◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 取適法の対象取引では、支払期日は検収の完了日ではなく受領日から数え、60日以内に定める。
- 検収は「基準」「期間」「不合格時の扱い」の三つを契約や注文書に先に明記する。
- 検収期間は相場ではなく支払期日から逆算し、みなし検収は支払の起算点と分けて書く。
- 支払期日の到来前に見つかった不適合ならやり直しを求められるので、理由・箇所・再納品と再検収の期限を決めておく。
- 対象かどうかは資本金と従業員数(製造委託等300人、役務提供委託等100人)と委託の類型で確かめ、受領・検収・支払を別々に記録する。
目次

納品を受けたが検収の基準も期限も書かれていないとき、まず何を決めるか
発注側として納品物を受け取ったのに、契約書にも注文書にも合格の基準や返答の期限が書かれていない。
受け入れてよいのか、いつまでに不具合を伝えればよいのか、支払を待ってよいのかで迷う場面です。
取適法の対象取引では、支払期日は検収の完了日ではなく受領日から60日以内に定めます。
検査が終わっていなくても、その日までに支払う必要があります2。
だからこそ、検収の基準・期間・不合格時の扱いを契約や注文書に先に明記します。
検収期間は、支払期日から逆算して決めるのが答えです。
検収・受領・検査・支払の違い
現場では「検収」という言葉が、納品物を受け取り、中身を確かめ、合格として受け入れるまでを一続きで指すことがよくあります。
ところが支払期日の話になると、この一続きを分けて考える必要があります。
取適法について公正取引委員会が示している説明では、支払期日の起算点は「受領日」です。
「検収完了日」ではありません。
受領日は、原則として納品された時点です2。
支払期日は受領日から起算して60日以内に定めることとされています。
定めなかった場合は、受領日そのものが支払期日とみなされます2。
契約に何も書かないまま納品を受けた場合を考えてみます。
発注側は「まだ検収していないから払わなくてよい」と考えていても、法令上はすでに支払期日が来ている、というずれが起こり得ます。
検査は、受け取った物が注文どおりかを確かめる作業です。
検査の進め方によっては、受領日の扱いが変わる場合があります。
納期より前に検査を実施した場合は、検査が終わった時点を受領日としても問題ないとされています2。
一方、検査の途中で納期が来た場合は別の扱いが定められています。
検査を続けているあいだ、起算点を後ろへずらせるわけではありません2。
整理すると、四つの言葉は次のように役割が違います。
受領は、支払期日を数える時計が動き出す点です。
検査は、中身を確かめる作業です。
検収は、その結果を受けて受け入れを決める手続です。
支払は、受領日から数えた期日に行う行為です。
この四つを同じ日付で管理していると、検査が長引いたときに支払だけが期日を越えてしまいます。
なお、ここでいう支払期日の決まりは、取適法の対象となる取引の話です。
対象外の取引では、契約で定めた内容と民法が基準になります。
基準も期限もないまま受け入れたときに起こること
たとえば、継続して部品を発注している相手から納品があったとします。
受入れ担当者は数量だけを数えて倉庫へ入れました。
寸法や外観の確認は後日まとめて行う予定です。
しかし契約書にも注文書にも、どこまで合っていれば合格か、いつまでに結果を返すかは書かれていません。
数日後に寸法のずれが見つかりました。
発注側は不合格だと考え、受注側は受け取った時点で合格だったと考えます。
どちらの言い分にも、拠り所となる書面がありません。
基準がないと、まず社内の判断が揺れます。
同じ程度の傷でも、ある担当者は合格とし、別の担当者は返品を求める、ということが起こります。
受注側から見れば、何を直せば受け取ってもらえるのかが分からず、再納品の準備にも入れません。
期限がない状態も、同じくらい厄介です。
指摘が遅れるほど、その不具合が納品時からあったのか、受け取った後の保管や使用で生じたのかを切り分けにくくなります。
その間も、支払は検収の結論を待たずに受領日から動いています。
取適法の対象取引で支払期日を定めていなければ、受領日が支払期日とみなされます。
合否で揉めているあいだに、支払だけが遅れている状態になりかねません2。
ですから、最初に決めるのは次の三つです。
何をもって合格とするか。
いつまでに結果を返すか。
不合格のときにどうするか。
すでに受け取った納品物については、まず受領日を記録に残し、その日から数えた支払期日を確かめます。
そのうえで、確認する項目と回答日を受注側と書面やメールで取り決めておくと、その後のやり取りの拠り所になります。
次の取引からは、この三つを契約や注文書に先に書いておきます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 受領
- 支払期日を数える起算点になる
- 原則は納品された時点
- 検査
- 注文どおりかを確かめる作業
- 検査中に納期が来ても起算点は後ろへずれない
- 検収
- 検査の結果を受けて受け入れを決める手続
- 支払
- 受領日から60日以内に定めた期日に行う
- 検査が終わっていなくても、その期日までに支払う
検収の基準は契約・注文書にどう明記するか
基準に書く項目
合否の基準は、受け取る側の頭の中にあるうちは基準として働きません。
IPAが示した情報システム開発のモデル契約では、契約時にユーザとベンダが仕様や進め方、検収方法などについて対話し、共通の理解を持つべきだとされています3。
この資料はシステム開発を対象にしたものです。
それでも、検収のやり方まで契約時に合わせておくという考え方は、部品や資材の納入、文書やデザインなどの成果物にも応用できます。
契約や注文書に書く項目は、次のように整理できます。
- 仕様:図面や仕様書の名称と版。
どの版に照らして合否を決めるかを特定します。 - 数量:注文数量との差をどう扱うか。
過不足の許容や、分納の場合の数え方も含めます。 - 品質:寸法の許容差、外観、性能など、合格とする水準。
測れるものは測れる形で書きます。 - 試験条件:誰が、どこで、何を使い、どのデータや手順で確かめるか。
- 確認方法:全数を見るか抜き取りか、結果をどの記録に残すか、誰が合否を判定するか。
このうち判断が分かれやすいのは、試験条件と確認方法です。
仕様と品質の水準が書いてあっても、測る道具や試験に使うデータが違えば、結果は変わります。
成果物の検収では、受注側の環境では動いたのに発注側の環境では動かない、という食い違いがよく問題になります。
これは、どちらの環境で確かめるかを決めていないところから生まれます。
物品の場合は、抜き取り検査で一つ不良が見つかったときの扱いが問題になります。
ロット全体を不合格にするのか、不良品だけを返すのかを決めておかないと、合否の通知そのものが揉める原因になります。
仕様の版も、見落としやすい項目です。
取引の途中で仕様書を改めた場合、旧版に基づいて作られた納品物を新版で検査すれば、不合格になります。
注文書ごとにどの版の仕様に基づくかを書いておけば、それが不具合なのか仕様変更なのかを後から区別できます。
この区別は、検収を通った後に見つかった不具合の扱いを決めるときにも効いてきます。
注文書と基本契約のどちらに書くか
同じ相手と繰り返し取引をしている場合、検収の手続を注文書ごとにすべて書くのは現実的ではありません。
そこで、取引の型が変わらない部分は取引基本契約に、品目や案件ごとに変わる部分は注文書や仕様書に、と分けて書く方法があります。
基本契約に置くのは、どの注文にも共通する手続です。
具体的には、検収期間の数え方、合否の通知方法と宛先、期間内に通知がない場合の扱い、不合格時の修正・再納品の手続、検収後の不具合の扱いなどです。
注文書には、品名・数量・納期・支払期日に加えて、その注文で照らす仕様書の版や、品目に固有の試験条件を書きます。
単発の取引で基本契約を結ばない場合は、注文書と仕様書の側に手続まで書き込むことになります。
二つの書面に分けて書くときは、内容が食い違った場合にどちらを優先するかを基本契約に書いておきます。
たとえば、担当者が注文書の備考欄に個別の検収期間を書き込み、それが基本契約の期間と違っていた、ということは起こり得ます。
優先順位が決まっていれば、その注文だけの特例として扱うのか、記載の誤りとして直すのかを判断できます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引基本契約(どの注文にも共通する手続)
- 検収期間の数え方
- 合否の通知方法と宛先
- 期間内に通知がない場合の扱い
- 書面が食い違った場合の優先順位
- 注文書(案件ごとの条件)
- 品名・数量・納期・支払期日
- 照らす仕様書の版
- 仕様書(品目ごとの合否基準)
- 品質の水準と許容差
- 試験条件
- 確認方法と判定者
検収期間は何日が妥当か。みなし検収は支払期日から逆算して決める
受領日から60日の内側に収める
検収期間を何日にするかは、他社の相場を探すより、自社の支払期日から逆算して決めるほうが確かです。
検査に必要な日数は、品目の数や試験の手間、検査設備の空き具合で大きく変わります。
一律に妥当な日数を示せるものではありません。
一方で、取適法の対象取引には動かせない上限があります。
公正取引委員会は、検査に60日を超える期間がかかる情報成果物の例について回答しています。
検査をするかどうかにかかわらず、受領後60日以内に定めた支払期日までに代金を支払う必要がある、というものです2。
また、納期の時点で発注側の支配下にある場合は、検査が終わっていなくても納期が起算日になるとしています2。
つまり、検査が長引いても支払期日を後ろへずらす理由にはなりません。
逆算は、次の順に考えると組み立てやすくなります。
まず、受領日から60日以内のどこに支払期日を置くかを決めます。
次に、そこから経理が支払を準備するのに要する期間を差し引きます。
社内の締め日や支払日の運用で必要になる日数がこれに当たります。
残った期間の中に、検収期間と、不合格だった場合にやり直しを受けて確かめ直す余地を収めます。
この順で考えると、どこを動かせるかが見えてきます。
たとえば検収期間を長く取りたいなら、支払処理の段取りを短くするか、検査の一部を納期前に済ませるかを検討することになります。
検査に時間がかかる成果物では、納品後に検査を始めるのではなく、納期より前に検査を行う段取りも選択肢になります。
公正取引委員会は、納期より前に検査を実施した場合は、検査が終わった時点を受領日としても問題ないとしています2。
ただし、検査の途中で納期が来た場合は別の扱いになります2。
納期前に検査を終えられる日程を受注側と組めることが前提です。
受領日の扱いは場面によって分かれるので、下の表に並べます。
みなし検収を置くときの調整点
みなし検収とは、決めた検収期間のうちに発注側が合否を知らせなければ、合格したものとみなす取り決めです。
受注側にとっては、結果が出ないまま待たされる状態を終わらせる仕組みです。
発注側にとっては、期間内に結論を出すことを自分に課す仕組みでもあります。
支払期日が受領日から動く以上、検収だけがいつまでも終わらない状態は、発注側にとっても得になりません。
条項を置くときに調整するのは、主に次の点です。
- 期間の起算点:受領日から数えるのか、受注側からの納品の連絡を受けた日から数えるのか。
- 通知の方法と宛先:書面、メール、受発注の仕組み上の記録など、何をもって通知したとするか。
- 通知の中身:不合格とする場合に、理由と該当箇所をどこまで示すか。
- 一部だけ確かめられた場合:期間内に一部の項目しか確認できなかったときの扱い。
気を付けたいのは、みなし合格の日を支払の起算点として書いてしまうことです。
取適法の対象取引では、支払期日は受領日から数えます。
検収期間の満了日から支払期日を数える書き方にすると、法令上の起算点と食い違うおそれがあります。
みなし検収は合否を確定させるための条項、支払期日は受領日から決める条項、と役割を分けて書くほうが整合を取りやすくなります。
なお、みなし検収の条項がどこまで効力を持つかは、取引の事情や条項の書き方によって判断が分かれ得ます。
期間の長さが現実に検査できる長さかどうかも問われるところです。
条文の案ができた段階で、法務担当や弁護士に確かめておくと安全です。
| 場面 | 起算点となる日 | 支払期日との関係 |
|---|---|---|
| 納品を受けてから検査する | 納品された日(受領日) | 検査の終了を待たず、受領日から60日以内に定めた期日までに支払う |
| 納期より前に検査を実施した | 検査が終わった時点を受領日としてもよい | その受領日から60日以内に定めた期日までに支払う |
| 納期に発注側の支配下にあり、検査が終わっていない | 納期 | 検査が終わっていなくても納期から数える |
| 支払期日の到来前に不適合が見つかり、やり直しをさせる | 当初の受領日からの60日に縛られない | やり直し後の扱いを契約と公正取引委員会の説明で確かめる |
| 請求書がまだ届いていない | 受領日 | 請求書の有無にかかわらず、定めた期日までに支払う |
▼ 図の内容を文字で読む
- 支払期日を置く
- 受領日から60日以内のどこに置くかを決める
- 支払の準備期間を引く
- 経理が支払を準備するのに要する期間を差し引く
- 社内の締め日や支払日の運用で必要な日数
- 検収期間を収める
- 残った期間の中に検収期間を置く
- やり直しの余地を残す
- 不合格の場合に、やり直しを受けて確かめ直す余地を収める
不合格のとき、修正・再納品・代金の扱いをどう定めておくか
支払期日の到来前に不適合が見つかった場合
検収期間のうちに不適合が見つかった場合、支払はどうなるのでしょうか。
公正取引委員会は、支払期日が来る前に不適合などが見つかり、受注側にやり直しをさせる場合は、当初の受領日から60日以内に代金を支払う必要はないとしています2。
この説明には、条件が二つ含まれています。
一つは、支払期日が来る前に見つかっていることです。
支払期日を過ぎてから見つかった場合は、同じ扱いにはなりません。
だからこそ、検収期間を支払期日より前に終える設計が意味を持ちます。
もう一つは、不適合などが実際にあることです。
何が不適合かは、契約や注文書に書いた基準に照らして示すことになります。
基準が書いてあれば、どの項目のどの値が外れているかを根拠に不合格を伝えられます。
基準がなければ、それが不適合なのか発注側の好みなのかで話が止まってしまいます。
やり直し後の納品物について支払期日をどう数えるかは、取引の内容によって確認が必要な部分です。
取適法の対象取引であれば、公正取引委員会の説明で確かめたうえで、やり直し後の支払期日の決め方を契約にも書いておきます。
そうすれば、経理が支払日を登録し直すときに迷わずにすみます。
再納品と再検収の期限の書き方
不合格の通知を出した後のことも、決めておく必要があります。
受注側がいつまでに直して納め直し、発注側がいつまでに確かめ直すのかが決まっていないと、やり取りが何往復もして終わりが見えなくなります。
修正・再納品・再検収は一巡で終わらないこともあるので、何度目かの不合格をどう扱うかまで含めて書いておきます。
条項の骨組みは、たとえば次のような書き方になります。
日数は品目と検査の手間に合わせて当事者が決める部分なので、ここでは○で示します。
「発注者は、検査の結果不合格と判断したときは、検収期間内に、不合格の理由及び該当箇所を示して受注者に通知する。
受注者は、通知を受けた日から○日以内に修正し、又は代品を納入する。
発注者は、再納入を受けた日から○日以内に再検査を行い、その結果を受注者に通知する。
再検査においても不合格となった場合の取扱いは、当事者が協議して定める。」
この骨組みで判断が分かれやすいのは、三つの点です。
一つ目は、再検査の期間を当初の検収期間と同じにするか、短くするかです。
指摘した箇所だけを確かめるなら短くできますが、修正が他の箇所に影響しやすい成果物では、全体を見直す期間が要ります。
二つ目は、不合格品の引取りや代品の送付にかかる費用をどちらが負担するかです。
三つ目は、再検査でも不合格だった場合に、さらにやり直しを求めるのか、代金の減額や契約の解除を協議するのかです。
最後の点は法的な効果を伴うので、法務担当と相談しながら書きます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 検収
- 契約や注文書に書いた基準に照らして合否を判断する
- 不合格の通知
- 不合格の理由と該当箇所を示す
- 修正・再納品
- 通知から○日以内(当事者で決める)
- 引取りや代品送付の費用負担
- 再検収
- 再納入から○日以内(当事者で決める)
- 再び不合格の場合の扱い(検収へ戻る)
検収後に見つかった不具合は、取引の型ごとにどう定めるか
物品納入の場合
検収を通ったからといって、すべての不具合が出尽くしたとは限りません。
抜き取りで確かめた物品なら、検査しなかった個体に不良が含まれていることがあります。
部品であれば、組み付けて使い始めてから初めて分かる不具合もあります。
こうした検収後の不具合の扱いを契約に書いておかないと、二つの主張がぶつかります。
受注側は「検収済みだから責任はない」と言い、発注側は「納品時からあった不具合だ」と言う、という形です。
民法にも、引き渡した物が契約の内容に合わない場合の定めがあり、契約不適合と呼ばれます。
ただし、通知の期限や請求できる内容は、条文と契約の定めを合わせて読む必要があります。
期間を思い込みで契約書に書くと誤ります。
契約を作る段階で、法務担当と条文を確かめながら決めます。
物品納入の契約に書いておきたいのは、次のような点です。
- 不具合を知らせる期間:検収から数えるのか、納品から数えるのか。
- 窓口:発注側は購買か品質管理か、受注側は営業か品質保証か。
- 対応内容:交換、修理、代金の減額などのうち、どれをどの順で求めるか。
- 特定に必要な情報:納品書の番号、ロット番号、製造日など。
窓口と特定情報は軽く見られがちですが、実務では差が出ます。
たとえば、不具合を見つけた現場の担当者が受注側の営業担当へ直接電話し、購買部門が知らないまま交換品が届いたとします。
こうなると、受領記録と支払の整合が取れなくなります。
どの納品のどのロットかが記録から追えれば、同じロットの他の在庫を止めるかどうかもすぐに判断できます。
成果物(業務委託)の場合
文書、デザイン、ソフトウェアなどの成果物では、検収後の不具合の線引きがさらに難しくなります。
使い始めてから「この動きはおかしい」と分かったとき、問題になるのはそれが何に当たるかです。
仕様書どおりに作られていない不具合なのか、仕様書にない新しい要望なのかによって、受注側に直してもらう根拠が変わります。
ここで効いてくるのが、検収の基準に書いた仕様書の版です。
照らした仕様書が特定されていれば、その記載と違う動きは不具合、記載にない動きは追加の依頼、と切り分けられます。
IPAのモデル契約が、契約時に仕様や検収方法を対話で共有しておくべきとしているのも、こうした食い違いを後に残さないためと読めます3。
成果物の契約には、不具合を知らせる期間と窓口に加えて、次の二点を書いておきます。
一つは、不具合を伝えるときに添える情報です。
発生した手順、使っていた環境、画面や出力の記録などがこれに当たります。
もう一つは、修正後に誰がどの範囲を確かめ直すかです。
修正のたびに全体を検収し直すのか、修正箇所と影響する範囲だけを見るのかを決めておかないと、直したはずの箇所の確認で再び揉めることになります。
物品と成果物のどちらの場合も、ここで示した書き分けは法的な結論ではありません。
揉めやすい点を先回りして書面に置くための整理です。
民法の定めとの関係や、特約がどこまで認められるかは、取引ごとに専門家と確かめておきます。

取適法の対象かを確かめ、検収を社内手順と支払処理に落とす
対象取引かどうかの確認
ここまでの支払期日の話は、取適法の対象となる取引を前提にしています。
取適法は、下請法を改めて2026年に施行された法律です。
それまでの資本金の基準に加えて、従業員数の基準が設けられました1。
資本金の基準に当たらない場合でも、従業員数の基準に当たれば対象になります1。
従業員数の基準は、製造委託等では300人、役務提供委託等では100人とされています1。
どちらの数字を使うかは、取引がどの委託の類型に当たるかで決まります。
物の製造を頼む取引なのか、役務を頼む取引なのかで見る基準が変わります。
そのため、まず取引の類型を確かめます。
そのうえで、発注側と受注側の規模をどう当てはめるのかを、資本金の基準の具体的な額とあわせて公正取引委員会の資料で確認します。
対象外の取引であれば、支払期日は契約で定めた内容と民法に従って決まります。
それでも、検収の基準・期間・不合格時の扱いを書いておく理由は変わりません。
合否の判断が揺れること、指摘が遅れること、支払と検収の日付がずれることは、法律の対象かどうかにかかわらず起こるからです。
検収記録と支払処理の社内手順
契約に書いた内容は、社内の手順に落とし込んで初めて守られます。
特に分けて管理したいのが、受領日と検収日です。
支払期日は受領日から数え、合否は検収で決めます。
この二つの流れを一つの日付で管理していると、検収が遅れた分だけ支払処理も遅れます。
手順の例を順に並べると、次のようになります。
- 納品を受けた担当者が、受領日と納品書の番号を記録する。
- 購買または経理が、注文書に書いた支払期日を受領日に結び付けて登録する。
- 検収担当へ、検収期間の終わる日を添えて検査を依頼する。
- 検収担当が合否を記録し、不合格なら理由と該当箇所を添えて受注側へ通知する。
- 不合格の場合は、やり直しの依頼日と再納品の受領日を記録する。
- 経理は、検収の状況ではなく、登録した支払期日に基づいて支払を準備する。
請求書の扱いも、この流れに組み込みます。
公正取引委員会は、請求書が提出されているかどうかにかかわらず、受領後60日以内に定めた支払期日までに代金を支払う必要があるとしています2。
請求書の到着を支払処理の開始条件にしている会社では、請求書が届かないまま期日が近づいていても気付きにくくなります。
受領日から登録した支払期日の一覧を経理が見られるようにしておくと、早めに受注側へ請求書の提出を促せます。
受領・検収・支払の記録を分けておくと、受領日を後から探して転記し直す手間が減ります。
検収済みの連絡を待ってから支払日を決め直す確認も要らなくなります。
残るのは、合否の判断そのものと、不合格時の受注側とのやり取りです。
そこを基準と期限に沿って進められるかどうかは、契約と注文書にどこまで書いてあるかで決まります。
検収期間を支払期日の内側に収められるかどうかは、自社の注文書・受領記録・支払処理が実際にどうつながっているかを見ないと判断しにくいためです。
いまの受発注の流れのどこで受領日と検収日が混ざっているか、検収の期限をどこに置けるかを整理できます。無料相談で要件を整理する
検収について契約・注文書に書くことの点検表
契約や注文書を作るときに、合否の基準から支払・不具合対応へと書き進める順に並べた。
- 合否の基準:照らす仕様書の版、数量、品質の水準、試験条件、確認方法と判定者
- 書く場所:共通の手続は基本契約、品目ごとの基準は注文書・仕様書。食い違ったときの優先順位も書く
- 支払期日:受領日から60日以内のどこに置くか(取適法の対象取引)
- 検収期間:支払期日から支払処理に要する日数を差し引いた内側に収める
- みなし検収:起算点、通知の方法と宛先、通知の中身。支払の起算点とは分けて書く
- 不合格時:理由と該当箇所の通知、修正・再納品と再検収の期限、再び不合格の場合の扱い、費用負担
- 検収後の不具合:知らせる期間、窓口、対応内容、納品やロットを特定する情報

取適法の対象外の取引では、支払期日は契約で定めた内容と民法に従って決まるため、支払期日の項目はその前提で書き直す。
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 支払期日の起算点 | 受領日(検収完了日ではない)。取適法の対象取引では受領日から60日以内に定める |
| 合否の基準 | 仕様書の版・数量・品質・試験条件・確認方法を契約や注文書に書く |
| 検収期間 | 相場ではなく、支払期日から支払処理の日数を差し引いた内側に置く |
| みなし検収 | 合否を確定させる条項として置き、支払の起算点にはしない |
| 不合格時 | 支払期日前の不適合ならやり直しが可能。理由・箇所・再納品・再検収の期限を書く |
| 検収後の不具合 | 期間・窓口・対応内容・特定情報を契約に書く。民法の定めは条文で確かめる |
| 対象の確認 | 資本金と従業員数(製造委託等300人、役務提供委託等100人)、委託の類型 |
取引先や品目が増えるほど、受領日・支払期日・検収結果を取引ごとに手作業で追い続けるのは負担が大きくなるためです。 受発注の業務の中で、受領・検収・支払の記録をどこに残し、誰が確認する形が自社の運用に合うかを確かめられます。
よくある質問
検収と受領は同じ意味ですか。支払期日はどちらから数えるのですか
同じではありません。
取適法の対象取引で支払期日の起算点になるのは受領日で、原則として納品された時点です2。
検収は、検査の結果を受けて受け入れを決める手続です。
例外として、納期より前に検査を実施した場合は、検査が終わった時点を受領日としても問題ないとされています。
ただし、検査中に納期が来た場合は別の扱いになります2。
検査に60日以上かかる成果物は、検査が終わってから支払ってよいですか
取適法の対象取引では、検査の終了を待つことはできません。
検査をするかどうかにかかわらず、受領後60日以内に定めた支払期日までに支払う必要があります。
納期に発注側の支配下にある場合は、検査が終わっていなくても納期が起算日になります2。
検査に時間がかかる場合は、納期前に検査を済ませる段取りや、納品を分けて一度に検査する量を減らす方法を、受注側と相談して契約に落とし込みます。
請求書が届かない場合、支払期日は延びますか
延びません。
請求書の提出の有無にかかわらず、受領後60日以内に定めた支払期日までに代金を支払う必要があります2。
受領日から登録した支払期日を経理が見られるようにしておけば、請求書が届いていない取引に早めに気付けます。
注文書だけで検収基準を決めてよいですか。基本契約に書くべきですか
単発の取引なら、注文書と仕様書に基準と手続を書く形でも足ります。
同じ相手と繰り返し取引をする場合は、分けて書くと管理しやすくなります。
検収期間・通知方法・不合格時の手続などの共通部分は基本契約に、品目ごとの仕様の版や試験条件は注文書・仕様書に書きます。
分けて書くときは、食い違った場合の優先順位を基本契約に書いておきます。
不適合が見つかって再納品を求める場合、支払期日はどう扱いますか
支払期日が来る前に不適合が見つかり、やり直しをさせる場合は、当初の受領日から60日以内に代金を支払う必要はないとされています2。
支払期日を過ぎてから見つかった場合は、同じ扱いにはなりません。
やり直し後の支払期日をどう数えるかは、公正取引委員会の説明で確かめたうえで、契約にも書いておきます。
自社が取適法の対象かどうかは、何を見て判断しますか
取引当事者の資本金と従業員数、そして委託の類型を見ます。
資本金の基準に当たらない場合でも、従業員数の基準に当たれば対象になります。
従業員数の基準は、製造委託等では300人、役務提供委託等では100人です1。
どちらの当事者の数をどう当てはめるかと、資本金の基準の具体的な額は、公正取引委員会の資料で確認します。
- 1 出典:公正取引委員会・中小企業庁「下請法・下請振興法が取適法・振興法に変わりました(取適法特設ページ)」(2026年)
- 2 出典:公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」(2026年)
- 3 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」(2020年)
画像の出典元
- Two professionals discussing documents in a modern office with a red desk./Photo by RDNE Stock project on Pexels