の見積と直接比較する前に、3点を押さえておく必要があります。第一に、調査対象は主に東京23区内の中小企業1,272社であり、全国一律の相場ではありません*2。
第二に、設問は企業全体のデジタルシフト・DX関連予算であり、Webオーダーシステム単体の費用を尋ねたものではありません*2。第三に、この予算額の設問はデジタル化の状況が「口頭連絡、電話、帳簿での業務が多い」段階の企業を集計から除いています*2。この3点を踏まえたうえで、目安の1つとして参照してください。
コスト負担は最も多い課題として挙げられている
同調査では、デジタルシフト・DXの課題として「コストが負担できない」を挙げた企業が28.3%で最多でした*2。予算の確保自体が、最初の壁になっていることがわかります。
社内工数は、賃金統計で金額に換算して初めて費用として比較できる
Webオーダーシステムの費用には、社内の担当者が投入する工数も含まれます。工数は時間のままでは他の費用と比較できないため、賃金統計を使って金額に換算する必要があります。
一般労働者の賃金は男女計で月額340.6千円
厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査によると、一般労働者の賃金は男女計で月額340.6千円です*6。男性は373.4千円、女性は285.9千円となっています*6。
換算の考え方は自社の値で置き換える
時間単価への換算は、月額賃金を所定労働時間で割ることで求められます。ただし所定労働時間は企業ごとに異なるため、本記事では時間単価を仮置きせず、読者が自社の値で計算する前提とします。
要件定義や単価設定、操作説明といった作業を内製で担う場合、担当者には基幹システムとの連携やマスタ整備の知識が求められます。これらの作業に充てる投入時間を賃金換算することで、外部パートナーへの委託費用と初めて同じ土俵で比較できるようになります。
総額の試算と見落としコストは個別記事で扱う
初期費用・継続費用・社内工数を積み上げた総額の試算と、回収期間の考え方はB2B ECの費用総額試算と回収期間にまとめています。見落としがちな費用の洗い出しはBtoB ECの隠れコストの洗い出しを参照してください。
予算は、補助金の枠組みを前提に組み立てられる
Webオーダーシステムの予算を検討する際は、補助金の枠組みを前提に組み立てることができます。中小機構の中小企業デジタル化・AI導入支援事業がその一例です。
通常枠の補助額と補助率
通常枠では、1プロセス以上を対象に5万円以上150万円未満、4プロセス以上を対象に150万円以上450万円以下の補助額が設定されています*5。補助率は原則1/2以内で、条件によって2/3以内となります*5。
クラウド利用料は2年分を上限に補助対象になる
この事業では、ソフトウェア購入費に加えて、クラウド利用料が2年分を上限に補助対象に含まれます*5。継続費用として積み上がりやすいクラウド利用料の一部を、補助金で圧縮できる余地があります。
直近の締切と申請実務
直近の締切は第5次締切で、2026年9月29日(火)17時です*5。締切や補助額は公募回ごとに変わるため、申請時点の最新情報を確認する必要があります。申請の実務はBtoB ECのIT導入補助金の活用で解説しています。
まとめ:Webオーダーシステムの費用を自社の数字にするための3つの手順
本稿では、Webオーダーシステムの費用がどこで発生するかを整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、費用は利用料・移行費用・並行運用費用・保存費用の合計であり、システム利用料だけでは総額が出ません。
第二に、費用の大きさを決めるのは機能の数ではなく、電話・FAX・メール・EDI・Webという受注経路の数です。第三に、自社の見積を検討する際は、公表統計を目安にしつつ、経路ごとの保存義務や取引先の移行状況を自社の数字で確認する必要があります。
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
よくある質問
Webオーダーシステムの費用は、月額のシステム利用料だけを見ればよいですか。
いいえ、月額のシステム利用料だけでは費用の全体像を把握できません。取引先を新しい注文経路へ移す費用、旧来の経路を並行して残す費用、注文データを保存する費用も合わせて確認する必要があります。
検索で出てくる「オーダーシステムの費用相場」は、法人間の受発注にも当てはまりますか。
そのまま当てはまるとは限りません。検索上位の費用相場記事の多くは飲食店のモバイルオーダー・セルフオーダーを前提にしており、法人間の受発注とは費用の発生源が異なります。自社の見積は公表統計や個別見積で確認することが大切です。
電話やFAXでの注文を残したまま導入してもよいですか。
残すこと自体は可能ですが、費用は増える方向に働きます。電話やFAXを含めて注文を受ける経路が増えるほど、経路ごとの人手や保存の対象が増えるためです*4。
Webで受けた注文のデータは、保存しなければならないのですか。
はい、保存が必要です。電子取引に該当する取引情報は、電磁的記録により保存しなければならないと定められています*4。Webでの受注はこの電子取引に該当します。
補助金は毎月のクラウド利用料にも使えますか。
中小企業デジタル化・AI導入支援事業の通常枠では、クラウド利用料が2年分を上限に補助対象に含まれます*5。申請時点の締切や要件は事前に確認してください。
- *1 出典:中小企業庁「2026年版 中小企業白書」第1部第1章第5節(中小企業庁)
- *2 出典:東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査 集計結果」(東京商工会議所・2026年6月17日公表)
- *3 出典:経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」(経済産業省・令和7年8月公表)
- *4 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」問1・問2(国税庁・令和7年6月)
- *5 出典:中小機構「中小企業デジタル化・AI導入支援事業」通常枠(独立行政法人中小企業基盤整備機構・2026年度)
- *6 出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」(厚生労働省・令和7年)
画像の出典元
- 費用のイメージ/Photo by Jakub Żerdzicki on Unsplash
- 移行のイメージ/Photo by Martin Sanchez on Unsplash
- 運用のイメージ/Photo by Alexander Gluschenko on Unsplash
- 取引先のイメージ/Photo by Carlos Muza on Unsplash