◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 電子データ交換(EDI)の一次情報による定義と、通信プロトコル・メッセージという2つの取り決めの中身を確認します。
- メール添付・FAX複合機・Web画面入力がEDIに該当するかどうかを、1つの判定基準で仕分けます。
- 電子帳簿保存法上の「電子取引」とEDI取引の関係を条文原文で確認し、自社の対応状況を3つの問いで点検します。
目次
電子データ交換(EDI)とは──通信プロトコルとメッセージを事前に取り決めた企業間の直接交換
電子データ交換(EDI)とは、企業間で取引に用いるデータのやり取り方法を指します。通信プロトコルとメッセージ形式を事前に取り決め、コンピュータ間で直接データを交換する仕組みです。GS1 Japanは「異なる企業間で取引のためのデータを、通信回線を介してコンピュータ間で交換すること」と定義しています*1。
通信プロトコルとメッセージ──EDIが機能するために欠かせない2つの取り決め
GS1 Japanの解説では、EDIを機能させるために事前に取り決める項目を2つ挙げています。1つは「通信プロトコル」で、コンピュータ同士が正しくデータをやり取りするための取り決めです*1。もう1つは「メッセージ」で、やり取りするデータの書き方の取り決めを指します*1。
この2つが取引先との間で文書化されていて初めて、双方のコンピュータが人手を介さずにデータを解釈できます。逆に言えば、取り決めが曖昧なまま個別に運用している状態は、EDIの定義が想定する状態とは言えません。
「電子データ交換」と「EDI」は同一の仕組みを指す略語と正式名称の関係
EDIはElectronic Data Interchangeの略で、日本語では電子データ交換と訳されます*1。呼び方が2つあるだけで、指している仕組みは同一です。本稿でもこの後は両者を同義として扱います。
メール添付・FAX複合機・Web画面入力の該当可否──分かれ目は事前の取り決めと再入力の有無
判定基準は「事前の取り決め」と「人の再入力の有無」の2点
GS1 Japanの定義に立ち返ると、EDIは通信プロトコルとメッセージを取り決めたうえでコンピュータ間が直接データを交換する仕組みです*1。この定義から導ける実務上の判定基準は2つです。1つは、通信プロトコルとメッセージ形式を取引先と事前に取り決めているかどうかです。もう1つは、受け取った側の担当者が、届いたデータを見ながら自社システムへ手で打ち直していないかどうかです。どちらか一方でも欠けていれば、コンピュータ間の直接交換とは言えず、EDIの定義から外れます。
この基準を使うと、社内で「EDIでやり取りしている」と呼んでいる方法が、実際には定義上のEDIに当たらないケースを見分けられます。次の仕分け表で具体的な方法ごとに整理します。
| やり取りの方法 | 人の再入力の要否 | EDIに該当するか | 電子取引に該当するか |
|---|---|---|---|
| メール添付のCSVファイル | 通常は不要(読み込みで済む場合が多い) | 該当しない(通信プロトコル・メッセージの事前取り決めがない一往復のやり取り) | 該当する*4 |
| FAX機能を持つ複合機 | 必要(紙面相当のイメージを人が読んで転記する運用が残りやすい) | 該当しない | 該当する*4 |
| 取引先Webサイトへの画面手入力 | 必要(受注側が画面を見ながら入力する) | 該当しない | 該当する*4 |
| 標準規約に基づくAPI・専用線連携 | 不要(コンピュータ間で自動処理) | 該当する*1 | 該当する*4 |
Web-EDIと呼ばれる方式は、受注側に画面入力が残ると定義から外れる
取引先が用意したWeb画面へブラウザ経由でログインし、専用フォームから発注データを送る方式は、一般にWeb-EDIと呼ばれています。ただし受注側の担当者が取引先ごとに異なる画面を開いて入力しているなら、コンピュータ間の直接交換には当たらず、GS1 Japanの定義には当てはまりません*1。この場合も電子帳簿保存法上の電子取引には該当します*4。
自社が使っている方式のどこまでが自動化されていて、どこから先が手作業なのかを可視化すると、次の投資判断がしやすくなります。無料相談で自社の要件を整理するのも1つの方法です。
電子帳簿保存法2条5号が定める「電子取引」の範囲とEDI取引の関係
電子帳簿保存法*2(正式名称:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)は、EDI取引を含む上位概念として「電子取引」を定義づけています。この節では条文原文をもとに、EDI取引がその中でどう位置づけられるかを確認していきます。
電子帳簿保存法2条5号の条文原文──「取引情報の授受を電磁的方式により行う取引」
同法2条5号は電子取引を次のように定義します。「電子取引 取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいう。以下同じ。)の授受を電磁的方式により行う取引をいう。」*2
この条文には「コンピュータ間で直接」という限定がありません。したがって電子取引は、EDIのような自動化された交換だけでなく、人の操作を伴う電磁的なやり取りも広く含む概念だと分かります。
国税庁一問一答が電子取引の具体例としてEDI取引をFAX複合機・電子メールと並列に例示
国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和7年6月版)の問2は、電子取引の具体例として「いわゆるEDI取引、インターネット等による取引、電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含みます。)、ペーパーレス化されたFAX機能を持つ複合機を利用した取引、インターネット上にサイトを設け、当該サイトを通じて取引情報を授受する取引等」を列挙しています*4。
ここでEDI取引は、電子メールやFAX複合機と並ぶ1つの選択肢として扱われています。法令・通達の側は「EDIかどうか」を区別基準にしておらず、電磁的方式かどうかだけで電子取引該当性を判断している点が読み取れます。
保存すべきデータは「やり取りしたデータそのもの」に限られない
電子帳簿保存法7条は、電子取引を行った保存義務者に対し、その取引情報に係る電磁的記録の保存を義務づけています。「所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。」*3
この保存の対象について、国税庁一問一答の問40は「EDI取引で授受した電子取引の取引情報として保存すべきデータは、EDI取引で実際に授受したデータそのものに限定されておらず、(中略)その取引内容が変更されるおそれのない合理的な方法により編集されたデータにより保存することも可能」としています*5。一方で問41は、コード変換については変換テーブルによる自動変換かつ変換テーブルの併存保存が条件であり、手動による変換は合理的な編集に当たらないとしています*6。
つまり自動変換の範囲内であれば保存形式を変えても差し支えありませんが、人の手が加わる工程が入ると保存要件を満たさなくなるおそれがあります。保存要件の詳しい実務手順は別記事で扱います。
経済産業省の統計上の区分──EDIは「BtoB-EC」に含めて集計される
2024年のBtoB-EC市場規模514.4兆円とEC化率43.1%の算出対象
経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2025年8月26日公表)が、2024年のBtoB-EC市場規模を示しています。企業間電子商取引の市場規模は514.4兆円で、前年の465.2兆円から10.6%増加しました*8。EC化率は43.1%で、前年比3.1ポイント増となっています*8。
この調査の注記では、EC化率の算出対象を「BtoB-ECにおいては業種分類上『その他』以外とされた業種」と定めています*8。調査上のBtoB-ECには、標準規約に基づくEDIだけでなく、専用線や個別仕様のオンライン受発注システムを介した取引も含まれると考えられます。GS1 Japanが定義する狭義のEDIより広い集計単位である点に注意が必要です。
EC化率の上昇はEDIによる既存の電子化分を含む水準として読む
BtoB取引は業界によって、レガシーEDIが数十年前から普及している分野があります。EC化率43.1%という水準*8は、近年新たに電子化された取引だけでなく、以前から稼働している既存のEDIの取引額も合算した結果です。したがって「EC化率が高い業界だから自社も電子化が進んでいる」と単純に読み替えることはできません。自社の実際のやり取りが、定義上のEDIなのか、それとも人手を伴う電子取引なのかは、別途この記事のH2-2・H2-3の基準で確認する必要があります。
定義から見た自社の現在地──3つの問いで確認する
ここまでの定義を踏まえると、自社の受発注の現状を次の3つの問いで点検できます。
自社の現在地を点検する確認順3点/順位根拠:手順としての依存関係
- 取り決め文書化の確認:通信プロトコルとメッセージ形式が取引先との間で書面化されているかを最初に確認します*1。ここが曖昧なままだと、以降の確認の前提が成り立ちません。
- 再入力の有無の確認:受け取ったデータを担当者が目視で自社システムへ打ち直していないかを確認します。この工程が残る場合、電子帳簿保存法上の電子取引には該当しても*4、EDIの定義には当てはまりません。
- 通信基盤の期限の確認:固定回線(INSネット/ISDN)を使っている場合、NTT東日本は新規申込受付を2024年8月31日に終了し、サービス提供自体を2028年12月31日に終了すると公表しています*7。移行時期を合わせて把握します。
まとめ──電子データ交換(EDI)の定義を確定させると決まる3つのこと
本稿では電子データ交換(EDI)の定義と、その境界線を一次情報に基づいて整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、EDIとは通信プロトコルとメッセージ形式を事前に取り決めたコンピュータ間の直接交換を指します。第二に、受け取った側で人が再入力するかどうかが、EDIに該当するかどうかの実務上の判定基準になるという点です。第三に、電子帳簿保存法上の電子取引はEDIより広い概念であり、メール添付やFAX複合機を使った取引も保存義務の対象に含まれます。
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
よくある質問
電子データ交換とEDIは違うものですか。
どちらも同じものを指します。EDIはElectronic Data Interchangeの略で、日本語では電子データ交換と訳されます*1。呼び方が2つあるだけで、指している仕組みは同一です。
取引先のWebサイトに注文内容を手入力しているのはEDIですか。
取引先のWebサイトへの手入力はEDIに該当しません。GS1 Japanの定義では、通信プロトコルとメッセージ形式を事前に取り決めたうえでコンピュータ間が直接データを交換する仕組みをEDIと呼びます*1。受け取った側の人が画面へ内容を打ち込む工程が残る場合は、この定義から外れます。ただし電子帳簿保存法上の電子取引には該当します*4。
メールにCSVを添付して送る方法は電子帳簿保存法の対象ですか。
メール添付でCSVを送る方法も電子帳簿保存法の電子取引に該当します。国税庁の一問一答は、電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含む)を電子取引の具体例として挙げています*4。取引情報に当たるデータを添付した場合は、その電磁的記録の保存義務の対象になります*3。
EDIで受け取ったデータは、受け取った形式のまま保存しなければなりませんか。
受け取った形式のまま保存する必要はありません。国税庁の一問一答は、取引内容が変更されるおそれのない合理的な方法で編集したデータであれば保存が認められるとしています*5。ただし、手動での転記やコード変換は合理的な編集に当たらないとされています*6。
- *1 出典:GS1 Japan(一般財団法人流通システム開発センター)「EDIとは?」
- *2 出典:e-Gov法令検索「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」第2条第5号(2025年4月1日施行)
- *3 出典:同上 第7条(電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存)
- *4 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和7年6月)問2
- *5 出典:同上 問40
- *6 出典:同上 問41
- *7 出典:NTT東日本「INSネットの新規申込受付・提供終了について」(2024年3月7日)
- *8 出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2025年8月26日公表)
画像の出典元
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