まずは卸売ECを小規模でスタートしたい方へ。リーズナブルなSaaS(ASP)版『EC-Rider Primo(プリモ)』誕生! 詳しくはこちら

取引DXの費用|初期費用の内訳と抑え方

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 取引DXの初期費用は、ライセンスとアカウントの発行、要件定義と設計、データ移行と基幹システム連携、取引先への切り替え支援の4区分に分かれます。
  • 金額を動かす要因は構築方式、取引先数と受発注パターン、既存システムとの連携範囲の3つで、連携を1本減らすごとに初年度の支出は下がります。
  • 初期費用を抑えた契約は費用が月額へ移りますので、3年分と5年分の2通りで総保有コストを比べます。
  • 2026年度の補助制度は申請枠ごとに要件が異なり、交付決定の前に発注した経費は対象外です9

Spacious co-working office with wooden desks, laptops, and m
▽ 写真の出典元

取引DXとは|費用が発生する範囲の全体像

取引DXとは、見積から受注、出荷、請求、入金までの企業間の取引手続きを、紙や電話に頼らない電子データのやりとりへ切り替える取り組みです。費用は初期費用、月額費用、社内工数の3つに分かれ、初期費用はこのうち導入の年に集中して発生します。どの工程まで電子化するかで初期費用の幅は大きく動きますので、金額を尋ねる前に対象範囲を決める順序になります。企業間の電子商取引については国の市場調査が毎年公表されており、最新は2024年の実績を扱った2025年公表の調査です1

取引DXが指す業務の範囲は、注文の受け取りだけにとどまりません。受注データの受け取り、出荷と納品の連絡、請求書の発行、入金の消込という4つの工程が連なり、それぞれに帳票と確認作業がぶら下がっています。範囲を1工程に絞れば初期費用は軽くなりますが、紙が残る工程との境目で転記が生じます。逆に4工程をまとめて電子化すると初期費用は増え、社内の調整も同じ時期に重なるでしょう。

費用の呼び分けを先にそろえておくと、見積書の比較がしやすくなります。初期費用は導入時に1回だけ発生する費用で、契約手続き、設計、移行、連携の開発が含まれます。月額費用は利用を続ける限り毎月発生する費用であり、利用者数や取引先数に連動する料金体系も置かれています。社内工数は金額として請求されませんが、担当者の時間を消費する点で実質的な費用と同じ重みを持ちます。

社内工数は見積書に載らないため、稟議の段階で抜け落ちます。要件のすり合わせ、既存データの棚卸し、取引先への案内文の作成は、事業者側では代替できない作業です。ここを見込まずに計画を組むと、稼働の時期が後ろへずれ、月額費用だけが先に発生する事態を招きます。稟議書には人の時間も費用として並べておくほうが、後の説明が通りやすくなるでしょう。

事業者が公開している料金ページでは、初期費用と月額費用が分けて提示されています10。ただし公開価格は標準の設定作業までを含む金額であり、連携開発や移行作業は別見積もりとなるのが通例です。公開されている金額をそのまま自社の初期費用と見なすと、稟議の後で追加の申請が必要になります。料金ページは下限の目安として読み、加算される項目を自分で数える姿勢が求められます。

対象範囲の決め方には順序があります。まず取引金額の大きい取引先と、処理件数の多い工程を並べ、手作業の負荷が集中している箇所を1つ選びます。その1工程を電子化した効果を測ってから隣の工程へ広げると、初期費用を年度ごとに分けられます。全工程を同時に切り替える計画は、初期費用と社内工数が同じ時期に重なるため、負荷の山が高くなります。

範囲を決めずに見積もりを依頼すると、事業者ごとに前提の違う金額が返ってきます。ある見積もりは基幹システムとの連携を含み、別の見積もりは含まないという状態では、金額の大小を比べる意味がありません。比較の土台をそろえるには、電子化する工程、対象の取引先数、連携する既存システムの名称という3点を、依頼文へ書き添える必要があります。この3点をそろえるだけで、返ってくる金額の開きは説明のつく範囲に収まります。

受注データの受け取り、出荷と納品の連絡、請求書の発行、入金の消込の順に4つの工程が左から並び、取引DXで電子化する範囲をたどれるようにしたものです。
取引DXで電子化する受発注から入金までの範囲

見積もり依頼の前に確定させる5項目(順位根拠:後の工程の費用が前の工程の決定に左右される実施順序)

  1. 電子化する工程の範囲を、受注データの受け取り、出荷と納品の連絡、請求書の発行、入金の消込という4工程から選びます。ここが決まらないと、以降の項目を数えられません。
  2. 接続する取引先の数を、初年度の対象と2年目以降の対象に分けて数えます。取引先数はマスタ登録と切り替え支援の作業量へ直結します。
  3. 既存システムとの連携本数と方式を決めます。手動取り込み、定時のファイル連携、API連携のどれを何本用意するかで開発量が変わります。
  4. 制度と標準仕様への対応範囲を確定します。電子取引データは電子のまま保存する取り扱いが定められ、取引年月日、取引金額、取引先の3項目で検索できる状態が基本とされています4
  5. 公的支援の申請有無と時期を決めます。交付決定の前に発注や契約をした経費は対象外となるため、契約日の管理が欠かせません9

取引DXの初期費用の内訳

取引DXの初期費用は、ライセンスとアカウントの発行、要件定義と画面・帳票の設計、データ移行と基幹システム連携、取引先への切り替え支援という4つの区分に整理できます。このうち金額が読みやすいのは最初の1区分だけで、残る3区分は自社の条件で動きます。見積書を受け取ったら、合計額より先にこの4区分へ費目を割り振り、どこが厚いかを確かめる読み方が有効です。厚い区分こそ、条件を変えれば金額が下がる余地のある部分にほかなりません。

ライセンスとアカウントの発行は、初期費用の中で見通しが立ちやすい費目です。利用を始めるための環境構築、管理者アカウントの作成、初期設定の代行がここに含まれます。公開されている料金ページでは、この区分に相当する金額が初期費用として示されています10。取引先アカウントの数が料金に連動する体系では、接続する取引先を何社まで載せるかで金額が変わります。

要件定義と画面・帳票の設計は、初期費用の中で見落とされやすい費目といえます。自社の注文書、納品書、請求書に載っている項目を洗い出し、電子化後の画面と出力帳票へ対応づける作業が発生します。取引先ごとに様式が違う場合、この対応づけの本数がそのまま作業量になります。紙の帳票を何種類抱えているかを先に数えておくと、この費目の重さを事前に見積もれるでしょう。

データ移行と基幹システム連携は、初期費用の幅が大きく開く費目です。商品マスタ、取引先マスタ、価格マスタを移し替える作業に加え、既存の販売管理システムとデータを往復させる仕組みを用意します。連携の方式には、画面からの手動取り込み、定時のファイル連携、随時のAPI連携(システム同士が自動でデータをやりとりする接続方式)の3通りがあり、後ろへ行くほど開発量が増えます。

マスタの品質も、移行作業の量を左右します。同じ取引先が表記違いで二重に登録されている、廃番の商品が残っている、例外的な単価が台帳の外にあるといった状態では、移行の前に整理が必要です。この整理を事業者へ委ねると作業費として初期費用に乗り、自社で進めると社内工数として跳ね返ります。どちらの形でも費用は発生しますので、稟議の前に負担の置き場所を決めておきます。

取引先への切り替え支援は、費目として立てられないまま進みがちな部分です。案内文の作成、操作説明の場の用意、問い合わせ窓口の設置は、電子化の成否を分ける作業でありながら、見積書では省かれることがあります。接続する取引先の数が増えるほど、この支援に要する期間は延びていきます。見積もりを取る際は、この支援を含むか含まないかを明記して依頼してください。

4区分へ割り振ったうえで、区分ごとに単価と数量を分けて記載してもらうと、比較の精度が上がります。設計であれば帳票の本数、移行であればマスタの件数、連携であれば接続する既存システムの数が数量にあたります。単価と数量が分かれていれば、範囲を1段階狭めたときにいくら下がるかを自分で計算できます。総額だけの見積書からは、交渉の余地がどこにあるのかを読み取れません。

ライセンスとアカウントの発行、要件定義と画面・帳票の設計、データ移行と基幹システム連携、取引先への切り替え支援の4区分を縦に並べ、それぞれで発生する作業を添えたものです。
取引DXの初期費用を構成する4つの作業区分

自社の商流に合わせた要件整理を進めたい場合は、無料相談で要件を整理するのが近道です。

初期費用が大きく変わる要因

初期費用を動かす要因は、構築方式、取引先数と受発注パターンの複雑さ、既存システムとの連携範囲の3つに集約できます。同じ「取引DX」という言葉でも、この3つの条件が違えば見積金額は桁が変わります。裏を返せば、自社の条件をこの3軸で言語化できれば、事業者へ問い合わせる前に金額の幅を自分で見当づけられます。3軸のうち自社の判断で動かしやすいのは連携範囲であり、ここを段階的に決めると初年度の支出を抑えられるでしょう。

クラウド型は、事業者が用意した機能を設定で組み合わせる方式です。開発を伴わない範囲であれば初期費用を抑えやすく、利用開始までの期間も短くなります。ただし自社の商習慣が標準の流れに収まらない場合、例外処理を人の運用で受け止めることになります。標準へ寄せる判断を業務側が受け入れられるかどうかが、この方式を選べる条件です。

パッケージは、業種向けにまとめられた機能群を土台とし、不足分を追加開発で補う方式です。土台がある分だけ個別開発より初期費用は軽くなりますが、追加開発の本数に比例して金額が積み上がります。追加開発の候補を洗い出す作業そのものが要件定義の一部ですので、見積もりの前段に時間を要します。追加開発を何本まで許すかを先に決めておくと、金額の上限を管理できます。

個別開発は、要件定義から画面設計、開発、テストまでを自社の条件に合わせて作り込む方式です。初期費用は3方式の中で大きくなり期間も長くなりますが、既存の業務の流れを変えずに済みます。基幹システムとの連携範囲が広く、商習慣を変更できない事情がある場合の選択肢といえます。この方式を選ぶなら、稼働後の改修費用も初期費用と合わせて見込んでおく必要があります。

取引先数は、初期費用に直接効く数量です。接続する取引先が増えると、マスタ登録、様式の確認、切り替えの案内といった作業が件数分だけ増えます。全取引先を一度に載せる計画と、取引金額の上位から段階的に載せる計画では、初年度の支出が変わります。上位何社までを初年度の対象にするかを決める作業は、費用の設計そのものにほかなりません。

受発注パターンの複雑さも、金額を押し上げる要因です。得意先ごとの掛率、数量に応じた単価の切り替え、締め日と支払サイトの違い、返品と値引きの扱いは、いずれも設定または開発の対象になります。例外の数が増えるほど、設計の工数と検証の工数が積み上がります。例外を業務側で減らせるかどうかを先に検討すると、初期費用の削減余地が見えてきます。

既存システムとの連携範囲は、自社で段階を選べる要因です。初年度は受注データの取り込みだけを自動化し、請求データは手動の書き出しで運用するという分け方ができます。連携を1本増やすごとに、設計、開発、テスト、本番切り替えの4工程が発生しますので、本数を絞れば初期費用は下がります。稼働後に効果を確かめてから本数を増やす進め方であれば、投資の判断も社内で通しやすくなるでしょう。

構築方式 初期費用の傾向 向いている条件
クラウド型 開発を伴わない範囲なら抑えやすく設定作業が中心になります 標準の受発注の流れに業務を寄せられる場合
パッケージ 追加開発の本数に比例して金額が積み上がります 業界固有の帳票や商習慣に合わせたい場合
個別開発 要件定義から作り込むため金額が大きくなります 既存の基幹システムとの連携範囲が広い場合
Minimalist office supplies on a white desk with a neutral ba
▽ 写真の出典元

制度・標準仕様への対応が費用に与える影響

取引DXの初期費用には、制度と標準仕様への対応分が含まれます。電子取引データの保存要件、デジタルインボイスの標準仕様、業界標準の受発注メッセージという3つが主な対象です。いずれも要件定義の前提になりますので、後から足すと設計のやり直しが生じ、費用が二重に発生します。制度対応を最初の要件へ組み込むか後回しにするかで、総額の見え方は変わってきます。なお個別の税務判断は、所轄の税務署や専門家への確認が必要です。

電子取引でやりとりしたデータは、電子のまま保存する取り扱いが定められています4。保存にあたっては改ざん防止の措置と、画面や書面で確認できる状態の維持が求められます。検索の要件では、取引年月日、取引金額、取引先の3項目で検索できることが基本とされています4。この3項目をどの仕組みで持たせるかは、要件定義の初期に決めておく事柄です。

保存要件を後から追加すると、費用は積み増しになります。受発注の画面を作り込んだ後で保存対象のデータ項目が足りないと分かれば、データ設計から見直す作業が生じます。導入の目的が業務効率であっても、保存要件は同じ仕組みの上で満たすほうが、結果として費用は軽くなるでしょう。制度の詳細は公開されている原典にあたり、自社の取引形態に当てはまるかを確認してください4

デジタルインボイスについては、国内向けの標準仕様が公開されています5。標準仕様に沿って請求データをやりとりすれば、取引先ごとに様式を作り分ける作業が減ります。ただし標準仕様に対応した送受信の仕組みを備える必要があり、その分は初期費用へ計上されます。取引先が標準仕様へ移る時期と自社の導入時期を合わせられれば、切り替えの費用を1回にまとめられます。

標準仕様へ寄せる判断は、初年度の費用と数年分の費用で評価が分かれます。初年度は対応開発の分だけ費用が増えますが、取引先が増えるたびに個別対応を作る費用は発生しません。取引先が増える計画を持つ企業ほど、標準仕様への対応が後になって効いてきます。逆に取引先が固定されている企業では、個別の対応で済ませる判断もあり得るでしょう。

業界標準の受発注メッセージに合わせる場合は、追加の開発が生じます。流通分野では、発注、出荷、受領、請求といった業務メッセージの標準仕様が公開されています6。取引先から標準仕様での接続を求められた場合、自社側でその仕様に沿ったデータの送受信を用意します。標準仕様の版と、取引先が使う業務メッセージの種類を先に確認しておけば、開発範囲を絞り込めます。

制度と標準仕様の確認を省くと、稼働後の改修という形で費用が戻ってきます。稼働中の仕組みへ手を入れる改修は、開発だけでなく取引先との再テストを伴うため、初期の作り込みより負担が重くなります。国の調査でも企業のデジタル化の取り組み状況は毎年整理されており、2026年に公表された報告書が現時点の最新版です2。制度の要件は年度ごとに見直されますので、原典で最新の版を確かめる手順を要件定義へ組み込んでおきます。

初期費用とランニング費用の関係

初期費用と月額費用は、片方を下げるともう片方が上がる関係にあります。初期費用を抑えた契約では、設定作業や運用支援の一部が月額へ組み込まれ、利用期間が長いほど総額の順位は入れ替わります。判断の材料になるのは単年度の金額ではなく、3年から5年の期間で積み上げた総保有コストです。稟議では初年度の支出だけでなく、この期間の合計を並べて示すと、費用の妥当性を説明しやすくなるでしょう。

初期費用を抑えた契約では、費用の一部が月額側へ移ります。初期の設定作業を事業者の標準メニューに収め、その代わり利用料へ運用支援を含める形が代表的です。導入の年の支出は軽くなりますが、利用者数や取引先数が増えると月額も増えていきます。契約の前に、利用者数や取引先数が増えたときの料金の動き方を確かめておいてください。

保守とサポートの費用は、稼働の翌年から効いてきます。障害対応、問い合わせ窓口、仕様変更への追随がここに含まれ、契約によっては初期費用に連動した年額として設定されます。連携を作り込んだ場合、その連携部分の保守が別立てになることもあります。見積書を受け取った段階で、保守の対象範囲と対象外の作業を文章で確認しておきましょう。

改修費用は、制度改正と取引先の要望から生まれます。税制や標準仕様の版が変われば対応のための改修が必要になり、その費用が月額に含まれない場合もあります。取引先から新しい様式での接続を求められたときも同じです。稼働後の数年間にこうした改修がどの程度の頻度で起きるかを事業者へ確認しておくと、予算計画を立てやすくなります。

社内の運用にかかる時間も、月額側の費用として数えます。マスタの登録と更新、取引先アカウントの発行、問い合わせの一次対応は、稼働後も続く作業です。電子化によって入力作業が減っても、管理作業が新たに生まれる点は見込んでおく必要があります。差し引きで時間がどれだけ減るのかを、導入前の測定値と比べられる形にしておきます。

総保有コストで比べる手順そのものは複雑ではありません。初期費用に、月額費用を12倍した金額を年数分だけ足し、そこへ想定される改修費用と社内工数の金額換算を加えます。この合計を、比較したい方式の数だけ並べていきます。3年で比べると初期費用の重い方式が不利に見え、5年で比べると評価が変わることがありますので、期間は2通りで示してください。

単年度の金額だけで方式を決めると、翌年以降に説明のつかない支出が積み上がります。比較表を作る作業自体は難しくありませんが、改修の頻度と社内工数の見積もりには経験が要ります。自社の取引先数と連携本数を前提に置いた試算を稟議の前に一度組み立てておけば、社内の合意を取りやすくなるでしょう。数字が動く前提を明示しておくことで、後の見直しも説明しやすくなります。

初期費用を抑える公的支援の使い方

初期費用の一部は、公的な補助制度で軽くできる場合があります。2026年度の制度では、中小企業のデジタル化を支援する補助金が申請枠ごとに整理され、電子取引に関する類型とインボイス対応の類型が設けられています78。補助率や補助上限額、対象経費は年度ごとに見直されますので、公募要領の最新版で確認してください9。申請すれば採択されるものではなく、交付決定の前に発注や契約をした経費は対象外となる点にも注意が必要です。

補助の対象になる経費は、申請枠ごとに定められています9。取引DXで想定される費目のうちどこまでが対象になるかは類型によって異なりますので、見積書の費目名を公募要領の区分と突き合わせます。要件定義や連携開発のように自社固有の作業は、対象の扱いが枠によって変わります。事業者へ見積書を依頼する段階で補助の申請を予定している旨を伝えておけば、費目の分け方をそろえてもらえるでしょう。

電子取引に関する類型では、発注側の企業が受注側の取引先にアカウントを供与する形が想定されています7。取引先の側に費用負担が生じると切り替えが進まないという課題へ対応した枠組みです。取引先数が増える企業にとっては、切り替え支援の費用を軽くする手立てになり得ます。対象となる範囲と条件は公募要領に定められていますので、申請の前に確認してください7

インボイス対応の類型では、請求書の受け渡しに関わる仕組みが対象として整理されています8。会計や受発注に関わるソフトウェアのほか、枠によっては周辺の機器が対象へ含まれる場合もあります。自社が導入しようとしている仕組みがどの類型に当てはまるかは、機能の区分で判断されます。判断に迷うときは、公募要領の記載と事務局の案内を確かめる手順になります9

申請のスケジュールは、年度内に複数回の締切が設けられる形が示されています9。締切ごとに交付決定の時期が異なり、そこから事業の実施期間が始まります。導入の希望時期から逆算してどの回に申請するかを決めておけば、待ち時間を読めます。交付決定を待つ間に発注を進めてしまうと対象外になりますので、事業者との契約日を管理する必要があります。

申請そのものにも社内の工数がかかります。事業計画の作成、必要書類の準備、電子申請の手続きは、担当者の時間を消費する作業です。補助で軽くなる金額と申請にかかる手間を並べて比べ、申請するかどうかを判断します。補助を前提に予算を組むと不採択の場合に計画が止まりますので、補助がない場合の計画も同時に用意しておきましょう。

補助制度の活用は、金額の話だけで終わりません。公募要領の読み解き、見積書の費目の整理、事業計画の作成という3つの作業が必要で、いずれも制度と自社業務の双方を理解している担当者が受け持ちます。社内に経験者がいない場合、この3つに要する時間を過小に見積もると締切に間に合いません。制度の要件は年度ごとに変わりますので、前年度の情報をそのまま当てはめない姿勢が求められます。

A group of professionals reviewing financial charts in an of
▽ 写真の出典元

費用対効果の見立てと社内稟議の進め方

費用対効果の見立ては、現状の測定、試算と比較、稟議と申請という3段階で進めます。最初に処理件数の把握と作業時間の記録を済ませ、次に削減見込みの試算と総保有コストの比較を作り、最後に稟議書の根拠整理と公的支援の確認へ移ります。この順序を守れば、金額の話が印象論ではなく測定値の話になります。測定は1か月分の実績があれば足りますので、見積もり依頼と並行して進められるでしょう。

現状の測定は、処理件数の把握と作業時間の記録の2つで構成されます。1か月あたりの受注件数、請求書の発行件数、問い合わせの件数を数え、工程ごとに並べます。あわせて受注データの入力、内容の確認、差し戻しの連絡、請求書の印刷と封入について、1件あたりの所要時間を数日分実測します。件数と時間を掛け合わせれば月あたりの作業時間が出ますので、推計ではなく実績値で土台を作れます。

削減見込みの試算では、減る時間と減る実費の2つを分けて扱います。時間の側は、入力と確認と差し戻しにかかっていた作業時間のうち、電子化で不要になる分を工程ごとに見積もります。実費の側は、用紙代、印刷代、封筒代、郵送料、保管にかかる費用を月額で合計します。実費は請求書や購買記録から拾えますので、時間の試算より根拠を示しやすい部分です。

総保有コストの比較では、方式ごとの合計額を同じ期間で並べます。初期費用、月額費用の年額換算、想定される改修費用、社内工数の金額換算という4つの項目を、3年分と5年分の2通りで積み上げます。削減見込みの金額を差し引けば、何年目で費用を回収できるかが出ます。回収年数の長い方式については、途中で制度改正が入る可能性も併せて説明しておきましょう。

段階導入は、初期費用を年度ごとに分ける手立てです。初年度は取引金額の上位の取引先と1工程に絞り、翌年度に工程を広げ、その次に取引先を増やすという分け方ができます。分割すると総額はやや増えますが、単年度の支出が抑えられ、効果を確かめてから次の投資を決められます。初年度の対象をどこまでにするかは、測定した件数の分布から決めていきます。

稟議書の根拠整理では、測定した数値と見積もりの前提を1枚にまとめます。処理件数、作業時間、実費、初期費用の内訳、総保有コストの比較、回収年数という6項目がそろえば、質問に答えられる状態になります。公的支援の確認は、交付決定の前に発注しないという条件を含めて、時期の欄へ書き込んでおきます。前提が書かれた1枚があれば、条件が変わったときの再計算も同じ形で進められます。

これらの作業を社内だけで進める場合、業務の測定、制度の要件確認、見積もりの査読という3つの役割を担当者が兼ねることになります。要件定義の経験、電子取引の保存要件の知識、連携方式ごとの工数感という3種類の知見が同時に必要です。外部の支援を使う判断は、作業を代わってもらうためというより、見積もりの前提が抜けたまま稟議が通る事態を避けるためのものといえます。前提の抜けは、稼働後の改修という形で必ず費用へ戻ってきます。

現状の測定には処理件数の把握と作業時間の記録、試算と比較には削減見込みの試算と総保有コストの比較、稟議と申請には稟議書の根拠整理と公的支援の確認が入る3段階の並びです。
費用対効果の見立てから稟議までの3段階と作業

BtoB通販システムのご相談

貴社の商習慣に合わせたご提案をいたします。

無料相談はこちら

よくある質問

初期費用の見積もりを依頼するとき、最低限どんな情報を伝えればよいですか

電子化する工程の範囲、接続する取引先の数、連携する既存システムの名称と連携方式という3点を伝えます。この3点がそろうと事業者ごとの前提がそろい、返ってきた金額を同じ土台で比べられます。加えて、取引先ごとに様式の違う帳票の本数と、移行対象のマスタ件数を添えてください。設計と移行という金額の動きやすい2費目の精度が上がります。

初期費用が0円と案内された場合、費用は本当にかからないのですか

初期費用の掲示が0円であっても、費用が消えるわけではありません。設定作業や運用支援の分が月額へ組み込まれている場合があり、利用期間が長くなるほど総額の順位は入れ替わります。連携開発やデータ移行は別見積もりとなるのが通例ですので、含まれる作業と含まれない作業を文章で確認してください。判断は3年分と5年分の総保有コストで行います。

補助金を前提に予算を組んでも差し支えありませんか

補助制度は申請すれば採択されるものではありませんので、補助がない場合の計画も同時に用意しておくほうが安全です。交付決定の前に発注や契約をした経費は対象外となり、補助率や補助上限額、対象経費は年度ごとに見直されます9。申請の時期と導入の希望時期を逆算し、事業者との契約日を管理してください。

取引先が電子化に応じてくれない場合、費用はどう変わりますか

紙と電子の2系統を並行して運用する期間が生じ、その分の社内工数が費用として残ります。切り替えの案内、操作説明、問い合わせ対応にかかる時間を、導入計画へ最初から見込んでおいてください。発注側が受注側にアカウントを供与する形を想定した補助の類型も設けられていますので、対象となる範囲と条件を公募要領で確認しましょう7

電子帳簿保存法への対応は、既存の仕組みのままでも満たせますか

電子取引でやりとりしたデータは電子のまま保存する取り扱いが定められており、改ざん防止の措置と、画面や書面で確認できる状態の維持が求められます4。検索については取引年月日、取引金額、取引先の3項目でできる状態が基本とされています。自社の取引形態に当てはまるかどうかは原典を確認し、個別の判断は所轄の税務署や専門家へご相談ください。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「FSOL B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

  1. *1 出典:経済産業省 商務情報政策局 情報経済課「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」(2025) 経路
  2. *2 出典:独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2026 広がるAI導入、DXは変われるか」(2026) 経路
  3. *3 出典:中小企業庁「2026年版 中小企業白書」(2026) 経路
  4. *4 出典:国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」(2026) 経路
  5. *5 出典:デジタル庁「JP PINT(日本のデジタルインボイス標準仕様)」(2026) 経路
  6. *6 出典:流通BMS協議会(一般財団法人流通システム開発センター)「流通ビジネスメッセージ標準(流通BMS)標準仕様」(2026) 経路
  7. *7 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026 インボイス枠(電子取引類型)」(2026) 経路
  8. *8 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026 インボイス枠(インボイス対応類型)」(2026) 経路
  9. *9 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業デジタル化・AI導入支援事業費補助金 事業ポータルサイト(申請枠一覧・スケジュール)」(2026) 経路
  10. *10 出典:Bカート公式サイト「料金プラン(初期費用・月額費用の公開価格)」(2026) 経路

画像の出典元

  1. Spacious co-working office with wooden desks, laptops, and m/Photo by Pavel Danilyuk on Pexels
  2. Minimalist office supplies on a white desk with a neutral ba/Photo by https://kaboompics.com/ on Pexels
  3. A group of professionals reviewing financial charts in an of/Photo by Yan Krukau on Pexels

Photos provided by Pexels

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

監修確認日:

記事内容に関するお問い合わせ:お問い合わせフォーム

BtoB EC(受発注)サイト構築システム「EC-Rider B2B Ⅱ」への
各種お問い合わせ

ページTOPへ戻る
無料相談を予約 お見積
平日10:00~18:00
page
top