◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 商流電子化の費用は、見積・受発注・納品・請求・決済という5つの工程それぞれに発生し、1本のシステム代金にはまとまりません。
- 総額を押し上げるのは工程の数ではなく、電子化した工程と紙のまま残る工程の境目です。
- 電子帳簿保存法・手形の電子化・取適法という3つの制度対応は、費用を増やす面と減らす面の両方を持っています。
目次
- 商流電子化の費用とは|「システム代」ではなく工程ごとの積み上げ
- 工程別の費用の内訳|5工程それぞれに何が立つか
- 費用を押し上げるのは工程数ではなく「電子と紙の境目」
- 中小企業で実際に進んでいる電子化と、進んでいない電子化
- 制度対応の費用(1)決済|手形の電子化はコストを減らす側に働く
- 制度対応の費用(2)保存と請求|無償で満たせる要件がある
- 制度対応の費用(3)発注書面|電磁的方法でよいが紙の求めには応じる
- 複数工程をまとめて申請する|デジタル化・AI導入補助金2026の使い方
- 商流電子化を安く進める順番|見積依頼の前に埋めるチェックリスト
- まとめ|商流電子化の費用を決める3つの判断軸
- よくある質問
商流電子化の費用とは|「システム代」ではなく工程ごとの積み上げ
商流とは、見積・受発注・納品・請求・決済という、商品と代金が動く商取引の流れを指す言葉です。物流が「モノの移動」、金流が「代金決済そのもの」を指すのに対し、商流はその両方を含む取引全体の流れを表します。
商流電子化の費用とは、商流の各工程を電子化するために、工程ごとに発生する初期費用・利用料・工程間のデータ受け渡し費用・制度対応費用の総額です。本記事が扱うのは、紙書類のスキャン保存にかかる単価ではなく、取引そのものを電子化する際の費用です。書類の電子保存については、後述する電子帳簿保存法の項目で扱います。
商流電子化の費用は、見積・受発注・納品・請求・決済の5工程それぞれに発生し、単一の合計金額にはまとまりません*1。総額を左右するのは工程数ではなく、電子と紙が混在する境目の多さです。
中小機構の調査によれば、DXに取り組む企業のうち「文書の電子化・ペーパレス化」に取り組む企業は55.8%に上る一方、「電子商取引の実施」は16.1%、「電子決済導入」は25.1%にとどまります*1。書類を電子化する企業は多くても、商流そのものを電子化する企業はまだ少ないのが実態です。
商流とは|商品と代金が動く商取引の流れ(見積・受発注・納品・請求・決済)
商流は見積の提示から始まり、受発注・納品・請求を経て決済で完結します。それぞれの工程は担当する部門や使う仕組みが異なるため、1つのシステムを導入すれば商流全体の費用が確定するわけではありません。
本記事が扱う範囲|紙書類のスキャン保存とは別である
「商流電子化 費用」で検索すると、紙書類のスキャン代行サービスの単価が上位に表示される場合があります。しかし、スキャン代行は既存の紙書類を画像化する作業であり、取引そのものを電子データでやり取りする商流電子化とは領域が異なります。本記事は後者、つまり見積から決済までの取引フローを電子化する費用を扱います。
費用が「1本の見積」にまとまらない理由|工程ごとに担当部門も仕組みも違う
見積は営業部門、受発注は購買・営業部門、請求は経理部門というように、工程ごとに担当が分かれるケースが少なくありません。使うシステムや取引先との接続方法も工程ごとに異なるため、費用は工程単位で積み上がっていきます。次章では、工程別に発生する費目を確認しましょう。
工程別の費用の内訳|5工程それぞれに何が立つか
商流を5工程に分けると、各工程で発生する費目の性格が見えてきます。以下では工程ごとに、費用が発生しやすいポイントを解説します。金額そのものは取引規模や既存システムの有無で大きく変わるため、ここでは費目の種類と発生タイミングに範囲を絞ります。
見積工程|様式の統一、承認フロー、有効期限の管理
見積工程では、見積書の様式統一や社内承認フローの電子化にかかる費用が中心になります。取引先ごとにフォーマットが異なる場合は、変換や個別対応のための費用が積み増されます。
受発注工程|取引先ごとの接続、基幹システムとの連携
受発注工程は、取引先との接続方式(EDI・Web発注システム等)や基幹システムとの連携にかかる費用が発生する工程です。受発注工程だけを取り出した費用の内訳・区分ごとの相場観については、別記事「WEB受発注の費用」に譲り、本記事の範囲は工程間の受け渡しまでです。
納品工程|納品書・検収データの受け渡し
納品工程では、納品書の発行と検収データの受け渡しにかかる費用が発生します。検収が紙の押印運用のままだと、電子化した受発注データとの突き合わせに手作業が残ります。
請求工程|電子交付の同意取得、締め請求への対応、デジタルインボイスへの準拠
請求工程では、電子交付の同意取得や締め請求への対応にかかる費用に加え、デジタルインボイスの標準仕様であるJP PINT(Peppol BIS Standard Invoice JP PINT。国際規格Peppolに準拠した日本向けの電子インボイス仕様)への準拠を検討する費用が発生します*5。JP PINTの管理はデジタル庁が担っていますが、導入効果を数値で示す公式な記述は確認できませんでした。効果を断定せず、標準仕様への準拠は選択肢の1つという位置づけです。
決済工程|電子記録債権・振込への切り替え、決済手数料の負担設計
決済工程では、手形・小切手から電子記録債権やインターネットバンキング振込への切り替えにかかる費用や、決済手数料の負担設計にかかる費用が発生します。詳しくは後述の制度対応の項目で扱います。
| 工程 | 初期費用 | 利用料 | 工程間連携 | 制度対応 |
|---|---|---|---|---|
| 見積 | 様式・承認フローの設定 | 見積作成システム利用料 | 受発注システムへのデータ連携 | - |
| 受発注 | 取引先接続の初期設定 | 受発注システム利用料 | 基幹システムとの連携設定 | 取適法対応(書面又は電磁的方法の明示) |
| 納品 | 検収データ様式の設定 | 納品・検収管理システム利用料 | 受発注データとの突合設定 | - |
| 請求 | 電子交付同意取得の仕組み整備 | 請求システム利用料 | 納品データとの連携設定 | 電子帳簿保存法・インボイス対応 |
| 決済 | 振込・電子記録債権の切替設定 | 決済手数料 | 請求データとの照合設定 | 手形・小切手からの切替対応 |
費用を押し上げるのは工程数ではなく「電子と紙の境目」
ここまで工程ごとの費目を見てきました。本節では、なぜ一部の工程だけを電子化しても総額が下がりにくいのか、その理由を公的調査のデータから確認します。
部分導入が生む転記作業|受発注は電子、請求は紙、という混在状態
受発注は電子化したものの、請求や決済が紙のまま残っていると、担当者は両者のデータを手作業で突き合わせる必要が生じます。この転記・再入力の手間は、システム利用料には表れない隠れたコストです。
取引先ごとの個別対応が積み上がる|Web-EDIの弊害を「感じている」53.0%
中小企業庁の委託調査では、電材卸業界(回答企業132社)のうち53.0%が、取引先ごとに仕様の異なるWeb-EDI(パソコン等のWebブラウザから取引先のEDIシステムにログインして受発注する仕組み)に業務負担を「感じている」と回答しています*2。取引先の数だけ画面や操作方法が異なると、社内システムへの再入力作業が発生しやすくなります。1社の情報システム担当者が複数の取引先仕様を把握するには、業務フローと各社のシステム仕様の両方を理解する工数が必要になり、負担は取引先数に比例して増えていきます。
境目の多さは維持コストに表れる|同じ受発注でも鉄鋼42.7%・電材卸42.3%と水準が分かれる
同調査では、受発注システムの年間の利用・維持管理コストの水準にも業界差が見られます。鉄鋼業界(回答82社)では「5万円以上〜30万円未満」が42.7%と最も多いのに対し、電材卸業界(回答97社)では「100万円以上」が42.3%と最も多く、業界によって水準が大きく異なります*2。この数値は初期費用ではなく年間の維持管理コストであり、取引先数や接続方式の違いが反映されていると考えられます。受発注工程単体の費用区分と相場の読み方は、別記事「WEB受発注の費用」で詳しく扱っています。
自社の数字でこの負担を確かめるには、無料相談で要件を整理するのが近道です。
境目を減らす打ち手|工程をまたぐデータ項目を先に揃える
境目のコストを減らすには、取引先コード・商品コード・単価・締め日といった、工程をまたいで使うデータ項目を先に統一しておくことが有効です。項目がバラバラなままシステムだけを増やすと、連携のたびに変換作業が必要になり、費用がかさみます。
中小企業で実際に進んでいる電子化と、進んでいない電子化
中小機構の調査から、DXに取り組む企業(既に取り組んでいる、または取り組みを検討している企業)が実際に何を電子化しているかを見ていきます。母集団はDXに取り組む企業391社(複数回答)です*1。
取組内容の実態|文書の電子化55.8%に対し、電子決済導入25.1%・電子商取引の実施16.1%
最も取り組まれているのは「文書の電子化・ペーパレス化」で55.8%です。一方、商流に直結する「電子決済導入」は25.1%、「電子商取引の実施」は16.1%にとどまります*1。書類を電子化する動きに比べ、取引そのものを電子化する動きは緩やかに進んでいるのが現状です。
なぜ商流の電子化が後回しになるのか|人材と予算の課題
DXに取り組む企業1,000社(複数回答)を対象にした調査では、課題として「ITに関わる人材が足りない」が28.3%、「予算の確保が難しい」が26.0%、「DX推進に関わる人材が足りない」が25.6%という結果になっています*1。人材と予算の両方が制約となり、書類の電子化に比べて投資判断が重い商流の電子化は後回しにされやすいと考えられます。
従業員20人以下では予算の課題がさらに重い
従業員規模20人以下の企業522社(複数回答)に限ると、「予算の確保が難しい」の回答割合は28.1%まで上がります*1。全体の値(26.0%)と比べて、小規模企業ほど予算面の制約が重いことが分かります。この母集団は全体の集計とは異なるため、単純に並べて比較する際は規模別の数値であることに留意が必要です。
それでも成果は出ている|業務の自動化・効率化52.0%
成果が出ている企業148社(複数回答)に成果の内容を尋ねた調査では、「業務の自動化、効率化」が52.0%、「コストの削減、生産性の向上」が43.9%という結果です*1。人材・予算の制約はあるものの、電子化に着手した企業では具体的な成果が確認されています。
制度対応の費用(1)決済|手形の電子化はコストを減らす側に働く
ここからは、費用を増やす面と減らす面の両方を持つ3つの制度を順に見ていきます。まず決済工程に関わる、手形・小切手の電子化についてです。
電子交換所における交換は2026年度末までにゼロが目標、2027年度初から廃止
金融庁の発表によれば、電子交換所における手形・小切手の交換枚数をゼロにすることが2026年度末までの目標とされ、2027年度初からは電子交換所での交換自体が廃止されます*3。これは電子交換所における交換の廃止であり、手形制度そのものが法的に廃止されるわけではありません。
切り替え先|電子記録債権やインターネットバンキングによる振込
手形・小切手の主な切り替え先として、電子記録債権(でんさい等)やインターネットバンキングによる振込が挙げられます*3。切り替えには決済システムの設定変更や取引先への周知にかかる費用が発生します。
金融庁が挙げる切り替えのメリット|コスト削減、事務負荷軽減、リスク低減
金融庁は、手形・小切手から電子的な決済手段への切り替えによって、コスト削減・事務負荷軽減・リスク低減が見込まれるとしています*3。切り替えは費用が発生する一方で、印紙税や郵送・保管にかかる事務コストを減らす側にも働きます。急いで対応しなければならないわけではありませんが、切り替え時期を検討する材料として、目標時期を早めに把握しておくことが大切です。
制度対応の費用(2)保存と請求|無償で満たせる要件がある
次に、電子取引データの保存とデジタルインボイスに関する費用を見ていきます。制度対応というと有料システムが必須と思われがちですが、無償で満たせる方法も用意されています。
電子取引データの保存で求められること|改ざん防止の措置と検索機能の確保
電子帳簿保存法(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法の特例に関する法律)では、電子取引で受け取った取引情報を電磁的記録により保存することが義務づけられています。保存にあたっては、改ざん防止の措置と検索機能の確保が求められます(同法規則第4条)*4。
検索機能の確保が不要になる場合|基準期間の売上高が5,000万円以下
国税庁の一問一答(令和8年7月版)によれば、判定期間に係る基準期間の売上高が5,000万円以下の場合、税務職員のダウンロードの求めに応じられることを条件に、検索機能の確保の要件が不要になります*4。ただし、不要になるのは検索機能の確保に限られ、改ざん防止の措置やダウンロードの求めへの対応義務は残ります。
無償で満たす手順|表計算ソフトによる索引簿と事務処理規程
検索機能を有料システムなしで満たす手順として、国税庁は表計算ソフトで索引簿を作成する手順を紹介しています。また、改ざん防止の措置としては、「正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」を定めて運用する取り扱いも認められています*4。いずれも既存の表計算ソフトと社内規程の整備で対応でき、新規のシステム投資を必須とするものではありません。
請求の電子化とデジタルインボイス|デジタル庁が標準仕様JP PINTを管理
請求の電子化を検討する際は、Peppol(国際的な電子文書交換の標準規格)をベースにした日本向けの標準仕様JP PINTが選択肢の1つになります。デジタル庁がJapan Peppol Authorityとして、この標準仕様の管理等を担っています*5。導入による具体的な効果を数値で示す公式な記述は確認できていないため、本記事では標準仕様の存在と管理主体の紹介にとどめます。
制度対応の費用(3)発注書面|電磁的方法でよいが紙の求めには応じる
最後に、受発注工程に関わる取適法(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)の明示義務について確認します。
取適法第4条第1項|給付の内容・代金の額・支払期日等を書面又は電磁的方法により明示
取適法第4条第1項は、委託事業者が中小受託事業者に対し、給付の内容・代金の額・支払期日等の事項を書面又は電磁的方法により明示しなければならないと定めています*6。この規定は2026年1月1日に施行されました。
第4条第2項|電磁的方法で明示した場合でも、書面の交付を求められたら遅滞なく交付
電磁的方法で明示した場合であっても、中小受託事業者から書面の交付を求められたときは、遅滞なく書面を交付する義務が残ります*6。つまり「電子化したから紙は不要になる」とは限りません。紙の出力経路を残すことを前提に費用を見積る必要があります。
対象範囲の注意|対象は製造委託等であり、単純売買は対象外
取適法の対象は製造委託等に限られ、店舗の商品仕入れのような単純な売買取引は対象外です*6。自社の取引が製造委託等に該当するかどうかは、取引の実態に応じた個別の確認が欠かせません。
複数工程をまとめて申請する|デジタル化・AI導入補助金2026の使い方
ここまでの費用は、補助金の活用によって自己負担を抑えられる場合があります。デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠を例に、対象経費と申請条件を確認します。本記事では、工程を束ねてプロセス数の区分に届かせるという観点に絞って整理します。
通常枠の補助率と補助額|1プロセス以上5万円以上150万円未満、4プロセス以上150万円以上450万円以下
デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠では、補助率は1/2以内(賃上げに関する要件を満たす場合は2/3以内)とされ、補助対象のプロセス数に応じて、1プロセス以上は5万円以上150万円未満、4プロセス以上は150万円以上450万円以下の区分が設けられています*7。
補助対象になる経費|ソフトウェア購入費、クラウド利用料(上限2年分)、導入設定、導入コンサルティング、保守サポート等
補助対象経費には、ソフトウェア購入費・クラウド利用料(上限2年分)・導入設定費・導入コンサルティング費・保守サポート費等が含まれます*7。
商流電子化との相性|複数工程をまとめると「4プロセス以上」の区分に届きうる
見積・受発注・請求など複数工程をまとめて電子化する計画は、プロセス数の要件を満たしやすくなる可能性があります。個別の工程を単発で導入するより、まとめて申請する方が高い補助額の区分に届きやすくなります。
申請前に確認すること|登録済みのITツールであること、締切
申請にあたっては、導入するツールが補助金事務局に登録済みのITツールであることを確認する必要があります。5次締切分の締切は2026年9月29日(火)17:00です*7。補助金の条件は公募回次ごとに変わるため、本記事の内容は執筆時点の公募回次に基づくものであり、申請前に公式サイトで最新情報をご確認ください。
| 経費項目 | 対象可否 | 備考 |
|---|---|---|
| ソフトウェア購入費 | 対象 | 通常枠の対象経費*7 |
| クラウド利用料 | 対象(上限2年分) | 上限を超える期間分は対象外*7 |
| 導入設定費 | 対象 | 通常枠の対象経費*7 |
| 導入コンサルティング費 | 対象 | 通常枠の対象経費*7 |
| 保守サポート費 | 対象 | 通常枠の対象経費*7 |
| ハードウェア費 | 枠・条件による | 公募要領の該当箇所を要確認。本記事では可否を断定しない |
商流電子化を安く進める順番|見積依頼の前に埋めるチェックリスト
ここまでの内容を踏まえ、見積を依頼する前に自社で埋めておくべき項目を、実施順序に沿って整理します。順位の根拠は着手の依存関係、つまり前の項目が終わらないと次に進めない順番です。
見積依頼前に埋めるチェックリスト8点(順位根拠:着手順序の依存関係)
- 商流の5工程を書き出し、いま紙で動いている工程に印を付けます。
- 工程ごとの月間件数を数えます(見積書・注文書・納品書・請求書・支払の各通数)。
- 工程をまたいで使うデータ項目(取引先コード・商品コード・単価・締め日)を1枚に揃えます。
- 紙と電子の境目が最も少なくなる組み合わせを1つ選び、そこから着手します。
- 電子取引データの保存方法を決めます(有料システム、または索引簿+事務処理規程*4)。
- 手形・小切手を使っている場合は、電子記録債権や振込への切り替え先を決めます*3。
- 補助金の対象要件と締切を確認し、まとめて申請できる工程を束ねます*7。
- 初期費用・利用料・工程間連携・制度対応を含めた3年総額の様式を作り、全社に同じ様式で回答させます。
このチェックリストを自社だけで埋めるには、業務フロー・取引先のシステム仕様・電子帳簿保存法や取適法といった制度要件を横断的に把握できる担当者が必要です。工程ごとに担当部門が分かれている企業では、部門をまたいだヒアリングと調整の工数もかかります。工程をまたぐデータ項目の整理や制度要件の確認を自社だけで進めるのが難しい場合は、専門パートナーに相談することで、要件整理の段階から着手できます。
まとめ|商流電子化の費用を決める3つの判断軸
本稿では、商流電子化の費用を「1本の見積」ではなく工程ごとの積み上げとして整理しました。要点を3つに集約すると次の通りです。第一に、費用は見積・受発注・納品・請求・決済の5工程それぞれに発生し、総額を決めるのは工程数ではなく電子と紙の境目です。第二に、電子帳簿保存法・手形の電子化・取適法という3つの制度は、費用を増やす面と減らす面の両方を持ちます。第三に、複数工程をまとめて電子化する計画は、補助金の対象区分にも届きやすくなります。この3つの判断軸をもとに、まずは自社の商流を5工程に書き出すところから始めることをおすすめします。
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
よくある質問
商流電子化はどの工程から始めるのが費用対効果が高いですか。
紙と電子が混在する境目が最も少なくなる工程の組み合わせから始めるのが効果的です。電子化した工程と紙のまま残る工程が隣り合うと転記・再入力の手間が発生するため、境目の数を基準に着手順を決めると、追加費用を抑えやすくなります。
受発注だけ電子化しても効果は出ないのですか。
受発注だけの電子化でも業務の自動化・効率化といった効果は見込めますが、請求・決済が紙のまま残ると工程間の突き合わせ作業が残ります。中小企業庁の調査では、電材卸業界の53.0%がWeb-EDIの取引先ごとの仕様差による業務負担を「感じている」と回答しており*2、隣接工程との連携まで含めて検討することが望ましいでしょう。
電子帳簿保存法に対応するために有料のシステムは必須ですか。
必須ではありません。国税庁の一問一答では、表計算ソフトによる索引簿の作成と、正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理規程の整備により、無償で要件を満たす手順が示されています*4。基準期間の売上高が5,000万円以下の場合は検索機能の確保の要件自体が不要になります。
手形をやめると費用はどう変わりますか。
電子記録債権や振込への切り替え時には設定・周知の費用が発生しますが、金融庁はコスト削減・事務負荷軽減・リスク低減が見込まれるとしています*3。電子交換所における交換は2027年度初から廃止される予定であり、切り替えの検討時期を早めに把握しておくとよいでしょう。
商流電子化の費用は補助金でどこまで賄えますか。
デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠では、補助対象のプロセス数に応じて上限額が変わり、4プロセス以上の区分では150万円以上450万円以下が対象になります*7。補助率は1/2以内(要件を満たす場合は2/3以内)です。条件は公募回次ごとに変わるため、申請前に公式サイトで最新の要件を確認してください。
- *1 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業のDX推進に関する調査(2025年)アンケート調査報告書」(令和8年2月)
- *2 出典:中小企業庁「受発注のデジタル化に関する推進方策 報告書」(2022年3月)
- *3 出典:金融庁「手形・小切手機能の全面的な電子化について」
- *4 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和8年7月)
- *5 出典:デジタル庁「デジタルインボイス(日本におけるデジタルインボイスの標準仕様:JP PINT)」
- *6 出典:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(第4条・施行日2026年1月1日)
- *7 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠」(5次締切分)
画像の出典元