企業間取引のデジタル化が進む中、BtoB ECサイトの重要性は増しています。しかし、その
構築には特有の難しさが伴います。
本記事では、BtoB ECの基本的な役割から、構築に不可欠な機能要件、失敗しない構築手法
、そして成功を左右するパートナー選定のポイントまでを網羅的に解説。BtoB EC導入を成
功に導くための知識がここにあります。
BtoB ECサイトの構築を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
1.企業間取引におけるBtoB ECサイトの役割とは

本章では、BtoB ECサイトが現代の企業間取引で果たす役割と、EC化がもたらす具体的な
効果を解説します。
BtoB向けECサイトがもたらす取引効率化の効果
BtoB向けECサイト導入の最大の効果は、受発注業務の効率化です。これまで手作業で行っていた受注対応が自動化され、組織全体の生産性を向上させます。
- 24時間365日の自動受注: 営業時間外(夜間・休日)を問わず注文受付ができるため販売機会の損失を防ぎます。
- ヒューマンエラーの削減: 品番や数量の入力ミスといった人為的ミスを根本から防ぎます。
- 高付加価値業務へのシフト: 受注業務担当者が単純作業から解放され、提案活動など利益に直結する業務に集中できます。
従来型の受注業務との違いとEC導入の利点
電話やFAXによる従来の受注業務は、業務の属人化や情報共有の難しさといった課題を抱えています。ECサイトはこれらの課題を解決する強力な武器となります。
ECサイト導入による主な利点:
- 業務の標準化: 取引データが一元管理され、業務プロセスが標準化されます。誰でも均質なサービスを提供できます。
- 新規顧客の開拓: ECサイトを持つことでWebでの情報収集を主とする新しい世代の購買担当者にもアプローチが可能になります。
- データ活用の促進: 蓄積された購買データを分析し、精度の高いマーケティング施策を展開できます。
取引先との関係性を保ちながらデジタル化を進める
「受注業務をEC化することで人間関係が希薄になるのでは」という懸念は必要ありません。
何故ならば、EC化によって、デジタルとアナログの最適な役割分担を実現し煩雑な受注続きや日常的なやり取りといった定型業務をECが担うことで営業担当者がより付加価値の高い活動に集中できるようになるからです。
2. BtoB ECサイト構築に不可欠な機能要件

BtoB ECサイトを成功させるには、企業間取引特有の商習慣に対応できる機能の実装が不可欠です。ここでは、絶対に外せない基本機能を紹介します。
企業間取引に特化したECシステムの要件
BtoB ECサイトは、特定の企業間でのクローズドな取引を実現するための機能が中核です。
- クローズドサイト(会員制)機能: IDとパスワードを持つ取引先のみがログインできる仕組みです。卸価格などを一般の顧客には非公開にすることが可能となります。
- 見積もり機能: サイト上で見積もり依頼から回答、発注までを完結させる機能。商談のスピードアップを実現します。
- 承認ワークフロー機能: 企業内の「担当者が申請し、上長が承認する」という購買プロセスをサイト上で再現し、内部統制を強化します。
多様な決済方法への対応とリスク管理
BtoB取引では、取引先の利便性と自社のリスク管理の両立が求められます。
最も重要なのが「請求書払い(掛け売り)」への対応です。これはBtoB取引の主流であり、ECサイトには取引先ごとの与信限度額を管理する機能が求められます。また、債権未回収リスクを回避するため、与信審査から代金回収までを代行するBtoB専門の決済代行サービスとの連携にも非常に有効です。
顧客別価格・条件対応など法人取引特有の機能
BtoB取引の大きな特徴は、一物多価、つまり取引先ごとに販売価格が異なる点です。この複雑な価格体系をシステムで再現できなければなりません。
- 顧客別価格設定機能: 顧客アカウントごとに異なる商品価格や掛け率を自動で適用する、BtoB ECにおける最重要機能です。
- ロット単位・最低発注数量の設定: 商品ごとに「10個単位」といったロット設定や最低発注数量を設定し、配送効率の維持や不採算な注文を防ぎます。
- 型番・品番検索機能: プロの購買担当者が使い慣れた型番や品番で検索できる機能は、サイトの利便性を大きく左右します。
3. 柔軟な業務フローを実現する設計ポイント

BtoB ECサイトの効果を最大化するには、システムと既存の業務フローがスムーズに連携するよう設計することが重要です。
受発注・出荷・在庫管理の一元化と可視化
多くの企業では、受注、出荷、在庫が別々のシステムで管理され、非効率です。BtoB ECサイトを導入する際は、これらのバックオフィス業務をECサイトをハブとして一元管理し、プロセス全体を可視化することが理想的です。ECサイトの注文情報が自動で出荷指示に繋がり、在庫数がリアルタイムで反映される仕組みを構築することで、リードタイムの短縮や在庫の最適化が実現できます。
部門間・取引先との承認フローへの対応
企業活動における複雑な承認フローをシステム上で再現できる柔軟性が求められます。例えば、「一定額以上の値引きは部長承認を必須とする」といった社内ルールや、取引先の購買プロセスをシステムに組み込むことで、意思決定のスピードを上げ、承認履歴も明確に残すことができます。
業務フローとシステム構成の整合性を確保する
ECサイト導入でよくある失敗が、自社の業務フローを整理しないまま、システムの機能に無理やり業務を合わせようとすることです。これを防ぐには、開発着手前に「業務要件定義」を徹底し、現状の業務フロー(As-Is)と理想の業務フロー(To-Be)を明確にすることが不可欠です。これにより、現場運用にあったECサイトを構築できます。
4. 失敗しないBtoB ECサイトの構築手法と選び方

BtoB ECサイトの構築手法は複数あり、自社の状況に合わない手法を選ぶと後々のコスト増に繋がります。ここでは主要な手法と選び方を解説します。
業種・業態ごとの業務要件への柔軟な対応
まず、自社の業界特有の複雑な業務要件に、システムがどれだけ柔軟に対応できるかが重要です。アパレル業界のSKU管理や精密機器業界のシリアルナンバー管理など、特殊な要件は多岐にわたります。自社の要件をリストアップし、各サービスが対応可能かを確認しましょう。
カスタマイズと標準機能のバランス設計
構築手法は主に以下の3つです。
- カート型: クラウド上の既製ECサービス。初期費用が安く短期間で導入できるが、カスタマイズ性は低い。スモールスタート向け。
- ECパッケージ型: 機能がパッケージ化されたソフトウェア。カート型よりカスタマイズの自由度が高く、独自の商習慣に対応しやすい。中堅〜大企業向け。
- フルスクラッチ開発: ゼロから完全にオリジナルのサイトを開発。自由度は最も高いが、開発費用と期間は最大。非常に特殊な要件を持つ企業向け。
失敗しないポイントは、自社の「現在」と「未来」を見据えて選択することです。
拡張性を意識した長期運用のための設計戦略
BtoB ECサイトは、事業の成長に合わせて変化に対応する必要があります。構築の初期段階で、将来の事業拡大を見越した**「拡張性(スケーラビリティ)」を考慮せずにシステムを選ぶと、数年後に大規模な改修が必要**になり、結果的に多大なコストを生むことになります。長期的な視点でシステムを選定することが重要です。
5. 基幹システムとECサイトの連携がもたらす効果

BtoB ECサイトの価値を飛躍的に高めるのが、販売管理や在庫管理などを担う「基幹システム」との連携です。
受発注データと基幹システムのリアルタイム連動
ECサイトと基幹システムを連携させる最大の効果は、人手を介さないデータのリアルタイムな自動連動です。ECサイトの注文が自動で基幹システムに登録され、在庫情報も常に同期されるため、手入力作業とそれに伴うミスが撲滅されます。
データ統合による経営の高度化
分断されがちな販売、在庫、会計といったデータをECサイトをハブとして統合することで、これまで見えなかった経営に関するインサイト(洞察)を得ることができます。精度の高い販売予測や顧客別の収益性分析が可能となり、勘や経験に頼る経営から、客観的なデータに基づいた「データドリブン経営」へと移行できます。
重複作業や入力ミスを防ぐ自動連携の仕組み
APIやCSV連携による自動化は、非効率な「重複作業」と「入力ミス」を根本から解消します。ECサイトで注文が確定した瞬間、必要なデータが関係する全てのシステムに自動で流れる仕組みを構築します。これにより業務品質が向上し、担当者はより創造的な業務に集中できるなど、組織全体の生産性向上に大きく貢献します。
6. BtoB ECサイト構築を成功に導くパートナー選定のポイント
BtoB ECサイトの構築は、技術力と専門知識を持つ「パートナー」の選定がプロジェクトの成否を左右します。
BtoB領域への専門性と業界知識
パートナー選定で最も重要なのは、BtoB の商習慣に対する深い理解と豊富なシステム導入実績です。自社と同じ業界での構築経験があれば、特有の課題をスムーズに理解し、より現実的な提案が期待できます。
システム連携に関する高い技術力
BtoB ECサイトは、基幹システムなど複数の外部システムと連携して真価を発揮します。パートナーが複雑なシステム間連携を問題なく遂行できる高い技術力を持っているかは、必ず確認すべき項目です。様々なシステムと連携実績が豊富で、知見も深いパートナーを選びましょう。
プロジェクト推進力と長期的な伴走支援体制
ECサイトは作って終わりではなく、公開後も成長させていく必要があります。そのため、開発だけでなく、プロジェクト全体の推進や公開後の運用・保守まで、長期的に伴走してくれるパートナーを選ぶことが成功の鍵です。要望やトラブルに迅速に対応してくれるサポート体制があるかを確認しましょう。
BtoB ECサイトの構築を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
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