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在庫の引き当ての決め方|有効在庫の考え方から優先順位の設計までを解説します

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 在庫の引き当ての決め方は、対象・優先度・タイミング・払い出し順序という四つの判断軸に分解し、順に決めていきます。
  • 有効在庫は手持在庫から引当済と出荷予定を差し引いた数量で、入荷予定を含めるかどうかは回答の早さと欠品の危うさを見比べて判断します。
  • 企業間電子商取引の市場規模は2024年に514兆5,000億円、EC化率は43.0%まで進み、画面経由の注文に耐える規則の明文化が要ります。
  • ルールの型は先着順・優先度・確保枠の三つが基本で、期限やロットのある在庫では払い出しの順序を別に決めます。

brown cardboard boxes on white metal rack
▽ 写真の出典元

在庫の引き当てとは何かを確かめます

在庫の引き当てとは、受注した注文に対して、どの在庫をどれだけ割り当てて出荷の約束を成立させるかを決める処理です。決め方とは、その割り当ての対象・優先度・タイミング・払い出し順序を、あらかじめ規則として定めておくことを指します。判断軸は四つに分解でき、順に決めていくと社内の議論が空回りしません。逆に四つのどれかが空白のままだと、注文ごとの個別調整が残り、担当者の経験に依存した回答になります。

a large warehouse filled with lots of boxes
▽ 写真の出典元

四つの判断軸は、対象とする在庫の区分、優先度、引き当ての時点、払い出しの順序という順で並べます。前の軸が決まらないと次の軸の選択肢が絞れないため、順番を入れ替えると議論が前へ戻ります。規則を書き始める前に、この四つを一枚の紙に並べ、空欄の残っている軸を確かめておきましょう。空欄が一つでもあれば、その部分は担当者の判断で埋められ、同じ状況で違う回答が生まれます。

受発注の電子化が進むほど、割り当ての規則を明文化する意味が増します。国の電子商取引に関する市場調査では、2024年の企業間電子商取引の市場規模は514兆5,000億円、EC化率は43.0%と公表されました*1。画面から入る注文が増えると、電話やメールでの都度調整では追いつかなくなります。

引き当ては、受注と出荷指示の間に置かれる処理です。注文を受けた時点で、倉庫の棚から商品が動くわけではありません。帳簿の上で「この注文のために確保した」という予約の状態を作り、他の注文が同じ数量を使えないようにします。この予約があるからこそ、次の注文に対して出荷できる数量を正しく答えられます。

出庫やピッキングとの違いは、物が動くかどうかにあります。引き当ては数量の予約であり、ピッキングは棚から商品を集める作業です。予約と作業を同じ言葉で呼んでいると、在庫が減った時点の認識が部署ごとにずれます。用語をそろえる作業は、規則を決める前に済ませておきましょう。

会計上の評価方法と、物理的な払い出しの順序を混同しない点にも注意が要ります。先入先出法は棚卸資産の評価に用いる会計の方法であり、古い在庫から出すという払い出しの規則とは目的が異なります。評価方法を変えずに払い出しの順序だけを変えることもできます。両者を切り分けて議論すると、経理部門との調整が進みます。

規則が定まっていない現場では、同じ数量を二つの注文へ重ねて約束してしまう事態が起こります。出荷直前に数量を削る調整が入ると、倉庫の作業はやり直しになり、緊急配送や再出荷の費用が発生します。物流コストは売上高に対する比率として毎年調査され、業種別に公表されています*6。作業のやり直しは、この比率を押し上げる方向に働きます。

規則を決める主体は、受注・営業・物流・情報システムの四部門にまたがります。片方の部門だけで決めた規則は、もう片方の運用で守られません。決め方の議論には、在庫データを持つ部門と、取引先へ回答する部門の双方が加わる形が求められます。

取引先への回答が遅れる点も見過ごせません。担当者が倉庫へ電話で確認してから納期を返すやり方では、回答までに時間がかかります。四つの判断軸を規則として決め、システムの設定と一致させることが、回答の速さと正確さにつながります。以降の節では、判断材料となる在庫の区分から順に見ていきます。

Woman in pink hoodie labeling a package
▽ 写真の出典元

引き当てルールを決める五つの段階(順位根拠:後の判断が前の判断に依存するため、決定の依存順序で並べます)

  1. 割り当ての対象となる在庫の区分を決めます。手持在庫から引当済と出荷予定を差し引いた有効在庫を起点とし、入荷予定を含めるかどうかを品目群ごとに判断します。
  2. 優先度の基準を決めます。先着順・優先度型・確保枠型の三つから選び、契約条件や取引区分など社内で合意した基準に順位の根拠を置きます。
  3. 引き当ての時点と確定の条件を決めます。受注時と出荷指示時のどちらで割り当てるかを選び、仮の引き当てを確定へ上げる条件と、仮の状態を解放する期限を定めます。
  4. 払い出しの順序を決めます。入荷日の古い順と期限の近い順は別の方針として扱い、同一ロットでまとめる要件や取引先が求める残存日数を条件へ加えます*4
  5. 運用への反映方法を決めます。基幹システムと受発注画面の連携頻度、引き当てできなかった注文の扱い、月ごとに確認する数値を規則書へ記載します。

引き当ての判断材料となる在庫の区分を整理します

引き当ての判断材料になるのは、棚にある数量そのものではなく、まだ他の注文へ約束していない数量です。この数量を有効在庫と呼び、手持在庫から引当済の数量と出荷予定の数量を差し引いて求めます。入荷予定を足すかどうかは、回答の早さと欠品の危うさを見比べて決める判断です。保管場所と在庫状況の区分をそろえないと、有効在庫という同じ言葉が部署ごとに別の数字を指します。

手持在庫は、拠点の棚に実際にある数量です。棚卸で数えた数量と帳簿の数量が合っているかどうかが、すべての計算の前提になります。帳簿がずれた状態で規則だけを整えても、割り当ての結果は現場と合いません。棚卸の頻度と差異の是正手順を先に固めておく必要があります。

有効在庫は、手持在庫から他の注文へ約束済みの数量を引いた残りです。引当済の数量、出荷指示の出た数量、返品の受け入れ待ちで検査中の数量は、次の注文へ回せません。差し引く項目の一覧を明文化し、システムの計算式と一致させます。計算式が画面ごとに違うと、同じ品目で二つの数字が並ぶ事態になります。

計算式は、数字を当てはめて一度確かめておくと定義のずれが見つかります。手持在庫が100個、引当済が30個、出荷指示済が20個、検査中が10個であれば、有効在庫は40個です。ここに入荷予定の50個を含める設定にすれば表示は90個となり、回答できる数量は倍を超えます。同じ品目で二つの数字が出る理由はここにあり、どちらを画面へ出すのかを先に決めておく必要があります。

入荷予定を有効在庫に含めるかどうかは、副作用の選択です。含めれば納期の回答は早くなり、受注の機会を逃しにくくなります。含めた場合、入荷が遅れた瞬間に約束が崩れ、取引先への連絡と代替の手当てが発生します。仕入先ごとの入荷実績を見て、予定日の信頼できる品目に限って含める折衷案も採れます。

保管場所の区分は、出荷元の違いとして効いてきます。自社倉庫、外部委託倉庫、取引先への預け在庫、店頭の在庫は、同じ品目でも出荷に使える条件が違います。拠点をまたぐ移動に要する日数を入れずに合計すると、出せない数量まで約束することになります。拠点別の数量と移動日数を持ち、合計を出す条件を決めておきましょう。

在庫の状況区分も、割り当ての可否を分けます。良品、入荷検査中、品質保留、返品受領済み、廃棄予定といった区分を持ち、割り当ての対象にする区分を明示します。区分の名称が拠点ごとに違うと、集計のたびに読み替えが要ります。名称と意味を一覧にまとめ、拠点で共通に使う形へ寄せます。

数量の単位も、区分と同じ扱いで整理します。バラ、ケース、パレットのどれで引き当てるのかを決め、入数の変わった品目は履歴を残します。単位の異なる数量を足し合わせると、有効在庫は実態より大きく見えます。受発注画面で選べる単位と、倉庫が扱う単位を対応表で結んでおきましょう。

用語のそろえ方には、外部の定義を土台にする方法があります。生産管理の用語は日本産業規格として定義され、2022年に改正された版が公表されています2。規格は有償で頒布されるため、定義文をそのまま社内文書へ写す際は引用の範囲に注意します。企業間の電子メッセージの標準仕様も参照先になり、発注・出荷・受領・返品・請求・支払の6業務について8種の標準メッセージが定められています3。

区分 含まれるもの 引き当てでの扱い
手持在庫 拠点の棚に実際にある数量 棚卸の数量と帳簿が合っているかを先に固めます
有効在庫 引当済と出荷指示済と検査中を差し引いた残り 差し引く項目を明文化し計算式と一致させます
入荷予定 予定日の信頼できる品目に限る折衷案 含めれば回答は早くなり入荷の遅れで約束が崩れます
保管場所の区分 自社倉庫、外部委託倉庫、取引先への預け在庫、店頭の在庫 拠点別の数量と移動日数を持ち合計の条件を決めます
在庫の状況区分 良品、入荷検査中、品質保留、返品受領済み、廃棄予定 割り当ての対象にする区分を明示します
数量の単位 バラ、ケース、パレット 引き当てる単位を決め倉庫の単位と対応表で結びます

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引き当てルールの主な型と向く場面を比べます

引き当てルールの型は、受注の早い順に割り当てる先着順、取引先や販路の重みで割り当てる優先度型、あらかじめ数量を取り置く確保枠型の三つに大別できます。どの型が向くかは、需要の偏りと取引条件によって変わります。優劣を決めるのではなく、条件と副作用を並べ、受け入れられる副作用のほうを選ぶ考え方が実務に合います。三つの型は互いに排他ではなく、組み合わせる場合は適用の順番も同時に決めておきましょう。

先着順は、受注日時の早い注文から順に有効在庫を割り当てる型です。規則が単純で、取引先へ説明しやすい利点があります。ただし需要の集中した日に大口の注文が後から入ると、小口の注文で在庫を使い切った後になります。販売機会の大きい注文を取り逃す場面も出てくるでしょう。

優先度型は、取引先の区分や販路の区分ごとに割り当ての順位を付ける型です。契約で数量や納期を約束している取引先を先に満たしたい場合に向きます。順位づけの根拠は、担当者の裁量ではなく、契約条件や取引区分といった社内で合意した基準に置きます。基準と決裁の手順を文書に残し、後から説明できる状態にしておく必要があります。

確保枠型は、特定の取引先や販路のために数量をあらかじめ取り置く型です。定期的な補充注文が読める品目や、催事向けの数量を守りたい場面で働きます。副作用は枠の未消化で、取り置いた数量が他の注文へ回らないまま滞留します。枠には解放の期日を付け、期日を過ぎた分は通常の有効在庫へ戻す取り決めを添えます。

三つの型は、順番を決めて併用できます。確保枠を先に差し引き、残った有効在庫を優先度順に配り、同順位の中は先着順で並べる、といった重ね方です。重ねるほど設定は複雑になり、検証の手間も増えていきます。まずは二段までに抑え、運用が安定してから段を増やす進め方が無理のない形です。

同順位の中の並べ方も、あらかじめ一つに決めておきます。受注日時を秒まで見るのか、伝票番号の小さい順に見るのかで、同時刻に入った注文の結果が変わります。画面から入る注文が増えるほど同時刻の重なりは起こりやすくなり、企業間電子商取引のEC化率が43.0%に達した状況では無視できません*1。判定に使う項目を決め、設定と文書の双方へ同じ項目を書きます。

型を比べる観点は、欠品が起きたときに誰が待つのかという点に集約されます。先着順は入力の早さ、優先度型は取引区分、確保枠型は事前の計画が、待つ側を決めます。どの観点で決めたのかを社内で言葉にできるなら、その型は運用に耐えます。説明できない型は、例外の申し出が続いて形骸化していきます。

選んだ型を守るには、在庫と受注の状況を関係者が同じ画面で見られる状態が前提になります。供給網の見える化については、情報共有の仕組みを構築し、その有効性を検証した研究報告があります*7。誰が何をどれだけ確保しているのかが見えない状態では、電話での取り合いが残ります。型の選択と情報共有の整備は、対で進めるものと言えます。

割り当ての基準 向く場面 副作用
先着順 受注日時の早い順 規則が単純で説明しやすい場面 大口の注文を取り逃す
優先度型 取引先や販路の区分 契約で数量や納期を約束している場面 基準と決裁の手順の文書化が要る
確保枠型 あらかじめ取り置く数量 定期的な補充注文が読める品目 枠の未消化で数量が滞留する

引き当てを行うタイミングと確定の段階を決めます

Man operating an automated modula lift storage system
▽ 写真の出典元

引き当ての時点は、受注を登録した時点と、出荷指示を出す時点の二つが基本です。受注時に引き当てると取引先へその場で数量を約束でき、出荷指示時まで待つと在庫の使い方に融通が利きます。加えて、取り消しのきく仮の引き当てと、出荷を確定させる引き当てを段階として分けると、変更の多い商流でも枠が固定されません。自動で処理する範囲と人が判断する範囲の線引きも、同じ場面で決めます。

受注時引き当ては、注文を受けた瞬間に有効在庫から数量を確保します。取引先には即座に出荷できる数量と日付を返せます。反面、注文の変更や取り消しが多い商流では、確保したまま動かない数量が積み上がります。仮の引き当てに有効期限を付け、期限切れで自動的に解放する仕掛けが要ります。

出荷指示時引き当ては、出荷日が近づいた時点で在庫を割り当てます。直前まで数量が拘束されないため、在庫の回転は上がります。ただし受注の時点では数量を約束できず、回答は入荷予定を含む見込みの形になります。約束の重みが違う点を、営業と受注の担当者が共通の理解として持つ必要があります。

仮の引き当てと確定の引き当ては、確定の条件で切り分けます。与信の承認、支払方法の確定、出荷指示の発行といった条件のどれを満たしたら確定へ上げるのかを決めます。条件を通過していない注文は仮のまま置き、期限が来たら解放します。段階を二つ持つと、変更の多い注文と確定した注文が同じ扱いにならずに済みます。

仮の引き当てに付ける期限は、時間の単位まで決めておきます。与信の承認待ちは1営業日、見積段階の引き合いは3営業日といった具合に、確定の条件ごとに長さを変える形が扱いやすいでしょう。期限を長くすれば受注の取りこぼしは減りますが、その間は他の注文へ数量が回りません。期限切れで解放された件数を月ごとに数え、長さが実態に合っているかを確かめます。

自動と人手の線引きは、金額や数量の閾値と、例外の種類で決めます。ある業務システムの公式資料では、販売の引き当てを自動で行う設定と、手作業で指定する操作の双方が定義されています*4。製品ごとに設定名と挙動が違うため、名称をそのまま社内用語にしない配慮も要るでしょう。自社の規則を先に決め、その規則を製品の設定へ写す順番で進めます。

例外の割り当てには、申請と承認の道筋を作ります。誰が例外を申し出て、誰が承認し、どこに記録が残るのかを決めておくと、後から件数を数えられます。記録のない例外が続くと、規則そのものが実態から離れていきます。月ごとに例外の件数を確認し、多い理由を規則側へ反映させましょう。

締め時刻との関係も詰めておく項目です。当日出荷の締めを何時に置き、その時刻を過ぎた注文をどの日の割り当てに載せるのかを決めます。締めの時刻が部門ごとに違うと、同じ注文が別の日の在庫を取り合います。時刻は一つに寄せ、取引先への案内文にも同じ時刻を書きます。

1 引き当ての時点 受注を登録した時点と出荷指示を出す時点から選びます。 2 確定の条件 与信の承認や出荷指示の発行のどれを満たすかを決めます。 3 仮の引き当て 期限を営業日の単位で決め、期限切れで解放します。 4 自動と人手の線引き 金額や数量の閾値と例外の種類で範囲を分けます。 5 例外の割り当て 申請と承認の道筋と記録の残し方を決めます。 6 締め時刻 当日出荷の締めを一つに寄せ、案内文にも書きます。
引き当ての時点と確定の段階を決める際の検討の順序

期限やロットのある在庫の引き当て方を考えます

期限やロットのある在庫では、払い出しの順序を別の規則として決めます。入荷日の古い順に出す考え方と、期限の近い順に出す考え方は、入荷と期限の並びが一致しない場面で結果が変わります。さらに、同じロットでまとめて出す要件や、取引先が求める残存日数の条件が重なると、有効在庫の一部は割り当てられない数量になります。順序と条件を分けて書き出すところから始めましょう。

入荷日の古い順に出す規則は、在庫の滞留を避ける目的で使われます。ある業務システムの公式資料では、日付を管理して先入先出で引き当てる方針と、期限日を管理して引き当てる方針が別々に定義されています*4。二つを同じものとして扱うと、期限の近い在庫が棚に残ります。どちらの日付で並べるのかを、品目の区分ごとに決めておきましょう。

期限の近い順に出す規則は、賞味期限や使用期限のある品目に向きます。入荷が前後した場合でも期限の近い在庫から先に出るため、期限切れの数量を抑えられます。半面、同じ取引先へ期限の異なる在庫が繰り返し届く場面が生まれます。取引先の受け入れ条件と突き合わせ、許容される範囲を確認しておく必要があります。

同じロットでまとめて出す要件は、検査や追跡の都合から生まれます。公式資料には、同じバッチから選んで引き当てる方針も設定として示されています*4。まとめる要件が付くと、数量が足りていても分納できない注文が出てきます。分納の可否は取引先ごとに確認し、注文の属性として登録しておく形が扱いやすいでしょう。

取引先が求める残存日数も、割り当ての条件に入ります。食品の分野では、納品期限の緩和や賞味期限の大括り化に取り組む事業者の名称が国から公表されています*5。残存日数が条件に届かない在庫は、棚にあっても特定の取引先へは割り当てられません。条件を品目と取引先の組み合わせで持ち、有効在庫の計算へ反映させます。

食品では、納品期限を賞味期間の3分の1以内に収める商慣習が残っており、これを2分の1へ緩める取り組みが国の主導で進められています*5。納品期限が緩めば、これまで割り当てられなかった在庫が対象へ戻ります。取引先ごとの残存日数の条件は、契約書と実際の運用の双方を確かめて登録します。条件が変わった品目は、有効在庫の計算式へ反映されているかを都度点検しましょう。

期限の迫った在庫は、閾値を決めて自動的に候補から外します。外した数量は通常の割り当てに載せず、別の販路や用途へ回す判断へ移します。閾値がないと出荷直前の検品で弾かれ、代替品を探す作業が発生します。作業のやり直しは、倉庫と配送の費用を押し上げる要因になります*6

会計の評価方法と払い出しの順序を、同じ規則として書かない点にも触れておきます。棚卸資産の評価に用いる方法は経理の目的で選ぶものであり、棚から出す順序は品質と納品条件の目的で選びます。二つを分けて記載すると、経理と物流の合意が取りやすくなります。用語の定義は、生産管理用語の日本産業規格の2022年改正版などを参照して社内でそろえます*2

A large pile of brown cardboard boxes with blue tape
▽ 写真の出典元

自社に合う引き当てルールを決める手順をたどります

自社に合う規則は、五つの段階を順にたどると決まります。需給の偏りと取引条件を書き出し、四つの判断軸に優先順位を付け、例外の扱いを先に決め、見直しの周期を置き、関係部門へ共有する流れです。後の段階は前の段階に依存するため、順番を飛ばすと決めた内容が戻ります。書き出しの作業は一日で終わるものではありませんが、ここに時間をかけるほど後段の設定が速く進みます。

最初に、品目ごとの受注の偏りを数字で書き出します。受注件数の多い品目、金額の大きい品目、欠品の起きた品目を並べ、どこで在庫の取り合いが起きているのかを特定します。全品目に同じ規則を当てる必要はありません。取り合いの起きる品目群に絞って規則を設計すると、設定と検証の手間を抑えられます。

次に、取引先ごとの条件を書き出します。納期の約束、最低ロット、残存日数、分納の可否、返品の条件が対象です。条件は契約書と過去の受注データの双方から拾い、担当者の記憶に頼らない形にします。この一覧が、優先度の根拠を説明する材料になります。

三つ目に、四つの判断軸へ優先順位を付けます。対象とする在庫の区分を決め、優先度の基準を決め、引き当ての時点と確定の条件を決め、払い出しの順序を決める流れです。軸の順番を変えると結果も変わるため、決めた順番を文書の冒頭に書きます。同じ順番でシステムの設定画面をたどれる状態が目安になります。

四つ目に、例外の扱いを先に決めます。規則から外す注文の種類、申請と承認の道筋、記録の残し方が対象です。例外を後から考える進め方では、運用開始の直後に判断が止まります。想定できる例外を三つか四つ挙げ、それぞれの扱いを一行で書いておく程度でも効き目があります。

五つ目に、見直しの周期を二段で置きます。月ごとに数値を確認し、四半期ごとに規則そのものを見直す形です。取引条件の変更や新しい販路の追加は、規則の前提を動かします。前提が動いたときに誰が見直しを起こすのかも、併せて決めておきましょう。

最後に、関係部門への共有方法を決めます。規則は一枚の文書にまとめ、判断の順番、例外の扱い、問い合わせ先の部門を載せます。営業が取引先へ回答する際の言い回しまで書いておくと、回答のばらつきが減ります。文書の版数と更新日を管理し、古い版が現場に残らないようにします。

Person preparing a cardboard box on a warehouse conveyor system
▽ 写真の出典元

決めたルールを受発注の仕組みに落とし込みます

決めた規則は、基幹システムと受発注画面の在庫連携へ写して初めて働きます。連携の更新頻度、引き当てできなかった注文の受け皿、結果を数値で振り返る仕組みの三点を設計すると、規則と運用が離れません。項目名の定義がそろわないまま連携をつなぐと、同じ数量が別の意味で表示されます。標準化された電子メッセージの仕様も、項目をそろえる際の参照先になります*3

在庫連携で最初に決めるのは、数量を更新する頻度です。受発注画面が参照する数量が数時間前の値であれば、その間に入った注文とずれます。都度参照、短い間隔の定期連携、夜間の一括連携では、見せられる約束の重みが変わります。頻度を上げるほど負荷と費用が増えるため、品目群ごとに使い分ける設計も選べます。

頻度は、品目群ごとに具体的な間隔まで落として決めます。取り合いの起きる品目は15分間隔、動きの少ない品目は夜間の一括連携という分け方であれば、負荷を抑えたまま回答の精度を保てます。表示のずれが残ると出荷直前の数量変更と再出荷が増え、売上高に対する物流コストの比率を押し上げます*6。この比率は業種別に毎年公表されているため、自社の水準を外部の数値と並べて確かめられます。

画面に何を出すのかも設計の項目です。数量をそのまま出すか、在庫ありと残りわずかの区分で出すかで、取引先の受け取り方が変わります。数量を出す場合は、それが有効在庫なのか手持在庫なのかを明記します。定義の違う数量を同じ欄に出すと、問い合わせが増える結果になります。

引き当てできなかった注文の扱いは、四つの選択肢から選びます。全量を保留にする、引き当てられた分だけ分割して出す、次回入荷へ繰り越す、注文自体を取り消すという分け方です。どれを既定にするかは取引先ごとに変わるため、注文の属性として持たせます。既定を決めずに担当者が都度判断する運用は、回答のばらつきを生みます。

結果を数値で振り返る仕組みも、同時に用意します。受注数量のうち引き当てられた割合、出荷直前に数量が変更された件数、例外として手作業で割り当てた件数の三つは、規則の効き目を映します。数値が悪化した月は、規則の不備と前提の変化を分けて確かめます。取引条件の変更や販路の追加が原因であれば、規則側の書き換えへ進みます。

内製で進める場合に必要な知識は、三つの領域にまたがります。在庫データの設計、部門間の規則の合意形成、システムの設定と検証です。受注・営業・物流・情報システムの担当者が同じ場で判断できる体制と、設定を試すための検証環境が求められます。片手間の兼務では、書き出しと合意の段階で止まりやすくなります。

外部の支援を受ける場合との差は、検証の手順に表れます。他社での設定の型を踏まえて選択肢を絞り、検証用のデータで結果を確かめてから本番へ移す進め方です。内製でも同じ手順は踏めますが、検証データの作成と例外の洗い出しに時間がかかります。危うさを小さくする目的で、設計と検証の一部を外部と分担する選び方もあります。

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よくある質問

引き当てのルールを変更する場合、すでに受けている注文はどう扱いますか

変更の適用範囲を、切り替え日以降の新規受注に限る方法が扱いやすいです。既存の注文へ遡って適用すると、取引先へ伝えた納期を取り消す連絡が発生します。やむを得ず遡る場合は、対象の注文を一覧にし、営業から先に連絡する順番を決めておきます。切り替えの前後で結果の変わった注文の件数を記録しておくと、次の見直しの材料になります。

在庫が複数の拠点に分かれている場合、どの拠点から引き当てますか

拠点の選び方は、納品先までの日数と拠点間の移動日数を条件にして決めます。近い拠点を優先すると配送は速くなりますが、その拠点だけ在庫が減り、補充の頻度が上がります。拠点をまたぐ移動を許すかどうかと、移動に要する日数を有効在庫の計算へ含めるかどうかを、規則として先に決めておきましょう。

引き当てルールを見直す作業には、どのような工程が必要ですか

品目と取引条件の書き出し、判断軸の順序づけ、システムの設定、検証、運用開始後の数値確認という工程を踏みます。期間は対象の品目数と連携するシステムの数で変わるため、先に対象を絞ると進めやすくなります。検証では、過去の受注データを使い、新旧の規則で結果を突き合わせる方法が使えます。

取引先ごとに優先度を付ける運用は、取引上の問題になりませんか

順位の根拠を契約条件や取引区分といった社内で合意した基準に置き、担当者の裁量で都度変えない運用にします。基準と決裁の手順を文書へ残し、問い合わせを受けた際に説明できる状態を保ちます。判断の記録が残っていない運用は、社内でも取引先との間でも説明が難しくなります。

引き当てを置かずに出荷まで進める運用でも問題ありませんか

受注から出荷までが同じ日に完結し、同じ在庫を取り合う注文がない場合は、引き当てを置かない運用も成り立ちます。ただし販路が増えたり、まとまった数量の注文が入ったりすると、同じ数量を重ねて約束する場面が生まれます。取り合いの起きる品目だけ先に引き当ての対象にする、段階的な進め方も選べます。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「FSOL B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

  1. *1 出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査(結果公表資料)」(2025) 経路
  2. *2 出典:一般財団法人日本規格協会「JIS Z 8141:2022 生産管理用語」(2022) 経路
  3. *3 出典:一般財団法人流通システム開発センター(GS1 Japan)「流通BMS標準仕様(発注・出荷・受領・返品・請求・支払の6業務8種の標準メッセージ、基本形Ver.2.0)」(2018) 経路
  4. *4 出典:Microsoft「Dynamics 365 Supply Chain Management 公式ドキュメント 在庫数量の引当」(2025) 経路
  5. *5 出典:農林水産省「食品ロス削減に向けた商慣習見直し(納品期限の緩和・賞味期限の大括り化等の取組事業者の公表)」(2025) 経路
  6. *6 出典:公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会「2025年度物流コスト調査報告書(概要版)」(2026) 経路
  7. *7 出典:日本経営工学会「サプライチェーン見える化システムの構築とその有効性の検証(日本経営工学会論文誌 67巻2号)」(2016) 経路

画像の出典元

  1. brown cardboard boxes on white metal rack/Photo by CHUTTERSNAP on Unsplash
  2. a large warehouse filled with lots of boxes/Photo by Alberto Rodríguez on Unsplash
  3. Person preparing a cardboard box on a warehouse conveyor system/Photo by GB The Green Brand on Unsplash
  4. Woman in pink hoodie labeling a package/Photo by GB The Green Brand on Unsplash
  5. Man operating an automated modula lift storage system/Photo by GB The Green Brand on Unsplash
  6. A large pile of brown cardboard boxes with blue tape/Photo by Rohit Choudhari on Unsplash

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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