◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- BtoB通販の新規開拓は、広告の出稿先を選ぶ前に、自社のEC比率と業界のEC化率の差を出し、その差の理由を見分けるところから始めます。
- 2024年のBtoB-EC化率は全産業で43.1%、卸売業で40.3%、食品業(製造)で81.3%と業界差が大きく、自社の業界がどちらに近いかで着手を急ぐかどうかが変わります。
- 最初の投資先は自社サイトの新規受付で、主力商材を1カテゴリに絞って既存の取引先に試してもらい、反応を確かめてから外部の集客へ予算を広げます。
- 目的が既存営業の負担軽減なら定番品の受注画面から、届いていない顧客層の開拓なら商材ページと初回取引の条件の明示から着手します。
- 問い合わせ数・新規取引件数・初回受注までの日数を経路ごとに月次で記録し、CVRは分母が小さく揺れやすいため四半期でまとめて判断します。
目次

新規開拓、まず何を確かめる?
BtoB通販の新規開拓は、広告の出稿先や展示会の候補を選ぶ前に、自社の商材が「買い手に検索で探される商材」なのか「既存の取引関係のなかで決まる商材」なのかを見分けるところから始めます。
この見分けがつくと、限られた予算と人手を入れる先が一つに絞れます。前者なら自社サイトに新規の受け口を作って探されたときに見つかる状態を整えることが最初の一手になり、後者なら既存顧客の受注処理をオンラインへ移して営業が動ける時間を作り、その時間を新規の接点づくりへ回すほうが先になります。
判断の物差しになるのが業界のEC化率です。2024年のBtoB-EC市場規模は514兆4,069億円(前年比10.6%増)で、「その他」を除いたEC化率は前年から3.1ポイント増の43.1%でした1。買い手の側では、すでに取引額のおよそ4割が画面上で動いています。
この記事は、従業員数十名規模で新規開拓をほぼ一人で任されている営業・マーケティング担当者が、次の予算を決める前に着手順を組み立てる場面を想定しています。すでに月ごとの問い合わせ件数を数えていて、どの経路から来たかを記録できる状態なら、後半の測り方はそのまま使えます。記録がまだない場合は、最初の節の確かめ方から順に進めてください。
自社の商材とEC化率の関係を確認する
打ち手を選ぶ前に、自社の商材が置かれている土俵を確かめます。
目安になるのがEC化率で、これはすべての商取引金額のうち、ECを通じて行われた分がどれだけあるかを示す割合です。
2024年のBtoB-EC市場規模は514兆4,069億円で前年比10.6%増、「その他」を除いたEC化率は前年から3.1ポイント増えて43.1%でした1。
企業間の取引額のうち4割強がすでに画面上で動いている水準で、買い手の側に「発注は画面から」という手順が広がっていることを示しています。
ただし、この43.1%をそのまま「ネットで新規が取れる割合」と読むと判断を誤ります。
BtoBのECには、企業間で受発注データを決まった形式でやり取りするEDIのように、すでに取引のある相手との手続きを電子化したものが多く含まれます。
実際、卸売業でEC化率が拡大した要因としては、大手流通企業を中心にEDI技術の標準化が進んでいることが挙げられています1。
つまりEC化率が高い業界は「買い手がオンラインでの発注に慣れている」ことの裏づけにはなりますが、「新規の買い手がネットで売り手を探している」ことまでは意味しません。
ここを分けて考えると、EC化率は追い風の強さを測る風向計であって、打ち手そのものではないと分かります。
そのうえで、自社の商材を二つに分けて考えます。
一つは、買い手が型番や規格、用途の言葉で検索して探す商材です。消耗品、標準品、補修部品のように仕様が決まっていて、買い手が相見積もりを取りやすいものが当てはまります。
もう一つは、既存の取引関係や紹介のなかで決まる商材です。個別仕様が多く、図面や打ち合わせを経て価格が決まるもの、導入後の保守まで含めて選ばれるものが当てはまります。
見分け方は難しくありません。直近1年の新規受注をたどり、最初の接点が「先方からの問い合わせ」だったか「こちらからの訪問や紹介」だったかを数えるだけです。
前者が多いなら、探されたときに見つかる状態を整える投資が効きます。後者が多いなら、営業が動ける時間を増やす投資のほうが先に効きます。
業界平均と自社の現状を比べる
次に、自社の現在地を一つの数字にします。
直近12か月の受注金額を分母に、そのうち自社サイトや受発注システムなど画面上で受けた分を分子にすると、自社のEC比率が出ます。
電話とFAX、営業担当がその場で受けた注文は分母にだけ入れます。集計は月別に出しておくと、季節による増減と施策の効果を後から切り分けられます。
この一つの数字があるだけで、社内の議論が「ECを強くする」という抽象的な話から、「いまの比率をどこまで上げるか、そのために何件を画面へ移すか」という具体的な話に変わります。上司に新規開拓の計画を説明するときにも、出発点として共有しやすくなります。
業界平均と比べるときは、差そのものより差の理由を見ます。
自社の比率が業界平均より低い場合、理由は大きく二つに分かれます。
一つは、買い手はすでにオンライン発注に慣れているのに自社が受け口を用意していない場合で、これは着手すればすぐ動く伸びしろです。
もう一つは、商材の性質上そもそも個別対応が必要で、画面だけでは取引が完結しにくい場合です。この場合は比率の低さ自体が問題ではありません。
後者であっても、見積もり依頼の受付、仕様の聞き取り、図面の受け渡しまでをオンラインへ移せる余地は残ります。取引の全部を移すのか、入り口だけを移すのかを分けて考えると、必要な投資の規模が現実的な水準に落ち着きます。
最後に、いまの新規開拓がどこで止まっているかを数えます。
初回の問い合わせから初回の受注までに何日かかっているか、見積もりの回答までに何日かかっているか、問い合わせのうち商談に進んだ割合はどれだけか。
この三つを直近半年分だけでも並べると、足りないのが「問い合わせの数」なのか「問い合わせを受けてからの速さ」なのかが見えます。
数が足りないなら入り口を作る話になり、速さが足りないなら社内の手順を直す話になります。予算の使い先がまったく違うので、順序を取り違えないことが大切です。
問い合わせが月に数件しかないのに営業支援の仕組みから入れると、使う場面が来ないまま費用だけが残ります。
では、自社の業界はどのあたりに位置しているのでしょうか。
公表されている業界別の数字を並べると、平均だけを見ていては分からない差が見えてきます。
自社の業界はEC化が進んでいる?(全産業・卸売業・食品製造業の比較)
全産業平均は43.1%
2024年のBtoB-EC市場規模は514兆4,069億円で、前年比10.6%増でした1。同じ年の「その他」を除いたEC化率は43.1%で、前年から3.1ポイント増えています1。
ここで注目したいのは水準よりも動きの向きです。市場規模が1割を超えて伸び、化率も年単位で数ポイント上がり続けているということは、買い手側の発注手順が毎年少しずつ画面へ移っていることを意味します。
この流れのなかでは、オンラインの受け口を持たない売り手は、買い手が仕入れ先を見直すタイミングで候補に入りにくくなります。新規開拓の巧拙以前に、検討の土俵に乗るかどうかの問題になります。
一方で、この43.1%という平均を自社の目標値として扱うのは適切ではありません。
全産業の平均には、大企業同士の大量・反復の取引が大きく効いています。取引の規模が大きいほど電子化の効果も大きいため、少数の大口取引が平均を押し上げる構造があります。
従業員数十名規模の事業者が、いきなり自社の受注の4割を画面経由にする必要はありません。平均は「買い手の環境がどれだけ整っているか」を示す背景情報として読み、自社の目標は自社の受注構成から決めます。
中小規模の事業者にとっての実務的な読み替えはこうです。
買い手の担当者は、他社との取引ですでに画面からの発注を経験しています。だから自社サイトに発注や見積もり依頼の受け口があっても、特別な説明をしなくても使ってもらえる可能性が高い、ということです。
逆に言えば、電話とFAXしか受け口がない状態は、買い手から見ると手間の多い取引先になります。新規の引き合いを増やす前に、来た引き合いを取りこぼさない形を作る意味がここにあります。
卸売業は40.3%、食品製造業は81.3%
業種別に見ると、数字の開きは大きくなります。
卸売業のBtoB-EC市場規模は128兆8,684億円で前年比6.3%増、EC化率は40.3%に拡大しています1。
卸売業は全産業の平均に近い水準で、取引の4割ほどが電子化されている計算になります。仕入れ先と販売先の双方から電子化を求められる位置にあるため、取引先の都合で電子化が進む面もあります。
これに対して食品業(製造)は、BtoB-EC市場規模が41兆5,859億円で前年比17.0%増、EC化率は81.3%まで上昇しています1。
取引額の8割以上がすでに画面やデータ連携を通じて動いているという水準です。
同じBtoBでも、卸売業の40.3%と食品業(製造)の81.3%では、買い手に求められる前提がまったく違います。前者では電話やFAXでの発注もまだ日常的に残りますが、後者では紙と電話だけで取引を続けること自体が例外に近づきます。
この差は、自社の打ち手の緊急度を決める材料になります。
自社の業界が食品業(製造)のように高い水準なら、オンライン対応は差別化ではなく取引継続の条件に近く、遅れは失注の理由になります。
卸売業のように4割前後なら、まだ紙と電話の取引先も残っており、先に整えた側が「発注しやすい取引先」として選ばれる余地があります。
どちらに近いかで、投資を急ぐか、順を追って広げるかの判断が変わります。
業界差が生まれる理由
なぜここまで差がつくのかを理解しておくと、自社の業界の数字を自分で推し量れるようになります。
一つ目の理由は、データのやり取りの形式が揃っているかどうかです。卸売業でEC化率が拡大した要因としては、大手流通企業を中心にEDI技術の標準化が進んでいることが挙げられています1。
EDIは企業間で受発注データを決まった形式でやり取りする仕組みで、形式が業界内で揃うほど、取引先を増やしても同じやり方で処理できます。逆に形式がばらばらだと、取引先ごとに個別対応が必要になり、電子化の効果が出にくくなります。
二つ目の理由は、発注そのものの性質です。
同じ品目を短い間隔で繰り返し発注する取引ほど、画面やデータ連携に移しやすくなります。品目が固定されていて数量だけが変わるなら、毎回の確認事項が少なく、担当者が替わっても運用が続きます。
食品業(製造)のように、原材料や資材を高い頻度で発注し、納期の管理が細かい分野で電子化が進みやすいのは、この性質によるところが大きいと考えられます。
反対に、案件ごとに仕様が変わり、そのつど図面や条件を突き合わせる商材では、見積もりの段階で人が介在する必要が残ります。
この二つの理由を自社に当てはめると、取るべき道が見えます。
発注の繰り返しが多く形式も揃いやすい商材なら、受注処理をオンラインへ移す効果が大きく、既存取引の効率化から着手して余力を作る流れが自然です。
個別仕様が中心なら、取引の全部を画面に載せる必要はありません。問い合わせと見積もり依頼の受け口だけを整え、その先は従来どおり人が対応する形でも、新規の入り口としては十分に機能します。
どちらにしても、次に決めるのは「限られた予算をどの順番で使うか」です。
少ない予算でどこから始める?
自社サイトでの新規受付から始める
予算と人手が限られているときの最初の一手は、自社サイトで新規の問い合わせと注文を受けられる状態を作ることです。
理由は四つあります。第一に、外部の媒体に依存せず自社の判断だけで着手できます。第二に、費用が一度きりの構築と運用の範囲に収まり、月々の変動が読めます。第三に、作った商材ページや条件の記載は掲載をやめない限り残り、後から広告や展示会で集めた相手の受け皿にもなります。第四に、訪問数と問い合わせ数を自社で記録でき、効果を自分の目で確かめられます。
広告は入り口を広げる手段であって、受け皿がない状態で出しても、反応を確かめる場所がありません。順序としては受け皿が先です。
BtoBの受け口で用意すべき項目は、消費者向けの通販とは違います。
商材ページには型番や規格、寸法、適合する用途など、買い手が比較に使う情報を載せます。買い手は社内で稟議を通すため、仕様を印刷できる形にしておくと扱いやすくなります。
あわせて、初回取引の条件を明記します。最低ロットや最小注文金額、納期の目安、支払い条件、与信の確認にどれくらいかかるか、法人以外からの注文を受けるかどうか。これらが書かれていないと、買い手は問い合わせる前に候補から外します。
価格の扱いも決めます。定価を公開するのか、ログインした取引先にだけ取引条件に応じた価格を出すのか、見積もり依頼だけを受けるのか。既存の取引先との関係を踏まえて、公開する範囲を先に決めておきます。
逆に、最初の段階でやらなくてよいことも決めておきます。
全商材の掲載、在庫連携、複雑な承認フロー、取引先ごとの細かな画面の出し分けは、運用が始まってから必要性がはっきりしてから手を付けても遅くありません。
一人で担当している状況では、作る量より続けられる量に合わせるほうが結果につながります。最初から作り込むと、更新が止まった時点で情報が古くなり、かえって信頼を損ないます。
小さく試して広げる
試す範囲は、主力商材を一つのカテゴリに絞るところから始めます。
よく出る定番品、仕様の説明が短くて済む品目、在庫の把握が確実な品目を選びます。ここで扱う品目を絞るのは、うまくいかなかったときに原因を特定しやすくするためです。
掲載する情報、価格の出し方、問い合わせの受け口を決めたら、まず既存の取引先に案内して使ってもらいます。
既存の取引先から始めるのには理由があります。
相手は商材を知っているため、つまずいた箇所があれば「ここが分かりにくい」と直接教えてくれます。新規の相手は分かりにくければ黙って離脱するので、何が原因だったかは残りません。
この段階で見るのは、注文までにどこで手が止まったか、電話での確認がどんな内容で入ってきたか、記載が足りない項目は何かです。電話での問い合わせが減った項目は、説明として成立していたということになります。
ここで直した説明が、そのまま新規の買い手に向けた説明になります。
広げる判断は、感覚ではなく条件で決めます。
既存の取引先が電話での確認なしに注文を完了できるようになったこと、注文内容の取り違えが起きていないこと、社内で受注後の処理が滞りなく回ること。この三つが確認できたら、新規の受付を開き、取扱品目を増やしていきます。
外部の集客に予算を配分するのは、その後です。問い合わせが来たときに何が起きるかを一度自分の目で見てから広告を出すほうが、同じ費用でも取りこぼしが減ります。
なお、施策ごとの費用対効果を比較できる公的なデータは今回確認できていないため、ここで示した順序は実務上の進め方としての提案です。自社の商材や体制によって前後する場合があります。
効果はどう測ればいい?
問い合わせ数と新規取引件数を追う
測り方について先に断っておくと、ここで挙げる指標は日々の運用で使われている実務的なもので、外部の一次資料で裏づけを取ったものではありません。
それでも、数字を決めずに始めると「なんとなく反応が薄い」という感想だけが残り、続けるか止めるかの判断ができなくなります。最初に何を数えるかを決めておくことが、次の予算を確保するための準備にもなります。
追う数字は多くなくて構いません。
一つ目は問い合わせ数です。フォームからの送信、電話、メールを合わせ、経路が分かる形で数えます。二つ目は新規取引件数で、これまで取引のなかった企業から初めて受注した件数です。三つ目は初回の問い合わせから初回の受注までにかかった日数です。
問い合わせ数は入り口の広さを、新規取引件数は入り口が売上につながっているかを、日数は社内の対応の速さを表します。
問い合わせが増えているのに新規取引件数が動かないなら、増えているのは買う気のない相手か、対応の途中で離れているかのどちらかです。日数を見れば、どちらかの見当がつきます。
記録の仕方も決めておきます。
問い合わせを受けたら、どこから来たかを必ず残します。検索して見つけた、展示会で名刺交換した、既存の取引先から紹介された、といった区分です。フォームに一項目足すか、電話を受けたときに一言たずねるだけで済みます。
この記録がないと、後から「何が効いたのか」を再現できません。集計は月ごとにまとめ、前年の同じ月と比べます。BtoBは決算期や展示会の時期で問い合わせが増減するため、前の月との比較だけでは判断を誤ります。
CVRで施策ごとの効果を比較する
施策どうしを比べるときには、件数だけでなく割合も見ます。
CVRは、サイトを訪れた数のうち、問い合わせや注文といった目的の行動に至った割合のことです。訪問数が分母、問い合わせ件数などが分子になります。
件数だけで比べると、単に見られた回数が多い経路が有利に見えます。割合で比べると、少ない訪問でも確実に問い合わせにつながっている経路が見つかります。限られた予算を配分するときに効いてくるのは後者の情報です。
ただしBtoBでは、この割合を短い期間で判断しないよう注意します。
取引先の候補になる企業の数がもともと限られているため、月あたりの訪問数も問い合わせ件数も小さくなりがちです。分母が小さいと、たまたま1件増減しただけで割合が大きく動きます。
月ごとの数字は記録として残しつつ、判断は四半期でまとめた数字で行います。そのうえで、ページの内容を変えた時期や案内を出した時期を記録しておくと、変化と原因を突き合わせられます。
読み分けの目安はこうです。
訪問数はあるのにCVRが低いなら、直すのはページの側です。価格や最低ロット、初回取引の条件が書かれていない、問い合わせの入り口が分かりにくい、といった原因が考えられます。
CVRは悪くないのに件数が少ないなら、足りないのは訪問数です。検索で見つかる状態を整えるか、外部の集客に予算を配分する段階に来ています。
この二つを取り違えると、ページを直すべき場面で広告費を積み増すことになります。数字を分けて見る意味はここにあります。
ここまでで、自社の現在地を出す方法、業界の水準と照らす基準、最初に手を付ける範囲、そして効果の測り方がそろいました。
残るのは、これらをどの順番で実行するかです。次に、着手の順序として整理します。

自社のEC比率を出し、業界の水準と比べるところまでは社内でも進められますが、どの受注を画面へ移せば営業の時間が実際に空くのか、取引先ごとの価格をどこまで出し分けるのかは、いまの受注データと取引条件を見ながらでないと決まりません。BtoBの受発注をオンラインへ移す導入事例を公開している相手であれば、同じ論点を通ってきた前提で話が進みます。
相談では、いまの受注のうちどこまでを画面から受けられるか、初回取引の条件や与信の扱いをどう設計するか、最初に作る範囲をどこまで絞れるかを、自社の状況に沿って確かめられます。無料相談で要件を整理する
着手の順序として整理する
自社だけで着手でき、結果を自社の数字で確かめやすいものから並べています。
- 直近12か月の受注をオンライン経由とそれ以外に分け、自社のEC比率を出す
- 業界のEC化率と見比べ、差が商習慣によるものか未着手によるものかを見分ける
- 初回の問い合わせから初回の受注までの日数を数え、止まっている工程を特定する
- 主力商材を1カテゴリ選び、自社サイトに問い合わせと注文の受け口を作る
- 既存の取引先に案内して使われ方を見て、説明が足りない項目を直す
- 新規からの受付を開き、問い合わせ数と新規取引件数を経路ごとに記録する
- 反応を確かめたうえで、広告や展示会など外部の集客へ予算を配分する
この並びのどこに力を入れるかは、新規開拓の目的によって変わります。既存営業の負担を減らしたいのか、いまの営業では届かない顧客層を開きたいのかで、最初に作る範囲が違ってきます。
新規開拓の入り口、どれが自社に合う?(事例で見る2つの型)
| 型 | 向いている状況 | 最初に手を付ける範囲 | 先に動く数字 |
|---|---|---|---|
| 既存営業の負担を減らす型 | 受注の大半が既存の取引先で、電話とFAXの処理に時間を取られている | 既存取引先向けの受注画面と定番商材の掲載 | 受注1件あたりの処理時間と、営業が新規に使える時間 |
| 届いていない顧客層を狙う型 | 商圏や業種の外に買い手がいそうだが、営業が足を運べていない | 新規向けの商材ページと初回取引の条件の明示 | 経路ごとの問い合わせ数と新規取引件数 |

既存営業の負担を減らしたい場合
この型を選ぶ状況
受注の大半が既存の取引先からで、その処理に日々の時間が取られている場合は、この型から入ります。
電話で聞いた内容を紙に書き、基幹システムに入力し、在庫と納期を確認して折り返す。この一連の作業が1件あたり十数分かかっていれば、1日の受注件数を掛けた時間が丸ごと営業活動から差し引かれています。
新規開拓の数字を求められている担当者にとって、この時間は最も取り戻しやすい原資です。広告費を新たに確保するより、いまある時間を空けるほうが社内の合意も得やすくなります。
判断の目安は、受注のうち「内容がほぼ決まっている繰り返しの注文」がどれだけあるかです。
毎月同じ品目を数量だけ変えて発注してくる取引先が多いなら、その処理は画面へ移せます。前回の注文内容を呼び出して数量を変えるだけで発注が終わる形にすれば、相手の手間も減ります。
先に見た業種別の数字で言えば、発注の繰り返しが多い分野ほどEC化率が高く出ており1、買い手の側もこうした手順に慣れています。
最初に手を付ける範囲
最初に載せるのは、注文件数の多い定番品です。
取引先ごとに価格が違う場合は、ログインした相手にその取引先の価格だけを表示する形にします。誰でも見られる場所に一律の価格を出すと、既存の取引条件との整合が問題になります。
あわせて、注文履歴からの再注文、納期の目安の表示、注文内容の控えの発行まで用意すると、電話での確認そのものが減ります。
この型では、受注の効率化が目的の中心に見えますが、新規開拓との関係は明確です。
空いた時間を何に使うかを先に決めておかないと、別の作業で埋まります。月に何時間を新規の訪問や問い合わせ対応に充てるかを、着手前に決めておきます。
当社が公開している導入事例にも、既存の取引先からの受注をオンラインで受ける形に切り替え、受注業務の手順を整理した例があります2。導入後の件数や金額といった数値は公開していないため、ここでは進め方の参考として挙げています。
| 確かめること | 判断の目安 |
|---|---|
| 繰り返しの注文の割合 | 受注件数のうち、品目が固定で数量だけ変わる注文が多いか |
| 1件あたりの処理時間 | 電話受付から入力・折り返しまでに何分かかっているか |
| 価格の出し分け | 取引先ごとの価格をログイン後にだけ表示する必要があるか |
| 空いた時間の使い道 | 月に何時間を新規の活動へ回すかを着手前に決めているか |
既存チャネルで届かない顧客層を狙いたい場合
この型を選ぶ状況
既存の営業網では接点を持てない相手に商材が向いている場合は、この型を選びます。
たとえば、営業拠点から遠い地域の事業者、これまで想定していなかった業種、少量から試したい新規の相手などです。訪問を前提にすると採算が合わない相手でも、画面からの受付なら対応できます。
該当するかどうかは、既存顧客の業種と地域を一覧にして、空白がどこにあるかを見れば見当がつきます。空白が営業体制の都合で生まれているなら、この型が効きます。
この型では、商材が探される言葉で書かれているかどうかが成否を分けます。
社内で使っている呼び方と、買い手が検索に使う言葉は一致しないことがあります。型番だけでなく、用途や解決したい状況の言葉を商材ページに入れておくと、初めての相手にも見つかります。
2024年のBtoB-EC化率が全産業で43.1%まで上がっている状況では1、買い手は取引のない相手からでも画面経由で購入する手順に慣れています。初回の取引をオンラインで始めること自体は、もはや特別な行動ではありません。
最初に手を付ける範囲
新規の相手に向けては、商材の情報よりも取引の条件のほうが先に読まれます。
初回の注文に最低金額やロットの制限があるか、支払いは前払いか掛けか、与信の審査にどれくらいかかるか、法人以外からの注文を受けるか。ここが書かれていないと、問い合わせる前に離脱します。
返品や納期の遅れが出たときの連絡先も明記します。取引実績のない相手にとっては、こうした記載の有無が信用の判断材料になります。
この型では、反応を測る仕組みを最初から組み込みます。
問い合わせの経路を記録し、どの商材ページから来たかを残しておくと、次にどの品目を増やすかの判断材料になります。
当社が公開している導入事例にも、これまでの営業の形では接点を持てなかった相手からの受注を、オンラインの窓口で受けられるようにした例があります3。こちらも導入後の数値は公開していないため、範囲の決め方の参考としてご覧ください。
| 確かめること | 判断の目安 |
|---|---|
| 顧客の空白 | 既存顧客の業種と地域の一覧に、営業体制の都合でできた空白があるか |
| 探される言葉 | 買い手が検索に使う用途や状況の言葉が商材ページに入っているか |
| 初回取引の条件 | 最低ロット・支払い条件・与信の期間が明記されているか |
| 経路の記録 | 問い合わせがどのページ・どの経路から来たかを残せているか |

要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 着手の起点 | 自社のEC比率と業界のEC化率の差を出し、差の理由を見分けてから打ち手を決める |
| 業界の目安(2024年) | 全産業43.1%、卸売業40.3%、食品業(製造)81.3% |
| 最初の投資先 | 自社サイトの新規受付。外部の集客は反応を確かめた後に配分する |
| 試す範囲 | 主力商材を1カテゴリに絞り、既存の取引先に案内して説明の不足を直す |
| 型の選び分け | 目的が既存営業の負担軽減か、届いていない顧客層の開拓かで最初に作る範囲を変える |
| 測る数字 | 問い合わせ数・新規取引件数・初回受注までの日数を経路ごとに月次で記録し、CVRは四半期で判断する |
小さく試して広げる進め方は、どこまでできたら次へ進むのかという条件を決めないと途中で止まります。掲載範囲の広げ方、記録すべき数字、既存の基幹業務との突き合わせは、構築と運用の両方を経験している相手と一緒に決めるほうが手戻りが少なくなります。 相談では、第1段階で載せる商材の選び方、既存顧客に試してもらう際の確認項目、問い合わせ数とCVRをどの粒度で記録するかまで、運用を始めた後の手順を具体的に確かめられます。
よくある質問
自社の業界のEC化率が低い場合、BtoB通販の新規開拓は向かないのでしょうか。
向かないとは限りません。EC化率が低い業界は、まだ電話やFAXでの発注が残っているということなので、先にオンラインの受け口を整えた事業者が「発注しやすい取引先」として選ばれる余地があります。
一方、2024年の食品業(製造)のようにEC化率が81.3%まで上昇している分野では1、オンライン対応は差をつける手段というより取引を続ける条件に近くなります。自社の業界がどちらに近いかで、急ぐか順を追うかを判断してください。
広告はいつから出すのがよいですか。
自社サイトで問い合わせや注文を受けられる形が整い、既存の取引先に使ってもらって説明の不足を直した後をおすすめします。
受け皿がない状態で広告を出すと、訪問はあっても問い合わせに至らず、原因がページにあるのか広告の対象にあるのか切り分けられません。
なお、広告や紹介など施策ごとの費用対効果を比べられる一次データは今回確認できていないため、金額の目安は示していません。実際の配分は自社で記録した問い合わせ数とCVRをもとに決めてください。
取引先ごとに価格が違うため、サイトに価格を出すことに不安があります。どうすればよいですか。
公開する範囲を分けて設計します。誰でも見られる場所には定価や参考価格、または「見積もり依頼」の受け口だけを置き、取引先ごとの価格はログインした後にその相手の条件でのみ表示する形です。
この場合、新規の相手には初回取引の条件(最低ロット、支払い条件、与信の確認にかかる期間)を明記しておくと、価格が出ていなくても問い合わせにつながりやすくなります。既存の取引条件との整合を先に社内で確認してから公開範囲を決めてください。
新規開拓を一人で担当していて時間がありません。最低限どこまでやればよいですか。
まず、直近12か月の受注をオンライン経由とそれ以外に分けて自社のEC比率を出すことと、初回の問い合わせから初回の受注までの日数を数えることの二つだけでも効果があります。
この二つがあれば、足りないのが問い合わせの数なのか対応の速さなのかが分かり、限られた時間を使う先を間違えずに済みます。
そのうえで着手するなら、主力商材を一つのカテゴリに絞って受け口を作り、既存の取引先に使ってもらうところまでを一区切りにすると、日常業務と並行しても進められます。
すでにEDIで受発注をしている取引先があります。それでもECサイトは必要ですか。
目的が違うため、両方が必要になる場合があります。EDIは企業間で受発注データを決まった形式でやり取りする仕組みで、主に取引が確立した相手との処理を効率化します。卸売業でEC化率が40.3%まで拡大した要因としても、EDI技術の標準化が挙げられています1。
これに対して自社サイトの受け口は、まだ取引のない相手が条件を確認して問い合わせるための入り口です。新規開拓が目的であれば、EDIの有無にかかわらず、初めての相手が見て判断できる情報を置く場所が要ります。
効果が出るまでにどれくらいの期間を見ておけばよいですか。
期間を断定できる資料は今回確認していないため、目安の月数は示しません。代わりに、判断の順序で管理することをおすすめします。
まず既存の取引先が電話での確認なしに注文を完了できるか、次に新規からの問い合わせが経路ごとに記録できているか、最後にCVRが四半期の集計で比較できるか。この順に条件が満たされてから、続けるか広げるかを判断します。
BtoBは分母が小さく月ごとの数字が揺れやすいため、単月の増減で結論を出さないことが大切です。
- 1 出典:経済産業省 商務情報政策局情報経済課「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2025年) 経路
- 2 出典:株式会社イーシー・ライダー「導入事例:株式会社ナイガイ様」 経路
- 3 出典:株式会社イーシー・ライダー「導入事例:日東電工CSシステム株式会社様」 経路
画像の出典元
- A minimalist image featuring a shopping cart with cosmetics/Photo by https://kaboompics.com/ on Pexels
- オフィスの自席で納品書とノートパソコンを見比べる日本人の会社員/画像:生成AI(自社)
- Group of colleagues discussing color wheel and planning in a/Photo by Ivan S on Pexels
- オフィスで段ボール箱の中身とタブレットを見比べる日本人の会社員/画像:生成AI(自社)