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取引先別の掛け率設定|BtoB ECでの決め方と運用の注意点

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 掛け率は上代に対する下代の割合で、上代1,000円で掛け率70%なら下代は700円になります。
  • 取引先別の価格はグループ単位の方式と個別単価の方式の2つが軸で、例外には期限を付けて持たせます。
  • 価格差自体は商慣行ですが、1982年告示の一般指定第3項と第4項が論点となり、判断は事案ごとです。
  • BtoB ECでは固定価格と率調整の優先順を1つに定め、6つの標準メッセージで基幹システムと項目をそろえます。
  • 見直しは原価の把握から改定の反映までを定型化し、毎年3月と9月の月間を協議の起点にできます。

Professional handshake agreement over business charts in an
▽ 写真の出典元

掛け率と上代・下代の関係

掛け率とは、上代(希望小売価格や定価)に対する下代(実際の卸価格)の割合を示す指標です。下代を上代で割った値であり、仕入れる側から見れば仕入率と同じ数字を指します。計算例として、上代が1,000円で掛け率が70%であれば、下代は700円です。掛け率と粗利率は別の指標であり、両者を取り違えると採算の判断がずれます。まず社内で言葉の定義をそろえることが、取引先別の価格運用を整える出発点になります。

上代の確認では希望小売価格か参考価格かを決め、掛け率の適用では取引先別の率と商品別の例外の順を定めます。続く下代の確定では端数処理まで含めて金額を固め、粗利率の確認で自社の採算を確かめます。
掛け率から下代を確定するまでの確認の順序

掛け率の計算は、下代=上代×掛け率という一本の式で表せます。上代1,000円に対して下代が650円であれば、掛け率は65%です。逆に掛け率から下代を求める場面では、端数処理の方法を先に決めておかなければなりません。1円未満を切り捨てるか四捨五入するかで、数量の多い取引では請求額に差が出ます。

上代・下代・仕入率という言い換えは、立場の違いから生まれています。売る側は自社の販売価格を下代と呼び、仕入れる側は同じ金額を仕入価格として扱います。仕入率は下代を上代で割った割合であり、掛け率と同じ数字を別の呼び名で示したものにほかなりません。見積書や価格表でどの呼び名を使うかを統一しておくと、取引先との読み違いが減ります。

粗利率と掛け率は、分母が違います。掛け率は上代を分母に置き、粗利率は自社の売価を分母に置いて利益の割合を示します。掛け率70%で仕入れた商品を上代どおりに販売すれば、粗利率は30%です。掛け率を下げても販売価格を同時に下げれば、粗利率は改善しません。

実務で数字を押さえる順序は、上代の確認、掛け率の適用、下代の確定、粗利率の確認という流れです。上代の確認では、希望小売価格として示すのか、参考価格にとどめるのかを決めます。掛け率の適用では、取引先別の率と商品別の例外のどちらを先に見るかを定めておきます。下代の確定と粗利率の確認まで通して見れば、価格の妥当性を1つの流れで判断できます。

掛け率を扱う際は、税抜と税込のどちらを基準にするかを明記してください。税込で示した上代へ掛け率を当てると、税抜の下代とずれが生じます。単位も同様で、ケース単価とバラ単価のどちらに掛け率を当てるのかを取引先と合わせておきます。ケースの入数が商品ごとに違えば、単価の比較そのものが難しくなるでしょう。

言葉の定義がそろっていない状態では、取引先別の掛け率をシステムへ移す作業は進みません。価格表の項目名、帳票の表記、システムの項目名が別々の呼び名で並ぶと、移行時の突き合わせに手間がかかります。定義を1枚の資料にまとめ、営業と受発注と情報システムの3部門で共有しておけば、後の設計は速く進みます。

取引先別の掛け率を設計する際に決める5点(順位根拠:後の工程が前の工程の決定に依存する着手順序)

  1. 価格の正本を1か所に定めます。表計算の価格表、紙の価格表、担当者の記憶という3つの経路が並存する状態では、どの価格が有効かを判断できません。
  2. 取引先の区分の基準を決めます。流通段階、取引量の帯、地域のどれで分けるかを先に定めれば、グループ単位の方式が機能します。
  3. 率と金額の優先順位を1つに定めます。公開ドキュメントでは、固定価格が率調整より優先される旨が示されています。
  4. 例外の期限と申請の経路を決めます。数量帯や期間限定の価格に期限が無いと、意図しない金額で受注が通ります。
  5. 改定の手順と記録の様式を決めます。原価の把握から改定の反映までを定型化すると、改定のたびの社内調整が短く済みます。

取引先別に掛け率を変える目的

マスタの整備では、取引先マスタに区分を持たせ、価格マスタで掛け率と個別単価を分けて管理します。価格の表示では、ログイン後の価格表示を取引先別に切り替え、見積の整合を保ちます。連携の設計では、基幹システムとの連携と標準メッセージの利用によって受発注の項目をそろえます。
BtoB ECで取引先別の価格を扱う3段階の作業

取引先別に掛け率を変える目的は、取引量の違いと取引先が担う役割の違いを価格へ反映することにあります。まとめて引き取る取引先と、少量を都度発注する取引先では、1件あたりの物流費や与信の手間が変わります。在庫を持つ、地域の配送を担う、販促の場を提供するといった役割も、価格差の理由になります。差を設ける場合は、その理由を社内で説明できる形に残しておかなければなりません。

価格差の理由は、取引量と役割という2つの観点で整理できます。取引量では、年間の取引金額、1回あたりの発注量、発注の頻度が判断の材料です。役割では、在庫負担、配送範囲、販促協力、代金回収の確実さを見ます。この2つの観点を分けて記録しておけば、後から差の根拠を追えます。

流通段階ごとの位置づけが違えば、価格帯も分かれます。自社から直接仕入れる取引先と、その取引先を経由して仕入れる取引先では、間に入る手数料の負担が変わります。同じ商品でも、卸として再販する取引先と、最終利用者へ販売する取引先では条件がそろいません。取引量や担う役割に応じて差を設ける例があり、段階ごとの標準の考え方を先に決めておくと運用が安定します。

営業判断による個別対応は、時間の経過とともに積み上がります。新規の取引を取るために一度下げた掛け率が、そのまま何年も続く例が見られます。担当者が代わると経緯が引き継がれず、価格の理由が分からない取引先が残ってしまいます。価格表の版が複数あり、どれが有効かを本人しか知らない状態では、見直しの起点すら定まりません。

実質的な取引条件は、掛け率だけでは決まりません。運賃の負担、支払条件、返品の可否、販促費の分担、リベートという5つの条件が加わって、取引先ごとの実質的な取り分が決まります。掛け率をそろえても、運賃を自社が負担していれば実質の値引きに近づきます。条件を1つの台帳に並べ、掛け率と併せて見ることが差の管理につながります。

差を設ける目的を明文化しておけば、社外への説明にも耐えられます。取引条件の差の取り扱いについては、独占禁止法上の告示1と、流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針2が考え方を示しています。いずれも個別の事案ごとに判断されるため、自社の運用が該当するおそれがあるかどうかは所管官庁や専門家への確認が必要です。目的と根拠を残す運用は、法令上の論点への備えにもなります。

価格差の記録は、3つの要素をそろえると使いやすくなります。どの時点で決めたか、誰が承認したか、どの条件と引き換えかという3点です。この3点が残っていれば、担当者が代わっても同じ説明ができるでしょう。記録の無い価格は、見直しのたびに一から交渉をやり直すことになりかねません。

自社の商流に合わせた要件整理を進めたい場合は、無料相談で要件を整理するのが近道です。

取引先別の掛け率を決める代表的な方式

原価の把握で変動要因を数字にまとめ、社内の合意形成で改定の幅と対象を決めます。続く取引先への説明では根拠となる資料を示し、改定の反映でマスタと帳票を同時に直します。
掛け率の見直しにおける社内と取引先の手順

取引先別の掛け率を決める方式は、グループ単位の方式と個別単価の方式という2つが軸です。取引先をいくつかの区分にまとめて同じ掛け率を当てるのが前者、取引先と商品の組み合わせごとに単価を持つのが後者です。実務では2つを併用し、そこへ数量帯や期間限定の例外を重ねる形が採られます。どこまでを標準で処理し、どこから例外とするかを決めることが設計の要点になります。

グループ単位の方式は、取引先グループに1つの掛け率を持たせます。区分は、流通段階、取引量の帯、地域といった基準で作ります。登録する価格の件数が少なく済むため、改定の際に更新する対象も絞れるでしょう。区分の数が増えすぎると、どの取引先がどの区分に入るのかを担当者が判断できなくなります。

個別単価の方式は、取引先別・商品別の単価を1件ずつ登録します。主力商品や競合と競る商品では、率ではなく金額で握る場面が出てきます。金額で持つと、原価が変わったときに掛け率のままでは追随しません。取引先の数と商品の数を掛けた件数が登録対象となるため、件数の見積りを先に立ててください。

数量帯や期間限定の例外は、適用条件と期限を付けた価格として重ねます。数量帯では、発注量が決めた帯に入ったときだけ別の掛け率を当てます。期間限定では、販促の期間に限って価格を切り替えます。期限切れの価格が残ると意図しない金額で受注が通るため、期限の管理を仕組みへ組み込む必要があります。

複数の価格が同時に当たる場面では、どれを優先するかを決めておきます。BtoB EC製品の公開ドキュメントでは、カタログ単位の率調整と固定価格を併用でき、固定価格が率調整より優先される旨が示されています8。別の製品でも、共有カタログに対して固定額と率の2種でカスタム価格を設定できると記載されています9。いずれも参照時点の記載であり、更新される前提で確認してください。

方式の選び方は、例外の多さと改定の頻度で判断できます。例外が少なく改定が頻繁なら、グループ単位の方式のほうが更新の手数は減ります。例外が多く金額で握る商品が中心であれば、個別単価の方式を軸に置きます。両方が必要な場合は、グループ単位を土台にし、個別単価を上書きとして重ねる形が扱いやすいでしょう。

方式を決める前に、いま存在する価格の全件を数えておいてください。取引先の数、商品の数、例外として登録されている価格の件数を数えると、移行の規模が見えます。全件を数える作業には手間がかかりますが、ここを飛ばすと移行後に価格が合わない取引先が残ります。数えた結果を1枚の表にまとめ、方式の議論の土台にしましょう。

方式 価格の持ち方 向く場面 留意点
グループ単位の方式 取引先グループに1つの掛け率を持たせます 取引先の数が多く、商品ごとの例外が少ない場面 個別の事情を反映しにくく、例外の申請が増えます
個別単価の方式 取引先別・商品別の単価を1件ずつ登録します 主力商品の価格を取引先ごとに握る場面 登録件数が増え、改定時の更新もれが起きます
数量帯や期間限定の例外 適用条件と期限を付けた価格を重ねます 数量に応じた価格や販促期間の価格を出す場面 期限切れの価格が残り、意図しない金額で受注します

取引先ごとに価格差を設ける際の法令上の論点

取引先ごとに価格を変えること自体は通常の商慣行ですが、独占禁止法上の論点が生じる場面があります。1982年に告示された不公正な取引方法の一般指定は、第3項で差別対価、第4項で取引条件等の差別取扱いを定めています*1。これらは価格差があれば直ちに問題になるものではなく、個別の事案ごとに判断されます。自社の運用が該当するおそれがあるかどうかは、所管官庁や専門家への確認が必要です。

差別対価と取引条件等の差別取扱いは、条文の上で別の項に置かれています1。前者は対価そのものの差、後者は対価以外の取引条件の差を対象としています。流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針2は、再販売価格維持行為、非価格制限行為、リベートの供与を対象として考え方を示し、2026年に最終改正されました。取引量や役割の違いに応じた差であれば、通常の取引として扱われます。もっとも、競争への影響が問われる場面もあり、判断は事案ごとに分かれます。

優越的地位の濫用が問題となりうるのは、取引条件を一方的に決める場面です。2010年に策定された考え方を示す文書3は、対価の一方的決定や減額などの行為類型を挙げています。2005年に指定された大規模小売業者との取引に関する告示4も、不当な値引きや不当な経済上の利益の収受などを対象としています。掛け率の引き下げを協議なく通知だけで進める運用は、該当するおそれがある行為として整理しておくほうが安全でしょう。

取引の適正化に関する法制度も動いています。下請代金の支払遅延等に関する法律が中小受託取引の適正化に関する法律へと改められ、2026年1月に施行される旨が公表されています5。改正の説明では、協議に応じない一方的な代金決定の禁止などが項目として挙げられています5。制度の詳細は原典の表記に沿って確認し、自社の取引がどの範囲に入るかを個別に判断してください。

希望小売価格の扱いは、掛け率の運用と隣り合う論点です。上代を参考として示すことと、取引先の販売価格を拘束することは別に扱われます。指針*2は再販売価格維持行為を対象に含めており、価格の指示や遵守の要請が問われる場面を示しています。価格表に上代を載せる場合でも、販売価格の決定は取引先に委ねる旨を明確にしておくのが穏当です。

価格差の根拠を残していない場合、説明を求められた時点で対応の余地が狭まります。どの時点で、誰の判断で、どの条件と引き換えに差を設けたのかを示せなければ、社内の調査にも時間がかかります。取引先からの照会が重なると、営業と受発注の担当者は本来の業務に割ける時間を失うでしょう。差の根拠を残す運用は、法令上の論点への備えと業務の負荷軽減の両方に効きます。

法令に関する判断は、記事の記述だけで完結しません。原典の告示や指針は改正が続いており、参照する版によって記載が変わります*2。自社の運用を評価する場面では、最新の原典を確認し、専門家や所管官庁へ照会する手順を組み込んでください。制度の変更を拾う担当を決めておけば、確認の抜けを防げます。

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BtoB ECで掛け率を運用する仕組み

BtoB ECで取引先別の掛け率を運用する仕組みは、マスタの整備、価格の表示、連携の設計という3段階で組み立てます。取引先マスタに区分を持たせ、価格マスタで掛け率と個別単価を分けて管理するのが土台です。その上でログイン後の価格表示を取引先別に切り替え、見積の整合を保ちます。基幹システムとの連携と標準メッセージの利用によって、受発注の項目をそろえていきます。

マスタの設計では、取引先マスタと価格マスタの役割を分けます。取引先マスタには、流通段階、取引量の帯、地域といった区分の項目を持たせます。価格マスタには、区分ごとの掛け率と、取引先別・商品別の個別単価を別の欄で持ちます。1つの欄に率と金額を混在させると、改定のときに更新対象を絞れません。

複数の価格が当たったときの優先順位は、設計の段階で決めておきます。公開ドキュメントでは、固定価格が率調整より優先される旨が記載されています8。共有カタログに固定額と率の2種でカスタム価格を設定できるという記載もあります9。自社で設計する場合も、率と金額のどちらを上位に置くかを1つに定め、例外を作らない運用にしてください。

ログイン後の価格表示では、取引先ごとに見える価格を切り替えます。未ログインの状態で価格を出すかどうかも、先に決めるべき論点です。取引先の担当者が複数の拠点に分かれている場合、拠点単位でどの価格を当てるかという設計も要ります。見積の整合が崩れると、画面の価格と注文確認の価格が食い違い、受注後の訂正作業が増えます。

基幹システムとの連携では、価格の正本をどちらに置くかを決めます。基幹側を正本にして参照するのか、EC側へ複製するのかで、改定の反映の速さが変わります。企業間の受発注では、標準メッセージの利用が広がっています。発注、出荷、受領、返品、請求、支払という6つの業務を対象とした標準メッセージが公開されており、基本形のVer2.0が2018年に公開されました7。共通の仕様に沿えば、項目の解釈をそろえる土台になります7。

取引先別の価格をシステムへ移す作業には、複数の領域の知識が必要です。価格の商慣行、マスタ設計、権限と承認の設計、基幹システムの項目定義、企業間データ連携の仕様という5つの領域が関わります。これらを1人で担える人材は社内に少なく、営業と受発注と情報システムの担当者が同時に動かなければ進みません。外部の支援を入れる場合は、移行前の価格の全件突き合わせを設計に含めておくと、切り替え後の混乱を抑えられます。

移行の失敗は、受注の停止という形で表面化します。価格が当たらない取引先が出れば、その取引先の注文は画面上で確定できません。電話とメールでの受注に戻ると、受発注の担当者の作業時間が増え、出荷の遅れにつながります。切り替えの前に、旧価格表と新マスタの全件を突き合わせる期間を確保してください。

掛け率を見直すときの手順

掛け率の見直しは、原価の把握、社内の合意形成、取引先への説明、改定の反映という順で進めます。原価の変動要因を数字で押さえないまま交渉に入ると、根拠を示せずに据え置きへ流れます。社内では改定の幅と対象を決め、取引先へは根拠となる資料を示します。改定の反映では、価格マスタと帳票を同時に直し、旧価格が残らないようにしてください。

原価の把握では、変動した費目を分けて並べます。材料、労務、物流、エネルギーといった費目ごとに、どの時点からどれだけ変わったのかを整理します。費目を分けずに全体の上昇分だけを示すと、取引先からの照会に答えられません。値上げ幅の根拠として使う資料は、社内の複数部門が同じ数字を見られる形にまとめましょう。

社内の合意形成では、改定の幅と対象と適用の開始点を決めます。全取引先を一律に上げるのか、区分ごとに幅を変えるのかで、営業の説明の負荷は変わります。承認の権限をどこに置くかも同時に決め、例外を認める場合の判断者を明記します。決めた内容は1枚の資料に落とし、営業担当者が同じ説明をできる状態にしてください。

取引先への説明では、根拠となる資料を示し、協議の経過を記録します。国の取り組みとして価格交渉促進月間が設けられ、毎年3月と9月が対象の月とされています6。この月間ではフォローアップ調査の結果が公表されており、交渉の場を持つこと自体が制度の上でも後押しされています6。自社が発注する側に立つ取引では、協議に応じない一方的な代金決定の禁止などが、2026年1月施行の法制度で項目に挙げられています*5

協議の記録は、次の見直しの土台になります。提示した資料、相手の回答、合意した内容と適用の開始点を残しておきます。記録が無ければ、次の改定でも同じ説明を一から作ることになります。記録の様式をそろえておけば、担当者が代わっても交渉の経過を引き継げるでしょう。

値引きやリベートを掛け率へ織り込むかどうかは、先に方針を決めます。掛け率へ織り込めば請求書の金額が明確になり、後から戻す処理は減ります。リベートとして後から支払う形を残す場合は、条件と算定の方法を書面で定めてください。指針*2はリベートの供与も対象としており、条件の設定が競争へ与える影響が論点になりえます。

改定の反映では、価格マスタ、価格表、帳票、EC画面の4か所を同時に直します。1か所でも旧価格が残ると、受注の金額が食い違い、請求の訂正が発生します。適用の開始点を明記し、開始前に受けた注文をどちらの価格で処理するかも決めておきます。反映の後に全件の抽出を1回かけ、旧価格が残っていないことを確かめてください。

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取引先別の掛け率設定を安定して運用するための要点

取引先別の掛け率設定を安定させる要点は、価格情報の一元化と、見直しサイクルの明文化という2つに集約できます。価格の正本を1か所に定め、区分ごとの掛け率と個別単価を分けて持てば、担当者の記憶に依存する運用から抜けられます。見直しは時期と担当と承認の権限を先に決め、原価の変動を拾う担当を置きます。この2つがそろえば、価格改定のたびに社内調整でつまずく状態を減らせるでしょう。

価格情報の一元化は、正本を1つに絞ることから始まります。表計算の価格表、紙の価格表、担当者の記憶という3つの経路が並存すると、どれが有効かを誰も断定できません。正本を決めたら、他の経路は参照専用に切り替え、更新できない形にします。更新の権限を絞れば、改定の反映もれと個別の値引きの両方を抑えられます。

権限と履歴の設計は、一元化と同時に決めます。誰が価格を登録でき、誰が承認するのかを役割で定め、個人に固定しません。改定の履歴を残せば、過去のどの時点でどの価格が有効だったかを追えます。履歴が無ければ、過去の受注の金額が正しかったのかを検証できません。

見直しサイクルは、定例の時期と臨時の起点という2本立てで決めます。定例では年に一度など時期を固定し、臨時では原価の変動幅が決めた水準を超えた時点で起こします。役割分担では、営業が取引先の状況、受発注が運用の支障、情報システムがマスタの整合を持ちます。3部門が同じ台帳を見る状態を作れば、見直しの議論は短く済むでしょう。

内製で進める場合と外部の支援を入れる場合では、抱えるリスクの所在が変わります。内製では、価格の商慣行とマスタ設計と連携仕様の3領域を社内の人員で担うことになります。担当が1人に偏ると、その担当が離れた時点で運用が止まります。外部の支援を入れる場合は、移行前の全件突き合わせと切り替え後の受注監視を範囲に含めておくと、停止のリスクを抑えられます。

ここまでの内容を3点に集約します。第一に、掛け率は上代と下代の関係を示す指標であり、粗利率とは分母が違います。第二に、取引先別の価格はグループ単位の方式と個別単価の方式を組み合わせ、例外には期限を付けて持たせます。第三に、価格差の根拠と協議の記録を残す運用が、法令上の論点への備えにもつながります*1

価格の運用は、決めた後の維持で差が出ます。改定のたびに手順を作り直していると、担当者の負荷が上がり、記録も残りません。手順と様式を先に決め、見直しの回ごとに同じ流れで回すことが、属人化からの脱却につながります。判断に迷う論点は、原典の確認と専門家への相談を手順の中へ組み込んでください。

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よくある質問

取引先から掛け率の引き下げを求められた場合、応じなければ法令上の問題になりますか

価格は当事者の協議で決まるものであり、引き下げに応じないこと自体が直ちに問題となるわけではありません。ただし、優越的地位の濫用に関する考え方は、対価の一方的決定や減額などの行為類型を挙げています*3。自社と相手のどちらが条件を一方的に決める立場にあるかで論点は変わり、判断は個別の事案ごとです。具体的な取引については専門家や所管官庁へ確認してください。

掛け率を引き上げるとき、取引先へ示す資料には何を用意すればよいですか

材料、労務、物流、エネルギーといった費目ごとに、変動した幅を分けて示す資料が土台になります。全体の上昇分だけを示すと照会に答えられず、据え置きへ流れがちです。国の取り組みとして価格交渉促進月間が毎年3月と9月に設けられており*6、この時期を協議の起点として使えます。提示した資料と相手の回答は、次の改定のために記録として残しましょう。

掛け率は税抜と税込のどちらを基準に設定すればよいですか

社内でどちらか1つに定め、価格表と帳票とEC画面で表記をそろえてください。税込の上代へ掛け率を当てると、税抜で計算した下代とずれが生じます。1円未満の端数を切り捨てるか四捨五入するかも同時に決めておく必要があります。数量の多い取引では、端数処理の違いが請求額の差として表れます。

取引先別の価格は基幹システムとBtoB ECのどちらで持つべきですか

正本を1か所に定めることが先で、基幹側を正本にして参照するか、EC側へ複製するかを選びます。複製する場合は、改定の反映の遅れが受注金額の食い違いにつながります。企業間の受発注では、発注から支払までの6つの業務を対象とした標準メッセージが公開されており、基本形のVer2.0が2018年に公開されました*7。項目の解釈をそろえる際の土台として使えます。

既存の価格運用をシステムへ移すとき、最初に何から着手すればよいですか

現在有効な価格の全件を数える棚卸しから着手してください。取引先の数、商品の数、例外として登録されている価格の件数が分かれば、移行の規模が見えます。あわせて、率で持つ価格と金額で持つ価格を分け、固定価格と率調整のどちらを優先するかを決めます*8。棚卸しを飛ばすと、切り替え後に価格が当たらない取引先が残ります。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「FSOL B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

  1. *1 出典:公正取引委員会「不公正な取引方法(昭和五十七年公正取引委員会告示第十五号)一般指定第3項・第4項」(1982) 経路
  2. *2 出典:公正取引委員会「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(2026年最終改正) 経路
  3. *3 出典:公正取引委員会「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(2010) 経路
  4. *4 出典:公正取引委員会「大規模小売業者による納入業者との取引における特定の不公正な取引方法」(2005) 経路
  5. *5 出典:公正取引委員会「2026年1月施行!~下請法は取適法へ~改正ポイント説明会の実施について」(2025) 経路
  6. *6 出典:中小企業庁(適正取引支援サイト)「価格交渉促進月間」(2026) 経路
  7. *7 出典:一般財団法人流通システム開発センター「流通BMS(流通ビジネスメッセージ標準)基本形Ver2.0」(2018) 経路
  8. *8 出典:Shopify ヘルプセンター「Customizing B2B pricing using catalogs」(2026年参照時点) 経路
  9. *9 出典:Adobe Commerce ドキュメント「Set shared catalog pricing and structure」(2026年参照時点) 経路

画像の出典元

  1. Professional handshake agreement over business charts in an/Photo by Khwanchai Phanthong on Pexels
  2. Professional discussing documents over a wooden table in an office setting./Photo by Vanessa Garcia on Pexels
  3. Business professionals handshake over graphs and charts in a corporate setting, symbolizing successful negotiation and agreement./Photo by Khwanchai Phanthong on Pexels

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◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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