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インターネット受発注の費用|内訳と相場の見極め方

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 費用は初期費用・月額費用・随時発生する費用の3区分に分かれ、見積書に並ぶのは前の2つです。
  • クラウド型は初期費用が小さく月額が続き、自社開発は初期費用が大きくなるため、3年分の総額で比べます。
  • 見積の差額は、取引先数、商品数と管理範囲、連携とデータ移行の3要因でほぼ説明できます。
  • 電子取引データは2024年1月から電子のまま保存が求められ、検索は取引年月日・取引金額・取引先の3項目でできる状態にします。
  • 稟議は3年分の総額、年間の削減工数、制度対応の充足、稼働までの期間という4軸で組み立てます。

Close-up of hands holding a credit card and typing on a lapt
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インターネット受発注とは

インターネット受発注の費用は、同じ要件を伝えたつもりでも、各社の見積で桁が変わります。原因は金額の高低そのものではなく、取引先の数・商品の数・基幹システムと連携する範囲という前提のそろえ方にあります。この記事では、初期費用と月額費用の内訳、提供方式ごとの費用の出方、3年分の総額で比べる考え方を順に整理します。読み終えたときに、自社の条件で見積を取り直す手順まで持ち帰れる構成としました。

費用は三つの区分に分かれます。初期費用は稼働前のマスタ整備と連携開発にかかります。月額費用は稼働後の利用料と保守とサポートにかかります。随時発生する費用は取引先の追加や制度改正への対応でかかります。
受発注システムの費用が発生する三つの区分と順序

インターネット受発注とは、これまで電話やファクス、メールで受けていた注文を、取引先自身がブラウザ上の画面から入力し、受注データとして社内へ取り込む仕組みです。費用を比べるときの出発点は、金額そのものではなく対象範囲の決め方にあります。取引先の数、扱う商品の数、基幹システムとつなぐ範囲という3つの前提が決まっていないと、同じ言葉で見積を依頼しても金額の桁が変わります。まず前提をそろえ、そのうえで初期費用と月額費用を並べるのが順序になります。

電話やファクスでの受注は、注文を受けた側が内容を読み取り、基幹システムへ入力し直す工程を必ず伴います。この転記の工程が、誤受注や締め後の変更対応を生む発生源になります。インターネット受発注では、取引先が自分の画面で商品と数量を選ぶため、入力の主体が発注側へ移ります。受注側の作業は、入力の代行から、内容の確認と例外処理へと性質が変わります。

もうひとつの違いは、受付の時間帯と情報の見え方にあります。電話は営業時間に縛られ、ファクスは在庫や単価を相手に見せられません。画面から発注する形にすると、取引先ごとの契約単価や在庫の状況を出し分けたうえで注文を受けられます。締切時刻や納期の候補も画面上で示せるため、後追いの確認電話そのものが減ります。

Web受発注とEDI(電子データ交換。企業間で伝票データを直接やり取りする仕組み)は、置き換えの関係ではありません。EDIは相手先のシステムとデータを直接つなぐ方式で、取引量の多い相手や、指定のフォーマットを持つ相手に向きます。画面入力の方式は、少量多品種の相手や、自社でシステムを持たない小規模な取引先まで広く受け止められます。中小企業向けには共通の標準フォーマットが整備され、これに準拠した製品の情報も公開されています*5。EDIの仕組みと標準フォーマットの詳しい違いは、<a href="(内部リンク先URL:EDI解説記事)">EDIの基礎をまとめた記事</a>で解説しています。

実務では、この2つの経路を併用する形に落ち着きます。受注量の大きい取引先はEDIで、それ以外は画面入力で受け、どちらも同じ受注データとして社内に入る設計にします。費用の見積では、この併用をどこまで初期構築に含めるかで金額が動きます。片方だけを前提に見積を取ると、後から連携の追加費用が乗ると考えられます。

費用を比べる前に決めておく前提は3つです。次の3点を文章にしてから、各社へ見積を依頼してください。

<ul><li>画面から発注してもらう取引先の数:対象とする相手と、そこに至るまでの案内の範囲を決めます。</li><li>公開する商品の数と管理の深さ:取引先ごとの単価や在庫をどこまで見せるかを決めます。</li><li>基幹システムとの接続の方式:決まった時刻のファイル連携で済ませるか、随時やり取りするAPI連携まで求めるかを決めます。</li></ul>

この3点が決まると、見積の差額を要件の差として読めるようになります。決めないまま複数社へ依頼すると、各社が異なる前提で組んだ金額が並び、比較そのものが成り立ちません。金額の妥当性を判断する前に、自社の条件を文章で書き出しておくことが、そのまま交渉の材料になります。書き出した条件は、稟議の説明資料としても使えます。

見積を比べる前に確認する優先順5点(順位根拠:確認しないと比較が成り立たない度合いと、実施の順序)

  1. 対象とする取引先の数と、そのうち初年度に切り替える範囲を決めます。範囲が違えば初期費用と移行支援の量が変わり、各社の見積を同じ土俵に載せられません。
  2. 公開する商品の数と、取引先ごとの単価や在庫をどこまで画面に出すかを決めます。管理の深さは初期のマスタ整備と稼働後の更新の両方に効きます。
  3. 基幹システムとの連携を、決まった時刻にまとめて渡すファイル連携で済ませるか、随時やり取りするAPI連携まで求めるかを決めます。API連携は費用と期間が増えます。
  4. 税別か税込か、初期費用の適用範囲、月額に含まれる保守の内容、上限を超えた場合の追加料金、契約期間と解約時の扱いという5項目を、各社に同じ形で示してもらいます。
  5. 電子取引データの保存への対応範囲を確認します。真実性の確保と可視性の確保の2要件と、取引年月日・取引金額・取引先の3項目での検索が、システム側でどこまで満たされるかを確かめます。

費用の全体像と発生するタイミング

取引先への案内と移行支援の段階には、案内文の作成と初回ログインの支援が残ります。運用保守と問い合わせ対応の段階には、マスタの更新と取引先アカウントの発行と停止が残ります。電子取引データの保存の段階には、真実性の確保と検索機能の確保が残ります。
稼働後に続く三つの費用と各段階に残る作業

インターネット受発注の費用は、初期費用・月額費用・随時発生する費用の3区分で捉えると全体像がつかめます。初期費用は稼働前の準備に、月額費用は稼働後の利用と保守に、随時発生する費用は取引先の追加や制度改正への対応にかかります。見積書に並ぶのは前の2つで、3つ目は稼働してから現れます。3年分を合計して比べると、方式ごとの差がはっきりします。

初期費用の範囲は、環境の用意だけではありません。次の作業までが初期費用に含まれます。

<ul><li>商品マスタと取引先マスタの整備:既存データの欠落や表記のゆれを直す作業まで含みます。</li><li>取引先ごとの契約単価の登録:商習慣に応じた単価の組み合わせを登録します。</li><li>画面の表示設定:取引先ごとに見せる情報の範囲を設定します。</li><li>基幹システムとつなぐための開発:連携の方式に応じて工数が変わります。</li><li>社内向けの教育:運用の担当者が例外処理を扱える状態にします。</li></ul>

このうち金額が読みにくいのはマスタの整備で、既存データの欠落や表記のゆれを直す作業は自社側の手間としても残ります。委託先に任せる範囲と自社で担う範囲を線引きしておくと、見積の比較がしやすくなります。なお、マスタ整備と移行支援がどれだけの費用に化けるかという論点は、後の「費用を左右する要因」と「見落としやすい費用と法令対応のコスト」で扱います。

クラウド型では初期費用が定額で示される形が取られ、ベンダーが公表する料金ページで確認できます78。ただし公表額は特定のプランやモデルケースを前提とした金額で、連携開発やデータ移行を含まない場合があります。税別か税込かの表記も、そのまま総額に効いてきます。この記事で初期費用と月額費用の実額レンジを本文に固定しないのは、料金が改定される前提であることに加え、取引先数・商品数・連携方式に応じて各社見積となる範囲が大きいためです。金額を確認するときは、料金ページの取得日と前提プラン名を控えたうえで、自社の要件を当てた見積と並べてください。

月額費用は、利用料・保守・サポート・オプションの積み上げで決まります。利用料は取引先の数や商品の数、データ容量といった上限で段階が分かれます。保守にはシステムの更新やセキュリティ対応が含まれ、サポートには問い合わせの窓口と障害時の対応が含まれます。上限を超えた時点でプランが上がるため、取引先を増やす計画があるなら、増えた後の金額で比べておきます。

見積書では次の5項目を確認します。いずれも金額の欄そのものではなく、金額の前提が書かれている箇所になります。

<ul><li>税別か税込かの表記:総額に直接効くため、最初に確認します。</li><li>初期費用の適用範囲:連携開発とデータ移行が含まれるかを確認します。</li><li>月額に含まれる保守の内容:更新とセキュリティ対応の範囲を確認します。</li><li>上限を超えた場合の追加料金:取引先数や商品数が増えた後の金額を確認します。</li><li>契約期間と解約時の扱い:最低利用期間と中途解約の条件を確認します。</li></ul>

この5項目は金額の大小ではなく前提の違いを示すもので、各社の見積を同じ土俵に載せるために要ります。前提がそろって初めて、差額がどの要件から生まれたのかを分解できます。

支払いの時期も比較の材料になります。初期費用は稼働前に、月額費用は稼働後に発生するため、稟議で必要な予算の年度がずれます。年度をまたぐ場合は、初年度に初期費用と数か月分の月額が、次年度に12か月分の月額が乗る形になります。この並びを表にしておくと、投資の回収を何年目に見込むかという議論に接続できます。

随時発生する費用は、稼働してから顔を出します。取引先の追加に伴うアカウントの発行、商習慣の変更に合わせた画面の調整、制度改正への対応がここに入ります。契約時点では金額が確定しないため、年間の枠として予算に置いておく方法が現実的と考えられます。枠を持たないまま運用に入ると、必要な改修が先送りになります。

自社の商流に合わせた要件整理を進めたい場合は、無料相談で要件を整理するのが近道です。

提供方式ごとの費用構造の違い

Hand holding three colorful paper shopping bags on a white b
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提供方式はクラウド型、パッケージ導入、自社開発の3通りで、費用の出方が方式ごとに逆になります。クラウド型は初期費用が小さく月額費用が続き、自社開発は初期費用が大きく月額費用が小さくなります。パッケージ導入はその中間で、標準機能に収まるほど費用が下がり、調整を重ねるほど自社開発に近づきます。どれが安いかは、使う年数と要件の特殊性で入れ替わります。なお、この節では方式ごとの費用の出方だけを扱い、見積の差額を生む要因は次の節で整理します。

クラウド型(SaaS。ベンダーが用意した環境を利用料を払って使う方式)は、月額の利用料で機能とインフラの両方をまかないます。バージョン更新やセキュリティ対応がベンダー側の作業に含まれるため、自社で保守要員を抱える必要が小さくなります。料金は取引先数や商品数の上限で段階が分かれ、公表された料金プランを一次情報として確認できます*7。その代わり、標準にない業務の作り込みには制約が残ります。

クラウド型で費用が膨らむのは、標準機能から外れた要件を追加開発で埋める場合です。取引先ごとの複雑な単価計算、独自の伝票様式、締め処理の例外といった要件が、追加費用の主な発生源になります。これらを標準の運用に寄せられるかどうかが、月額以外の支出を左右します。要件を削る判断は、稼働後の運用負荷とあわせて検討してください。

パッケージ導入は、業種向けに作られた製品を土台に、自社の業務へ合わせて調整する方式です。土台がある分、同じ機能を一から作るより工数を抑えられます。規模別のモデルケースを料金として公表している製品もあり、初期費用と月額費用の目安を事前に把握できます*8。ただし公表額はモデルケースであり、実際の金額は調整の量で動きます。確認の際は、モデルケースの前提となる利用者数と機能の範囲まで読み取ってください。

調整は初期費用を押し上げるだけでなく、稼働後の負担としても残ります。標準部分の更新に合わせて、独自に作った部分の動作確認が毎回必要になるためです。どの要件を標準に寄せ、どの要件を作り込むかを最初に仕分けておくと、初期費用と保守費用の両方を抑えられます。仕分けの基準は、取引先との約束事に直結するかどうかに置くと判断しやすくなります。

自社開発(スクラッチ。要件に合わせて一から設計・開発する方式)は、要件の自由度と引き換えに、見積の幅が広くなる方式です。工数の見立てには公開された開発規模と工数の統計が参考になりますが、この統計は2022年版で発行が終了しており、現在の単価へそのまま読み替えることはできません*6。開発の後も、機能追加・障害対応・基盤の更新を自社の責任で続けます。取引先向けの画面は外部に公開するため、脆弱性への対応を止められない点も費用として見込みます。

3つの方式は、使う年数で優劣が入れ替わります。短期間で立ち上げて効果を確かめたい場合は、初期費用の小さい方式が有利になります。10年単位で使い続け、要件が自社に固有である場合は、初期費用の大きい方式が総額で並ぶこともあります。判断は、初期費用の額ではなく3年分の総額と要件の特殊性の2つで行ってください。

提供方式 初期費用の出方 月額費用の出方 要件変更への対応
クラウド型 公表された料金プランの範囲で定額になりやすい 利用料と保守を毎月払い続ける 標準機能の範囲では速く、範囲外は追加開発になる
パッケージ導入 土台がある分、一から作るより抑えられる 保守と更新の費用が続く 調整の量に応じて費用と期間が増える
自社開発 要件の量に応じて幅が広くなる 運用の人件費と基盤費用が中心になる 自由度は高く、対応の負担を自社が持つ

費用を左右する要因

見積の差額は、取引先数と受注件数、商品数と管理範囲、基幹システム連携とデータ移行という3つの要因でほぼ説明できます。この3つは相互に効き合い、取引先が増えれば移行支援の量が増え、商品が増えればマスタ整備の量が増えます。金額を下げたいときは、値引きを求める前にこの3要因のどれを削るかを決めます。要因を特定せずに総額だけを比べても、判断の材料になりません。ここでは、前の節で挙げた作業範囲のうち、どれが差額として現れるのかを見ていきます。

はじめに現状の工数の把握として受注件数と処理時間を測ります。次に削減見込みの算出として残る作業を差し引きます。最後に比較軸の整理として3年分の総額で比べます。
受発注システムの投資判断における試算の順序

取引先の数は、料金プランの段階と移行作業の量の両方に効きます。クラウド型では利用できる会員数の上限でプランが分かれるため、対象を広げるほど月額費用が上がります。受注件数は、システムの利用料そのものより、稼働後の運用体制に影響します。件数が多いほど、例外処理と問い合わせに割く人員が要るためです。

対象の広げ方には順序があります。受注件数の多い上位の取引先から始めると、同じ費用で削減できる工数が大きくなります。件数の少ない取引先を先に入れると、移行の手間に対して効果が見合いません。初年度の対象をどこで切るかが、費用対効果を決める分かれ目になります。

商品数は、初期のマスタ整備とその後の更新の両方に効きます。取引先ごとに単価が異なる商習慣では、商品数と取引先数の掛け合わせで単価の組み合わせが増えます。在庫を画面に表示するかどうかも費用に影響し、表示するなら在庫データを随時取り込む仕組みが必要になります。表示しない選択もでき、その場合は受注後の引き当てで対応します。

管理範囲を欲張ると、初期費用よりも運用の負担として跳ね返ります。単価の改定や商品の入れ替えのたびに、誰がどの画面で更新するかを決めておく必要があるためです。更新の担当と手順が決まらないまま範囲だけ広げると、画面上の情報が実態とずれます。ずれた情報で受注が入れば、結局は電話での確認が戻ってきます。

基幹システム連携は、ファイル連携とAPI連携(システム同士が随時データをやり取りする接続方式)の2種類に大別されます。ファイル連携は決まった時刻にデータをまとめて受け渡す方式で、開発量を抑えられます。API連携は在庫や与信を随時反映できる一方、双方の作り込みが要り、費用と期間が増えます。どちらを選ぶかは、在庫の動きの速さと、締め処理の時間的な余裕で決まります。

データ移行は、量よりも状態で費用が決まります。旧システムの商品コードが統一されていない、取引先ごとの単価が紙の台帳にしか残っていないといった状態では、移行の前に整える作業が発生します。この作業は委託先には代行しづらく、自社の担当者の時間として現れます。見積に載らない費用として、稟議の前に見込んでおいてください。

見落としやすい費用と法令対応のコスト

見積に載りにくい費用は、取引先への案内と移行支援、運用保守と問い合わせ対応、電子取引データの保存の3つに集まります。いずれも稼働後に続けて発生し、担当者の時間という形で現れるため、金額として見えにくい性質があります。とくに制度への対応は、データの保存と発注内容の明示という2つの論点が関わり、後回しにすると作り直しになります。稼働前の設計に織り込むことで、追加費用を抑えられます。

取引先への案内は、通知を一度出して終わる作業ではありません。案内文の作成、説明会や個別訪問、初回ログインの支援、操作の問い合わせ対応までが一続きで続きます。画面からの発注へ切り替わらない取引先が残れば、ファクスと画面の二重運用が続き、削減の効果が出ません。移行率をどこまで上げるかが、投資の回収時期を決めます。

移行支援の費用は、自社の担当者の時間として計上するのが実態に近い形になります。説明会の運営を委託先に頼む選択もありますが、取引先との関係や商習慣の説明は自社でなければ担えません。対象の取引先数に応じて、案内の回数と担当者の稼働を見積もっておいてください。ここを見込まないまま稼働日を決めると、案内が間に合わずに切り替えが遅れます。

稼働の後は、運用保守と問い合わせ対応が定常の費用になります。マスタの更新、取引先アカウントの発行と停止、注文内容の修正依頼への対応が日々の作業として残ります。障害が起きた際の連絡経路と、復旧までの間の代替手段も決めておく必要があります。画面が使えない間に注文を受けられなければ、受注の機会そのものを失います。

電子取引データの保存は、制度として対応が求められる範囲になります。電子取引でやり取りした注文書や請求書のデータは、2024年1月から電子のまま保存することが求められています3。保存要件は真実性の確保と可視性の確保の2つで、検索は取引年月日・取引金額・取引先の3項目でできる状態にします3。保存期間は原則7年間です*3。システムの選定時には、保存と検索の機能がどこまで含まれるかを確認してください。要件の詳細と社内での進め方は、<a href="(内部リンク先URL:電子帳簿保存法対応の解説記事)">電子帳簿保存法への対応をまとめた記事</a>で整理しています。

基準期間の売上高が5,000万円以下である場合などには、検索機能の確保が不要となる猶予が設けられています3。ただし猶予の条件は改訂されることがあるため、導入の時点で最新の一問一答を確認する必要があります3。システム側で検索できる状態にしておけば、条件の変更に左右されずに済みます。制度への対応をシステムで吸収するか運用で吸収するかは、費用の配分の問題と考えられます。

発注内容の明示についても、2026年1月に施行された取適法(中小受託取引適正化法。従来の下請法を改めた法律)で扱いが定められています1。発注時の書面の交付に代えて電磁的方法で明示することが認められる一方、相手方から書面の交付を求められた場合には応じる義務が残ります2。支払期日を給付の受領日から60日以内とする考え方は、改称の前後で引き継がれています*2。制度の詳細は原典で確認し、判断に迷う点は専門家に相談する範囲として切り分けてください。

費用を抑える進め方と補助金の活用

費用を抑える道筋は、対象範囲を絞った段階的な導入、業界で共有された標準フォーマットの活用、補助金の確認という3つです。範囲を絞れば初期費用と移行支援の量が下がり、標準を使えば個別開発の量が下がります。補助金は年度ごとに事業名も枠も条件も変わるため、過去の金額を前提に計画を組むことはできません。公式の案内で対象経費と申請枠を確認する手順を、稟議の工程に組み込んでください。

段階的な導入は、対象の取引先と機能の両方を絞る進め方です。初年度は受注件数の多い取引先と、受注から出荷指示までの範囲に限り、見積回答や請求の照会は次の段階へ回します。範囲を絞ると初期費用が下がるだけでなく、稼働までの期間が短くなり、効果の検証を早く始められます。検証の結果を持って次の範囲へ広げれば、稟議の説得力も上がります。

段階を分ける際は、後から広げられる設計になっているかを確認します。初期の範囲に合わせて作り込みすぎると、次の段階で作り直しになり、結果として総額が増えます。連携の方式やマスタの持ち方は、広げた後の姿を前提に決めておきます。目先の初期費用と3年分の総額のどちらで判断するかを、最初に社内で合わせておく必要があります。

業界で共有された標準フォーマットを使うと、取引先ごとの個別対応を減らせます。中小企業向けには共通のEDI標準が整備され、これに準拠した製品の情報が公開されています*5。標準に沿ってデータ項目を決めれば、新しい取引先が増えたときの追加開発を抑えられます。自社独自の項目を足すほど、この利点は失われます。

標準の活用には、取引先側の負担を下げる効果もあります。相手が別の取引で同じ標準を使っていれば、受け入れの説明が短く済むためです。移行支援の工数は費用として大きく効くため、説明の短縮はそのまま金額に返ってきます。どの項目を標準どおりにし、どの項目を自社仕様にするかを、要件定義の段階で一覧にしておきます。

補助金は、ソフトウェアの導入費用やクラウドの利用料を対象とする枠が設けられています4。2026年度の事業は名称も枠の構成も前年度から変わっており、旧称の条件をそのまま当てはめることはできません。補助額・補助率・対象経費・クラウド利用料の対象期間・申請の締切は、公式の案内で確認してください4。交付が決まる前に契約した経費の扱いも、あわせて確認が要ります。申請の流れと事前に必要な登録は、<a href="(内部リンク先URL:補助金活用の解説記事)">補助金の活用手順をまとめた記事</a>で解説しています。

補助金を前提に投資判断をすると、採択されなかった場合に計画そのものが止まります。補助が無くても実行するかどうかを先に決め、補助は総額を下げる手段として位置づけてください。申請には事業計画の作成と各種の登録が要り、その準備自体にも担当者の時間がかかります。準備の工数まで含めて、補助の効果を見積もります。

A cozy indoor scene featuring a laptop with shopping bags, representing modern online shopping.
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投資判断のための効果の見立て方

効果の見立ては、現状の工数の把握、削減見込みの算出、比較軸の整理という順序で組み立てます。最初に自社の実測値を集め、次に切り替えの後に残る作業を差し引き、最後に費用と並べて年単位で比較します。ここで使う数字は外部の平均値ではなく、自社の受注件数と処理時間である必要があります。自社の数字で組み立てた試算だけが、稟議の場で反論に耐えます。

現状の工数は、受注1件あたりの処理時間と、月間の受注件数から求めます。処理時間には、電話やファクスの受け取り、内容の読み取り、基幹システムへの入力、不明点の確認までを含めます。この2つの数字を掛け合わせ、12か月分に広げると、年間の処理時間が出ます。平均だけでなく繁忙期と閑散期の両方を測ると、試算の精度が上がります。

切り替えの後の工数は、ゼロにはなりません。画面から入った注文の確認、例外的な依頼への対応、取引先からの問い合わせは残ります。残る作業の時間を見積もり、現状から差し引いた分が削減の見込みになります。ここを過大に見積もると、稼働後に効果が出ていないと評価され、次の投資が通らなくなります。

誤受注と差し戻しの効果は、件数と1件あたりの後処理時間で測ります。誤った出荷が起きた場合、返品の引き取り、再出荷、伝票の訂正、取引先への連絡が連鎖します。転記の工程がなくなることで、この連鎖の起点が減ります。過去の返品伝票や訂正伝票の件数を数えれば、根拠のある数字として使えます。

金額に換算しにくい効果も、記録として残しておきます。締め後の変更対応に追われる時間、担当者しか分からない取引条件、電話が鳴り続ける環境といった要素です。これらは人員の定着や、担当者が不在のときの対応力に影響すると考えられます。数値化できない項目は、金額の表とは別の欄に並べて示してください。

稟議で使う比較軸は4つに絞ります。次の4軸に各案を落とし込むと、社内での議論がかみ合います。

<ul><li>3年分の総額:初期費用と月額費用に加え、移行支援と運用に自社が割く時間を含めます。</li><li>削減できる年間の工数:現状の処理時間から、切り替えの後に残る作業を差し引いて求めます。</li><li>制度対応の充足:電子取引データの保存と発注内容の明示に対応できるかで判断します。</li><li>稼働までの期間:効果の検証を始められる時期を左右します。</li></ul>

総額には初期費用と月額費用に加え、移行支援と運用に自社が割く時間を含めます。制度対応の充足は、電子取引データの保存と発注内容の明示に対応できるかで判断します。

この4つの軸で各案を並べると、金額の安い案が必ずしも選ばれない理由を説明できます。判断が分かれる点は、要件の特殊性をどこまで残すかという1点に集約されるため、そこを議論の中心に置くと結論が早く出ます。要件を削る判断は現場の合意が要るので、稟議より前に受注を担う担当者と詰めておきます。自社の条件で見積を取り、この4軸へ落とす作業が、投資判断の実体になります。

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よくある質問

見積を取る前に費用の目安を知る方法はありますか

公表されている料金プランを一次情報として確認する方法があります。クラウド型の製品は初期費用と月額費用をプランごとに公開しており、上限となる取引先数や商品数もあわせて示されています。ただし公表額は特定のプランやモデルケースを前提とした金額で、連携開発やデータ移行を含まない場合があります。税別か税込かの表記も確かめたうえで、比較の出発点として扱ってください。

補助金は受発注システムの導入に使えますか

ソフトウェアの導入費用やクラウドの利用料を対象とする枠が設けられています。ただし2026年度の事業は名称も枠の構成も前年度から変わっており、旧称の条件をそのまま当てはめることはできません。補助額・補助率・対象経費・クラウド利用料の対象期間・締切は、公式の案内で確認してください。交付が決まる前に契約した経費の扱いも、申請の前に確かめる必要があります。

取引先が画面から発注してくれない場合、費用はどうなりますか

ファクスと画面の二重運用が続き、削減の効果が出ないまま月額費用だけが発生します。案内文の作成、説明会、初回ログインの支援といった移行支援の工数も続きます。対策としては、受注件数の多い取引先から順に切り替え、締切時刻や在庫の表示など画面を使う利点を示す方法があります。移行率を稼働後の指標に設定し、達しない場合の追加の案内も計画に入れてください。

電子帳簿保存法への対応は、システムを入れれば完了しますか

システムだけでは完了しません。保存要件は真実性の確保と可視性の確保の2つで、真実性の確保には社内の規程や運用の取り決めが関わります。検索は取引年月日・取引金額・取引先の3項目でできる状態にし、保存期間は原則7年間です。基準期間の売上高が5,000万円以下である場合などの猶予もあるため、導入の時点で最新の一問一答により条件を確認してください。

発注内容を電子で明示すれば、書面は不要になりますか

電磁的方法での明示が認められる一方、相手方から書面の交付を求められた場合には応じる義務が残ります。2026年1月に施行された取適法では、支払期日を給付の受領日から60日以内とする考え方も引き継がれています。運用としては、電子で明示したうえで書面を出力できる状態を保つ形が現実的です。制度の詳細は原典で確認し、個別の判断は専門家に相談してください。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「FSOL B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

  1. *1 出典:公正取引委員会「取適法(中小受託取引適正化法)特設ページ」(2026) 経路
  2. *2 出典:公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法テキスト『下請法』から『取適法』へ」(2025) 経路
  3. *3 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答(Q&A)【電子取引関係】」(2025) 経路
  4. *4 出典:中小企業基盤整備機構(中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局)「デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠」(2026) 経路
  5. *5 出典:ITコーディネータ協会/つなぐITコンソーシアム「中小企業共通EDIとは」(2026) 経路
  6. *6 出典:情報処理推進機構(IPA)「ソフトウェア開発分析データ集2022」(2022) 経路
  7. *7 出典:Dai(Bカート)「Bカート 料金プラン」(2026) 経路
  8. *8 出典:アイル(アラジンEC)「アラジンEC 料金」(2026) 経路

画像の出典元

  1. Close-up of hands holding a credit card and typing on a lapt/Photo by Cup of Couple on Pexels
  2. Hand holding three colorful paper shopping bags on a white b/Photo by https://kaboompics.com/ on Pexels
  3. A cozy indoor scene featuring a laptop with shopping bags, representing modern online shopping./Photo by Cup of Couple on Pexels

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◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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