◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 伝票の電子化は、まず手元の伝票を3つの経路に仕分けることが出発点になります。
- 経路によって電子化が任意か義務かが変わり、満たすべき要件も異なります。
- システム更改の移行期間中や紙原本を処分した後に要件を崩すと、猶予は認められません。
目次
伝票の電子化・移行とは、経路ごとに要件が変わる仕組み
伝票の電子化・移行とは、納品書や請求書などの伝票の作成・授受・保存を紙からデータへ切り替え、電子帳簿保存法の定める経路ごとの要件を満たす状態へ移すことです。2024年の国内BtoB-EC市場規模は514.4兆円*1に達しています。
電磁的記録とは、パソコンやシステムで作成・保存され、紙の形を持たないデータです。電子取引とは、注文書や請求書などの取引情報を電磁的方式でやり取りする取引を指します。
スキャナ保存とは、紙の書類をスキャナで読み取り電磁的記録として保存する制度です。タイムスタンプとは、ある時刻にその電子データが存在し、その後改変されていないことを証明する仕組みを指します。この4つの用語が、以降の説明の土台になります。
移行前に確認する優先順3点
伝票の電子化・移行に着手する前に、順序立てて確認しておきたい点を整理します。順位根拠は実施順序です。
移行前に確認する優先順3点/順位根拠:着手順序
- 対象範囲の確定:伝票の種類・年間枚数・取引先ごとの授受方法を洗い出します。
- 経路の判定:自己作成・紙受領・データ授受のいずれに当たるかを1件ずつ仕分けます。
- 紙をやめる時期の設定:経路ごとの要件を満たせる状態を確認したうえで移行日を決めます。
自己作成・スキャナ保存・電子取引 ― 伝票を仕分ける3つの経路
伝票の電子化・移行は、まず手元の伝票を3つの経路に仕分けることから始まります。経路によって根拠条文が異なり、任意か義務かも変わるため、最初の仕分けが以降の設計をすべて左右します。なお、注文書そのものを紙からどう変えるかは、発生源側の移行として別に扱うテーマです。手書き注文書を電子化して移行する手順を参照してください。
経路A|自己が一貫して作成した伝票は電磁的記録で保存(法第4条第2項)
自社のシステムで最初から最後まで作成する納品書や請求書の控えは、電子帳簿保存法第4条第2項に基づき、電磁的記録の保存をもって書面の保存に代えることができます*4。この経路は任意の選択であり、紙で保存する運用を続けても法令違反にはなりません。
経路B|紙で受領・作成した伝票のスキャナ保存は任意(法第4条第3項)
取引先から紙で届いた伝票や、紙で作成した伝票も対象になります。規則で定める装置により電磁的記録に記録すれば、その保存をもって書面の保存に代えることができます(法第4条第3項)*4。これがスキャナ保存であり、選択するかどうかは事業者の任意です*3。
経路C|データで授受した伝票は電子取引として保存が義務(法第7条)
電子メールやEDI、Web受発注システムなどデータでやり取りした伝票は、電子取引に該当します。所得税・法人税に係る保存義務者は、電子取引した場合には、その取引情報に係る電磁的記録を保存しなければなりません(法第7条)*4。紙に出力して保存する方法への差し替えは認められておらず、経路A・Bとは違って選択の余地がありません。
| 経路 | 対象となる伝票の例 | 根拠条文 | 義務か任意か | 紙原本の扱い |
|---|---|---|---|---|
| 経路A|自己が一貫して作成 | 自社システムで一貫作成する納品書・請求書の控え | 法第4条第2項*4 | 任意 | 電磁的記録に代えれば紙保存は不要です。 |
| 経路B|紙で受領・作成しスキャナ保存 | 取引先から紙で届いた納品書・領収書等 | 法第4条第3項・規則第2条第6項*4*3 | 任意 | 入力期間内に読み取り、最低限の同等確認を終えた後であれば即時に廃棄できます。入力期間を経過してから読み取った場合は紙も保存します。*3 |
| 経路C|データで授受 | メール添付・EDI・Web受発注でやり取りする伝票データ | 法第7条*4 | 義務 | 紙に出力しての保存では代替できません。 |
棚卸から定着まで、伝票電子化の移行5ステップ
伝票を3つの経路に仕分けたら、次に移行そのものの進め方を決めます。ここでは棚卸から定着までの5段階に分けて手順を示します。
- 棚卸:伝票の種類・年間枚数・授受方法を数えます。
- 仕分け:経路A・B・Cに割り付け、経路Cの伝票から着手します。
- 要件設計:改ざん防止措置と検索機能の確保をどう満たすかを決めます。
- 併走:一定期間は紙と電子を並行させ、同等確認と検索の運用を試します。
- 切替・定着:紙の起票を止め、原本の廃棄基準を規程の運用に落とし込みます。
①棚卸:伝票の種類・年間枚数・授受方法を数える
まず、扱っている伝票の種類ごとに年間枚数と授受方法(自社作成・紙受領・データ授受)を数えます。この段階の精度が、次の仕分けと要件設計の土台になります。
②仕分け:経路A/B/Cに割り付け、経路Cから先に手を付ける
棚卸した伝票を経路A・B・Cへ割り付けます。経路Cは電子取引としての保存が義務であるため、対応の遅れがそのまま法令上のリスクにつながります。優先順位としては経路Cから着手する進め方が現実的です。
受発注そのものをオンライン化する場合は、伝票が電子化の対象ではなく最初からデータとして発生する形に変わります。この点はオンライン受発注への移行で扱う論点です。自社の商流に合わせた要件整理を進めたい場合は、無料相談で要件を整理するのが近道です。
③要件設計:改ざん防止措置と検索機能の確保をどう満たすかを決める
経路CとBについては、改ざん防止措置と検索機能の確保を、どの方法で満たすかを決めます*2。改ざん防止措置には、タイムスタンプの付与、訂正削除の記録が残るシステムの利用、事務処理規程の整備・運用のいずれかを用います*2。方法の選び方は次章の要件表をご覧ください。
④併走:一定期間は紙と電子を併走させ、同等確認と検索の運用を試す
要件設計が終わったら、いきなり紙を止めるのではなく、一定期間は紙と電子の運用を並行させます。スキャナ保存であれば同等確認の手順を、電子取引であれば検索機能の運用を、実際の業務で試す期間です。併走期間の長さを決める目安になるのが入力期間で、書類の受領等後「その業務の処理に係る通常の期間」は最長2か月の業務サイクルまでが通常の期間として取り扱われます(取扱通達4-18)*3。
⑤切替・定着:紙の起票を止め、原本の廃棄基準と規程の運用に移す
併走で問題が無ければ、紙の起票を止めて運用を電子側に一本化します。紙原本をいつ廃棄できるかの基準は、次の次の章で扱う同等確認のルールに従います。
電子取引とスキャナ保存、それぞれの保存要件を表で確認
経路ごとの保存要件は、電子取引データとスキャナ保存で内容が異なります。区分ごとの詳細な解説はBtoB ECの電子帳簿保存法対応にまとめているため、ここでは移行の判断に必要な範囲を表で確認します。
電子取引データの保存要件は真実性・可視性の4項目
電子取引データの保存にあたっては、真実性や可視性を確保するための要件を満たす必要があります(規則第2条第2項、第6項、第4条第1項)*2。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| システム概要書の備付け | 自社開発のプログラムを使用する場合に、処理システムの概要を記載した書類を備え付けます。*2 |
| 見読可能装置の備付け | ディスプレイやプリンタ等を備え付け、速やかに出力できる状態にしておきます。*2 |
| 検索機能の確保 | 取引年月日・取引先・取引金額等で検索できる状態にしておきます。*2 |
| 改ざん防止措置(いずれか一つ) | タイムスタンプ付与後の授受、速やかなタイムスタンプの付与、訂正削除の記録が残るシステムの利用、訂正削除の防止に関する事務処理規程の整備・運用のいずれかを講じます。*2 |
スキャナ保存の要件は重要書類・一般書類・過去分重要書類で異なる
スキャナ保存についても、真実性や可視性を確保するための要件を満たす必要があります(規則第2条)*3。重要書類・一般書類・過去分重要書類のいずれに当たるかで、要件の一部が変わります。
| 要件 | 重要書類 | 一般書類 | 過去分重要書類 |
|---|---|---|---|
| 入力期間の制限 | 必要 | - | - |
| 解像度200dpi以上での読み取り | 必要 | 必要 | 必要 |
| カラー256階調(約1677万色)以上での読み取り | 必要 | グレースケール可 | 必要 |
| タイムスタンプの付与 | 必要(代替措置あり) | 必要(代替措置あり) | 必要(代替措置あり) |
| ヴァージョン管理 | 必要 | 必要 | 必要 |
| 帳簿との相互関連性の保持 | 必要 | - | 必要 |
| 見読可能装置(14インチ以上のカラーディスプレイ等)の備付け | 必要 | グレースケール可 | 必要 |
| 検索機能の確保 | 必要 | 必要 | 必要 |
| 整然・明瞭出力 | 必要 | 必要 | 必要 |
| 電子計算機処理システムの開発関係書類等の備付け | 必要 | 必要 | 必要 |
| 事務手続を明らかにした書類の備付け・所轄税務署長等への適用届出書の提出 | - | - | 必要 |
出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」(令和8年7月)問10*3。
ここでいう一般書類とは、資金や物の流れに直結・連動しない書類として規則第2条第7項に基づき国税庁長官が定めるものを指し、それ以外(決算関係書類を除く)が重要書類です*3。過去にさかのぼって紙の伝票をスキャンする場合は過去分重要書類に当たり、事務手続を明らかにした書類の備付けに加えて所轄税務署長等への適用届出書の提出が必要です*3。移行計画では、この届出を切替日より前の工程に置いてください。
基準期間の売上高5,000万円以下なら検索機能の確保は不要
電子取引データについては、判定期間に係る基準期間(通常は2年前)の売上高が5,000万円以下である場合、検索機能の確保が不要になります*2。税務調査の際にダウンロードの求めに応じられること、または出力書面を日付・取引先ごとに整理して提示・提出できることが前提です*2。
なお、令和5年度の税制改正前(令和5年12月31日までに行う電子取引)については、この基準は1,000万円以下でした*2。この免除は電子取引データ保存における取り扱いであり、スキャナ保存の検索機能とは別の規定です。
移行で見落とすと戻せない3つの要件
ここまでの経路と要件を踏まえたうえで、移行そのものに固有のリスクを3つ確認します。システム間のデータ移行手順そのものについては受発注システムのデータ移行手順で扱っており、本節では電子帳簿保存法上の改ざん防止措置に絞って説明します。
旧システムから新システムへの移行中も改ざん防止措置が必要(問102)
電子取引データを保存しているシステムを入れ替える場面を考えます。旧システムから電磁的記録を取り出し、新システムへ取り込むまでの移行期間中は、改ざん防止措置が欠かせません*2。タイムスタンプを引き継げない場合であっても、データ移行時における訂正削除の防止に関する事務処理規程を定めて備え付け、運用すれば要件を満たせます*2。
システム更改で検索要件を満たせなくなっても、特段の事情がなければ猶予措置は使えない(問95)
令和5年度の税制改正前から、原則どおりの要件で電子取引データの保存ができていた事業者を想定します。特段の事情なく、その後のシステム更改によって検索要件を満たせなくなった場合は、猶予措置の対象になりません*2。猶予措置は、要件に従って保存するための準備が整っていない事業者の実情に配慮した措置であり、すでに原則どおり対応できている事業者を想定したものではないためです*2。ただし、原則どおり対応していた事業者であっても、事業規模の大幅な変更などの事業実態の変化があり、資金繰りや人手不足等の理由で要件に従った保存ができなくなった場合は、猶予措置の対象になり得ます*2。
保存スペースの都合で出力書面を廃棄して要件割れした場合も猶予措置は使えない(問96)
検索機能の確保が不要となる取り扱い(出力書面を日付・取引先ごとに整理して提示できる状態にしておく方法)を使っていた事業者を想定します。保存スペースの都合で、特段の事情なくその出力書面を廃棄したとします。
この場合、要件を満たせなくなっても猶予措置の対象にはなりません*2。移行や省スペース化を進める際は、要件を満たし続けられる方法かどうかを事前に確認する必要があります。
ただし、出力書面を廃棄すること自体が禁じられているわけではありません。廃棄と引き換えに、事後的に次の3点を満たす検索機能を確保したうえで電子データのみを保存していた場合は、検索機能の要件を確保していることになります*2。第一に、取引年月日その他の日付・取引金額・取引先を検索条件として設定できること。第二に、日付または金額について範囲を指定して条件を設定できること。第三に、2以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定できることです。なお、出力書面をスキャナ保存する方法は認められていません*2。
紙の原本はいつ廃棄できるか、同等確認後が境界
スキャナ保存を選んだ場合、紙の原本をいつまで保管するかは移行計画に直結する論点です。国税庁の一問一答は、この境界を具体的に示しています*3。
同等確認を終えた書面は即時に廃棄できる(問3)
スキャナで読み取り、電磁的記録の記録事項と書面の記載事項が同等であることを確認したあとであれば、国税関係書類の書面(紙)は即時に廃棄して差し支えありません*3。折れ曲がり等の有無を含めた最低限の同等確認が前提になります。
入力期間を経過した場合は電磁的記録と併せて紙も保存する
入力期間を経過してから読み取った場合には、電磁的記録と合わせて国税関係書類の書面(紙)を保存する必要があります*3。併走期間の設計では、この入力期間を意識した運用が求められます。
印紙税の過誤納還付には原本の提示が必要
印紙税の納税義務は課税文書を作成したときに成立するため、課税文書に該当する伝票は収入印紙の貼付が必要です。同等確認後であれば、貼付済みの書面も即時に廃棄できます。
ただし、印紙税の過誤納があった場合の還付申請には、過誤納の事実を証する原本の提示が必要です。スキャナデータやその出力書面では受けられません*3。
まとめ:伝票電子化移行の3つの判断軸
本稿では、伝票の電子化・移行を進めるための考え方を整理しました。要点を3つに集約すると次のとおりです。第一に、手元の伝票を経路A・B・Cへ仕分けることが移行設計の出発点になります。第二に、棚卸から定着までの5ステップで進め、経路Cの伝票から優先して着手します。第三に、システム更改や紙原本の廃棄によって要件を崩すと猶予措置は使えないため、移行そのものに伴うリスクの事前確認が欠かせません。
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
よくある質問
伝票をスキャンして保存すれば、電子帳簿保存法の対応は完了しますか。
完了しません。スキャナ保存は自己が受領・作成した紙の伝票を電磁的記録に置き換える任意の選択です*3。取引先とデータでやり取りした伝票は電子取引として法第7条に基づく保存が別途必要になります*4。両者は根拠条文も要件も異なるため、伝票を経路ごとに仕分けたうえで対応する必要があります。
猶予措置を使えば、当面は検索できる状態にしなくてもよいのですか。
猶予措置は、要件を満たすための準備が整っていない事業者を対象にした措置です*2。すでに原則どおりの保存ができていた事業者が、その後のシステム更改によって検索要件を満たせなくなった場合には、この措置の対象になりません*2。
システムを入れ替えるとき、過去の伝票データはどう移せばよいですか。
旧システムから新システムへの移行期間中も、改ざん防止措置を継続する必要があります*2。タイムスタンプを引き継げない場合は、訂正削除の防止に関する事務処理規程を定めて備え付け、運用することで要件を満たせます*2。
電子取引で受け取った伝票と同じ内容の紙も届いた場合、両方を保存する必要がありますか。
電子取引で授受した伝票データは、法第7条に基づき電磁的記録での保存が必要です*4。紙に出力しての保存に置き換えることは認められないため、内容が重複する紙が別途届いた場合でも、データそのものの保存を省略することはできません。
伝票データは何年保存すればよいですか。
法人の場合、帳簿・書類とも保存期間は7年です*2。青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた場合は10年になります*2。インボイス発行事業者として交付した適格請求書の写しについても、同様に7年間の保存が必要です*2。
- *1 出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」(2025年8月26日公表)
- *2 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和8年7月)
- *3 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」(令和8年7月)
- *4 出典:e-Gov法令検索「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」(電子帳簿保存法、現行2025年4月1日施行)
画像の出典元
- 伝票のイメージ/Photo by ron dyar on Unsplash
- 移行のイメージ/Photo by Lightsaber Collection on Unsplash
- 定着のイメージ/Photo by Vitaly Gariev on Unsplash
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