◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- BtoB EC稼働後の保守・運用費は、JUASの調査票が定義する5つの費目に分解できます。
- 金額を左右するのは見積交渉ではなく、運用時間・バックアップ・障害時対応といった非機能要件です。
- 本記事は金額のレンジを提示せず、自社の数字を積み上げるための費目表と予算化の型を示します。
目次
保守・運用費とは — 開発費と分かれるJUASの費目区分
BtoB ECの稼働後の保守・運用費とは、一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)「企業IT動向調査2026」が定義する費用区分を指します*1。区分はハードウェア費・ソフトウェア費・通信回線費・外部委託費・その他(社員人件費を含む)の5費目です*1。金額の水準は、非機能要件によって決まります*1。
IT予算は「開発費」と「保守運用費」に分かれる
JUAS「企業IT動向調査2026」の調査票は、IT予算を2つに分けて定義しています*1。開発費((ア)ハードウェア費・(イ)システム開発費)と、保守運用費((ウ)〜(キ))です*1。開発費はシステムを新規構築・再構築するときの費用であり、保守運用費は稼働後に継続して発生する費用です*1。
この区分は同調査が母集団4,500社(東証上場企業とそれに準じる企業)を対象に集計した結果ではなく、調査票の設問注記に記載された費用の定義です*1。本記事ではこの定義をそのまま予算科目の骨格として使います。
導入費用の相場はここでは扱わない — 稼働後だけを見る理由
構築方式別の導入費用の相場は、稼働前の見積比較に関わるテーマであり、本記事の対象外です。稼働後に何年も出ていく保守・運用費に絞って解説します。導入費用の相場を確認したい方は、別記事「BtoB EC 費用 相場」もご参照ください。
刷新・更新・増強が最多要因 — 26年度予測60.3%
稼働後の費用を先に見積もる必要があるのは、その後の投資判断を左右するためです。IT予算が増加する理由(複数回答)は、26年度予測で「既存システム・基盤の刷新・更新・増強」が60.3%で最も高く、25年度計画では66.3%でした(26年度予測 n=474、25年度計画 n=502)*1。稼働後の保守・運用費を把握しておくことが、次の刷新投資を判断する土台になります。
保守・運用費の5費目 — ハードウェア・ソフトウェア・通信・委託・その他
(ウ)ハードウェア費 — IaaS/PaaSの使用料や保守費
JUASの定義では、(ウ)ハードウェア費は「ハードウェア機器(周辺機器を含む)購入、IaaS/PaaSの使用料、レンタル・リース料、保守費」です*1。IaaS/PaaSとは、クラウド上のサーバーや実行基盤をサービスとして利用する契約形態を指します。減価償却費は除外されます*1。BtoB ECでは本番環境・検証環境のクラウド利用料や回線機器の保守費がここに入ります。
(エ)ソフトウェア費 — SaaS利用料やソフトウェア保守費用
(エ)ソフトウェア費は「ソフトウェア購入費、ソフトウェア保守費用、レンタル料、SaaS等のサービス使用料」です*1。SaaS(Software as a Service)とは、ソフトウェアをサービスとして利用する形態を指します。無形固定資産償却費は除外されます*1。ECパッケージの年間保守費、SSL証明書、各種SaaSの利用料はこの費目です。
(オ)通信回線費 — 通信回線使用料とネットワーク加入料
(オ)通信回線費は「通信回線使用料、ネットワーク加入・使用料、携帯電話加入・使用料」です*1。専用回線やインターネット回線の月額費用が該当します。
(カ)外部委託費 — 保守・運用・コンサルティングの委託費用
(カ)外部委託費は「保守、運用、コンサルティング等のアウトソーシング費用」と定義されます*1。24時間監視、障害の一次対応、マスタ更新代行など、社外に任せる作業の費用がここに入ります。
(キ)その他 — 社員人件費・運転管理費も含まれる
(キ)その他は「上記以外(社員人件費、運転管理費を含む)」です*1。自社担当者がECサイトの運用に割く工数は、この費目として数える対象になります。「自社運用だから費用がかからない」わけではありません。
費目表 — 自社の数字を入れる型
JUASの5費目を、BtoB ECの稼働後にそのまま当てはめると次の表になります。金額欄は空欄にしています。自社の契約書・請求書を仕分けながら埋めてください。
| 費目(JUAS表記) | BtoB ECでの中身 | 固定費/変動費 | 増える引き金 |
|---|---|---|---|
| (ウ)ハードウェア費 | 本番・検証環境のクラウド利用料。 回線機器の保守費。 |
主に固定費。 従量課金部分は変動費。 |
アクセス増加によるスペック増強。 |
| (エ)ソフトウェア費 | ECパッケージの年間保守費。 SaaS利用料・SSL証明書更新費。 |
固定費が中心。 | バージョンアップ・機能追加。 |
| (オ)通信回線費 | 専用回線・インターネット回線の月額費用。 | 固定費。 | 回線増強・拠点追加。 |
| (カ)外部委託費 | 監視・障害一次対応・マスタ更新代行。 | 契約形態により両方あり得る。 | 委託範囲の拡大・サポート水準の変更。 |
| (キ)その他 | 自社担当者の運用工数(人件費)。 運転管理費。 |
人件費は準固定費。 | 取引先数・受注件数の増加による対応工数増。 |
BtoB EC固有の変動要因 — 取引先数・アカウント数・受注件数
BtoB ECでは、取引先数、発行アカウント数、商品点数、受注件数、基幹システムとの連携本数、決済手数料が費目の金額を動かす要因になります。ただし「◯件でいくら増える」という単価は一次情報として確認できないため、本記事では数え方の提示にとどめます。
金額を決めるのは非機能要件 — IPAの6中項目
非機能要求は6つの大項目に整理される
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「非機能要求グレード2018 利用ガイド[解説編]」(2018年4月公開)は、非機能要求を6つの大項目に整理しています*2。「可用性」「性能・拡張性」「運用・保守性」「移行性」「セキュリティ」「システム環境・エコロジー」の6項目です*2。保守・運用費と直結するのは、このうち「運用・保守性」です。
運用・保守性は6つの中項目で構成される
同ガイドは、運用・保守性が6つの中項目で構成されると説明しています*2。運用パターンに対する「通常運用」「保守運用」「障害時運用」の3項目があります*2。それらを支える体制を検討する「運用環境」「サポート体制」「その他の運用管理方針」の3項目が続きます*2。これらの水準が、保守契約の中身と金額を決めます。
通常運用 — 運用時間とバックアップが費用を分ける
「通常運用」の小項目は「運用時間」「バックアップ」「運用監視」「時刻同期」です*2。運用時間には「運用時間(通常)」と「運用時間(特定日)」の2種類が定義されています*2。24時間365日の監視にするか、営業時間帯だけにするかで、外部委託費の水準が変わります。
保守運用 — 計画停止とパッチ適用ポリシーが機器選定に影響
「保守運用」の小項目には「計画停止」「パッチ適用ポリシー」「活性保守」などがあります*2。同ガイドは、これらがメンテナンス作業の方法やスケジュールを左右すると述べています*2。導入する機器の選定にも大きく影響するため、事前に決定しておくことが重要だとしています*2。
障害時運用 — コストに大きく影響する項目が多い
「障害時運用」の小項目は「復旧作業」「システム異常検知時の対応」「交換用部材の確保」です*2。同ガイドは「導入機器や要員・部材の確保等、コストに大きく影響する項目が多い」と明記しています*2。可用性の観点と運用・保守性の観点の双方から、十分に検討する必要があるとしています*2。運用時間・障害時対応の水準をどこに置くかが、そのまま保守契約の金額に跳ね返ります。
要件定義の段階で運用費の大半が決まっている
同ガイドは、これらの検討を要件定義の段階で後回しにすると、トラブルの原因になるとも述べています*2。「想定していた運用スケジュールが組めない」「必要なバックアップがとられておらず、障害からの復旧ができない」といった例を挙げています*2。つまり、保守・運用費の多くは、契約交渉ではなく要件定義の時点でほぼ決まっているのです。
保守・運用費が上がる理由 — 刷新・円安・クラウド化
増加理由の1〜3位は刷新・円安・クラウド — 自社だけの事情ではない
JUASの調査によるIT予算の増加理由(複数回答、26年度予測 n=474、25年度計画 n=502)は、26年度予測で1位「既存システム・基盤の刷新・更新・増強」60.3%です*1。2位「円安・人件費高騰・ベンダー提供価格の値上げなどによる影響」45.6%、3位「クラウドサービス増加」44.9%と続きます*1。25年度計画ではそれぞれ66.3%、46.6%、45.0%でした*1。同報告書は、既存システムの増強や円安・値上げ・クラウド化によるコスト上昇が、IT予算の増加に大きく影響していると述べています*1。値上げの打診は自社だけの事情ではなく、業界共通の要因が背景にあります。
AI関連の投資・利用料増加が最も伸びている
「AI関連の投資・利用料増加」は26年度予測で43.7%となり、25年度計画の36.3%から7.4ポイント伸びました*1。これは今回調査した増加理由のなかで最も伸び幅が大きい項目です*1。AI活用に伴うクラウド利用料の増加が、今後の保守・運用費に影響する可能性があります。
レガシー化するとなぜ運用費が上がるのか — ユーザー企業の61%が保有
経済産業省とIPAは2025年5月28日、「DXの現在地とレガシーシステム脱却に向けて レガシーシステムモダン化委員会 総括レポート」を公表しました*3。同レポートは、レガシーシステムを「運用維持保守や機能改良が困難な状態に陥り、経営・事業戦略上の足枷、高コスト構造の原因となっているシステム」と定義しています*3。古い技術や個社固有のカスタマイズが、運用維持保守や機能改良を困難にする要因です*3。同レポートによると、ユーザー企業の61%がレガシーシステムを保有している状況であり、中小企業よりも大企業のほうが保有率は高いとされています*3。
同レポートは、企業が先送りにしている既存のレガシーシステムの保守切れ対応やシステム移行のタイミングで、各所で問題が続発していると指摘しています*3。稼働後にカスタマイズを重ねてブラックボックス化が進むほど、保守費は上がりやすくなります。
市場シェアのある技術を選ぶと将来の調達・運用コストが下がりやすい
同レポートは、モダンな技術は最新・最先端である必要はなく、一定の市場シェアがある技術の採用によって将来の調達コスト・運用コストの低減が見込めると述べています*3。カスタマイズを標準機能に寄せる判断が、将来の保守費を抑える選択肢になります。なお、刷新するかどうかの是非そのものは本記事では判断しません。
可視化したコストを自社の数字で確かめるには、無料相談で要件を整理するのが近道です。
内製と外部委託、どちらが安いのか — JUASの実態調査
システム運用・保守は内製と外部委託が拮抗している
JUASの調査は、工程別のシステム開発の内製・外部委託度合いを図表7-2-3で示しています(「システム運用・保守」n=903)*1。内訳は「ほぼ内製」20.5%、「内製が多い」21.9%、「同程度」19.3%、「外部委託が多い」18.4%、「ほぼ外部委託」19.9%です*1。同報告書は「システム運用・保守においては、内製と外部委託の割合は拮抗している」と述べています*1。
設計・実装・テストは外部委託が主体
対照的に「設計・実装・テスト」は「外部委託が多い」29.8%と「ほぼ外部委託」33.6%の合計が63.4%に達します*1。作る工程は外部に依頼し、日々の運用は内製と外部委託が半々に近い、というのが実状です。
| 工程 | ほぼ内製+内製が多い | ほぼ外部委託+外部委託が多い |
|---|---|---|
| システム運用・保守(n=903) | 42.4% | 38.3% |
| 設計・実装・テスト(n=884) | — | 63.4% |
上表の「システム運用・保守」の42.4%・38.3%は、本記事が図表7-2-3の個別値を足した参考値です*1。20.5%・21.9%(内製計)と18.4%・19.9%(外部委託計)を合算したもので、報告書自体が公表した合計値ではありません*1。あくまで「拮抗している」という報告書本文の記述を補足する数字としてご覧ください。
売上高が小さいほど「振り切った方針」が多い — 図表7-2-2
同報告書は、システム開発の内製/外部委託の方針を売上高別に集計しています(図表7-2-2、n=953)*1。売上高の大きい企業ほど「内製を増やす」と「内製・外部委託の混成」の割合が高くなったと述べています*1。一方で「完全内製化」あるいは「完全外部委託」に振り切った方針の割合は、売上高の小さい企業ほど高いとしています*1。これはシステム開発全体の方針であり、システム運用・保守だけを取り出した集計ではありません。完全内製に振り切る場合、運用費は委託費として外に出ず、(キ)その他の社員人件費として社内に計上されます*1。委託費だけでなく、総額で比較することが欠かせません。
委託範囲を決めるのはサポート体制の水準
内製と外部委託のどちらを選ぶかは、価格交渉ではなく、非機能要求の中項目「サポート体制」で何を求めるかによって決まります*2。誰がどこまでを担うかという体制設計そのものは、別記事「BtoB EC 運用体制 人員 設計」で扱っています。
保守契約で確認する項目 — 非機能要求をチェックリスト化
非機能要求の小項目を契約確認の観点に翻訳する
IPA「非機能要求グレード2018」が定義する運用・保守性の小項目は、そのまま保守契約書の確認項目として使えます*2。契約更新の前に、次の表を使って自社の契約書と照合してください。
| 確認項目 | 契約書で見る箇所 | 決まっていないと起きること |
|---|---|---|
| 運用時間(通常・特定日) | 監視・対応の時間帯の記載。 | 土日祝の障害対応可否が不明確になる。 |
| バックアップ | 取得頻度・保存期間の記載。 | 障害時に復旧できるデータの範囲が分からない。 |
| 運用監視 | 監視対象・通知先の記載。 | 異常の検知が遅れる。 |
| 計画停止 | メンテナンス頻度・事前通知の期日。 | 繁忙期に停止が重なる。 |
| パッチ適用ポリシー | 適用対象・適用タイミングの記載。 | 脆弱性対応が遅れる。 |
| 活性保守 | 稼働中保守の可否の記載。 | 保守のたびにサービスを止める必要が生じる。 |
| 復旧作業 | 目標復旧時間の記載。 | 障害の影響時間が読めない。 |
| 異常検知時の対応 | 一次対応の窓口・体制。 | 対応の初動が遅れる。 |
| 交換用部材の確保 | 予備機・部材の保有有無。 | ハードウェア障害時の復旧が長引く。 |
| サポート体制 | 問い合わせ窓口・対応時間の記載。 | 委託範囲の認識がずれる。 |
保守費に含まれるもの・別料金になりやすいもの
保守費の範囲は契約ごとに異なるため、「一般的に別料金です」とは言い切れません。IPAの小項目のうち「パッチ適用ポリシー」「活性保守」がどこまで保守費に含まれるかを、契約更新の際に確認する項目として明示しておくことが大切です*2。バージョンアップ、仕様変更、追加開発、問い合わせ対応の件数上限も同様に確認します。
サポート期限(EOL)を確認する
経産省・IPAのレポートは、企業が先送りにしている既存のレガシーシステムの保守切れ対応やシステム移行のタイミングで問題が続発していると述べています*3。使用中のOS・ミドルウェアのEOL(End Of Life、メーカーによるサポート終了時期)を、保守契約の更新時期とあわせて確認しましょう。
値上げ打診への向き合い方
契約更新時に値上げを打診されたら、要件を下げずに金額だけを下げる交渉は成立しにくいと考えてください。値上げを受け入れるか判断する前に、IPAの非機能要求のどの水準を下げるのかを、ベンダーと具体的に指定して協議することが実務的です*2。
保守・運用費を下げる打ち手 — 順序を間違えない
保守・運用費を見直す優先順3点/順位根拠:着手順序(非機能要件→標準機能化→補助金の順で検討する)
- 非機能要件のレベルを見直す。使っていない時間帯まで有人監視の対象にしていないかを、運用時間の小項目*2から確認します。
- カスタマイズを標準機能に寄せる。一定の市場シェアがある技術の採用が、将来の調達コスト・運用コストの低減につながります*3。
- 補助金でクラウド利用料を圧縮する。デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠は、クラウド利用料の上限2年分を補助対象経費に含めています*4。
補助金でクラウド利用料を圧縮する — 3年目以降は自社負担
「デジタル化・AI導入補助金2026」公募要領(通常枠)は、補助対象経費を挙げています*4。ソフトウェア購入費、クラウド利用費(クラウド利用料は上限2年分)、導入関連費です*4。補助率は1/2以内です*4。賃上げの要件(令和6年10月〜令和7年9月に最低賃金水準で雇用する従業員が全体の30%以上である月が3か月以上ある場合)に該当するときは2/3以内になります*4。補助額は1プロセス以上で5万円〜150万円未満、4プロセス以上で150万円〜450万円以下です*4。補助が終わる3年目以降は自社負担に戻るため、その時点の年額を前提に予算を組む必要があります。申請の進め方は別記事「BtoB EC IT導入補助金 活用」で解説しています。
削ってはいけないもの — バックアップとセキュリティ
IPAは2026年3月27日、「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版を公開しました*5。はじめに取り組んでほしい情報セキュリティ5か条に「バックアップを取ろう!」を新たに追加し、情報セキュリティ6か条としています*5。バックアップとセキュリティ対策は、費用を削る対象から外して検討することをおすすめします。対策の中身は別記事「BtoB EC セキュリティ 対策」で解説しています。
電子取引データの保存に伴う運用も費目に乗る
電子取引データの保存要件に対応する運用は、(カ)外部委託費や(キ)その他の工数として費目に計上されます。保存要件そのものの詳細は、別記事「BtoB EC 電子帳簿保存法 対応」をご確認ください。
年間の保守・運用費を予算化する5ステップ
ここまでの費目と非機能要件を、実際の予算表に落とし込む手順を示します。
- 費目を(ウ)〜(キ)の5つで並べます*1。
- 非機能要件のレベルを確認し、固定費として確定します*2。
- 変動要因(取引先数・アカウント数・受注件数・商品点数)を数えます。
- 契約更改・値上げ・サポート期限の時期を年表にします。
- 補助金の公募や契約更新のタイミングに合わせて、見直し日を決めます*4。
年間予算表のひな形
| 費目 | 契約先 | 固定/変動 | 年額 | 根拠となる要件 | 見直し時期 |
|---|---|---|---|---|---|
| (ウ)ハードウェア費 | |||||
| (エ)ソフトウェア費 | |||||
| (オ)通信回線費 | |||||
| (カ)外部委託費 | |||||
| (キ)その他 |
見直しのタイミング
取引先が増えたとき、商品点数が増えたとき、保守契約の更新期、サポート期限の到来のいずれかで、年間予算表を見直します。年に一度だけ確認するのではなく、これらの発生時点で都度更新することが実務的です。
まとめ:保守・運用費は交渉ではなく費目と要件で決まる
本記事では、BtoB EC稼働後の保守・運用費を、JUASが定義する5つの費目とIPAの非機能要件から整理しました。要点を3つに集約すると次のとおりです。第一に、保守・運用費はハードウェア費・ソフトウェア費・通信回線費・外部委託費・その他の5費目に分解でき、社員人件費も費目に含まれます*1。第二に、金額を決めているのは見積交渉ではなく、運用時間・バックアップ・障害時対応といった非機能要件です*2。第三に、費用が上がる理由は自社固有の事情だけでなく、システム刷新・円安・クラウド化という業界共通の要因が上位を占めます*1。費目に分けた時点で、社内での議論と契約書の照合が可能になります。
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
よくある質問
BtoB ECの保守・運用費は年間いくらが目安ですか。
一次情報として確認できる年額の目安は存在しないため、本記事では相場を提示しません。JUAS「企業IT動向調査2026」が定義する(ウ)〜(キ)の5費目*1に沿って自社の契約書・請求書を仕分け、費目ごとに金額を積み上げる方法をおすすめします。導入費用の相場は別記事「BtoB EC 費用 相場」をご覧ください。
保守費と運用費は何が違うのですか。
JUASの定義では、保守費と運用費は別区分ではありません*1。同じ「保守運用費」という予算区分の中に、ハードウェア費・ソフトウェア費・通信回線費・外部委託費・その他が含まれます*1。契約書上の「保守費」は主に(エ)ソフトウェア費や(カ)外部委託費に対応します。
自社で運用すれば保守・運用費は不要になりますか。
不要にはなりません。JUASの定義では、社員人件費や運転管理費も保守運用費の(キ)その他に含まれます*1。自社運用は外部委託費を圧縮できますが、担当者の人件費という形で費用は社内に残ります。
保守費の値上げを打診されたら、何を確認すればよいですか。
まず、値上げの対象がどの非機能要件に対応するかを確認します。IPA「非機能要求グレード2018」は、運用時間・バックアップ・障害時対応などが導入機器の選定やコストに大きく影響すると説明しています*2。要件を下げずに金額だけを下げる交渉は成立しにくいため、下げてよい要件があるかを先に整理しましょう。
クラウド型(SaaS)とパッケージ導入で、稼働後の費用の性質はどう違いますか。
製品同士の比較ではなく、費目の性質で見ます*1。SaaS等のサービス使用料はJUASの区分で(エ)ソフトウェア費に、自社保有のサーバー費用は(ウ)ハードウェア費に計上されます*1。前者は使用料として毎期の変動費になりやすく、後者は資産購入と保守費が分かれる点が異なります。
- *1 出典:一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査報告書2026」(2026年4月)
- *2 出典:独立行政法人情報処理推進機構「非機能要求グレード2018 利用ガイド[解説編](システム構築の上流工程強化 紹介ページ)」(2018年4月)
- *3 出典:経済産業省商務情報政策局・独立行政法人情報処理推進機構「DXの現在地とレガシーシステム脱却に向けて レガシーシステムモダン化委員会 総括レポート」(2025年5月28日)
- *4 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)」(2026年)
- *5 出典:独立行政法人情報処理推進機構「『中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン』第4.0版を公開」(2026年3月27日)
画像の出典元
- ノートパソコンの横に置かれた電卓と、費用の推移を示すグラフの資料/Photo by Jakub Żerdzicki on Unsplash
- 非機能のイメージ/Photo by Stephen Dawson on Unsplash
- 機能要件のイメージ/Photo by 2H Media on Unsplash
- チェックリストのイメージ/Photo by Jakub Żerdzicki on Unsplash