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流通BMSとは|電子受発注の標準規格と導入の進め方

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 流通BMSは、発注・出荷・受領・返品・請求・支払の6業務に対応する8種類の標準メッセージを定めた電子受発注の標準規格です。
  • 通信はインターネット回線を前提とし、公開されたガイドラインでebXML MS・AS2・JX手順の3方式が示されています。
  • 電話回線を使うデータ通信は新規申込の受付が終了し、提供も2027年1月ごろに終える予定が公表されています。
  • 受け取った電子取引データには、改ざん防止の措置と3項目での検索ができる保存が求められます。
  • 導入の可否は、取引先の数と既存システムの状態を突き合わせて判断します。

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▽ 写真の出典元

流通BMSとは何か

流通BMSとは、消費財の流通に関わる企業どうしが、受発注から請求・支払までのデータを共通の形式でやり取りするために定められた電子受発注の標準規格です。策定と維持管理は流通業界の標準化団体が担っており、発注・出荷・受領・返品・請求・支払という6業務に対応する8種類の標準メッセージが定義されています*1。個社ごとの取り決めを電子化してきた従来のやり方とは出発点が異なり、取引先が増えても同じ仕組みで接続できる点に狙いがあります。読み手の立場では、規格の中身そのものよりも、自社が対応すべきかどうかの判断材料が要るのではないでしょうか。

通信の経路・データ形式・取引先ごとの対応・仕様の維持を比べた表
従来型のEDIと流通BMSを4つの観点で比べた対照

規格の策定と維持管理は、小売業・卸売業・製造業などが参加する業界の協議会が担っています。仕様書や通信のガイドラインは公式サイトで公開されており、誰でも内容を確認できます*1。特定のベンダーが所有する仕様ではないため、システムの調達先を変えても規格そのものは残ります。改訂の内容も、参加企業の合議を経て公表される手順が取られています。

対象となるのは、商品の発注に始まり、出荷・受領・返品・請求・支払へと続く一連の取引です*1。8種類の標準メッセージは、この6業務の各場面で交換される伝票に相当します。電話やファクスで補ってきた訂正や連絡も、決められた項目としてデータで扱えます。ただし、商談や販促の情報まで含む規格ではありません。

6業務に対して8種類という数え方になるのは、一部の業務で複数のメッセージが定義されているためです1。発注に対して出荷と受領が返り、請求と支払はそれぞれ別のメッセージとして定義される構成になっています1。数の内訳を先に押さえておくと、自社が対象とする範囲を絞るときの目安になります。8種類すべてを一度に扱う必要はなく、取引先の要請に含まれるものから順に選べます。

EDI(企業間で受発注などのデータを電子的にやり取りする仕組み)の従来規約との違いは、通信の経路・データ形式・取引先ごとの対応の3つの観点に整理できます。従来型は電話回線を使う通信手順と固定長のデータ形式が中心で、項目の並びは取引先ごとに異なりました。流通BMSはインターネット回線を前提とし、XML(項目に名前を付けてデータを表す記述形式)で内容を表します。桁位置の取り決めを相手先ごとに管理する手間が減る点が、実務上の違いになります。

規格に沿うかどうかが法令で一律に義務づけられているわけではありません。実務では、取引先の小売業から接続の要請を受けて検討が始まる例が目立ちます。要請の有無にかかわらず、既存回線や個別対応の維持費が重くなった段階でも選択肢に上がるでしょう。導入の可否は、取引先の数と既存システムの状態を突き合わせて判断することになります。

関係するのは情報システム部門だけではありません。受注入力・出荷手配・請求突合を担う業務部門の運用が、そのまま変わるためです。データの受け渡しが自動化されると、確認や修正の作業がどこへ移るのかを決め直す必要が生じます。検討の初期から両部門が同じ資料を見て話せる状態を作ると、後戻りを減らせます。

本節では「何を定めた規格か」を扱いました。次節では「なぜ必要になったのか」を、従来型のEDIが抱えた負担と通信側の期限の両面から整理します。

導入の検討で先に確かめる5点(順位の根拠:着手順序の依存関係)

  1. 取引先から接続を要請されているメッセージの範囲を確かめます。6業務に対応する8種類の標準メッセージのうち、どれを対象にするかで作業量が変わります。
  2. 現在の通信手段と期限を確かめます。電話回線を使うデータ通信は新規申込の受付が終了し、提供も2027年1月ごろに終える予定が公表されています。
  3. 基幹システム側の受け皿を確かめます。商品コードと取引先コードの持ち方が相手先の指定とずれていると、取り込みの自動化が途中で止まります。
  4. 電子取引データの保存の扱いを確かめます。改ざん防止の措置と、取引年月日・取引金額・取引先の3項目で検索できる状態が一問一答に示されています。
  5. 接続方式と証明書の運用担当を決めます。ebXML MS・AS2・JX手順の3方式のいずれを使うか、更新を誰が担うかを接続前に確定させます。

流通BMSが求められた背景と従来型EDIの限界

発注・出荷・受領・請求・支払の5段を順に並べた図
発注から支払までが同じ枠組みでつながる流れ

従来型のEDIが限界に近づいた要因は2つあります。取引先ごとに異なる取り決めが積み上がったことと、通信を支えてきた固定電話網の役割が終わりに向かっていることです。個社ごとの規約が乱立した結果、卸売業や製造業は接続先の数だけ変換の作り込みを抱えることになりました4。電話回線を使うデータ通信そのものにも提供終了の予定が示されており、置き換えの検討を避けにくい状況にあります5。

個社ごとの規約が乱立した状態では、接続先が増えるほど費用が積み上がります。伝票の項目名も桁数も相手先ごとに違い、そのたびに変換の作り込みと動作の確認が発生しました。標準化の取り組みは、この重複投資を減らす目的で、流通の全体最適を掲げた事業として始まっています4。その成果を引き継ぐ形で、普及と維持を担う協議会が設立されました4。

通信面の事情も見直しを促しました。固定電話網のIP移行にともない、電話回線を使うデータ通信の新規申込の受付はすでに終了しています5。提供そのものも2027年1月ごろに終える予定が公表され、補完策となる通信手段が案内されています5。補完策は移行までの受け皿であり、期限のない代替ではありません。

期限までの残り時間を月数で置くと、段取りの余裕が見えてきます。2027年1月ごろという提供終了の予定から逆算すると、2026年9月の時点で残りは1年4か月ほどです5。合意形成・マスタ整備・接続確認・本番移行の4段を相手先ごとに踏む前提なら、着手の遅れはそのまま期限の圧迫に変わります。新規申込の受付が終わっている以上、既存回線の延命を前提にした計画は立てられません5。

切り替えを先送りすると、受発注の停止が事業に直結します。発注データを受け取れない日が続けば出荷も請求も止まり、影響は自社の中にとどまりません。切り替えには相手先との調整と接続の確認が要るため、期限の直前に着手できる作業ではないでしょう。回線の終了予定から逆算して段取りを組む必要があります。

従来型のEDIと流通BMSは、観点ごとに並べると違いがはっきりします。

個別対応の維持費は、目に見えにくい形で毎年発生します。相手先ごとの変換処理は、担当者の異動や仕様の小さな改訂のたびに確認の作業を呼びます。標準メッセージに寄せられれば、確認の対象は自社側の1本に集約できます。ただし相手先の運用差異は残るため、集約できる範囲は事前に見極めておきたいところです。

標準化の枠組みは、公的な事業として仕様を作り、その後は業界の協議会が普及と維持を引き継ぐ流れで運営されています4。仕様の改訂や導入状況の調査も協議会が続けており、基本形の版数は改訂のたびに更新されます2。特定企業の都合で仕様が変わらない点は、長く使う仕組みを選ぶうえでの判断材料になるでしょう。

本節では、従来型のEDIが抱えた負担と回線側の期限を扱いました。次節では、その代わりに何が定められているのかを、メッセージと通信の中身から見ていきます。

自社の商流に合わせた要件整理を進めたい場合は、無料相談で要件を整理するのが近道です。

流通BMSで規定される標準メッセージと通信の仕組み

発注・出荷・受領・請求・支払の5段を順に並べた図
発注から支払までが同じ枠組みでつながる流れ

この規格が定めているのは、交換するデータの中身と、それを運ぶ通信の手順の両方です。6業務に対応する8種類の標準メッセージが用意され、発注から支払までが同じ枠組みでつながります1。通信はインターネット上で使う複数の手順が併記され、取引の量や相手先の環境に応じて選べます3。基本形に加えて業種別の仕様も整備されており、版数の更新が続いています*2

取引の流れに沿ってメッセージを並べると、どの場面でどのデータが行き来するのかがつかめます。

8種類の標準メッセージは、6業務の各場面で交換される伝票に対応します*1。発注では商品コード・数量・納品日が、出荷では梱包の単位や納品先が、それぞれ決められた項目名で表されます。受領は検収の結果を返すもので、数量に差異があればその内訳が分かります。返品・請求・支払も同じ考え方で、後工程の突合に使える細かさで定義されています。

仕様は基本形を土台に、業種ごとの事情を反映した版が用意されています2。基本形の版数は2.2.2のように三段の番号で管理され、改訂の内容とあわせて公開されています2。改訂が既存の接続を一斉に無効にするわけではなく、新旧が併存する期間を挟みます。自社が使う版がどれかを相手先と確かめておくと、後の食い違いを防げます。

通信は、公開されたガイドラインで複数の手順が示されています*3。代表的なものはebXML MS、AS2、JX手順の3方式で、取引の量や接続の負担に応じて使い分けられます。相手先が指定する方式に合わせる必要があるため、複数方式への対応を求められる場合もあります。どの方式を選ぶかで、自社に置く設備と運用の重さが変わってきます。

3方式はいずれもインターネット回線を前提とし、扱う取引の規模で語られ方が分かれます3。多数の取引を継続的に交換する場面ではebXML MS、国内外で広く使われる手順としてAS2、接続の負担を抑えたい場面ではJX手順という整理がされています3。3方式のいずれを選んでも運ばれる標準メッセージの中身は同じであるため、業務側の運用設計を方式ごとに作り分ける必要はありません*1。設備と運用の重さだけが方式によって変わる、と押さえておくと選定の論点が絞れます。

安全確保の前提も標準の一部として整理されています3。サーバ証明書による相手の確認と通信路の暗号化が前提となり、業界共通の認証局に関する証明書の方針も公開されています3。証明書には有効期限があり、更新を落とすと接続が切れて受発注が止まります。更新の担当と手順を導入時に決めておくことが、運用の安定につながります。

本節は仕組みの中身を扱いました。次節では、この仕組みが日々の受発注・物流・請求の作業をどう変えるのかを見ていきます。

流通BMSの導入で変わる受発注・物流・請求業務

通信の経路・データ形式・取引先ごとの対応・仕様の維持を比べた表
従来型のEDIと流通BMSを4つの観点で比べた対照

導入で変わるのは、受注入力・出荷手配・請求突合という3つの作業の起点です。発注データが基幹システムへ直接取り込まれるため、届いた伝票を見ながら入力し直す工程が不要になります。出荷・受領・返品・請求のデータが同じ枠組みで流れるので、突合の対象がそろいます*1。ただし効果の大きさは、取引先の数と既存システムの作りによって変わります。

受注側では、発注データをそのまま自社の受注データへ変換して取り込めます。項目に名前が付いているため、桁位置を頼りに切り出す処理が不要になります*1。入力の手作業が減ると、誤入力に起因する欠品や誤出荷の芽も減らせます。取り込みの自動化がどこまで進むかは、商品コードと取引先コードの整備の度合いに左右されます。

出荷側では、出荷データを相手先へ返すことで、入荷予定と自社の出荷実績が結び付きます。納品先や梱包の単位が決められた項目で伝わるため、着荷側の受け入れ作業も見通しが立ちます。出荷の確定と請求の根拠が同じデータでつながる点が、後工程の負担を軽くします。物流の現場での確認作業を、紙の突き合わせから画面の照合へ移せます。

受領・返品・請求の突合は、変化が分かりやすい領域です。受領データで検収の数量と差異の内訳が届くため、請求前に差異を把握できます*1。返品も同じ枠組みで扱えるので、後から届く控除の理由が追いやすくなります。支払データまでそろえば、入金消込の根拠を人手で組み立て直す必要が薄れます。

効果を自社の数字で置くには、作業の件数と1件あたりの時間を分けて数えます。受注入力なら月間の発注件数と1件の入力時間、請求突合なら差異が出た件数と1件の調査時間が単位になります。8種類のメッセージのうち自社が使う範囲を先に決め、その範囲に対応する作業だけを数えれば、見積もりの幅は狭まります*1。件数の多い相手先から順に並べると、どこに効果が集まるのかも同時に見えてきます。

取引先ごとの個別対応は、標準メッセージへ寄せた分だけ減らせます。項目の意味が共通化されるため、相手先が増えても同じ受け皿で受けられます。ただし締めの単位や納品先コードの持ち方は相手先の運用に依存し、分岐が完全に消えるわけではありません。どこまで共通化できるかは、接続する相手先の運用を並べて確かめる必要があります。

効果が出にくい条件も正直に見ておきたいところです。接続先が1社だけで取引の件数も少なければ、投資に見合う削減は生まれにくくなります。逆に接続先が多く、既存の変換処理を相手先ごとに抱えている場合ほど、集約の余地は大きくなるでしょう。判断の材料は、削減できる作業時間と維持費を自社の数字で並べることに尽きます。

本節では業務の変わり方を扱いました。次節では、その変化にたどり着くまでの段取りと、社内で先に整えておく準備を順に整理します。

流通BMSを導入するための進め方と社内の準備

合意形成・マスタ整備・接続確認・本番移行の4段を時間順に並べた図
合意形成から本番移行までの段取り

導入は、合意形成、マスタ整備、接続確認、本番移行という順で進みます。前の段が終わらないと次へ進めない依存があるため、並行できる作業とできない作業を最初に切り分けます。8種類の標準メッセージすべてを一度に対象とせず、発注と出荷から始める分け方も取れます1。通信手段の提供終了という期限がある以上、日程は逆算で引くほかありません5。

段取りを時間順に並べると、着手すべき順序が見えます。

最初の段は取引先との合意形成です。対象とするメッセージの範囲、使用する仕様の版、接続方式、切り替えの時期の4点を文書でそろえます*2。相手先が複数ある場合は、要請の期限が早い順に並べて着手の順序を決めます。ここが曖昧なまま開発へ進むと、後から項目の追加が発生し日程が崩れます。

次の段は基幹システム連携とマスタ整備です。商品コードと取引先コードの持ち方が相手先の指定とずれていると、取り込みの自動化が途中で止まります。納品先や単価の管理単位も、標準メッセージの項目と対応が取れるかを1件ずつ確かめます。マスタ整備は地味な作業ですが、後工程の手戻りを最も減らせる投資になります。

対象を段階に分けるなら、8種類のうち発注と出荷の2種類で運用を立ち上げ、受領・返品・請求・支払を後続の段で足す進め方が取りやすくなります*1。一度に確認する項目が減るため、接続確認で差異が出たときに原因を切り分けやすくなります。相手先の順序も、取引件数の多い1社から始めて運用を固め、残りへ横展開する形が扱いやすいでしょう。ただし相手先が全メッセージの同時対応を求める場合は、この分割は使えません。

接続方式の選定では、ebXML MS、AS2、JX手順の3方式から相手先の指定に合うものを選びます*3。自社に設備を置くか、外部の接続サービスを使うかで、証明書の更新や監視の担当が変わります。方式が決まったら、実データに近い条件で接続確認を重ね、項目の値と件数の一致を確かめます。差異が出た場合は、仕様の解釈と自社の変換処理の両方を突き合わせて原因を切り分けます。

本番移行は、対象の相手先を1社ずつ切り替える形が扱いやすくなります。切り替え直後は旧来の手段と併用し、受注件数と金額の一致を数日単位で確認します。異常時に旧手段へ戻せる手順を決めておくと、現場の不安を抑えられます。移行が完了した相手先から順に、旧来の運用を閉じていきます。

体制の面では、情報システム部門と業務部門の担当を早い段階で決めておきます。データが自動で流れるようになると、例外処理の判断が業務部門へ移るためです。証明書の更新やマスタの追加といった継続作業も、担当と頻度を決めておかないと属人化します。運用開始後の保守まで含めて、誰が何を見るのかを一覧にしておくと引き継ぎが楽になります。

流通BMSの導入でつまずきやすい論点と対処

合意形成・マスタ整備・接続確認・本番移行の4段を時間順に並べた図
合意形成から本番移行までの段取り

つまずきやすいのは、取引先ごとの運用差異、電子取引データの保存要件、旧EDIとの並行運用の3点です。標準に沿っていても、納品先コードの持ち方や締めの単位が相手先ごとに違えば運用の分岐は残ります。受け取ったデータは税務上の電子取引に当たる場合があり、保存の要件を確かめておく必要があります*6。並行運用が延びるほど、二重の維持費と確認の手間が積み上がります。

運用差異は、標準からの逸脱として現れることがあります。相手先が独自の項目や値の使い方を求める場合、その扱いを自社側の変換処理で吸収するか、運用で受けるかの判断が要ります。吸収する範囲を広げすぎると、標準化で減らしたはずの個別対応が戻ってきます。どこまでを共通の受け皿で受け、どこからを例外として扱うかを、接続の前に線引きしておきます。

電子取引のデータは、要件を満たしたうえで電子のまま保存する扱いが示されています6。公開されている一問一答では、改ざん防止の措置と、取引年月日・取引金額・取引先の3項目で検索できる状態が示されています6。要件や猶予の扱いは条件によって異なり、制度の改正も続いています。自社の該当箇所は最新版の一問一答で確かめ、税務上の判断は専門家に相談する前提で進めるのが安全です。

旧EDIとの並行運用は、期間を区切らないと長期化します。相手先ごとに切り替え時期が異なるため、両方の受け皿を同時に維持する期間はどうしても生まれます。維持費が二重にかかるうえ、同じ取引が別経路で二重計上されていないかの確認も要ります。切り替え済みの相手先と残りの相手先を一覧で管理し、完了の判定基準を決めておきます。

内製で進める場合に必要な知識は広い範囲に及びます。通信手順と証明書の運用、XMLの項目定義の読み解き、基幹システムの受注・出荷・請求まわりの改修、そして業務側の運用設計が同時に必要になります。加えて相手先ごとの調整と接続確認の工数も見込まなければなりません。これらを兼ねられる担当が社内にいるかどうかが、日程の現実味を左右します。

外部の支援を使う場合との差は、期限の管理と例外処理の経験値に出やすくなります。接続方式の選定や証明書の更新といった定型の運用は、外部へ委ねると自社の負担を抑えられます。一方、マスタの整備と業務側の運用設計は、社内の事情を知る担当でなければ決められません。切り分けの目安は、社外に任せられる作業と自社でしか決められない判断を分けることにあります。

本節では失敗しやすい点と抑え方を扱いました。次節では、検討の初期に出やすい問いへ、公開情報の範囲で答えていきます。

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この節では、検討の初期に出やすい3つの問いに答えます。小規模な事業者でも導入できるのか、どの程度の企業が導入しているのか、版の改訂にどう追随するのかの3点です。先に結論を述べると、規模による可否の線引きは規格側になく、接続方式の選び方で負担を調整できます3。導入の広がりは協議会の推計と社名の公開一覧で確かめられます2。

小規模な事業者でも導入は可能です。3方式のうち接続の負担が軽い手順を選び、外部の接続サービスを利用すれば、自社に大きな設備を置かずに接続できます*3。取引先が少なければ対象メッセージも絞れるため、発注と出荷の2種類から始める進め方も取れます。負担が重くなるのは接続そのものより、商品コードと取引先コードの整備である場合が少なくありません。

導入の広がりは、協議会が公表する推計で把握できます。卸売業・製造業の導入企業数の推計は回を重ねて公表されており、直近では第28回として結果が示されています2。企業名を公開している導入済み・導入予定の一覧も情報コーナーに掲載されています7。自社の主要な取引先が一覧に含まれるかを見ると、対応の緊急度をつかみやすくなります。

版の改訂への追随は、運用の設計で吸収します。基本形の版数は2.2.2のように三段の番号で管理され、改訂の内容が公開されます*2。改訂で全接続が一斉に切り替わるわけではなく、相手先ごとに使用する版を確認しながら移っていきます。年に一度は自社が使う版と公開されている版を照合し、差分の影響を確かめる運用にしておくと安全です。

費用の見積もりは、公開された相場に頼らず費目を分解して積み上げます。接続の初期構築、基幹システム側の改修、マスタ整備の作業、そして接続サービスの利用料と証明書の維持が主な費目になります。相手先の数と対象メッセージの数が増えるほど、確認の工数が積み上がります。裏づけのない相場を前提にすると、日程も予算も後から崩れます。

判断の順序としては、期限の確認から始めるのが現実的です。電話回線を使うデータ通信は新規申込の受付が終わり、提供も2027年1月ごろに終える予定が公表されています*5。この期限と取引先からの要請時期を並べれば、着手すべき時期がおのずと決まります。そのうえで対象メッセージ、接続方式、保存要件の順に決めていく流れが取りやすいでしょう。

本稿の要点を3つに集約します。第一に、流通BMSは6業務に対応する8種類の標準メッセージと通信手順を定めた規格であり、個社ごとの取り決めを減らせます1。第二に、電話回線を使うデータ通信の提供終了という期限があり、日程は逆算で引く必要があります5。第三に、効果の大きさは取引先の数と既存システムの状態で変わるため、自社の数字で見積もることが判断の出発点になります。

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流通BMSに関するよくある質問

導入までにどれくらいの期間を見ておけばよいですか

期間は取引先の数と対象メッセージの数、基幹システムの改修範囲で変わるため、一律の目安は置けません。日程は電話回線を使うデータ通信の提供終了予定から逆算し、合意形成・マスタ整備・接続確認・本番移行の4段に分けて引くのが現実的です。相手先が複数ある場合は、要請の期限が早い順に着手します。

自社にサーバを用意する必要がありますか

必須ではありません。公開されたガイドラインではebXML MS・AS2・JX手順の3方式が示されており、外部の接続サービスを利用すれば自社に大きな設備を置かずに接続できます。ただし証明書の更新や監視の担当は、自社と委託先のどちらが持つかを契約時に決めておく必要があります。

取引先がまだ対応していない場合はどうすればよいですか

対応済みの相手先から順に切り替え、未対応の相手先とは従来の手段を続ける並行運用になります。並行期間は二重の維持費と確認の手間が発生するため、切り替え済みと未切り替えを一覧で管理し、完了の判定基準を決めておきます。期間を区切らないまま進めると長期化します。

受け取ったデータを印刷して保存してもよいですか

電子取引のデータは、要件を満たしたうえで電子のまま保存する扱いが公表されています。改ざん防止の措置と、取引年月日・取引金額・取引先の3項目で検索できる状態が一問一答に示されています。要件や猶予の扱いは条件で異なり改正も続くため、最新版で自社の該当箇所を確かめ、税務の判断は専門家に相談してください。

費用はどのように見積もればよいですか

接続の初期構築、基幹システム側の改修、マスタ整備の作業、接続サービスの利用料と証明書の維持という費目に分けて積み上げます。相手先の数と対象メッセージの数が増えるほど確認の工数が積み上がります。裏づけのない相場を前提に置くと、日程も予算も後から崩れます。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「FSOL B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

  1. *1 出典:一般財団法人流通システム開発センター「標準化活動/EDI『流通BMS』(定義、基本形Ver.1.0以降のバージョン変遷、六業務・八種の標準メッセージ)」(2026年9月時点で公開を確認) 経路
  2. *2 出典:流通システム標準普及推進協議会「流通BMS協議会サイト(第28回 卸・メーカーの流通BMS導入企業数推計、基本形Ver2.2.2の公開情報)」(2025) 経路
  3. *3 出典:流通システム標準普及推進協議会「流通BMS標準仕様『通信基盤関連の標準』(通信プロトコル利用ガイドライン、ebXMLのひな型CPA、流通業界共通認証局証明書ポリシー等)」(2026年9月時点で公開を確認) 経路
  4. *4 出典:流通システム標準普及推進協議会「設立経緯(流通サプライチェーン全体最適化促進事業、流通システム標準化事業、協議会設立総会)」(2026年9月時点で公開を確認) 経路
  5. *5 出典:東日本電信電話株式会社「INSネットの新規申込受付・提供終了について」(2024) 経路
  6. *6 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答(Q&A)〜令和四年一月一日以後に保存等を開始する方〜(電子取引関係を含む)」(2026年9月時点で公開を確認) 経路
  7. *7 出典:流通システム標準普及推進協議会「情報コーナー『社名公開企業一覧』(導入済・導入予定企業名の公開)」(2025) 経路

画像の出典元

  1. Yellow SALE sign on a shop window overlooking a pedestrian s/Photo by Markus Spiske on Unsplash
  2. a toy shopping cart/Photo by Shutter Speed on Unsplash
  3. Woman in pink hoodie labeling a package/Photo by GB The Green Brand on Unsplash

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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