第二回:小口取引先を増やして売上をアップ!
川手 正己(株式会社イーシー・ライダー/代表取締役/ヘッド・コンサルタント)
前回の記事では、売上アップを目的としてB2B向けECサイト開設をする際のパターンについて、いくつかの例を挙げてお話しました。
同じ「売上アップ」を課題としてB2Bサイトを導入する場合でも、背後に控える課題によっていくつかのパターンがあり、パターンごとに重点をおくべきポイントが異なることを説明しました。
今回はそうしたいくつのパターンの中から、受注処理コストの削減と与信管理の簡略化によって小口取引先とのビジネスを拡大し、売上アップに繋げられた例をご紹介します。
小口取引先拡大を阻む壁
今回ご紹介する企業様(以下、A社)は、家具の製造販売を手がけるメーカー様です。
A社では長年、既存の取引先を中心にいわゆる掛け売りの形で商売を進めてこられましたが、ここ数年、景気の減退にともなって大口の取引量が減少傾向となり、売上を維持するために取引先の拡大に力を入れてこられました。
特に、楽天市場やAmazonのようなショッピングモールに出店している中小零細規模のショップからの引き合いは年々増加してきており、こうした小口の取引先を増やせば売上アップに繋げられるであろうことは想像に難くありませんでした。
しかし、せっかく目の前に売上アップにつながる顧客がいるというのに、「ある課題」に行く手を阻まれて、小口取引先の拡大には二の足を踏まざるを得ない状況にありました。
行く手を阻んでいた「ある課題」とは、受注処理コストの増加です。
当時A社では、取引先からの注文を電話、FAX、メールベースで受付け、受け付けた注文をオペレータが手入力で基幹システムに登録していました。こうした人力ベースでの受注処理やデータ登録には、非常に手間がかかります。取引先の数が増えれば注文の件数が増えますが、一人のオペレータが一日に処理できる注文の件数には限りがあり、実質的にその部分がボトルネックとなってしまうのです。
売上は増えても利益は下がる!?
ではオペレータの人数を増やせば良いのかというと、事はそう簡単ではありません。
小口取引先から上がる注文は大手とくらべて少額であることが多いのですが、注文金額が多くても少なくても受注処理にかかる手間は変わりません。つまり、10万円の注文であろうと1000万円の注文であろうと、それを受け付けてデータを登録するためのコストに大きな違いはないのです。
小口取引先を増やすということは、すなわち少額取引を数多くこなすということですが、数多い取引から得られる利益は大口の取引よりも大幅に低く、場合によっては増えたオペレータの人件費を賄えない懸念も出てきます。売上アップを狙って受注処理体制を強化したというのに、利益が下がってしまうのです。
企業にとってもっとも重要なのは言うまでもなく利益ですから、これでは本末転倒ということになってしまいます。
与信管理の煩雑化を回避
小口の取引先を増やすにあたっては、もう一つ重要な課題がありました。それは与信管理が煩雑化するのを極力避ける必要があるということです。
A社では従来、大口の取引先を中心に掛売メインで取引を行ってきましたが、ターゲットとなる小口取引先の中には、社内の規定上与信が通らないような事業者が少なからず含まれていました。与信が通らなければ掛売はできませんので、現金前払いや銀行振込といった別の方法で代金を回収する必要がありますが、こうしたイレギュラーな入金フローが入って来ると、どうしても現場の処理は混乱してしまいます。
かといって、発注金額の上限を下げて掛け払いを受け付ければ貸し倒れのリスクが高まります。
Web受注システムの導入で課題を解決!
目の前には発注意欲まんまんの小口取引先がひしめいているというのに、業務効率の悪さがボトルネックとなって取引の開始に踏み出せない。与信管理の複雑化が懸念となって、取引先の拡大に消極的にならざるを得ない・・・こうしたジレンマを解決するためにA社が選ばれたのが、Web受注システムの導入という一発逆転案でした。
Web受注というのは、文字通りWeb経由で注文を受け付ける仕組みです。
Web受注システムにも様々なタイプがありますが、最近の主流は、Amazonや楽天などのように商品をWebサイトに掲載し、顧客が必要な商品をカートに入れて申し込みボタンを押して商品を注文するECサイト形式のものです。
注文情報は自動的にデータベースに登録されるため、オペレータが電話やFAXで注文を受け付けたり、その都度データを登録したりする必要はなくなります。また、必要に応じて社内の基幹システム等に情報を連携させることも可能です。これまで人力で行っていた処理をWeb受注システムに任せることにより、オペレータによる受注処理コストを大幅に減らせる可能性が出てきます。
Web受注導入のもう一つのメリット –クレジットカード決済の導入-
Web受注システムを導入することで得られるもう一つのメリットは、商品代金の支払いにクレジットカード決済を利用できるようになる事です。
クレジットカード決済というとBtoCのイメージが強いかもしれませんが、最近は各社からBtoB専用のカード決済サービスが登場しています。
Web受注システムにクレジットカード決済の機能を組み込み、注文受付の際にカード決済で支払いを完了させることで、金管理の手間は大幅に削減することが可能です。カード利用者の与信管理はクレジットカード決済サービス提供業者が行うため、与信管理の負荷も軽減できますし、入金サイトの短縮化などのメリットも得られます。何より、通常の社内規定では与信を通せない小口取引先からの注文を安全かつ効率よく受け付けられるようになるのは、大きなメリットであると言えるでしょう。
BtoB取引でクレジットカード、というとピンと来ない方もいらっしゃるかもしれませんが、最近はカード会社各社からBtoB取引に特化したクレジットカードが提供されており、事業者向けローンなどに比べると圧倒的に有利な金利でカード決済を利用することが可能です。
Web受注システムとクレジットカード決済の連携については、後日の連載記事で詳しく紹介させていただく予定です。
Web受注システム導入のポイントとは
このように、クレジット決済機能を備えたWeb受注システムの導入により、A社では課題となっていた「受注処理業務コストの増加」と「与信管理業務の煩雑化」を解消し、かねてより狙いをつけていた小口取引先の拡大に向けて、本格的に動き始める体制を構築されました。
とはいえ、このWeb受注システム導入プロジェクトは、始めから全てスムーズに進んだわけではありません。導入にあたって、「大口取引先からの注文は従来通りFAXで受け付けたい」「既存の運用ルールはできるだけ崩したくない」「現状、運用で手間がかかっている部分を改善したい」といった声が社内からあがり、こうした要望にひとつずつ答えていく必要がありました。
新しいシステムを導入する際は、新システムにより得られるメリットだけに注目するのではなく、慣れた作業からの急な転換を強いられる現場の作業者の負担などにも目を向けて、慎重に行うのが重要なポイントです。
A社ではこうした現場の声に答えつつ、Web受注システムの導入に成功されました。
A社におけるWeb受注システム導入の経緯については、下記よりダウンロード頂ける事例紹介資料にて詳しくご紹介しています。資料は無料でダウンロードして頂けますので、ぜひご一読下さい。
内容についてわかりづらい点、ご質問などがございましたら、筆者までお気軽にお問い合わせ頂ければと思います。