◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 法人向けECの費用は、基本利用料・カスタマイズ・オプション・利用規模による変動の4層に、料金表に載らない運用工数を加えて見る。
- 公開料金は初期費用0円・月額0円の型から月額170,000円〜に見積が加わる型まで桁が違うが、いずれも提供者ごとの条件で相場ではない。
- 方式はプランの上限と自社の件数・人数、取引条件の扱いで絞り、上限を担当者の処理能力と取り違えない。
- 費用対効果は月単位で費用と効果をそろえ、ECに移る注文の転記分だけを効果に数えて、工数とミスで回収できるかを先に見る。
- 補助金は補助なしでも成り立つ計画への上乗せとして扱い、一部の取引先で試す前に広げる基準と見送る基準を決めておく。
目次

法人向けECの費用は何で決まるのか:FAX・電話受注をECに替えるときの内訳
FAXの注文書を見ながら受注データを打ち直し、電話で聞いた品番や数量を確認し直す。
その手間を減らしたくても、法人向けECにいくらかかり、どれだけで元が取れるのかが見えなければ、社内で話を切り出せません。
費用は、基本利用料・カスタマイズ・オプション・利用規模による変動の4層に、料金表に載らない運用工数を加えて見ます。
公開料金でも、初期費用0円・月額0円から始められる受注サービスと、月額170,000円〜のベース料金にカスタマイズ見積が加わる型とでは桁が違います12。
先に受注件数と取引条件で方式を絞り、月単位で削減工数と費用を比べれば、始めるか、小さく試すか、見送るかを自社の数字で決められます。
費用の4層:基本利用料・カスタマイズ・オプション・利用規模
受注をECに替える費用を見積もろうとして料金表や見積書を並べても比べにくいのは、提供者ごとに同じ「月額」や「初期費用」が指す範囲が違うからです。
比べる前に費用を性質ごとに分けておくと、毎月出ていく額、一度だけ払う額、使い方によって増える額を見分けられます。
公開されている料金表の一例として、BtoB EC受発注システムのEC-Riderは、費用をベースエンジン利用料(月額)、カスタマイズ費用、オプションに分けて示しています1。
カスタマイズ費用は、一括で払う開発費用と毎年かかる年間保守費用の二本立てです1。
さらに同ページの掲載額は、webサーバー2台・dbサーバー1台・バッチサーバー1台、転送量200GB/月、リクエスト100万/月などの構成と利用量を前提にしており、構成や要件を変えると月額も変わると書かれています1。
この構造をほかの方式にも当てはめられる形に置き直すと、次の4層になります。
- 基本利用料:システムを使い続けるための月額で、毎月の固定費になる部分
- カスタマイズ:自社の取引ルールに合わせて画面や処理を作り込む費用で、一括の開発費と翌年以降も続く保守費に分かれる部分
- オプション:必要な機能だけを足す費用で、EC-Riderの料金ページではOCR(紙の文字を読み取ってデータにする技術)、BI、メルマガ、サイト内検索、FAX送信、ドメイン/SSL、第三者セキュリティチェック、レコメンデーションなどが挙がっている部分1
- 利用規模による変動:アクセス数やデータ量、サーバー構成など、使い方の大きさに応じて月額が動く部分
4層に分けておく意味は、比較の取り違えを防ぐことにあります。
月額だけを並べるとカスタマイズの一括費用が抜け落ち、翌年から続く保守費も見えません。
逆に初期費用だけで比べると、使うほど増える部分を見落とします。
EC-Riderの料金ページでもカスタマイズとオプションの金額は掲載されておらず、見積で埋まる欄です1。
手元の比較表ではその欄を空けたまま「見積待ち」と書いておくと、後で合計を出すときに抜けがなくなります。
料金表に載らない運用工数
料金表に載るのは提供者へ払う額です。
ECを動かすには、それとは別に社内の時間を使います。
導入直後には、商品と価格の登録、取引先ごとのID発行と使い方の案内、注文画面のテストが重なります。
運用が始まってからは、価格や商品の更新、届いた注文の確認、出荷や請求への引き継ぎが日々の作業として残ります。
一方で、減る作業もあります。
FAXの注文書を見て受注データへ打ち直す転記や、電話で聞いた数量・品番の読み合わせは、取引先が自分で画面に入力するようになればその分だけ不要になります。
ただし、届いた注文の内容が正しいか、在庫や納期に無理がないかの確認は、受け付ける方法が変わっても残ります。
運用工数は「増える作業」と「減る作業」の差で見て、金額ではなく時間として数えておくと、後の試算で自社の時間単価を掛けるだけで費用側と効果側の両方に入れられます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 毎月かかる費用
- 基本利用料(毎月の固定費)
- 利用規模による変動(サーバー構成や利用量で月額が動く)
- 必要に応じて加える費用
- カスタマイズ(一括の開発費と年間保守費)
- オプション(必要な機能だけを追加)
- 料金表に載らない時間
- 運用工数(増える作業と減る作業の差で数える)
導入方式で費用の桁が変わる:クラウド受注サービスと自社ECの違い
初期費用0円・無料プランから始める型
4層のうちどの層がどれだけ重いかは、導入方式で大きく変わります。
一つ目の型は、用意された受注の仕組みに自社の取引先と商品を載せ、月額で使う受注サービスです。
例として、COREC(コレック)の受注側向け料金ページでは、初期費用が0円です2。
無料プランは月額0円で、担当者1名、注文フォーム4種、納品書/請求書20件までという上限があります2。
月額2,980円(税別)のビジネスプランでは、担当者が無制限、注文フォームが200種、納品書/請求書が無制限になります2。
この型の料金ページで中心になるのは、基本利用料とプランごとの上限です。
見積を待たずに試せるため、費用が読めないという悩みに対しては、最初の一歩の額が確定していることが利点になります。
一方で、料金ページから分かるのはあくまで上限の数字です。
自社の取引条件をそのまま扱えるか、月額以外にかかる費用があるかは、利用規約や提供者への問い合わせで確かめる部分として残ります。
月額のベース料金にカスタマイズが加わる型
二つ目の型は、月額のベース料金で基盤を借り、自社の取引に合わせた作り込みを見積で加える型です。
EC-Riderの料金ページには、ベースエンジン利用料として月額170,000円〜、EC-Rider B2B ⅡのASP利用料金として月額260,000円という表記があります1。
ASP型とは、提供者が管理するサーバー上のシステムを月額で利用する形のことです。
二つの金額がどのプランや構成に対応するかは同ページ上で明記されていないため、自社にどちらが当てはまるかは見積の段階で確かめます。
この型では4層のすべてが動きます。
カスタマイズの開発費用と年間保守費用は見積で決まり、オプションも必要なものを足していきます1。
自社でサーバーを持って運用するオンプレミス型は、ASP型とは別に見積もる扱いです1。
月額のベース料金だけでは総額を判断できない代わりに、取引ルールに合わせて作り込む余地をあらかじめ費用として見込む料金体系だと言えます。
読むときの注意:価格は提供者ごとの条件
二つの型を、同じ時点の掲載料金で並べると次のようになります。
表の二つの型は、同じ商品の安い・高いを比べたものではありません。
月額2,980円と月額170,000円〜の差は、含まれる範囲と、別途見積として残る範囲の違いから生まれています。
どちらの金額もその提供者のそのプランでの条件を示す値で、法人向けEC全体の相場ではありません。
ここで読み取りたいのは、自社の要件を満たす最も小さな方式はどれかという問いです。
低額の型で足りるなら、高額の型の機能は使わない分だけ負担になります。
反対に、低額の型では扱えない取引条件があり、その部分を手作業で補い続けるなら、月額の安さは残った転記と確認の時間で打ち消されます。
どちらに当たるかを決めるのが、次に見る受注件数と取引条件です。
| 比較の観点 | 初期費用0円・無料プランから始める型(COREC受注側向け) | ベース料金にカスタマイズが加わる型(EC-Rider ASP型) |
|---|---|---|
| 月額 | 無料プラン0円/ビジネスプラン2,980円(税別) | ベースエンジン利用料170,000円〜/B2B Ⅱ ASP利用料金260,000円の表記 |
| 初期費用 | 0円 | カスタマイズ開発費用(一括)は見積 |
| 含まれる範囲 | プランごとの上限内(担当者数・注文フォーム数・納品書/請求書件数) | 掲載のサーバー構成と利用量を前提にしたベースエンジン |
| 別途・追加になる範囲 | 月額以外の費用は利用規約などで確認 | カスタマイズ開発・年間保守、オプション、オンプレミス型 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 初期費用0円・無料プランから始める型
- 初期費用0円
- 無料プランは月額0円、ビジネスプランは月額2,980円(税別)
- 担当者数・注文フォーム数・納品書/請求書件数の上限あり
- 月額のベース料金にカスタマイズが加わる型
- ベースエンジン利用料は月額170,000円〜
- ASP利用料金は月額260,000円の表記
- カスタマイズの開発費・年間保守費とオプションは見積
- 読むときの注意
- 金額は提供者ごと・プランごとの条件で、市場相場ではない
- 自社の要件を満たす最も小さな方式を探す
自社の受注件数と取引条件から、合う方式を絞る
プランの上限(人数・フォーム・帳票)を自社の件数と比べる
方式を絞るとき、最初の物差しになるのは低額の型のプラン上限です。
上限は数字で書かれているので、自社の数字と並べれば当てはまるかがすぐに分かります。
たとえば無料プランの担当者1名という上限は、受注を一人で受けているなら問題になりませんが、午前と午後で担当が替わる、休みの日に別の人が受けるといった体制では足りません。
注文フォーム4種は、取引先や商品群ごとに注文書の様式を分けている場合、その種類の数と比べます。
納品書/請求書20件までは、普段どれだけの帳票を発行しているかと照らし、上限がどの期間の件数を指すのかも合わせて確かめます。
比べるために手元でそろえておきたい数字は次のとおりです。
- 月の受注件数(FAX・電話・メールの経路別)
- 受注の入力や確認に関わる社内の人数
- 注文を送ってくる取引先の数と、注文書の様式の種類
- 納品書・請求書の発行件数
- 取引先のうち、オンラインでの発注に応じてくれそうな先の数
注意したいのは、プランの上限は契約で使える量であって、担当者が処理しきれる量ではない点です。
担当者や請求書が無制限のプランに上げても、受注の確認や出荷の手配にかかる時間はなくなりません。
上限は方式が自社の規模に収まるかを見るための物差しで、必要な人員を決める根拠にはなりません。
掛売・取引先別価格・請求方法は見積時に確認する項目
件数が上限に収まっても、取引条件のほうで方式が決まることがあります。
法人向けの受注では、一般の通販と違い、取引先ごとの約束事が注文の処理に入り込みます。
見積や試用の前に、少なくとも次の点を書き出しておくと、提供者との話が具体的になります。
- 掛売(商品を先に届け、月末締めなどでまとめて請求する取引)があるか、取引先ごとに締め日や支払条件が違うか
- 取引先別価格(同じ商品でも取引先や数量で単価が変わる設定)があるか
- 請求書の発行方法や送付方法に、取引先ごとの指定があるか
- 与信(取引先ごとの取引上限額)を管理しているか
- 受注データを販売管理などの基幹システムへ移しているか、その移し方が手入力か
これらへの対応可否は、機能一覧に同じ名前が載っているかどうかだけでは判断しにくい部分です。
たとえば「取引先別価格」と書かれていても、数量によって単価が段階的に変わる自社の設定まで扱えるかは別の話です。
実際にある取引を一つ選び、その注文が画面上でどう入力され、どの金額で請求まで流れるかを見積や試用の場で順に追うと、標準の機能で足りるか作り込みが要るかがはっきりします。
作り込みが要る場合は、その程度で費用が変わります。
EC-Riderでは、カスタマイズをアドオン・シンプル・ノンカスタマイズの3レベルに分けて見積もります1。
各レベルの具体的な範囲は提供者の説明で確かめるとして、自社の要件を「標準で足りるもの」と「追加が要るもの」に分けて伝えておけば、どの段階の見積になるかを早く絞り込めます。
上限に収まり取引条件も標準で扱えるなら低額の型を、作り込みが前提になるなら見積型を、それぞれ候補に残します。
▼ 図の内容を文字で読む
- プランの上限と比べる数字
- 月の受注件数(FAX・電話・メールの経路別)
- 受注の入力や確認に関わる社内の人数
- 取引先の数と注文書の様式の種類
- 納品書・請求書の発行件数
- 見積時に確認する取引条件
- 掛売と取引先ごとの締め日・支払条件
- 取引先別価格
- 請求書の発行方法・送付方法
- 与信と基幹システムへの受け渡し
- 候補の残し方
- 上限に収まり標準で扱えるなら低額の型
- 作り込みが前提なら見積型
費用対効果は工数・ミス・機会の三つで試算する
月単位で費用と効果を並べる式
方式の候補が残ったら、次は費用に見合うかどうかです。
回収の目安を外部の数字から借りるのではなく、費用と効果を同じ月単位にそろえ、自社の数字で計算します。
式にすると次のようになります。
- 月の継続費用=月額利用料+オプションの月額+年間保守費用÷12+増える運用工数×時間単価
- 一括費用=カスタマイズ開発費用など、始めるときに一度だけかかる費用
- 月の効果=減る転記・確認の時間×時間単価+ミスの手戻りの減少分+取りこぼしの減少による粗利の増分
- 回収月数=一括費用÷(月の効果-月の継続費用)
稟議で月額どうしを比べたい場合は、一括費用を想定利用月数で割って月の継続費用に足す形でも示せます。
工数の部分を、仮の数字で動かしてみます。
仮に、FAXと電話の注文が月に300件あり、1件の転記と確認に5分かかっているとすると、月25時間です。
このうちECに移るのが、応じてくれた一部の取引先からの月120件だけなら、関係するのはその120件分の10時間です。
しかも注文内容や納期の確認は残るため、実際に減るのは10時間のうち転記にかかっていた分に限られます。
全件がECに移る前提で25時間を効果に入れると、試算は実際より大きく出ます。
ミスの手戻りは、過去の記録から数えます。
品番や数量の読み違いで再出荷や訂正伝票を出した件数と、その1件にかかった手間や送料を拾えば、月あたりの額に直せます。
取引先が自分で入力する注文では聞き間違いや書き写しの誤りは起きにくくなりますが、取引先自身の入力間違いは残ります。
減るのは転記の段階で生じていたミスだと考えて数えます。
取りこぼしの減少は、三つの中でいちばん推定に頼る部分です。
営業時間外に届いた注文を翌日まで処理できなかった、電話がつながらずに注文を逃したといった件数が記録にあれば使えますが、なければ楽観的な数字を入れたくなります。
判断は工数とミスの二つで成り立つかを先に見て、機会の分は別枠で示すほうが、社内で数字を問われたときに崩れません。
回収月数の式で、月の効果から継続費用を引いた差額がマイナスなら、何か月使っても一括費用は戻りません。
月額2,980円の型と、月額170,000円〜に作り込みが加わる型とでは越えるべき線の高さがまったく違うため、同じ受注件数でも結論が分かれます。
候補が二つ残っているなら、両方の継続費用で同じ式を回し、どちらで差額がプラスになるかを並べて見ると判断しやすくなります。
社内説明で求められる「明確な費用対効果」
この試算を整える理由は、社内の承認で何が見られているかにもあります。
ネオマーケティングの調査では、BtoB商材導入の稟議で承認のポイントとして「明確な費用対効果」を挙げた人が43.7%で、項目の中で1位でした3。
調査の対象は、直近1年以内にBtoB商材導入の社内稟議へ承認・提案・情報収集のいずれかで関わった国内BtoB企業の勤務者540人で、2026年にWebアンケートで行われています3。
小規模事業者やEC導入に限った結果ではなく、ECの回収期間を示すものでもありません。
それでも、何を示せば承認する側が判断しやすいかの手掛かりにはなります。
明確な費用対効果とは、数字が大きいことではなく、数字の出どころをたどれることです。
「月300件」は受注台帳の何か月分から数えたのか、「1件5分」は誰がどう測ったのかを添えておけば、聞く側は前提を自分で確かめられます。
外部の削減率を借りるより、自社の台帳と作業時間に基づく控えめな数字のほうが、説明としては強くなります。
経営者自身が判断する場合も、この形はそのまま使えます。
工数だけの見込み、工数とミスを足した見込み、機会まで含めた見込みの三つを並べると、工数だけでも回収できるのか、機会の分が実現して初めて成り立つのかが見えてきます。
前者なら投資の根拠は固く、後者なら試してから決める理由がはっきりします。
▼ 図の内容を文字で読む
- 月の継続費用
- 月の効果
- 差額
- 回収月数
補助金で実質負担を下げられるか:対象と注意点
補助率・補助額の枠組み
試算の費用側は、補助金を使えると小さくなる可能性があります。
中小企業基盤整備機構のJ-Net21の紹介記事によると、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)の通常枠は、業務分野を6つのプロセスに分類したソフトウェアの機能導入を対象とし、中小企業・小規模事業者などの労働生産性の向上を目的としています4。
補助率は2分の1以内で、賃上げの状況によっては3分の2以内となる場合があります4。
補助額は、1プロセス以上の場合で5万円〜150万円未満です4。
2026年に申請の受付が始まっていますが、現在の受付状況は公式の案内で確かめる必要があります。
補助率が2分の1以内ということは、対象経費のうち少なくとも半分は自社の負担として残るということです。
試算に反映するときは、対象になる経費だけに補助率を掛け、補助後に残る一括費用や月額で回収月数を計算し直します。
また補助額に下限があるため、対象経費の小さい計画では枠に届かないことがあります。
月額数千円の方式で小さく試す段階では、補助金を前提にしないほうが、手続きにかける時間と見合う場合もあります。
大事なのは、補助金がなくても試算が成り立つかを先に確かめておくことです。
採択や交付が決まる前に補助後の数字だけで計画を組むと、採択されなかったときに判断の前提が崩れます。
補助なしの数字で回収できる計画なら、補助金は負担を下げる上乗せとして扱えます。
補助があって初めて成り立つ計画なら、その点を社内説明でも明示しておきます。
公募要領で確認する項目
紹介記事で分かるのは制度の枠組みで、自社の計画が対象になるかは公募要領で確かめます。
特に次の点は、記事の要約だけで判断しないほうが安全です。
- 自社が対象者に当たるか:制度上の「小規模事業者」などの区分は、日常で使う「小規模」とは別に定義されている
- 導入したいサービスが、対象のソフトウェアとして扱われるか
- 月額利用料、カスタマイズ費用、オプションのうち、どこまでが対象経費になるか
- 契約や支払いをいつ行えば対象になるか
- 受付期間と締切
契約の時期には、とくに注意が要ります。
見積がまとまって早く始めたいときほど先に契約したくなりますが、申請前に結んだ契約の費用が対象になるかは、公募要領で確かめるまで分かりません。
補助金を使う可能性があるなら、契約書に署名する前に確認を済ませるという順番だけは崩さないようにします。
| 項目 | 紹介記事で分かること | 公募要領で確かめること |
|---|---|---|
| 対象 | 6つのプロセスに分類したソフトウェアの機能導入 | 導入したいサービスが対象になるか |
| 補助率 | 2分の1以内(賃上げ状況により3分の2以内の場合あり) | 自社に適用される率 |
| 補助額 | 1プロセス以上で5万円〜150万円未満 | 計画の対象経費で枠に届くか |
| 対象者 | 中小企業・小規模事業者などの労働生産性の向上が目的 | 制度上の定義に自社が当たるか |
| 時期 | 2026年に申請受付開始 | 現在の受付状況、締切、契約の時期 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 紹介記事で分かること
- 6つのプロセスに分類したソフトウェアの機能導入が対象
- 補助率は2分の1以内(賃上げ状況により3分の2以内の場合あり)
- 補助額は1プロセス以上で5万円〜150万円未満
- 公募要領で確かめること
- 自社が対象者に当たるか
- 月額利用料・カスタマイズ費用・オプションのうち対象経費になる範囲
- 契約や支払いの時期、受付期間と締切
- 試算への反映
- 対象経費だけに補助率を掛けて回収月数を計算し直す
- 補助なしでも成り立つかを先に確かめる
小さく始める手順と、見送る条件
一部の取引先から試す
費用、方式、試算がそろっても、取引先が実際にECから注文してくれるかは、始めてみないと分かりません。
そこで、いきなり全取引先を切り替えるのではなく、一部の取引先から試します。
選ぶのは、FAXや電話での注文が多く自社の手間が大きい取引先のうち、オンラインでの発注に前向きな先です。
手間の大きい先を移すほど、試算した効果を確かめやすくなります。
試す期間はFAXや電話の受付を止めず、並行して運用します。
そのうえで、ECに移った注文の件数、その分の転記にかかっていた時間、取引先からの使い方の問い合わせ、確認で見つかった誤りを記録します。
これが、試算で置いた仮の数字を実測に置き換える材料になります。
入口の費用を小さくする方法として、初期費用0円で無料プランのある受注サービスを使う手があります2。
ただし、無料プランの上限や取引条件の扱いが自社の運用に合うかは、使いながら個別に確かめることになります。
上限に当たれば、ビジネスプランは会員登録後の設定画面から申し込めます2。
試すうちに、取引先別価格や締め日の違いなどを手作業で補い続ける部分がはっきりしてきたら、それが作り込みを含む見積型を検討する具体的な理由になります。
見積の場では、その手作業の内容をそのまま要件として伝えられます。
広げる基準と見送る基準を先に決める
試す前に、広げる基準と見送る基準を決めて書き留めておきます。
始めてからでは、手間をかけた分だけ「もう少し続ければ」という気持ちが判断に混ざるからです。
基準は、前の試算の式に沿って置くと迷いません。
- 広げる基準の例:移った注文の転記時間が試算どおりに減り、取引先からの問い合わせが通常の業務で受けられる範囲に収まっている
- 見送る基準の例:実測をもとに試算し直した月の削減額が、月の継続費用を下回る
- 方式を見直す基準の例:低額の型では取引条件を扱えず、手作業で補う時間が減った転記時間を打ち消している
数値の線は自社で決めるもので、ここに挙げたのは考え方の例です。
見送りがふさわしいのは、たとえば対象になる受注がもともと少なく、どの方式でも継続費用を上回る効果が出ない場合や、主要な取引先がFAXでの注文を続ける意向で、移る注文が限られる場合です。
そのときはECを入れずに、注文書の様式をそろえる、メールでの注文を決まった書式で受けるなど、いまの受発注の手段を整えるだけでも、転記や聞き直しの手間を減らせる余地があります。
見送った場合でも、測った件数と時間は残るため、受注が増えたときや取引先の要望が変わったときに、同じ式で判断をやり直せます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 広げる基準と見送る基準を決める
- 一部の取引先で試す
- 実測と試算を比べる
- 広げる・見直す・見送る
自社の取引条件が標準の仕組みで足りるのか作り込みが要るのかは、料金表だけでは判断できず、試算の費用側が空欄のまま残りやすいためです。
掛売や取引先別価格などの要件を伝えると、カスタマイズがどのレベルに当たりそうか、掲載料金の前提となるサーバー構成と自社の利用量に差があるかを確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 費用の分け方 | 基本利用料・カスタマイズ・オプション・利用規模の4層に、社内の運用工数を加えて見る |
| 方式の絞り込み | プランの上限と自社の件数・人数を比べ、取引条件は実際の取引一つで標準対応か作り込みかを確かめる |
| 費用対効果 | 月単位で費用と効果をそろえ、移る注文の分だけを数え、工数とミスで回収できるかを先に見る |
| 補助金 | 補助なしでも成り立つかを先に確かめ、対象者・対象経費・契約時期は公募要領で確認する |
| 始め方と見送り | 一部の取引先で並行運用し、広げる基準と見送る基準を試す前に決めておく |
試算の式がそろっても、カスタマイズの開発費用と年間保守費用、オプションの金額は見積を取らないと入らず、回収月数を確定できないためです。 自社の受注件数と要件をもとに、ASP型での月額・カスタマイズ・オプションの内訳を確かめ、試算の費用側を実際の数字で埋められます。
よくある質問
FAXや電話の受注が月に何件あれば、法人向けECを検討する目安になりますか。
件数だけで一律に決まる目安はありません。
同じ件数でも、1件の転記にかかる時間、ECに移ってくれる取引先の割合、選ぶ方式の継続費用で結論が変わるためです。
月の受注件数と1件あたりの時間から、ECに移る分の削減額を出し、それが方式ごとの月の継続費用を上回るかで判断します。
月額数千円の方式なら越える線は低く、月額170,000円〜に作り込みが加わる方式なら、その分だけ多くの件数や時間が必要になります。
無料プランで始めて、あとから有料プランや自社ECに移るときに注意することは何ですか。
同じサービス内で上げる場合、COREC受注側向けのビジネスプランは会員登録後の設定画面から申し込む形です2。
作り込みを含む見積型など別の方式へ移る場合は、取引先・商品・価格・過去の注文などの登録情報をどの形式で取り出せるか、取引先へ新しいログイン方法をどう案内するかを、移る前に確かめておきます。
試用中に手作業で補っていた部分を記録しておくと、移行先の見積の要件としてそのまま使えます。
運用工数は、導入後にどの作業で増減しますか。
増えるのは、商品と価格の登録・更新、取引先へのID発行と使い方の案内、取引先からの操作に関する問い合わせへの対応です。
減るのは、FAXや電話の注文を受注データへ打ち直す転記と、聞いた内容の読み合わせです。
注文内容や在庫・納期の確認は、受け付け方が変わっても残ります。
導入直後は登録と案内が重なるため、試算では最初の期間と軌道に乗った後を分けて見積もると、実態とずれにくくなります。
補助金は、申請前に契約した費用でも対象になりますか。
契約や支払いの時期が対象経費の扱いにどう関わるかは、デジタル化・AI導入補助金の公募要領で確かめる事項で、紹介記事の範囲では判断できません。
補助金を使う可能性があるなら、契約書に署名する前に要領を確認し、必要に応じて契約の時期を調整します。
対象外だった場合でも計画が成り立つよう、補助なしの試算も用意しておきます。
取引先がECを使ってくれない場合、どう進めればよいですか。
取引先全体を一度に切り替えようとせず、応じてくれる先から始めます。
FAXや電話の受付を残したまま並行して運用すれば、取引先は自分の都合に合わせて移れます。
試算では移ってくれる先の注文だけを効果に数え、全件移行を前提にしないことが大切です。
移る先が限られて試算が成り立たない場合は、注文書の様式をそろえるなど、いまの手段を整える方向も選択肢になります。
掛売や取引先別価格を扱うとき、見積前に何を整理しておくべきですか。
取引先ごとの締め日と支払条件、取引先別や数量別の単価の決め方、請求書の発行・送付の指定、与信の上限、基幹システムへの受注データの渡し方を書き出しておきます。
そのうえで実際の取引を一つ例に選び、その注文が画面上でどう処理されて請求まで流れるかを、見積や試用の場で確かめます。
要件を「標準で足りるもの」と「追加が要るもの」に分けておくと、カスタマイズが要るのか、どの程度かの見積が早くまとまります。
- 1 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider(BtoB EC受発注システム)料金プラン・費用ページ」(2026年)
- 2 出典:株式会社ラクーンコマース「COREC 受注側(サプライヤー)向け料金ページ」(2026年)
- 3 出典:株式会社ネオマーケティング「BtoB企業の社内稟議・承認プロセス実態調査2026」(2026年)
- 4 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21「デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)通常枠の紹介記事」(2026年)