◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 食材の取引先は総合卸・専門卸・産地直送・業務用通販の4類型に整理でき、1つに寄せないほど欠品と原価の振れを抑えられます。
- 選定は価格・最低発注ロット・納品リードタイム・品質管理体制・原材料情報の5項目を同じ様式で確かめます。
- 代金の支払期日は受領した日から60日以内に定める必要があり、条件は書面か電子データで残す運用が前提です。
- 2023年度の食品ロスは464万トンで、うち事業系は231万トンでした。発注の精度は原価と廃棄の双方に直結します。
目次
食材発注における取引先とは
食材発注の取引先とは、飲食店や給食・中食の事業者が食材を継続的に調達するために、発注・納品・検収・請求のやり取りを重ねる卸売業者や生産者、通販事業者などの相手方です。取引先は品物を届ける相手であると同時に、価格・数量・納品日・支払期日という取引条件を取り決める相手でもあります。取引条件には、代金の支払期日を受領した日から60日以内に定めるなど、法令が枠を示す部分が含まれます*4。取引先を何社持ち、どの食材をどこから引くかという設計が、原価と発注業務の手間を同時に左右します。
取引先という言い方は、仕入先や卸売業者と重なりつつも範囲の広い言葉です。仕入先は自社が代金を支払って物品を受け取る相手を指し、卸売業者はそのうち生産者や製造業者から集めた商品を再販する事業者を指します。生産者から直に引く場合も、通販の事業者から引く場合も、発注と支払の相手である以上は取引先に含まれます。呼び分けを社内でそろえておくと、発注の窓口と支払の相手が食い違う事態を避けられるでしょう。
発注から代金の受け渡しまでは、発注・納品・検収・請求・支払という順序で進みます。発注は必要な数量と納品日を相手に伝える工程で、電話、ファクス、専用の受発注の仕組みなど手段は複数あります。納品の後に置かれる検収は、届いた数量と品質を確かめて受け取りを確定させる工程です。検収の結果が請求と支払の根拠になるため、ここで差異を止められないと後の工程で修正の手間が生じます。
<!– SVG_FIGURE
{"type": "flow", "caption": "食材発注における発注から検収・請求・支払に至る流れ", "alt": "食材の取引は、必要な数量と納品日を伝える発注から始まり、商品が届く納品、数量と品質を確かめる検収、締め日ごとの請求、期日までの支払という順序で進みます。", "steps": [{"label": "発注", "desc": "数量と納品日を伝えます"}, {"label": "納品", "desc": "指定した日時に届きます"}, {"label": "検収", "desc": "数量と品質を確かめます"}, {"label": "請求", "desc": "締め日ごとに請求されます"}, {"label": "支払", "desc": "期日までに代金を払います"}]}
–>
検収で見るのは数量だけではありません。傷みの有無、温度帯、賞味期限の残り、規格の違いまで含めて確かめます。差異が出た場合は、その場で伝票に記録し、返品とするか値引きとするかを相手と決めます。記録の残っていない差異は請求の段階で争点になり、経理の確認作業が増えていきます。
取引先の数は、原価と業務量の双方に効きます。数を絞れば1社あたりの取引量が増え、価格の交渉余地や配送の効率は上がります。その反面、絞った1社が欠品したときの代替が利かず、供給が止まる危険は高まるでしょう。逆に数を増やすと欠品時の代替は利きますが、相手ごとに締め日・支払期日・請求書の様式が異なり、経理の処理件数が積み上がります。
事務の件数は、請求書の保存にも跳ね返ります。適格請求書等保存方式では、仕入税額控除を受けるために原則として適格請求書の保存が必要で、帳簿と請求書等は7年間の保存が求められます*5。取引先を1社増やすことは、毎月の請求書を1通増やし、7年分の保存の対象を増やすことにほかなりません。取引先の設計は、原価だけでなく事務の総量まで含めて考える対象です。
取引先を選ぶときに確認する順序5点(順位根拠:確認の依存関係)
- 価格と最低発注ロットを組にして確かめます。最低発注ロットが1回の消費量を超えると、単価の差は廃棄の額で相殺されます。
- 納品リードタイムと発注の締め時刻を確かめます。締めが早い相手ほど、当日の売れ行きを発注へ反映しにくくなります。
- 品質管理体制を確かめます。冷蔵と冷凍の区分、配送中の温度の管理、異物が混入した際の連絡経路の3点を書面で受け取ります。
- 原材料情報の提供方法を確かめます。アレルゲンと原産地の情報を電子データで受け取れる相手ほど、表示の確認が短い時間で済みます。
- 取引条件の残し方と支払条件を確かめます。代金の支払期日は物品を受領した日から60日以内に定める必要があります。
取引先の主な種類とそれぞれの特徴
食材の取引先は、総合卸、専門卸、産地直送や生産者との直接取引、業務用通販という4つの類型に整理できます。4類型は品揃えの幅、最低発注ロット、納品リードタイム、価格の決まり方がそれぞれ異なります。1つの類型だけに寄せると、欠品時の代替と価格の見直しの両面で選択肢を失うでしょう。主力の食材を担う相手と、補助的に使う相手を分けて設計すると、欠品と原価の振れを同時に抑えやすくなります。
総合卸は、青果・精肉・鮮魚・加工品・調味料まで幅広い品目を1社でまとめて供給します。窓口が1つに集約されるため、発注の件数と請求書の通数を抑えられます。まとめて引くほど配送の効率は上がり、少量の品目でも運んでもらいやすくなるでしょう。その一方で、個別の品目では専門卸ほど品質や産地の選択肢が広くない場合があります。
専門卸は青果や鮮魚など特定の品目に絞り、産地や等級の指定に応えます。旬の切り替わりや相場の動きに詳しく、代替品の提案を受けやすい相手だと言えます。ただし品目が絞られる分だけ取引先の数は増え、締め日と支払期日の管理は分散します。専門卸を使う場合は、どの品目を任せるかを決めてから広げると管理が保てます。
産地直送や生産者との直接取引は、間に入る段階が減るぶん、品質の情報が直に届きます。栽培や飼育の方法、収穫の時期を確かめやすく、店の売りに結び付けやすい調達です。反面、収穫量の変動をそのまま受けるため、数量の確約が難しい場面が生じます。配送も宅配便の単位になりやすく、少量では送料が単価に乗ってきます。
業務用通販やBtoB EC(事業者間の電子商取引)は、価格と在庫を画面で確かめてから発注できる調達です。深夜や休日でも発注でき、電話のつながる時間帯に縛られません。取引の記録がデータで残るため、単価の推移や発注の履歴を後から追えます。国は食品流通のデジタル化と標準化を合理化の柱に掲げており、電子的な取引の受け皿は広がってきました*1。
4類型の使い分けは、食材の使用頻度と代替の効きやすさで決めます。毎日必ず使う定番の食材は供給の安定を優先し、複数の相手から引ける状態にしておきます。季節限定や少量の食材は、品質と提案力を優先して専門卸や産地から引く判断が向くでしょう。外食の需要は月ごとの業界調査が公表されるほど月次で振れるため、需要の山谷に合わせて配分を見直す余地を残しておきます*7。
自社の商流に合わせた要件整理を進めたい場合は、無料相談で要件を整理するのが近道です。
取引先を選ぶときに確認したい基準
取引先を選ぶ基準は、価格、最低発注ロット、納品リードタイム、品質管理体制、原材料情報の5項目に整理できます。5項目は独立しておらず、価格の安さが最低発注ロットの大きさと引き換えになる関係にあります。単価だけを並べて比べると、廃棄と保管の増加分を見落とします。5項目を同じ様式で確かめ、相手ごとの差を1枚に並べた状態を作ってから判断しましょう。
価格は、単価と最低発注ロットを組にして見ます。最低発注ロットが大きいほど単価は下がりますが、使い切れなければ廃棄に変わります。1回の発注量が店の消費量を超える場合、単価の差は廃棄の額で相殺されてしまいます。仕入の判断は、単価ではなく実際に使い切れた量あたりの原価で比べる必要があります。
配送頻度と納品リードタイムは、在庫の持ち方を決めます。配送が週に何回あるかで、次の納品までに店で抱える在庫の日数が決まるためです。発注の締め時刻も確認の対象で、締めが早い相手ほど当日の売れ行きを発注に反映しにくくなります。欠品したときの緊急の対応が可能か、その場合に追加の費用が生じるかも先に確かめておきます。
品質管理体制は、温度帯の管理と記録の残し方で見ます。冷蔵と冷凍の区分、配送中の温度の管理、異物が混入した際の連絡経路が確認の対象です。原材料情報は、アレルゲンと原産地の表示に必要な情報を書面や電子データで受け取れるかどうかが分かれ目になります。原材料情報が口頭でしか得られない相手では、表示の確認に手間が掛かり続けます。
<!– SVG_FIGURE
{"type": "table", "caption": "取引先を選ぶときに確認する5項目と確認を欠いた場合の影響", "alt": "取引先を選ぶ際の確認項目として、価格は使い切れた量あたりの原価で比べ、最低発注ロットは1回の発注量が消費量に収まるかを見て、納品リードタイムは締め時刻と次の納品までの日数を確かめ、品質管理体制は温度帯の管理と記録の残し方を確かめ、原材料情報はアレルゲンと原産地の情報の受け取り方を確かめます。", "columns": ["確認する項目", "確かめる内容", "確認しない場合に生じること"], "rows": [["価格", "単価と取引条件を組にして比べる", "使い切れた量あたりの原価が想定から離れる"], ["最低発注ロット", "1回の発注量が店の消費量に収まるか", "使い切れずに廃棄へ変わる"], ["納品リードタイム", "発注の締め時刻と次の納品までの日数", "欠品のたびに買い足しが生じる"], ["品質管理体制", "温度帯の管理と記録の残し方", "回収や表示の訂正の対応を自店で背負う"], ["原材料情報", "アレルゲンと原産地の情報の受け取り方", "表示の確認に手間が掛かり続ける"]]}
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基準を確かめないまま取引を始めると、後から戻すための費用と時間が掛かります。納品リードタイムを確かめずに契約すると、欠品のたびに近隣の店舗での買い足しが発生します。買い足しの単価は仕入の単価より高く、原価率は想定から離れていきます。品質管理体制の確認を欠いた場合には、回収や表示の訂正といった対応まで自店で背負うことになりかねません。
5項目の確認は、相手に一覧の様式を渡して回答してもらう形が実務的です。回答は電子データで受け取り、取引先ごとに同じ欄へ保存します。同じ様式で集めた回答は、次に新規取引先を追加するときの比較にそのまま使えます。書面や電子データで条件を残す運用は、取引の適正化を進めるうえでも土台になります*3。
| 確認する項目 | 確かめる内容 | 確認しない場合に生じること |
|---|---|---|
| 価格 | 単価と取引条件を組にして比べる | 使い切れた量あたりの原価が想定から離れる |
| 最低発注ロット | 1回の発注量が店の消費量に収まるか | 使い切れずに廃棄へ変わる |
| 納品リードタイム | 発注の締め時刻と次の納品までの日数 | 欠品のたびに買い足しが生じる |
| 品質管理体制 | 温度帯の管理と記録の残し方 | 回収や表示の訂正の対応を自店で背負う |
| 原材料情報 | アレルゲンと原産地の情報の受け取り方 | 表示の確認に手間が掛かり続ける |
取引先とのやり取りで起きやすい発注業務の課題
発注業務で起きる不具合は、転記のミス、発注量の判断の属人化、欠品と過剰在庫の3つに集約されます。3つは別々の問題ではなく、発注の内容が個人の頭と紙の上に留まり記録として残らない点から派生します。2023年度の食品ロスは464万トンと推計され、うち事業系が231万トン、家庭系が233万トンでした*6。事業系の231万トンには、日々の発注の誤差が積み上がっています。記録の残らない発注は、その誤差を減らす手掛かりを失わせます。
電話とファクスによる発注では、伝える側と受ける側の双方で書き写しが発生します。書き写しの回数だけ、誤りの入り込む余地が生まれるためです。数量の桁違い、規格の取り違え、納品日の誤りは、いずれも検収の場で初めて表面化します。誤りが判明した時点では調理の時間が迫っており、代替の手配に追われる展開になりがちです。
電話での発注には、注文した内容の控えが残りません。相手の伝票と自店の記憶が食い違ったとき、どちらが正しいかを示す材料がない状態に陥ります。請求の段階で差異が出ると、経理は伝票をさかのぼって確かめる作業に入ります。この作業は月末に集中し、締めの遅れという形で表れるでしょう。
発注量の判断が担当者ごとに違うと、同じ店でも週によって在庫の水準が変わります。経験の長い担当は天候や予約の入り方から数量を補正しますが、その根拠は本人の頭の中にあります。担当が交代した週に欠品や積み上がりが起きるのは、判断の根拠が引き継がれないためです。判断の根拠を数値で残せば、交代による振れ幅を小さくできます。
欠品はメニューの提供停止に直結し、来店した客の注文を取り逃します。過剰在庫は保管の場所を占め、消費期限の到来とともに廃棄へ変わります。廃棄は食材の原価に加えて、処理の費用と作業の時間まで奪う損失です。国の推計で事業系の食品ロスが231万トンに上る現状は、発注の精度が事業の費用に直結することを示しています*6。
3つの不具合は、発注の記録をデータで残す運用へ変えると同時に減っていきます。数量の伝達が画面への入力になれば、書き写しの回数そのものが消えます。発注の履歴が残れば、判断の根拠を後から確かめられます。国が食品流通のデジタル化と標準化を進める背景にも、こうした取引ごとの記録の欠落があります*1。
取引適正化と法令面で押さえておきたい観点
取引先とのやり取りで押さえる法令面の観点は、条件の明示、価格の協議、請求書の保存の3つです。代金の支払期日は物品を受領した日から60日以内に定める必要があり、定めた期日までに支払わなければなりません4。2026年1月に施行された取適法(中小受託取引適正化法)では、手形による支払も禁じられています4。条件を口頭のまま進める運用は、これらの要件を満たしているかどうかを確かめられない状態を招きます。
取引の条件は、発注のたびに書面か電子データで相手に示します。示す内容は、品目、数量、単価、納品日、支払期日、支払方法です。条件を残す運用は、後から差異が生じたときに双方の記憶へ頼らずに済ませる備えになります。適正な取引を進めるための指針でも、条件の明確化と記録の保存が繰り返し示されています*3。
原材料費や物流費、人件費が上がった局面では、価格の協議が論点になります。食料システム法の枠組みでは、費用の上昇を価格へ反映するための協議に応じる努力義務が示されています2。買い手の側が協議に応じないまま一方的に代金を据え置く進め方は、取適法の禁止行為に触れる余地があります4。協議の申し入れと回答は、日付と内容を記録として残しておきましょう。
協議の進め方に迷う場面では、公的な相談の窓口が用意されています*2。窓口では、どのような資料をそろえて協議に臨むかという実務の相談も扱われます。自店だけで判断せず、制度の枠組みの中で手順を確かめる姿勢が、取引先との関係を長く保ちます。
請求書の扱いは適格請求書等保存方式に沿います。2023年10月1日に始まったこの方式では、仕入税額控除を受けるために原則として適格請求書の保存が必要です5。適格請求書には、登録番号、適用税率、税率ごとに区分した消費税額の記載が求められます5。帳簿と請求書等の保存期間は7年間で、取引先が増えるほど保存の対象も増えていきます*5。
少額の取引には特例が置かれています。要件を満たす事業者は、税込1万円未満の課税仕入れについて、帳簿の保存だけで仕入税額控除を受けられます5。ただし特例には適用の期限と対象の要件が定められています5。自店が対象に当たるかを確かめないまま運用を組むと、後から控除の可否が変わる恐れがあります。
受発注のデジタル化による取引先管理の整え方
受発注のデジタル化は、取引先マスタの整理、商品コードの統一、発注実績の可視化という順序で進めます。順序を飛ばして受発注の仕組みだけを入れても、相手ごとに呼び名の違う食材が並び、集計が合いません。取引先マスタの整理では、重複の解消と支払条件の登録を先に済ませます。商品コードの統一では、商品コードの付番と規格情報の記録をそろえます。土台が整ってはじめて、発注実績の可視化が原価の判断に使える情報になります。
取引先マスタの整理は、重複の解消から始めます。同じ相手が店舗ごとに別々に登録されていると、支払の集計が分かれてしまうためです。次に支払条件の登録として、締め日、支払期日、支払方法、適格請求書の登録番号を1か所へまとめます*5。この1か所が、請求の確認と支払の実行に共通する土台になります。
商品コードの統一は、同じ食材に同じ商品コードを割り当てる作業です。商品コードの付番の規則を決め、店舗や担当者が独自の呼び名を作れない状態にします。あわせて規格情報の記録として、内容量、単位、荷姿、温度帯を商品コードへ結び付けます。単位が箱と個で混ざったままでは、単価の比較そのものが成り立ちません。
<!– SVG_FIGURE
{"type": "stage", "caption": "受発注のデジタル化を進める3段階と各段階の作業", "alt": "受発注のデジタル化は3つの段階で進みます。取引先マスタの整理では重複の解消と支払条件の登録を済ませ、商品コードの統一では商品コードの付番と規格情報の記録をそろえ、発注実績の可視化では単価推移の把握と原価管理への反映に進みます。", "steps": [{"label": "取引先マスタの整理", "cards": [{"label": "重複の解消", "desc": "同じ相手の二重の登録を1件にまとめます"}, {"label": "支払条件の登録", "desc": "締め日と支払期日を1か所に集めます"}]}, {"label": "商品コードの統一", "cards": [{"label": "商品コードの付番", "desc": "同じ食材に同じ番号を割り当てます"}, {"label": "規格情報の記録", "desc": "内容量と単位を番号に結び付けます"}]}, {"label": "発注実績の可視化", "cards": [{"label": "単価推移の把握", "desc": "食材ごとの単価の動きを追えます"}, {"label": "原価管理への反映", "desc": "実績の数量と単価を原価に反映します"}]}]}
–>
取引先とのデータ連携には、業界で標準化されたEDI(電子データ交換。企業間で伝票の情報をやり取りする仕組み)の仕様が用意されています8。標準の仕様は、発注、出荷、受領、請求、支払といった業務のやり取りを共通の形式で定めます8。相手ごとに個別の形式を作り込む方式と比べ、接続の追加と保守の負担を抑えられます。国が進める食品流通の標準化も、共通の形式が広がることを前提に置いています*1。
発注実績の可視化は、単価推移の把握から入ります。同じ食材の単価が相手ごと、月ごとにどう動いたかを並べると、協議の材料が手元にそろいます。次に原価管理への反映として、実績の数量と単価をメニューの原価へ結び付けます。実績が原価に結び付けば、値上げの申し入れを受けた際の影響額を数字で示せるようになります*2。
3つの段階は同時に始めず、取引先マスタの整理から順に進めます。マスタが整う前に集計へ進むと、合わない数字が現場の不信を招きます。着手の順序を守ることが、デジタル化の成否を分けると言えるでしょう。整えた土台は、取引先を入れ替える場面でもそのまま使えます。
取引先の見直しと関係を続けるための進め方
取引先の見直しは、評価項目の設定、既存取引先の評価、新規取引先の追加、切り替えの影響の想定という4つの段で進めます。感覚に頼った入れ替えは、価格が下がっても納品の安定を落とす結果を招きます。評価項目の設定では、価格、納品の精度、対応の速さ、情報の提供という4つの観点を同じ物差しにそろえます。切り替えの影響の想定まで済ませてから動くと、欠品と事務の混乱を避けられます。
評価項目の設定では、数字で取れる項目を優先します。納品の精度は、発注した数量に対して欠品や規格の違いが何件出たかで測れます。対応の速さは、欠品の連絡が届くまでの時間や、代替品の提案が届くまでの時間で測れます。価格は単価だけでなく、最低発注ロットと配送頻度を含めた条件の組で比べます。
既存取引先の評価は、同じ周期で実績をそろえて比べます。周期を決めておけば、値上げの申し入れがあった月だけ慌てて比較する事態を避けられるでしょう。評価の結果は相手にも伝えます。改善の余地を具体的に伝えた結果として条件が変わり、切り替えずに済む場合もあります*3。
新規取引先の追加は、少量の品目から始めます。最初から主力の食材を移すと、納品が安定しなかったときの逃げ場がありません。小口での取引を重ね、納品の精度と連絡の速さを実績として確かめます。確認の済んだ品目から段階的に比率を移せば、供給を止めずに入れ替えられます。
<!– SVG_FIGURE
{"type": "vflow", "caption": "取引先の見直しを進める4つの段と各段の確認点", "alt": "取引先の見直しは、評価項目の設定から始め、既存取引先の評価で同じ周期の実績をそろえて比べ、新規取引先の追加を少量の品目から始め、切り替えの影響の想定で欠品と原価と事務工数を見積もる順に進みます。", "steps": [{"label": "評価項目の設定", "desc": "価格と納品の精度と対応の速さを同じ物差しでそろえます"}, {"label": "既存取引先の評価", "desc": "同じ周期で実績をそろえて相手ごとに比べます"}, {"label": "新規取引先の追加", "desc": "少量の品目から始めて納品の安定を見極めます"}, {"label": "切り替えの影響の想定", "desc": "欠品と原価と事務工数への影響を先に見積もります"}]}
–>
切り替えの影響の想定では、欠品、原価、事務工数の3つを事前に見積もります。取引先が1社増えれば、締め日と支払期日の管理、請求書の確認、7年間の保存の対象がその分だけ増えます5。既存の相手との取引量が減れば、単価の前提が変わる場合もあります。減らす側にも取引条件の変更を先に伝え、記録として残しておく配慮が欠かせません3。
この一連の作業を自社だけで進める場合、必要になる知見は1つではありません。食材の相場と品質の判断、取適法や適格請求書等保存方式の要件の確認、商品コードとマスタの設計、EDIの接続という4つの領域にまたがります45*8。購買と経理と店舗の担当がそれぞれ時間を割く必要があり、通常の業務と並行すると期間は延びます。要件の確認漏れは、控除の可否や取引条件の不備という形で後から表れます。
外部の支援を使う判断は、作業を丸ごと預けるためではなく、確認の漏れを減らすためのものです。受発注の仕組みと商品コードの設計を先に固めれば、後からの作り直しを避けられます。自社の取引先の数と品目の数を持ち寄れば、どこから着手すべきかは短い時間で整理できるでしょう。[要追加:受発注の支援実績のデータ]
よくある質問
食材の取引先は何社まで持つのが適切ですか
適切な社数は一律に決まらず、食材ごとの代替の効きやすさで判断します。毎日使う定番の食材は供給が止まると営業に響くため、複数の相手から引ける状態にしておきます。逆に取引先を1社増やすと、締め日と支払期日の管理、請求書の確認、7年間の保存の対象が増えます。欠品の危険と事務の増加を並べて比べるとよいでしょう。
取引先から価格改定の申し入れを受けたときはどう対応すればよいですか
まず協議の場を持ち、申し入れの内容と回答を日付とともに記録します。食料システム法の枠組みでは、費用の上昇を価格へ反映するための協議に応じる努力義務が示されています。協議に応じないまま一方的に代金を据え置く進め方は、取適法の禁止行為に触れる余地があります。判断に迷う場合は公的な相談の窓口を使えます。
適格請求書の登録を受けていない生産者と取引しても差し支えありませんか
取引そのものは可能ですが、消費税の扱いが変わります。適格請求書等保存方式では、仕入税額控除を受けるために原則として適格請求書の保存が必要です。登録のない相手からの仕入れでは、その分の控除を受けられません。取引を続ける場合は、控除できない分を織り込んだ原価で採算を確かめておきます。
受発注のデジタル化はどの工程から始めるのが現実的ですか
取引先マスタの整理から始めます。同じ相手が二重に登録された状態では、支払の集計も単価の比較も合いません。マスタの重複を解消し、締め日と支払期日を1か所へまとめてから、商品コードの付番へ進みます。土台が整った後に発注実績の可視化へ進むと、集計した数字を原価の判断に使えます。
取引先を切り替えるときに事前に確かめておくことは何ですか
欠品、原価、事務工数の3つへの影響を見積もります。新しい相手には少量の品目から発注し、納品の精度と連絡の速さを実績として確かめてから比率を移します。取引量が減る相手にも条件の変更を先に伝え、記録として残します。切り替えの前後で単価の前提が変わる場合もあるため、原価への反映まで確かめておきます。
- *1 出典:農林水産省「食品等流通の合理化について(食品流通のデジタル化・標準化)」(2025) 経路
- *2 出典:農林水産省「食品等の取引適正化(食料システム法に基づく協議の努力義務・判断基準・相談窓口)」(2026) 経路
- *3 出典:農林水産省「食品製造業者・小売業者間における適正取引推進ガイドライン」(2026) 経路
- *4 出典:公正取引委員会「取適法(中小受託取引適正化法)の概要」(2026) 経路
- *5 出典:国税庁「タックスアンサー No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)」(2023) 経路
- *6 出典:消費者庁(農林水産省・環境省と連名)「2023(令和5)年度食品ロス量推計値の公表について」(2025) 経路
- *7 出典:一般社団法人日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査」(2026) 経路
- *8 出典:GS1 Japan(一般財団法人流通システム開発センター)「流通BMS(EDI標準仕様)」(2018) 経路
画像の出典元
- A long wooden table is surrounded by chairs/Photo by wu yi on Unsplash
- Empty green shelves in a warehouse with signs/Photo by lim woojung on Unsplash
- A large pile of brown cardboard boxes with blue tape/Photo by Rohit Choudhari on Unsplash