企業間取引を行うB2B向けECサイトの数は、年々増加の一途をたどっています。
卸売りサイトや法人通販はもとより、よりクローズドな範囲で展開される受発注サイトなど、様々な業種において多彩なB2B向けECサイトが構築・運営されるようになりました。
B2B向けECサイトの開設が一種のブームのようになってきている中、企画段階での失敗により、せっかくサイトを立ち上げたものの、思ったように成果を挙げられないというケースもしばしば発生しています。
そこでこの記事では、これからB2B向けECサイトの構築・リニューアルを検討している方に向けて、真に成果のあがるB2B向けECサイトを構築するためのポイントをご紹介します。
1.BtoB向けECサイトはBtoC向けECサイトとどう違うのか?
「よし、うちもECサイトを立ち上げよう!」
オンラインでの商取引は、もはや当たり前のこととなりました。
10代~60代の日本国民を対象としたある調査によると、9割近くが1年以内にBtoC(Business to Consumer/一般消費者を対象とした商取引)向けのネットショップを利用した経験を持っているそうです。
BtoB(Business to Business/企業対企業の商取引)の世界でも、同様にオンラインでの商取引は年々活発化してきています。従来の企業間商取引をWebサイトを用いて行うための基盤として、いわゆるBtoB向けのECサイトを開設する企業の数も、ここ数年で飛躍的に増加しました。
こうした流れを受けて、
「よし、うちの会社でもECサイトを立ち上げよう!」
とBtoB向けECサイトの開設に乗り出す企業が増えてきていますが、その一方で、せっかく開設したECサイトから思ったような成果を上げられず、頭を抱えていらっしゃる担当者の方も少なくありません。
「ECサイトならどれでも同じ」ではありません
手間隙かけて費用をかけてオープンしたECサイトから、期待した成果が上がらない。それどころか、それまでの業務に加えてECサイトの運営業務が加わった事で現場の作業が複雑化し、かえってビジネスの効率が悪化した・・・
担当者にとってはまさに悪夢ともいうべき状況ですが、実は、こうしたケースはさほど珍しいことではありません。
原因はいくつかありますが、そのうちのひとつに「システムの選定ミス」をあげることができるでしょう。ECサイトを構築・運営するためには専用のシステムの導入が必要不可欠ですが、このシステムの選定が、ECサイトの成否を分ける重大なポイントとなります。
そして、失敗の原因として多いのが、「BtoBのECサイトを構築するのに、BtoC向けに作られたシステムを採用してしまう」というものです。
同じECサイトといってもBtoBとBtoCではポイントが大きく異なります。BtoB向けのECサイトを構築するにあたっては、この点に注意する必要があります。
“B”と“C” のECサイトを分ける3つの違い
では、BtoB向けのECサイトとBtoC向けのECサイトでは、具体的に何が違うのでしょう?細かく見ていくと様々な違いがありますが、おおまかには下記のような視点で分類することができます。
●「顧客」が違う
BtoC向けECサイトの顧客はConsumer(一般消費者)ですが、BtoBの場合、原則として顧客は企業/法人となります。このため、顧客情報と紐付けて顧客情報を管理する必要がありますし、一つの企業に複数の部署や担当者が存在する、といったケースを考慮する必要があります。
●「見せ方」が違う
法人間の取引は、一般消費者向けの商売に比べて売り上げ規模が大きく、それだけに販売者企業の間での競争も激化します。
このため、お得意様である大手企業には優遇価格で商品を提供したり、限定商品を特別な顧客にだけ販売したりといったことが日常的に行われています。こうしたBtoBならではの商習慣を、システム上でも可能な限りスムーズに実現しなくてはなりません。
●「買い方」が違う
BtoCのサイトでは、完成した商品をECサイト上に陳列し、それを顧客が購入するというシンプルな流れで取引が完結するケースが多いといえます。これがBtoBになると、購入数量による割引をつけたり、購入に際してオプション品を選択したり、長さや幅などのサイズを注文時に指定したりといったニーズが発生してきます。
2. BtoB向けECサイトに必須の4つの機能
前のパートでは、BtoB向けECサイトとBtoC向けECサイトの間の違いを、商品を購入する「顧客」、顧客に向けた商品の「見せ方」、そして、サイトを訪れた顧客が商品を購入する際の「買い方」という、三つの観点に分けてご説明しました。
そこでこのパートでは、これらを踏まえて、BtoB向けECサイトに必要な機能について考えていきましょう。
企業情報管理機能
「BtoB向けECサイトの「顧客」は「企業」である」
多くの場合、BtoB向けECサイトの顧客は企業です。
厳密にいえば、顧客そのものは一人の人であっても、その背後に企業が控えているということです。このため、BtoB向けのECサイトでは、購入した人自身の情報(氏名など)とあわせて、顧客が属する企業の情報を管理する必要があります。
また、企業には複数の部署があり、各部署ごとに一名~数名の担当者が紐付くケースが多いといえます。このため、顧客を管理するデータベースは、企業対担当者を「一対多」の関係で管理する構造になっていなくてはなりません。
サイトの規模や運営方針にもよりますが、中規模~大手企業を相手にビジネスを展開するのであれば、必ず考慮しておくべき重要なポイントといえるでしょう。
クローズドサイト運営機能
「BtoB向けECサイトは限定公開される場合が多い」
一部の例外を除けば、BtoC向けのECサイトは不特定多数の消費者に一般公開されるのが普通です。これに対してBtoB向けのECサイトでは、商品を販売する相手=顧客が限定されるケースが少なくありません。
BtoBのビジネスでは、一度に動くモノやカネがBtoCに比べて大きくなる傾向があります。取引上のリスクを回避して安定的に商売を続けていくためには、取引する相手を事前に見極めるということが重要になってくるのです。
このためBtoB向けのECサイトには、あらかじめ登録された取引先だけにサイトを公開する仕組みが求められます。
これが、「クローズドサイト運営機能」、別名「会員限定サイト運営機能」と呼ばれる機能です。
取引先別設定機能
「取引先ごとに固有の対応が必要」
BtoB向けECサイトに求められる機能として、取引先によって商品の価格を変更したり、商品の公開/非公開を取引先によって切り替えたりするというものがあります。
企業対企業の取引においては、継続して大量に注文してくださる「お得意様」に掛率を優遇したり、特定の企業や地域に向けて商品を限定的に販売したりといったことが頻繁に発生するためです。
お得意様向けの割引や限定商品の販売自体は、BtoC向けのECサイトでも行われています。一年間の購入金額によって、次年度の割引率が変わるようなECサイトもありますし、パスワードを知っている人だけが閲覧できる「闇市」ページを設けて、限定販売をすることもあるでしょう。
BtoB向けのECサイトにおいては、そうした対応を柔軟かつ効率よく行うことが重要なポイントとなります。複数の取引先にそれぞれ個別の価格設定を行う、商品の公開・非公開を切り替える、といった仕組みをスマートに実現するには、BtoB向けに設計された専用の機能が必要です。
一括注文機能
「大量の商品を一度に注文する」
ケースバイケースではありますが、企業対企業の取引における一つの特徴として、一度にたくさんの商品を注文するという性質をあげることができます。
小売店が卸売業者から商品を仕入れる際にも、多くの場合はいくつかの商品をまとめて発注します。たとえばブティックがTシャツを仕入れるのであれば、色、サイズ、柄の異なるものを何種類か一度に注文するでしょう。文具店がボールペンを仕入れる場合も、色や芯の太さの異なるものを複数注文するケースが多いのではないでしょうか。
このように、複数の商品を一度にまとめて注文するような場面において、一般的なECサイトにあるようなショッピングカート式のインタフェースはあまり効率が良いとはいえません。
このような場合、商品番号やJANコードを指定して商品を一括注文したり、ExcelやCSV形式にまとめた注文データを取り込んだりといった機能が求められることになるでしょう。
3. BtoB向けECサイトをさらにパワーアップするために
ECサイトを立ち上げる「目的」を明確にする
「なぜ、貴社はECサイトを立ち上げるのか?」
どんな事でもそうですが、ビジネスにおいて何らかのアクションを起こす際には、あらかじめ「目的」を明確にしておくことが大切です。
取引先の拡大、知名度の向上、取引量の拡大アップ、業務効率化…などなど、ECサイトを立ち上げることによって得られる成果は多岐に渡りますが、そのうちの「どこ」に重点を置くのかということを、あらかじめ決めておくのです。
潤沢な費用を思うままに使える場合は別として、一般にECサイトの構築/運営にかけられる費用は限られています。その限られた費用を、重点となる目的を達成するために必要な所へ投資することが大切です。
たとえば目的が「取引先の拡大」であれば、新規の取引先を効率よく獲得するための仕組みを作らなくてはなりません。また、既存取引先からの取引量拡大が目的ならば、より注文しやすい仕組みを実現したり、おすすめの商品をうまく提示するような仕掛けを組み込むことでも成果をあげることができるでしょう。
BtoB向けECサイトはBtoB専用のシステムで!
「BtoBに特化したシステムの採用が成功への早道」
ここまで、BtoB向けのECサイトに必要な機能について説明してきましたが、最後に一つ、とても重要なことをお話しておきます。
それは、BtoB向けのECサイトを構築するのであれば、BtoBに特化したシステムを基盤として採用すべきである、ということです。
BtoC向けECシステムの市場は既に成熟していますので、機能が豊富で安価なものが多数出回っています。こうしたものを採用し、低コストでECサイトを構築することも不可能ではありません。しかし、運営するECサイトに必要な仕組みが備わっていなければ、いずれ必ずどこかでほころびが出てくるものです。
ECサイトは開設しただけで終わりではありません。オープン後の運用は長期にわたって続きます。企業対企業の取引を知り尽くし、必要な機能を過不足なく備えたシステムを採用することが、BtoB向けのECサイトを成功に導くための重要なポイントだと言えるでしょう。