◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 欠品と引当の競合は、在庫が販売可能から確保済みへ移る時点と、その数が各販売経路へ届くまでの時間差で起きる。
- 引当の時点や安全在庫の持ち方は製品ごとの仕様なので、まず自社のシステムで販売可能数がどの時点で減るかを確かめる。
- 欠品注文を一件ずつ帳簿と実在庫に照合し、記録の誤りは運用の修正へ、反映の時間差はシステム側の限界候補へ振り分ける。
- 入れ替えや機能追加を考えるのは、記録を直しても時間差による欠品が残り、その原因に当たる機能が現行にないときである。
- 欠品が出た前払いの注文では、承諾の有無や引渡時期を書面で通知し、承諾されなければ返金を遅らせない。
目次

欠品と引当競合は、注文のどの時点で起きるのか
在庫があるはずの商品で注文を受けたのに、出荷の段になって足りないと分かり、お客様へ取消の連絡をしている。
自社サイトとモールで同じ商品を売っていて、引き当てた数と棚の数が合わない。
受注管理システムで起きるこうした欠品や引当の競合は、在庫が「販売可能」から「確保済み」へ移る時点と、その数が各販売経路へ届くまでの時間差で生じます。
まず自社のシステムでその時点がどう決まっているかを確かめ、設定で動かせる部分、入荷や返品の記録など運用で直す部分、機能の限界を切り分けます。
それでも出た欠品は、承諾の確認と返金を特定商取引法に沿った手順にしておきます。
在庫の状態区分(販売可能・確保済み・入荷中)
欠品の原因を追うとき、最初につまずくのは「在庫数」という言葉です。
倉庫の棚にある数、いま売ってよい数、すでに注文で押さえられた数は、システムの中では別々の状態として持たれていることがあります。
受注担当者が画面で見ている数と、倉庫担当者が棚で数えた数が違う状態を指していれば、どちらも正しいのに話が合いません。
具体例として、Shopifyの在庫モデルを見てみます。
Shopifyでは、在庫は入荷中(incoming)、販売可能(available)、確保済み(committed)、予約(reserved)、破損(damaged)、安全在庫(safety_stock)、品質確認(quality_control)といった状態に区分され、これらは互いに重なりません1。
手元在庫(on_hand)は、このうち入荷中を除いた状態の合計です1。
区分が互いに重ならないということは、棚に並んでいる数がそのまま売れる数ではない、ということです。
確保済み、破損、安全在庫、品質確認に置かれた分は手元にあっても販売可能数には入りません。
逆に入荷中の在庫は、仕入先から届く予定があっても物理的にはまだ拠点にないので、販売可能数にも手元在庫にも入りません。
入荷予定を見て「もうすぐ入るから受けてしまおう」と判断した注文が欠品になりやすいのは、この区分の外で受注しているからです。
ここで挙げた区分はShopify一社の仕様です。
他の受注管理システムや在庫管理システムでは、状態の名前も分け方も製品ごとに異なります。
自社のシステムで見ておきたいのは、販売可能数がどの状態を差し引いて計算されているか、入荷予定を販売可能数に含める設定があるか、という二点です。
欠品の調査で数を突き合わせるときも、比べる二つの数が同じ状態を指しているかを先にそろえておくと、無駄な照合が減ります。
確保済みになる時点と、その後に調整できないもの
状態の区分が分かると、次に気になるのは「いつ販売可能から確保済みへ移るのか」です。
Shopifyでは、確定済みで未出荷の注文に対して在庫が確保済みになり、その分だけ販売可能数が減ります1。
下書き注文で在庫を引き当てた場合も、その時点で確保済みになります1。
欠品や引当の競合が入り込むのは、この流れの継ぎ目です。
たとえば、自社サイトとモールの両方で同じ商品の最後の一点を出している店を考えます。
自社サイトで注文が確定して販売可能数が減っても、その減った数がモール側に届くまでの間は、モールではまだ一点残っているように見えています。
その間にモールで注文が入れば、二件の注文が同じ一点を取り合い、どちらか一方が欠品になります。
受注担当者が気づくのは、出荷準備で引当を確かめたときや、倉庫から「足りない」と連絡が来たときです。
もう一つ押さえておきたいのは、この文書が説明しているのは確定済みの注文と下書き注文の扱いだという点です。
購入手続きの途中で在庫を押さえるかどうかは書かれていません。
購入手続き中の在庫の扱いは、Shopifyを使っている場合でも別に確かめる必要があり、他製品ならなおさら製品ごとの仕様になります。
下書き注文の扱いは、電話や卸先からの注文を手で入力している現場にとって意味があります。
Shopifyの場合、手入力の注文を下書き注文として作り在庫を引き当てれば、その時点で販売可能数が減り、ECで同じ在庫が売れることを防げます。
反対に、下書きを作らずに表計算ソフトやメモで「この分は取り置き」と管理していると、システム上は販売可能のまま残り、他の経路で売れてしまいます。
手で受けた注文をどの操作で確保扱いにしているかは、欠品の調査で見落とされやすい点です。
確保済みになった後の扱いにも注意がいります。
Shopifyでは、Admin APIから確保済みの在庫を直接調整したり移動したりすることはできません1。
この仕様から読み取れるのは、確保済みの数がおかしいと感じても、数を書き換えて帳尻を合わせるやり方は取れないということです。
確保は注文に結び付いているので、取消したはずの注文が残っていないか、出荷済みなのに出荷処理が終わっていない注文がないかなど、ずれを生んでいる注文の側を探すことになります。
| 状態 | 手元在庫に含まれるか | 販売可能数に入るか |
|---|---|---|
| 販売可能(available) | 含まれる | 入る |
| 確保済み(committed) | 含まれる | 入らない |
| 予約(reserved) | 含まれる | 入らない |
| 破損(damaged) | 含まれる | 入らない |
| 安全在庫(safety_stock) | 含まれる | 入らない |
| 品質確認(quality_control) | 含まれる | 入らない |
| 入荷中(incoming) | 含まれない | 入らない |
▼ 図の内容を文字で読む
- 自社サイトで注文が確定し、販売可能数が減る
- 減った数がモール側に届くまで、モールでは一点残っているように見える
- その間にモールで注文が入る
- 二件の注文が同じ一点を取り合う
- どちらか一方が欠品になる
引当のタイミングと在庫の持たせ方で、欠品と競合はどう変わるのか
安全在庫の区分を使ったオーバーセル防止
前の節の流れで見たとおり、欠品が出るのは、販売可能数が実際に渡せる数より多く見えている瞬間があるからです。
設定で手を打ちやすいのは、販売可能数に入れない分をあらかじめ取り分けておくことです。
Shopifyには、オーバーセル(在庫を超えて注文を受けてしまうこと)を防ぐための区分として安全在庫(safety_stock)が用意されています1。
区分は互いに重ならないので、安全在庫に置いた分は販売可能数に入りません1。
販売経路へ届く数が実在庫より少し低く保たれるため、反映に時間差があっても、最後の在庫を二つの経路が同時に売る場面を減らせます。
ただし、安全在庫が効くのは、ずれが小さく、ある程度予測できるときです。
入荷の登録漏れなどで帳簿そのものが大きく狂っている場合、安全在庫を厚くしても欠品は止まらず、むしろ原因が見えにくくなります。
また、取り分けた分は売れる数から引かれるので、欠品を減らす代わりに販売の機会を手放すことになります。
どこまで取り分けるかは、欠品が実際に起きた商品と販売経路の記録を見て商品ごとに決め、取り分けた分が売れないまま残っていないかも合わせて見直すのが現実的です。
安全在庫にあたる設定の名前や置き場所は製品によって異なり、同じ目的の設定があるかどうかも製品ごとに確かめる必要があります。
見つからない場合は、販売経路へ出す数を手で抑える運用で代わりにすることになりますが、手作業で抑えた数は更新が遅れやすい点も頭に置いておきます。
自社システムで引当時点を選べるかの確認項目
安全在庫が「どれだけ取り分けるか」の話だとすれば、もう一つの調整点は「いつ押さえるか」です。
引当の時点を受注確定時、入金確認時、出荷指示時のどこに置くかで、欠品の出方は変わります。
受注確定の時点で押さえれば、後から来た注文が同じ在庫を取ることはなくなります。
その代わり、入金されないまま放置された注文も在庫を押さえ続けるので、販売可能数が実際より少なく見え、売れるはずの商品が品切れ表示になります。
入金確認の時点で押さえる場合は、未入金の注文の分が販売可能に残るため、入金された時点で在庫が足りないという欠品が起きえます。
出荷指示の時点まで遅らせると、受注から出荷指示までの間に入った注文がすべて同じ在庫を見ることになり、取り合いの幅はさらに広がります。
Shopifyの文書が示しているのは、確定済みの注文と下書き注文で在庫が確保されるところまでです。
入金後に引き当てるといった別の時点を選べるかどうかは、製品ごとの仕様として確かめることになります。
自社のシステムについて、次の点を画面やマニュアル、ベンダーへの問い合わせで確かめておくと、どこまで設定で動かせるかが見えてきます。
- 注文のどの状態(受注確定・入金確認・出荷指示)で販売可能数が減るか
- その時点を店舗側で変えられるか、商品や販売経路ごとに変えられるか
- 未入金の注文が在庫を押さえたままになる期間と、取消したときに販売可能へ戻る処理
- 安全在庫のように、販売可能数に入れない区分を持てるか
- 電話や卸先からの手入力の注文を、どの操作で確保扱いにできるか
答えによって、次の打ち手が変わります。
引当の時点が固定されていて変えられないなら、未入金の注文を取り消す期限を決めるなど、運用で補うことになります。
時点を選べるなら、欠品として困っているのが「入金後に足りない」型なのか「最後の一点の取り合い」型なのかを見て選びます。
どちらの型が多いのかを知るには、次の節の照合が役に立ちます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 効くとき
- ずれが小さく、ある程度予測できる
- 反映に時間差があっても、最後の在庫の同時販売を減らせる
- 効かないとき
- 入荷の登録漏れなどで帳簿そのものが大きく狂っている
- 厚くしても欠品は止まらず、原因が見えにくくなる
- 引き換えに手放すもの
- 取り分けた分は売れる数から引かれる
- 欠品を減らす代わりに販売の機会を手放す
設定や運用の見直しで減らせる範囲と、システム側の限界はどこか
欠品注文を一件ずつ照合する切り分け手順
引当の時点と安全在庫を見直しても、欠品が減らないことがあります。
そのとき原因が設定にあるのか、記録の運用にあるのか、システムの仕組みにあるのかを分けないまま入れ替えを決めると、新しいシステムでも同じ欠品が起きかねません。
運用の問題は、システムを替えても一緒に移ってくるからです。
切り分けの進め方として、編集部では欠品になった注文を一件ずつ照合する方法を勧めています。
件数をまとめて集計すると、記録の誤りによる欠品と、反映の時間差による欠品が同じ数字に混ざってしまうからです。
一件ずつ見れば、特定の商品や特定の販売経路、特定の拠点に偏っているかどうかも見えてきます。
手順の中で一番手間がかかるのは、帳簿が正しいのに欠品した注文について、どの時刻にどの経路へ数が届いたかを並べる段階です。
ここは在庫の変更履歴や連携の記録が残っていなければ確かめられません。
自社のシステムで、在庫数がいつ、どの操作や連携で変わったかを後から見られるかどうかは、切り分けを始める前に確かめておきたい点です。
履歴が見られないなら、それ自体が「原因を追えない」というシステム側の弱点として、後の判断材料になります。
記録誤りが原因のとき・反映の時間差が原因のとき
照合で帳簿と実在庫がずれていたなら、原因は記録の側にあります。
帳簿のずれは棚卸の数え間違いだけでなく、入荷したのに登録していない、拠点間で移動したのに出した側だけ記録した、返品を検品せずに販売可能へ戻した、といった記録の扱いからも生まれます。
こうした原因は運用で直せる範囲です。
誰がどの画面で記録するかを決め、入荷の検品と登録を同じ流れの中で終わらせるといった見直しで、帳簿が実在庫から離れていく入口を減らせます。
返品の扱いは、在庫の区分を使うと整えやすくなります。
Shopifyでは破損や品質確認といった区分が用意されているので1、戻ってきた商品をいったん品質確認に置き、検品が済んでから販売可能へ移すという順にできます。
検品前の返品が販売可能に入ってしまうと、売れない商品で注文を受けることになるので、返品の多い商品では効き目が見えやすい見直しです。
ずれが確保済みの側にある場合は、前の節で触れたとおり、数を直接書き換えるのではなく、ずれを生んでいる注文の処理を正すことになります。
取消の処理が途中で止まっている注文や、出荷したのに出荷処理を済ませていない注文がないかを見ていきます。
一方、帳簿は正しく、実在庫とも合っているのに欠品したなら、原因は反映の時間差か、同じ在庫を同時に処理したことにあります。
自社サイトで売れた数がモールへ届く前にモールでも売れた、二人の担当者がほぼ同時に同じ在庫を手で引き当てた、といった場面です。
安全在庫で余白を持たせれば当面の欠品は減らせますが、時間差そのものはシステムの連携の方式で決まるため、運用の工夫では縮められません。
ここで見つかった欠品が、システム側の限界の候補になります。
両方の原因が混ざっているときは、記録の誤りから先に直すほうが判断を誤りにくくなります。
帳簿が狂ったままでは、時間差による欠品がどれだけあるのかを正しく数えられないからです。
記録を直してもなお時間差による欠品が残るなら、それが次の節で扱う入れ替えや機能追加を考える理由になります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 運用で直せる範囲
- 入荷したのに登録していない
- 拠点間で移動したのに出した側だけ記録した
- 返品を検品せずに販売可能へ戻した
- 設定で動かせる範囲
- 引当の時点
- 安全在庫で余白を持たせる
- システム側の限界候補
- 反映の時間差
- 同じ在庫を同時に処理したこと
販売経路・拠点・連携の条件別に、改善と入れ替えのどちらを選ぶか
共通の四つの軸で見る確認表
前の節で記録の誤りが中心だと分かったなら、入れ替えよりも運用の修正が先です。
ここから考えるのは、記録を直しても帳簿が正しいまま欠品や取り合いが残る場合に、いまのシステムの見直しで足りるのか、入れ替えや追加が必要なのか、という判断です。
この判断は、自社の条件によって重みが変わります。
販売経路が一つで在庫拠点も一つなら、同じ在庫を見る窓口が限られるので、反映の時間差が欠品につながる場面は少なくなります。
販売経路が増えると、同じ在庫を見る窓口が増え、数が届くまでの時間差が取り合いにつながりやすくなります。
拠点が増えると、どの拠点の在庫で注文を受けるかの決まりが必要になります。
基幹システムと連携していれば、どのシステムの在庫数を正とするかが問題になります。
条件が違っても、確かめる軸はそろえておくと比べやすくなります。
編集部では、次の四つの軸で現行のシステムと候補を見ることを提案しています。
- 引当の時点を選べるか
- 販売経路ごとに在庫を配分できるか
- 複数拠点の割当ルールを持てるか
- 外部モールへの在庫反映の方式(どのきっかけで、どの数を送るか)
表の中で判断が分かれやすいのは、拠点と経路の扱いです。
Shopifyでは在庫数量をロケーション(拠点)ごとに取得でき、複数の倉庫や販売チャネルの在庫と注文データを一元化できるとされています1。
ただし、同じ文書には、販売経路ごとに在庫を取り分けて配分する機能があるかどうかは書かれていません。
拠点ごとに数を持てることと、経路ごとに在庫を配分できることは別の機能です。
データとして数が分かれて見えていても、それを経路へ配分して出す仕組みがあるとは限らないので、自社の製品でも両者を分けて確かめます。
表を埋めたら、現行で「できない」軸が、前の節で見つけた欠品の原因に当たるかどうかを見ます。
たとえば反映の時間差による取り合いが残っているのに、現行では経路ごとの配分も反映方式の変更もできないなら、それは入れ替えや機能追加を考える理由になります。
逆に、できない軸があっても、その軸に関わる欠品が実際には起きていないなら、それだけで入れ替える理由にはなりません。
候補の製品を比べるときも、同じ四つの軸で埋めておくと、宣伝の言葉ではなく自社の欠品の原因に照らして比べられます。
移行で確認する作業
入れ替えを決めた後にも、欠品の芽は残ります。
移行の途中は、古いシステムと新しいシステムの両方が在庫に関わるため、どちらの数で注文を受けるかがあいまいになりやすいからです。
移行で確かめておきたい作業は、主に次のとおりです。
- 在庫データの移行:旧システムの状態区分が、新システムのどの区分に当たるかを対応付ける
- 並行稼働:両方のシステムが動いている間、どちらで引き当てるかを決める
- 連携の作り直し:モール、基幹システム、倉庫とのつなぎ方と、在庫数を送るきっかけを決め直す
このうち見落とされやすいのが、状態区分の対応付けです。
名前が同じ「引当済み」でも、旧システムでは入金後に付き、新システムでは受注確定で付くといった定義の違いがあれば、移行した直後から販売可能数がずれます。
また、Shopifyのように確保済みの在庫を直接調整できない仕様の場合1、確保済みの数だけを数字で書き込むやり方は取れません。
移行の時点で未出荷の注文をどう扱い、どちらのシステムで出荷まで処理するかを先に決めておく必要があります。
並行稼働の長さや作業の量は、販売経路や連携先の数、受注の波によって変わります。
一般的な目安で決めるより、自社の連携先ごとに切り替えの順番を並べ、各段階でどちらの在庫数を正とするかをベンダーと詰めるほうが、移行中の欠品を抑えやすくなります。
| 確認する軸 | 現行で確かめること | 欠品・競合とのつながり |
|---|---|---|
| 引当の時点 | 受注確定・入金確認・出荷指示のどこで販売可能数が減り、変えられるか | 入金後の欠品と、取り合いの幅 |
| 販売経路ごとの配分 | 経路ごとに在庫を取り分けて出せるか | 最後の在庫を複数経路が同時に売る取り合い |
| 複数拠点の割当ルール | どの拠点の在庫で注文を受けるかを決まりとして持てるか | 拠点間で在庫があるのに欠品扱いになる、または逆 |
| 外部モールへの反映方式 | どのきっかけで、どの数を送っているか | 数が届くまでの時間差による取り合い |
▼ 図の内容を文字で読む
- 販売経路が増える
- 同じ在庫を見る窓口が増える
- 数が届くまでの時間差が取り合いにつながりやすくなる
- 拠点が増える
- どの拠点の在庫で注文を受けるかの決まりが必要になる
- 基幹システムと連携している
- どのシステムの在庫数を正とするかが問題になる
それでも欠品が出たときの、連絡・返金・取消の手順
引渡時期の表示と承諾通知
設定と運用を整え、必要ならシステムを替えても、欠品をなくし切ることはできません。
在庫の確保はシステムの仕組みで決まり、お客様への連絡は法令で決まります。
そのため、欠品を減らす見直しとは別に、欠品が出たときの連絡手順を用意しておきます。
ここから先は、消費者向けの通信販売で、特定商取引法の対象になる取引を前提にしています。
卸先との取引など事業者間の取引では対象にならない場合があり、後払いや即時決済の注文では、ここで述べる前払いの規定の条件が変わります。
また、消費者庁の特定商取引法ガイドは在庫切れそのものを直接扱ってはいません。
以下は、引渡時期の表示、前払式の通信販売での承諾等の通知、契約解除後の返金に関する規定から、欠品時の対応を整理したものです。
最初に見ておきたいのは、受注の時点で示している引渡時期です。
通信販売の広告には、商品の引渡時期などを表示することが求められ、表示を省略できるのは限られた条件の場合だけです2。
欠品が起きやすい商品で、表示している引渡時期と実際の出荷の見込みが離れていないかは、欠品が出る前から確かめておけます。
代金を先に受け取っていて、引渡しに時間がかかる場合には、書面での通知が求められます2。
通知する事項は、申込みを承諾するかどうか、事業者の情報、受け取った金額と受け取った日、商品とその数量、引渡時期です2。
承諾しない場合は、受け取った金銭を速やかに返還し、その方法も示します2。
欠品が分かったその場で文面を考えると項目が抜けやすいので、これらを並べた連絡文の雛形を持っておくと、担当者が替わっても同じ内容で連絡できます。
引渡時期を書くときは、最初の節で見た入荷中の在庫の扱いを思い出してください。
システム上で入荷予定が見えていても、それは販売可能数ではなく、まだ拠点に届いていない在庫です。
入荷予定をそのまま引渡時期として書くと、仕入先の遅れで二度目の連絡が必要になりかねないので、仕入先から確かな入荷日を得てから書くほうが安全です。
返金を遅らせない
欠品で契約が解除された後に、代金の返還などを拒んだり遅らせたりすることは禁じられています2。
また、承諾しない場合の返還について、ガイドでは「遅滞なく」がどの程度の期間を指すかの目安も示されています2。
社内で返金の期限を決めるときは、この目安より内側に置いておくと迷いません。
返金が遅れるのは、悪意よりも業務の分断から来ることが多くあります。
受注管理システムでの取消と、決済サービス側での返金操作が別の担当や別の画面に分かれていると、取消は済んだのに返金が止まっているという状態が起きます。
決済手段ごとに返金の操作が違えば、その分だけ確認する場所も増えます。
受注管理システムで取り消したときに決済側の返金が連動して進むのか、別に操作が必要なのかを確かめ、別操作なら取消と返金を一つの手順に並べておくと、返金の漏れに気づきやすくなります。
取消の後には、在庫側の後始末も残ります。
確保済みの在庫が直接調整できない仕様では1、取消の処理を最後まで終えないと、確保された数が残ったまま販売可能数が戻りません。
欠品の取消であっても、注文の取消処理を完了させ、販売可能数がどう変わったかまで見ておくと、次の欠品調査で余計なずれを追わずに済みます。
代替提案の出し方
欠品した商品の代わりに、色違いや後継品を勧めたいこともあるでしょう。
代替の提案は法令が定める手順ではなく、編集部の提案として、お客様が断れる形で出すことを勧めます。
具体的には、取消と返金を既定の選択肢として示したうえで、代替品は追加の選択肢として添える形です。
避けたいのは、代替品を受け入れるかどうかの返事を待つ間、返金を止めてしまう進め方です。
契約が解除されているのに返金を後回しにすれば、返金の拒否や遅延を禁じる規定に触れかねません2。
代替を勧める連絡と、承諾しない場合の返金の案内は、同じ連絡の中で並べておくほうが行き違いが起きにくくなります。
モールで受けた注文では、モールが定めるキャンセルや欠品の規定も別に確かめる必要があります。
法令の手順と、販売経路ごとの規定の両方を満たす形で連絡文を用意しておきます。
最後に、欠品で取り消した注文は、そこで終わりにせず、前の節で示した照合に回します。
記録の誤りだったのか、反映の時間差だったのかが一件ずつ積み上がれば、設定を見直すのか、運用を直すのか、システムを替えるのかの判断が、感覚ではなく欠品の記録に基づいたものになります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 既定の選択肢
- 取消と返金を示す
- 承諾しない場合の返金の案内を同じ連絡の中に並べる
- 追加の選択肢
- 色違いや後継品の代替品を添える
- お客様が断れる形で出す
- 避けたい進め方
- 代替品を受け入れるかの返事を待つ間、返金を止める
引当の時点や販売可能数の定義は、システムの画面やマニュアルからは読み取りにくく、欠品注文の照合結果とつなげて判断するのは担当者一人では手間がかかります。
欠品になった注文の記録をもとに、現行の設定で動かせる範囲か、記録の運用を直せば足りるか、連携や機能の検討が必要かを一緒に整理できます。無料相談で要件を整理する
欠品の原因ごとに、手を入れる先
欠品注文を一件ずつ照合して見つかった原因の種類ごとに、設定・運用・システムのどこへ手を入れるかで並べた
- 入荷・移動・返品の記録が実在庫と合っていない:記録の担当と手順を決め直す(運用)
- 引当の時点が遅く、まだ確保されていない在庫を別の注文が取った:引当時点の設定を見直し、変えられなければ未入金注文の取消期限などで補う(設定・運用)
- 販売可能数に余白がなく、最後の在庫で取り合いになる:安全在庫などの区分で余白を取り分ける(設定)
- 帳簿は正しいのに、経路への反映の時間差で同じ在庫が売れた:連携方式の限界候補として、入れ替えや機能追加を検討する(システム)
記録の誤りを直した後も、反映の時間差による欠品が続く場合に、入れ替えや追加の検討へ切り替える
▼ 図の内容を文字で読む
- 入荷・移動・返品の記録の誤りを直す
- 反映の時間差による欠品が残るかを確かめる
- 残る場合に、入れ替えや機能追加を検討する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 最初に見る数 | 販売可能数がどの状態を差し引いて計算されているか |
| 引当の時点 | 受注確定・入金確認・出荷指示のどこで販売可能数が減り、変えられるか |
| 原因の切り分け | 欠品注文ごとに、その時点の帳簿と実在庫を照合する |
| 入れ替えの理由 | 記録を直しても、反映の時間差による欠品が残るか |
| 欠品後の連絡 | 承諾の有無・引渡時期・返金方法を書面で示し、返金を遅らせない |
入れ替えを考える段階では、候補を同じ軸で比べるだけでなく、移行中にどちらのシステムの在庫数で注文を受けるかまで決めておく必要があります。 引当時点、経路別の配分、拠点の割当、外部モールへの反映方式の各軸を自社の販売経路と拠点に当てはめ、どの軸が欠品の原因に当たるかを確かめられます。
よくある質問
引当を受注時にするのと入金後にするのとでは、欠品の出方はどう違いますか。
受注時に引き当てると、後から来た注文と在庫を取り合うことはなくなりますが、入金されないまま残った注文も在庫を押さえ続けるため、品切れ表示が増えます。
入金後に引き当てると、未入金の注文が在庫を押さえない代わりに、入金された時点で在庫が足りないという欠品が起きえます。
どの時点を選べるかは製品ごとの仕様なので、まず自社のシステムで販売可能数がどの時点で減るかを確かめてください。
安全在庫を設けると、売れる数が減りすぎませんか。
安全在庫に置いた分は販売可能数に入らないため、その分だけ売れる数は減ります。
一律に厚く置くのではなく、欠品が実際に起きた商品と販売経路の記録を見て商品ごとに決め、取り分けた分が売れずに残っていないかを合わせて見直すと、減らしすぎを避けやすくなります。
帳簿そのものが狂っている場合は、安全在庫では欠品が止まらないので、先に記録の誤りを直します。
欠品で注文を取り消すとき、返金はいつまでに行えばよいですか。
消費者向けの通信販売で代金を先に受け取っている場合、承諾しないなら受け取った金銭を速やかに返還し、その方法も示す必要があります。
契約解除後に返金を拒んだり遅らせたりすることは禁じられています。
「遅滞なく」がどの程度の期間を指すかの目安は消費者庁の特定商取引法ガイドに示されているので、社内の返金期限はそれより内側に置いてください。
事業者間の取引や後払いの注文では条件が変わります。
ECとPOS、複数のモールで在庫を共有するとき、何を確認すればよいですか。
同じ在庫を見る窓口が増えるほど、数が各経路へ届くまでの時間差が取り合いにつながりやすくなります。
確かめたいのは、販売可能数がどの時点で減るか、販売経路ごとに在庫を取り分けて出せるか、拠点が複数ならどの拠点の在庫で受けるかの決まりを持てるか、外部モールへどのきっかけでどの数を送っているか、です。
拠点ごとに数が持てることと、経路ごとに配分できることは別の機能なので、分けて確かめてください。
在庫差異が出たとき、入荷・返品・移動のどこから調べるのが効率的ですか。
差異を集計で眺めるより、欠品になった注文を一件ずつ取り出し、その時点の帳簿と実在庫を照合するほうが原因に近づけます。
ずれていれば、その商品の直前の入荷・移動・出荷・返品の記録をさかのぼります。
どこから見るかの決まった順番はありませんが、一件ずつ見ると、特定の商品や拠点、返品の多い商品などに偏りがあるかが分かり、調べる先を絞り込めます。
今のシステムを使い続けるか入れ替えるかを判断する前に、何を数えておくべきですか。
欠品になった注文を、記録の誤りによるものと、帳簿は正しいのに反映の時間差や同時処理で起きたものに分けて数えておきます。
記録の誤りが中心なら運用の修正が先です。
記録を直しても時間差による欠品が残り、その原因に当たる機能が現行のシステムにないときに、入れ替えや機能追加が判断の候補になります。
在庫の変更履歴を後から見られるかどうかも、切り分けの前提として確かめておきます。
画像の出典元
- A warehouse worker organizing parts in a storage facility with blue bins and a clipboard./Photo by GB The Green Brand on Pexels