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法人向けECの価格非公開|設計と運用の要点

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 法人向けECの価格非公開は、価格を消す運用ではなく、認証した取引先にだけ価格を出す運用です。
  • 運用は三つの型に分かれ、標準品と特注品で型を分けて併用する選択もとれます。
  • 表示を消すだけでは応答から価格を取得され得るため、サーバ側での判定が対策の前提になります。
  • 2024年のBtoB-EC市場規模は514.4兆円、EC化率は43.1%で、受発注の電子化は広く進んでいます。
  • 費用は要件で動くため、価格体系と承認段数を棚卸ししてから見積を依頼すると比較できます。

A surgeon in a blue gown performing an endoscopic procedure
▽ 写真の出典元

法人向けECにおける価格非公開の基本

法人向けECの価格非公開とは、商品価格を一般の閲覧者には出さず、認証した取引先にだけ提示する運用です。2024年のBtoB-EC市場規模は514.4兆円、EC化率は43.1%と公表されており、法人取引の受発注の電子化は広い範囲へ及んでいます1。この2つの値は、経済産業省が公表した令和6年度(2024年度)の電子商取引に関する市場調査に載る数値です1。価格の見せ方が決まらないまま検討が止まっている場合は、「誰に」と「どこまで」を分けて考えると論点が整います。この記事では、価格非公開を商品と取引先の組み合わせに価格を紐づける設計の呼び名として扱います。

非公開を成立させる段階を三つに分け、各段階の作業を並べたものです。会員登録と承認の段階には、申込情報の受付として会社名や担当者、希望する取引条件を受け取る作業と、承認の運用として誰の承認で価格の閲覧が開くのかを段ごとに決める作業が入ります。価格の出し分けの段階には、価格表の割当として取引先の集まりごとに商品と価格の組を割り当てる作業と、基幹の価格マスタ連携としてどの周期で価格を渡すかを決める作業が入ります。認可制御の確認の段階には、サーバ側での判定として毎回誰の要求かを確かめ割り当てられた価格だけを返す作業と、権限のない要求の遮断として識別子を差し替えた要求を試して結果を確かめる作業が入ります。
非公開を成立させる三つの段階と各段階の作業の対応

消費者向けECでは、同じ商品に同じ価格が並ぶことが前提です。法人取引では取引先ごとの単価、掛け率、数量に応じた条件が並走し、同じ商品に複数の価格が同時に存在します。価格非公開という言葉は、この複数の価格のうちどれを誰に見せるかを認証で切り分ける設計を指します。認証前の閲覧者には価格を出さず、認証後の取引先にはその相手に割り当てた価格だけを出します。同じ商品に取引先ごとの価格表を割り当てる形は、2026年時点で公開されているShopifyのB2B向けカタログと価格の解説にも記載があります*5

掛け率とは、標準価格に対する取引先ごとの割引の比率を指す商慣行上の呼び方です。得意先別単価とは、同じ商品に取引先ごとの価格を割り当てた価格表を意味します。この二つが並ぶ環境では、価格は商品だけの属性ではなく、商品と取引先の組み合わせに紐づく値になります。価格非公開の設計は、この紐づけを画面上で再現する作業と同じ範囲を扱います。取引先の集まりに同じ価格表を共有する形は、2026年時点のAdobe Commerceの共有カタログの解説にも置かれています*6。非公開の可否より先に、自社の価格が何通りあるかを数える作業が来ます。

このキーワードには二つの読み方が混在します。一つはサイト上で価格を見せない運用、もう一つはEC構築サービス側の料金が要問い合わせで公開されていない状態です。前者は自社サイトの設計の問題、後者は発注前の予算把握の問題であり、解決の道筋が別々になります。本稿は前者を中心に置き、後者は「導入時の要件整理と費用の把握」で見積の取り方として扱います。

価格非公開の範囲は、価格そのものだけでなく、価格を推測できる情報にも及びます。数量割引の表、標準価格からの割引率、過去の見積書の写しは、単価が書かれていなくても水準を推測させます。非公開の対象を決めるときは、価格欄だけでなくこうした周辺の記載も一覧に入れます。対象を一覧にしておくと、公開側に残す情報との線引きが項目の単位で決まります。

価格非公開は、価格を消す取り組みではなく、提示先を限定する取り組みです。認証した相手には、その相手の取引条件に沿った価格を出し分けます。一般の閲覧者には、価格の代わりに商品仕様や取引の条件を置きます。本稿が根拠として参照する一次資料は8件で、内訳は官公庁の資料が4件、ベンダーの一次資料が4件であり、公表または最終改正の時点は2021年から2026年に分布します(出典:1から8の各原文)。何を隠し、何を残すのかを先に分けて決めておくと、後段の仕組みの検討で迷いが減ります。

価格の見せ方を決める前に棚卸しする五点(順位は着手順序の依存関係)

  1. 価格体系の棚卸しです。商品と取引先の組み合わせで単価が何通りあるかを数え、掛け率で計算できる範囲と個別価格が要る範囲を分けます。
  2. 承認段数の整理です。誰の承認で価格の閲覧が開くのかを段ごとに書き出し、受注の時点まで確定しない価格を洗い出します。
  3. 価格マスタ連携の確認です。基幹側の価格表をどの経路と周期でECへ渡すかを決め、連携が遅れた場合にどの値を出すかも決めます。
  4. 認可制御の確認です。画面の非表示ではなくサーバ側での判定で相手を確かめ、権限のない要求の遮断を公開前に検証します。
  5. 見積依頼の前提整理です。対象商品数、取引先数、承認段数、連携先の基幹、希望する運用の型を書面にまとめ、同じ前提で複数社へ渡します。

価格を非公開にする理由

価格非公開の副作用を補う順序です。はじめに取引条件の明示として、支払条件、最小の取引単位、納期の目安、対応地域を示します。次に仕様情報の提示として、型番、規格、寸法、材質を検索できる形で並べます。続いて見積依頼の受付として、数量、納期、用途、既存の取引の有無を聞き取ります。最後に回答の期限提示として、返答までの日数と担当の部署を画面に書きます。
価格を出さずに判断材料を残す補い方の順序

価格を非公開にする理由は、価格を隠したいからではなく、取引先ごとに異なる単価を一つの画面で成立させる必要があるからです。掛け率や数量条件が並ぶ環境では、一律の価格表示が既存の取引条件と食い違います。流通段階の異なる相手が同じ画面を見る場面への配慮も、理由として挙がります。情報の露出への懸念も動機になりますが、懸念の中身を分解すると、非公開の範囲は全商品に及ばない場合があります。非公開そのものを目的に置くと、公開側に残せたはずの判断材料まで失われます。なお、価格の取り決めそのものについて本稿が参照する公正取引委員会の指針は2件で、いずれも2026年時点の最終改正後の版です23。

取引先ごとの単価は、取引量、支払条件、契約年数などの積み上げで決まります。年間の取引価格を書面で取り決めている場合、サイト上の一律価格はその取り決めと並びません。見積を経て単価が確定する慣行も残り、受注の時点まで画面に出せる価格が固まらない場合があります。参照した2026年時点の指針で対象として記載されているのは取引先の販売価格の拘束であり、自社が単価をどう決めるかという話ではありません*2。こうした事情から、価格の提示を認証後に回す設計が選ばれます。

卸と小売、あるいは代理店と最終需要家が同じサイトを見る場合、提示先の切り分けが必要になります。卸向けの単価が末端の画面に出ると、既存の販売経路との条件差が見える状態になります。ただし、価格の取り決めそのものに関わる論点は法令側の話題であり、「取引・法令面での注意点」で指針の記載に沿って扱います。本節は、誰に見せるかという設計上の判断に限って整理します。

価格情報の露出への懸念は、「誰に見られると何が困るのか」に分解すると扱いやすくなります。競合に標準価格を参照される場面、既存の取引先が他社の条件を推測する場面、社内の承認前の価格が外に出る場面では、困る内容が別々です。分解すると、非公開にする範囲が全商品ではなく特定の商品群や特定の価格帯に限られる場合もあります。範囲を絞れば、公開したままの情報で新規の相談を受けられます。

非公開が目的になると、判断材料が失われます。価格を消しただけの画面は、新規の見込み客にとって比較の入口を持ちません。この副作用は「価格非公開のデメリットと補い方」で補い方とあわせて扱います。理由の側で決めるべきは、隠す範囲と残す情報の線引きです。線引きを言葉にしておくと、後段の要件整理でも判断がぶれません。

EC化率43.1%という水準は、法人取引の受発注が電子化した割合を示すもので、価格をサイトで公開している割合ではありません*1。同じ調査の値でも、指標の意味を取り違えると議論がずれます。価格の公開状況を示す公表値は、本稿の出典一覧8件のうち0件であるため、割合の断定は避けています。自社の判断は、公表値ではなく取引条件の実態から組み立てます。

自社の商流に合わせた要件整理を進めたい場合は、無料相談で要件を整理するのが近道です。

価格非公開の運用パターン

A nurse in a Central Visayas hospital operating room setting
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価格非公開の運用は、価格の見え方で三つの型に分かれます。登録前は商品も価格も出さないクローズド型、商品は公開して価格だけをログイン後に出す価格のみ非公開型、価格を出さず条件を聞いて回答する見積依頼型です。どの型が向く場面かは、新規開拓の比重と、価格が数量や納期で動く度合いで決まります。新規開拓を検索経路に頼らないならクローズド型、仕様で比較される商材なら価格のみ非公開型、条件で価格が動く商材なら見積依頼型を選びます。

クローズド型は、認証前の画面に商品情報も価格も出さない型です。取引先が固定しており、新規開拓を訪問や展示会など別経路で進めているのであれば、クローズド型を選びます。露出への懸念は小さくなりますが、検索経路からの新規接点は細くなります。認証前の公開範囲を含む初期設定の確認項目は、2026年時点で公開されているShopifyのB2B専用ストア向けチェックリストに一覧として示されています*7。留意点は、既存の取引先が担当者を介さずに登録できる導線を用意しておくことです。

価格のみ非公開型は、商品や仕様は公開し、価格だけを認証後に表示する型です。型番や仕様で比較される商材を扱い、新規の相談も受けたいのであれば、この型が第一の候補になります。公開側の情報が残るため、価格以外の判断材料を検索経路から拾ってもらえます。認可制御の欠落は、2021年公開のIPA「安全なウェブサイトの作り方」改訂第7版で1.11の項目として挙げられています*4。留意点は、価格表の割当と認可制御(要求元に応じて閲覧できる情報を制限する仕組み)の確認に手間がかかることです。

見積依頼型は、価格を出さず、数量や納期の条件を聞いてから回答する型です。受注生産や特注が多く、数量や納期で価格が動く商材では、見積依頼型に寄せます。留意点は、回答までの期限を示さないと問い合わせの途中で離脱が生じることです。受付から回答までの手順を画面に書いておくと、待ち時間の不安が下がります。

三つの型を、価格の見え方、向く場面、留意点の順に並べると差が読み取れます。

型は商品群ごとに分けて併用できます。標準品は価格のみ非公開型、特注品は見積依頼型という分け方であれば、公開側の情報を残しながら、条件で動く価格を受注時に確定できます。公式資料でも、取引先の集まりごとにカタログと価格を割り当てる考え方が示されています56。本稿のベンダー一次資料4件のうち、取引先ごとのカタログや価格表の割当に触れるものは3件で、内訳はShopifyが2件、Adobeが1件です56*7。参照した時点の記載に基づく整理であり、機能の有無は各基盤の資料で確かめてください。

型を選ぶ順序は、まず新規開拓の比重、次に価格が動く要因、最後に運用の手間です。新規からの相談を受けたいのであれば、公開側の情報を残す型が候補になります。価格が数量や納期で動くなら、価格表の割当より見積の受付を整えるほうが先に効きます。手間の見当は、対象商品数と取引先数の掛け合わせで付けられます。

価格の見え方 向く場面 留意点
クローズド型 認証前の画面に商品情報も価格も出さない 取引先が固定し新規開拓を別経路で進める場合 既存の取引先が自ら登録できる導線を用意する
価格のみ非公開型 商品や仕様は公開し価格だけを認証後に表示する 型番や仕様で比較され新規の相談も受けたい場合 価格表の割当と認可制御の確認に手間がかかる
見積依頼型 価格を出さず条件を聞いてから回答する 受注生産や特注が多く数量や納期で価格が動く場合 回答までの期限を示さないと離脱が生じる

非公開を成立させる仕組みと確認点

非公開を成立させる際に押さえる点は、表示を隠すこととアクセスを許可しないことが別だという理解です。画面から価格を消しても、応答の中に価格が残っていれば取得され得ます。公開資料ではアクセス制御や認可制御の欠落が項目として挙げられ、対策としてはサーバ側での判定が位置づけられています4。本稿が参照した官公庁の資料4件のうち、技術面の対策を扱うのは2021年公開のこの1件です4。段階は、会員登録と承認、価格の出し分け、認可制御の確認の三つに分かれます。

見積を取る手順です。前提の書面化では、前提を書面にまとめます。対象範囲の確定では、対象商品数と取引先数を確定します。確認事項の往復では、確認事項を複数社と往復します。金額の内訳の比較では、内訳を四つに分けて比べます。
見積を取る際の前提の書面化から内訳の比較までの手順

会員登録と承認は、誰に価格を出すかを決める入口です。申込情報の受付では、会社名、担当者、取引の有無、希望する取引条件を受け取ります。次に取引先マスタ(自社が取引する法人の情報をまとめた台帳)との突合に進み、既存の取引先か新規かを判定します。既存であれば取引先コードに紐づけます。新規であれば与信(相手の支払能力を確かめて取引の上限を決める判断)や取引条件の確認へ回します。

承認の運用では、誰の承認で価格の閲覧が開くのかを段ごとに決めます。営業担当の確認、上位の承認、与信の確認が並ぶ場合、段が増えるほど登録から閲覧までの待ち時間が伸びます。待ち時間が長いのであれば、仕様情報だけ先に開き、価格は承認後に開く二段構えもとれます。承認の記録を残しておくと、後から閲覧範囲の妥当性を確かめられます。

価格の出し分けは、価格表の割当と基幹の価格マスタ連携の二つに分かれます。価格表の割当では、取引先の集まりごとに商品と価格の組を割り当てます。公式資料でも、取引先ごとのカタログと価格の割当や、専用の店舗を立てる際の初期設定の確認項目が示されています57。いずれも2026年時点のShopifyの資料2件で、割当の考え方と初期設定の項目が別の文書に分かれています57。基幹の価格マスタ連携では、どの周期で価格を渡すか、更新が遅れたときにどの値を出すかを決めます。

認可制御の確認は、公開後も続く点検です。サーバ側での判定では、誰の要求かを毎回確かめ、その相手に割り当てられた価格だけを返します。権限のない要求の遮断では、他の取引先の識別子を差し替えた要求や、画面を経由せず呼ばれた応答経路を試し、結果を確かめます。ヘッドレス構成(画面とデータ提供の仕組みを分離した構成)では、価格の取得経路が画面と分かれます。そのため、応答側での判定が前提になります8。参照したのは2026年時点のShopify.devのB2B向けヘッドレスの解説1件です8。ここでの点検は対策の位置づけであり、安全の保証を意味しません。

段階と作業の対応を並べておくと、抜けが見つけやすくなります。

確認の記録は、次の改修のときに効いてきます。誰にどの価格表を割り当てたか、いつ承認したかを残しておけば、価格の誤提示が起きた際の原因の切り分けが早くなります。誤った価格を提示すると、請求の訂正、再出荷、取引条件の再確認という手戻りが同時に発生します。手戻りの範囲は取引先数に応じて広がるため、公開前の点検に時間を割く判断が現実的です。

価格非公開のデメリットと補い方

価格非公開の副作用は、価格を知らない相手が比較の入口を失うことです。検索経路や生成AIの回答は公開された記述をもとに組み立てられるため、価格に触れた記述がなければ価格に関する引用も生まれません。順位や表示のされ方は各事業者の判断で決まり、こちらから保証できるものではありません。補い方は、価格以外の判断材料を公開し、見積までの順序を示すことです。

新規の見込み客は、価格がない画面では検討を続ける理由を持てません。仕様も価格も出ていない場合、比較の表に載る前に候補から外れます。既存の取引先向けの画面を新規の入口として兼用すると、この抜けが起きます。入口を分け、公開側に何を残すかを決める判断が要ります。

検索や生成AIの経路では、公開された記述が引用の材料になります。価格を出さない場合でも、仕様、納期の考え方、最小の取引単位、対応できる条件の範囲は公開できます。数値を伴う記述は引用されやすい半面、根拠のない数値を置くと訂正の手間が増えます。公表された調査の値を使うのであれば、指標の意味と年を添えて書きます1。本稿で引用できる市場側の公表値は2025年公表の経済産業省の調査1件で、そこにも価格の公開状況を示す値は含まれません1。

価格を出さずに信頼を伝える設計は、取引条件の明示から始まります。支払条件、最小の取引単位、納期の目安、対応地域といった条件は、価格そのものではありません。次に仕様情報の提示として、型番、規格、寸法、材質などを検索できる形で並べます。ここまでで、価格以外の適合判断が読者の側で進みます。

続く見積依頼の受付では、数量、納期、用途、既存の取引の有無を聞き取ります。項目を絞ると入力の負担が下がり、聞き取りの不足は担当者からの折り返しで補えます。最後に回答の期限提示として、返答までの日数と担当の部署を画面に書きます。期限が書かれていれば、待つあいだの離脱が減ります。

副作用を放置した場合の行き先も見ておきます。非公開のまま新規の相談が来ない状態が続くと、EC化の投資が既存取引の受注業務の置き換えだけに閉じます。2024年のEC化率43.1%は受発注の電子化の広がりを示す値であり、新規接点の多寡を示す値ではありません*1。逆に、公開範囲を広げすぎると既存の取引条件との食い違いが起きます。二つの間の線引きは、全社で一律に決めるより、商品群ごとに決めるほうが現実的です。

取引・法令面での注意点

取引・法令面では、価格の取り決めに関する指針の記載を前提として押さえます。事業者が取引先の販売価格を拘束することは、原則として不公正な取引方法に当たるとされ、正当な理由がある場合の例外も示されています2。本稿が参照した版の最終改正は令和8年(2026年)7月8日で、改正の有無は公正取引委員会が公表する原文で確かめる前提とします2。価格を非公開にすれば論点を避けられる、という関係にはありません。本節は指針の記載の位置づけに限って整理します。

販売価格の拘束は、価格の見せ方とは別の論点です。サイト上で価格を出すか出さないかという設計の話と、取引先が自らの販売価格を決められるかという話は、同じではありません。非公開にしていても、取引先の販売価格を指示していれば指針の対象となる場面が生じます。公開していても、取引先が自ら価格を決めているのであれば事情は異なります。二つを混同すると、設計の議論が止まります。

価格に関する情報の収集や提供にも、指針上の整理が置かれています。事業者団体の活動に関する指針では、価格に関する情報の収集・提供について記載があります3。この指針の最終改正は令和8年(2026年)1月1日で、年月日は公表された原文の記載を確かめたうえで社内の資料に控えます3。会員向けの画面に価格情報を集約する運用を検討する場合は、原文の範囲を確かめたうえで進めます。

本稿の記述は指針の原文の範囲にとどめており、個別の当てはめには踏み込みません。実際の運用が指針のどの記載に関わるかは、取引の実態と契約の文言で変わります。判断が必要な場面では、法務や外部の専門家に確認する前提で設計を進めます。指針は改正されるため、参照した時点の版であることを社内の資料にも残しておきます。本稿が参照した8件の公表または最終改正の時点は、2021年が1件、2025年が1件、2026年が6件です(出典:1から8の各原文)。

表示、請求、契約の整合も確認の対象です。画面に出した価格と、注文請書や請求書の金額が一致しているかを、価格表の更新時に確かめます。認証後に出した価格が古い価格表の値だった場合、請求の段階で差が出ます。取引基本契約に価格の決め方が書かれているのであれば、画面の出し分けがその記載と並ぶかを確かめます。

非公開の設計と法令面の確認は、同時に進めるほうが手戻りが少なくなります。価格表の割当を作り込んだあとで契約の記載と食い違うと、割当のやり直しが発生します。逆に、法令面の確認だけを先に済ませても、画面の出し分けの検証は残ります。二つを並行して進め、公開前に突き合わせる段取りが現実的です。

Refined dining setting in a Tokyo restaurant, featuring a gourmet dish at night.
▽ 写真の出典元

導入時の要件整理と費用の把握

導入時の要件整理は、価格体系の棚卸し、承認段数の整理、価格マスタ連携の確認、見積依頼の前提整理の四つで進みます。費用は対象商品数、取引先数、連携の本数で動くため、この四つが固まらないうちは見積の幅が広がります。EC構築サービスの料金が要問い合わせになるのも、同じ事情によります。見積の精度は、発注側が渡す前提の粒度で決まります。

価格体系の棚卸しでは、商品と取引先の組み合わせで単価が何通りあるかを数えます。標準価格に掛け率を当てる方式、取引先別に個別価格を持つ方式、数量帯で単価が変わる方式は、画面での扱いが別々になります。三方式が混在している場合は、商品群ごとにどの方式かを一覧にします。画面上の扱いを確かめる先としては、2026年時点で公開されているShopifyのB2Bカタログの解説とAdobe Commerceの共有カタログの解説の計2件が参照できます56。通り数が多いほど、価格表の割当と検証の手間が増えます。

承認段数の整理では、価格の閲覧の承認と受注の承認を分けて書き出します。閲覧の承認は登録時に一度、受注の承認は注文ごとに発生する場合があり、扱いが違います。段が多い場合は、どこを自動の判定に寄せ、どこを人の確認に残すかを決めます。ここを曖昧にしたまま開発に入ると、要件の追加として費用が動きます。

価格マスタ連携の確認では、基幹側の価格表をどの経路と周期でECへ渡すかを決めます。日次の一括連携か、注文の都度の参照かで、必要な仕組みが変わります。連携が遅れたときに古い価格を出すのか、価格を出さずに見積へ回すのかも、事前に決めておく項目です。ヘッドレス構成では価格の取得経路が独立するため、応答側での判定と連携の設計を合わせて見ます8。この前提は2026年時点のShopify.devの解説に沿った整理で、専用ストアを立てる場合の初期設定は2026年時点の別の1件で確かめます7*8

見積依頼の前提整理では、対象商品数、取引先数、承認段数、連携先の基幹、希望する運用の型を書面にまとめます。同じ前提を複数社へ渡すと、金額の差が要件の解釈の差として読めます。要問い合わせの料金は、この前提の粒度で精度が変わります。費用の相場を示す公表値は本稿の出典一覧8件のうち0件であるため、金額の目安は各社の見積で確かめます。根拠のない相場の金額を前提に置くよりも、確かめるべき項目を並べるほうが比較に役立ちます。

内製で進める場合に要る知見は三領域あります。認可制御の検証、基幹との価格マスタ連携、取引先ごとの価格表の設計です。これに公開側の情報設計と見積フローの運用が並びます。認可制御の検証の観点は、2021年公開のIPAの資料1.11の記載を出発点に置けます*4。外部に委ねるのであれば、三領域のうち自社に残す範囲を先に決めると、費用の内訳が読みやすくなります。

見積を取る手順は、前提の書面化、対象範囲の確定、確認事項の往復、金額の内訳の比較という順です。内訳は初期の構築費、価格表の移行費、連携の開発費、公開後の保守費に分けて受け取ります。誤った価格を提示した場合の手戻りは請求と出荷の両方に及ぶため、検証の工数を内訳に残しておきます。自社の価格体系を前提に置いた見積であれば、金額の比較がそのまま要件の比較になります。内訳を受け取る際は、価格表の移行対象の件数、連携の本数と方式、認可制御の検証範囲、公開後の保守の対象範囲という四点が金額の根拠として書かれているかを確かめます。四点のいずれかが空欄のままであれば、その項目は着手後の追加費用として動く余地が残ります。

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よくある質問

EC構築サービスの料金が要問い合わせになっているのはなぜですか

価格表の通り数、取引先数、承認段数、基幹との連携本数で作業量が変わるため、一律の金額を出しにくいことが理由です。前提が決まっていない状態で受け取った金額は幅が広くなります。対象商品数と取引先数、希望する運用の型を書面にまとめてから依頼すると、内訳を比較できる見積になります。

会員限定価格と得意先別単価はどう違いますか

会員限定価格は、認証した会員の全体、あるいは会員の区分ごとに同じ価格を出す考え方です。得意先別単価は、取引先ごとに別の価格を割り当てる考え方で、同じ商品に複数の価格が並びます。前者は価格表が一つで足りる場合があり、後者は取引先の集まりごとに価格表を割り当てる設計になります。

価格を非公開にすると検索経路からの接点はなくなりますか

価格を出さなくても、仕様、規格、納期の考え方、最小の取引単位、対応できる条件の範囲は公開できます。公開された記述が引用の材料になるため、価格以外の情報を残せば接点は保てます。ただし順位や表示のされ方は検索や生成AI側の判断で決まり、こちらから保証できるものではありません。

基幹側に得意先別の価格表がない場合はどう進めますか

まず商品と取引先の組み合わせで単価が何通りあるかを数え、掛け率で計算できる範囲と個別価格が要る範囲を分けます。計算で出せる範囲はEC側で掛け率を持たせ、個別価格の範囲だけを表として管理する分け方が候補になります。移行の手間は通り数に応じて増えるため、棚卸しを見積の前に済ませます。

見積を依頼するときに何を伝えると比較しやすくなりますか

対象商品数、取引先数、価格の決め方の方式、承認段数、連携先の基幹、希望する運用の型の六点を書面で渡します。同じ前提を複数社に渡すと、金額の差が要件の解釈の差として読めます。認可制御の検証にどこまで含むかも明記すると、公開後の手戻りの見落としを避けられます。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「FSOL B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

  1. *1 出典:経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」(2025) 経路
  2. *2 出典:公正取引委員会「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(2026) 経路
  3. *3 出典:公正取引委員会「事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」(2026) 経路
  4. *4 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「安全なウェブサイトの作り方 改訂第7版(1.11 アクセス制御や認可制御の欠落)」(2021) 経路
  5. *5 出典:Shopify「Shopify Help Center『Catalogs and pricing in B2B』」(2026) 経路
  6. *6 出典:Adobe「Adobe Commerce ドキュメント『Shared catalog overview』」(2026) 経路
  7. *7 出典:Shopify「Shopify Help Center『Setup checklist for dedicated B2B stores』」(2026) 経路
  8. *8 出典:Shopify「Shopify.dev『Headless with B2B』」(2026) 経路

画像の出典元

  1. A surgeon in a blue gown performing an endoscopic procedure/Mehmet Turgut Kirkgoz on Pexels
  2. A nurse in a Central Visayas hospital operating room setting/Arthur Uzoagba on Pexels
  3. Refined dining setting in a Tokyo restaurant, featuring a gourmet dish at night./Photo by Szymon Shields on Pexels

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◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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