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BtoB ECの棚卸と在庫差異|原因の分け方と是正手順

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • BtoB ECの棚卸資産は、各事業年度終了の時に実地棚卸しをするのが原則で、循環棚卸などへの代替は継続適用が条件です。
  • 在庫差異は「原因を並べて終わり」ではなく、帳簿の訂正と記録の残し方、保存年限まで含めて対応する必要があります。
  • 差異で判明した欠品分を仕入先への発注取消などで転嫁すると、中小受託取引適正化法の禁止事項に触れる場合があります。
在庫のイメージ
▽ 写真の出典元

BtoB ECの棚卸と在庫差異とは

BtoB ECの棚卸で差異が生じた場合は、①差異一覧の確定②再カウント③発生工程の特定④帳簿訂正と記録の保存⑤棚卸差損益の計上⑥棚卸表の保存という順で対応します。棚卸資産は各事業年度終了の時に実地棚卸し(帳簿上の数量ではなく現物を実際に数えて確認する棚卸)をするのが原則です*1

BtoB ECにおける在庫差異とは、システムの帳簿上の在庫数量と、実地棚卸で数えた実在庫数量が一致しない状態を指します。数えた在庫が帳簿より多ければ棚卸差益、少なければ棚卸差損と呼びます。

棚卸差損と棚卸差益はどちらも説明が必要です

差異というと欠品につながる棚卸差損だけを想像しがちですが、棚卸差益も放置してよいわけではありません。棚卸差益は入荷の重複登録や返品の記録漏れなど、別の記録不備を示すサインになるからです。

差益・差損のどちらであっても、原因を発生工程まで遡って説明できる状態にすることが、差異対応の出発点になります。

BtoB EC特有の事情:在庫は1種類ではありません

BtoB ECでは「実在庫」「引当済(受注に紐づいた在庫)」「有効在庫(実在庫から引当済を差し引いた残り)」の3つが並行して動きます。どの在庫と実地棚卸の結果を突き合わせるかを決めないと、差異は正しく測れません。

引当のタイミングや取り置き・分納の扱いは、受注チャネル側の設計に左右されます。この論点の詳細は、在庫引当の仕組み・在庫連携の設計を扱う関連記事のテーマです。

差異を放置できない理由は会社法と通達にあります

会社法第432条第1項は「株式会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない」と定めています*3。差異を数えたまま放置することは、この規定と両立しません。

加えて棚卸資産は、各事業年度終了の時において実地棚卸しをしなければならないとされています*1。差異の是正は、年に一度のこの義務を正しく果たすための作業です。

棚卸方式を選ぶ―一斉・部分計画・循環と継続適用

原因のイメージ
▽ 写真の出典元

原則は各事業年度終了の時の実地棚卸しです

法人税基本通達5-4-1は、棚卸資産について「各事業年度終了の時において実地棚卸しをしなければならない」と定めています*1。その上で、業種・業態・棚卸資産の性質等に応じて「部分計画棚卸しその他合理的な方法」により在高を算定する場合は、継続適用が条件です*1

循環棚卸や部分計画棚卸しは、出荷を止めずに運用できる利点がある一方、選び方が任意ではないことをこの条文が示しています。

部分計画棚卸しへの代替は継続適用が条件です

「継続適用を条件」という文言は、決算期ごとに一斉棚卸と循環棚卸を都合よく使い分けることを想定していません。方式を変えるなら、変更後の方式を以降も維持する前提で決める必要があります*1

期の途中で急に切り替えるのではなく、決算の準備期に方式を検討し、継続する方式として社内で確定させることが、この条件を満たす前提です。

期末日以外に棚卸するなら増減記録が要ります

監査基準報告書501は、監査人に対し実務的に不可能でない限り実地棚卸の立会を求めています*2。実地棚卸が期末日以外の日に実施される場合には、実地棚卸日と期末日の間における棚卸資産の増減が適切に記録されているかどうかが問われるからです*2。この点は、追加の監査証拠の入手が求められる場面です。

循環棚卸を選ぶということは、棚卸日から期末までの入出庫記録の精度がそのまま問われるということでもあります。

方式 出荷停止の要否 差異発見の早さ 期末までの追加記録 継続適用の扱い
一斉棚卸 全品を一時に数えるため、原則として出荷を止める必要があります。 棚卸日に全品目の差異が同時に判明します。 棚卸日が期末日であれば追加記録は不要です。 原則形であり、継続適用の条件は問題になりません*1
部分計画棚卸し 対象品目を区切って数えるため、出荷停止の範囲を限定できます。 品目群ごとに順次判明します。 棚卸日と期末日がずれる分、増減記録が必要です*2 通達5-4-1が定める代替方法にあたり、継続適用が条件です*1
循環棚卸 日々少量ずつ数えるため、出荷停止をほぼ避けられます。 サイクル一巡ごとに品目単位で判明します。 期末日までの増減記録の精度が特に問われます*2 部分計画棚卸しと同じく合理的な方法として継続適用が条件です*1

自社の数字に当てはめて棚卸方式を点検したい場合は、無料相談で要件を整理する方法もあります。継続適用の条件を満たしたまま、出荷を止めない運用に切り替えられるかどうかを一緒に確認できます。

在庫差異の原因を発生工程で切り分ける

工程のイメージ
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入荷工程と出荷工程では差異の出方が異なります

入荷工程の差異は、検品時の数量誤認や入荷伝票の入力ミスから生じやすく、棚卸差益として現れる傾向があります。実際より少なく登録された数量が、実地棚卸で本来の数に修正されるためです。

出荷工程の差異は、ピッキングミスや出荷確定の処理漏れから生じやすく、棚卸差損として現れる傾向があります。出荷したのに帳簿上は在庫が残ったままになるケースが典型です。

BtoB EC特有の発生点は引当と出荷確定のタイムラグです

受注時点で在庫を引き当ててから実際に出荷を確定するまでにタイムラグがあると、その間の帳簿上の在庫数量と実態がずれやすくなります。取り置き・予約・分納・返品・直送(在庫を通らない出荷)は、いずれもこのタイムラグを広げる要因です。

特に直送は、システム上の在庫を経由せずに商品が動くため、通常の入出荷記録だけでは差異の発生工程を追いにくい取引形態です。

マスタ起因の差異は単位換算を疑います

ケース単位で仕入れてバラで出荷するような取引では、商品マスタの単位・入目換算が誤っていると、数量自体は正しく記録されていても金額や在庫数に差異が生じます。マスタの整備手順は別記事で扱います。

発生工程 差益・差損のどちらに出やすいか 見つけ方(確認する伝票)
入荷検品・数量登録 棚卸差益として出やすい傾向があります。 入荷伝票と検品記録を照合します。
ピッキング・出荷確定 棚卸差損として出やすい傾向があります。 出荷指示書と出荷確定処理の記録を照合します。
返品処理 戻し先の登録漏れがあれば差損として出ます。 返品伝票と入庫先ロケーションの記録を照合します。
直送(在庫を通らない出荷) 在庫連動の有無で差損・差益いずれにも出ます。 仕入先への発注記録と顧客への出荷記録を突き合わせます。
マスタ(単位・入目換算) 換算誤りの方向により差損・差益いずれにも出ます。 商品マスタの単位設定と伝票上の数量表記を照合します。

在庫差異が出たときの是正手順6ステップ

手順のイメージ
▽ 写真の出典元
図
在庫差異の是正は6段階で進めます
  1. 差異一覧を確定します。品目・数量・金額・棚卸日を記録し、以降の作業の基準にします。
  2. 再カウントします。数え間違いによる見かけ上の差異を除き、真の差異だけを残します。
  3. 伝票を遡って発生工程を特定します。入荷伝票・出荷指示・返品伝票・移動記録を照合します。
  4. 帳簿を訂正し、訂正の記録を残します。いわゆる反対仕訳による方法も認められています*4。訂正または削除の履歴は、内部規程で入力日から1週間を超えない期間を定めている場合に限り省略が認められます*4
  5. 棚卸差損益として計上します。棚卸資産の評価方法は、個別法・先入先出法・総平均法・移動平均法・最終仕入原価法・売価還元法のいずれかから選び、継続して適用します*6。損金算入の可否は個別の事情によって判断が分かれるため、税務上の取扱いは税理士等に確認することをおすすめします。
  6. 棚卸表と関係書類を保存します。法人は帳簿7年・書類7年、欠損金が生じた事業年度等は10年の保存が必要です*4。会計帳簿はその閉鎖の時から10年間の保存が義務づけられています*3

差異対応で優先すべき4つの着眼点(順位根拠:手順の依存関係)

  1. 棚卸方式は継続適用する前提で選びます。決算期ごとに一斉棚卸と循環棚卸を使い分ける運用は想定されていません*1
  2. 棚卸日にBtoB ECの受注締めと引当凍結を業務ルールとして固定し、棚卸日から期末までの増減記録の精度を確保します*2
  3. 帳簿訂正では反対仕訳など履歴の残る方法を用います。履歴省略は入力日から1週間を超えない内部規程がある場合に限られます*4
  4. 棚卸表・関係書類の保存年限を運用カレンダーに組み込みます。書類は7年、欠損金が生じた事業年度等は10年です*4

商品有高帳は優良な電子帳簿の対象帳簿に一般には含まれません

日々の在庫管理や棚卸表作成時に参照する「商品有高帳」を表計算ソフトで作成している場合を考えます。この場合について、国税庁の一問一答は、商品有高帳が優良な電子帳簿の対象帳簿に一般的には含まれないという整理です*4。他の帳簿の記載事項を商品有高帳で記載・管理している場合は扱いが異なるため、自社の運用の個別確認が必要です。

在庫差異の帳尻を仕入先に合わせさせてはいけない理由

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差異を数えた結果、受注済みの数量に対して在庫が足りない(棚卸差損)と判明することもあれば、逆に在庫が想定より多い(棚卸差益)と判明することもあります。前者では仕入先への催促や費用負担の要請、後者では発注の取消や返品に傾きがちです。いずれも仕入先に帳尻を合わせさせる対応であり、2026年1月1日に施行された中小受託取引適正化法の禁止事項に触れる場合があります*5

受領拒否の禁止―発注取消も原則含まれます

同法は委託事業者に対し、中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに、その給付の受領を拒むことを禁止しています(第5条第1項第1号)*5。「受領を拒む」とは、給付の全部または一部を納期に受け取らないことです*5。「発注を取り消すこと(契約の解除)により、給付の全部または一部を発注時に定められた納期に受け取らないこと」も、原則としてこの受領拒否に含まれるとされています*5

在庫が余っていたため発注を取り消す、という運用は、この禁止事項に照らして点検が必要です。

返品の禁止と不当な給付内容の変更の禁止

同法は返品の禁止(第5条第1項第4号)も定めており、中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに給付を引き取らせる行為を禁じています*5。不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止(第5条第2項第3号)も同様です*5。差異の帳尻合わせのために、受け取った商品を理由なく返品したり、発注内容を一方的に変更したりする対応は、これらの禁止事項に該当しうる行為です。

支払遅延の禁止と遅延利息年率14.6%

委託事業者が代金を支払期日までに支払わなかった場合はどうなるでしょうか。受領日から起算して60日を経過した日以降について、未払金額に年率14.6%を乗じた遅延利息を支払う義務が生じます*5。差異対応の遅れが支払処理の遅延につながらないよう、社内の確認フローの設計が欠かせません。

欠品後の顧客側の対応(分納の提示や代替品の提案)は、それぞれ安全在庫の考え方や代替品提案の運用を扱う関連記事で解説しています。

差異を減らす運用設計―説明可能性で管理する

差異率は目標値ではなく説明可能性で管理します

「差異率は何%まで許容できるか」という数値目標を探したくなりますが、公的な許容値は示されていません。目安として語られる数値の多くは根拠が示されないため、本記事では採用しません。

管理の軸にすべきは、差異が出たときにその原因を発生工程まで説明できるかどうかです。説明できる差異は再発防止に生かせますが、説明できない差異は帳簿の信頼性そのものを損ないます。

循環棚卸のサイクル設計は継続適用の記録とセットです

循環棚卸を採用する場合、対象品目とサイクルの区切り方を社内規程として明文化し、継続して適用していることが後から確認できる状態にしておく必要があります*1。規程を変えるたびに理由と変更日を記録に残すことが、継続適用の説明材料です。

棚卸日にBtoB EC側で決めておくこと

棚卸の精度は、受注締めのタイミングと引当の凍結ルールに左右されます。棚卸中に新規受注の引当が動き続けると、実地棚卸の結果とシステム上の在庫数量がずれる要因になるためです。

棚卸日だけ受注を締める、あるいは引当を一時停止するといった運用ルールを、BtoB ECの受注フローとして事前に固定しておきます。これが差異を減らす最初の一歩になります。

この一連の作業を内製で完結させるには、入荷伝票・出荷指示・返品伝票・移動記録を横断して照合できる体制が必要です。加えて、棚卸方式ごとの継続適用の条件と、電子帳簿保存法の訂正要件を理解した担当者も欠かせません。専門のパートナーに相談すれば、棚卸日の受注締めや引当凍結をBtoB ECの受注フローの設定として組み込み、運用の属人化を避けられます。

まとめ:棚卸方式・記録・保存の3つの判断軸

本稿では、BtoB ECの棚卸で在庫差異が出たときの対応を、棚卸方式・記録・保存の3つの軸で整理しました。第一に、棚卸方式は継続適用を条件に選ぶものであり、期の途中で都合よく変えられるものではありません*1。第二に、差異の是正は数字の上書きではなく、訂正の履歴を残す作業です*4。第三に、差異で判明した欠品分を仕入先に転嫁する対応は、中小受託取引適正化法の禁止事項に触れる場合があります*5


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よくある質問

在庫差異はどのくらいまで許容されますか。

公的機関が示す許容値はありません。本記事で確認できたのは棚卸の手続と保存に関する規定までであり、差異の水準は目標値ではなく、原因を発生工程まで説明できるかどうかで管理することをおすすめします。

循環棚卸に変えてもよいのですか。

変更が可能です。法人税基本通達5-4-1は、部分計画棚卸しその他合理的な方法への代替を、継続適用を条件として認めています*1。決算期ごとに使い分ける運用ではなく、継続して適用する前提で選ぶことが条件です。

棚卸表は何年保存すればよいですか。

国税庁の一問一答では、法人の場合、帳簿は7年、棚卸表を含む書類は7年、欠損金が生じた事業年度等は10年とされています*4。会計帳簿については会社法上、閉鎖の時から10年間の保存も別途義務づけられています*3

在庫が余っていたので発注を取り消してよいですか。

原則としてできません。発注を取り消すこと(契約の解除)により給付を発注時の納期に受け取らないことは、中小受託取引適正化法が禁止する「受領拒否」に原則として含まれます*5。差益の在庫を理由にした発注取消は、この禁止事項に照らして点検が必要です。

商品有高帳を表計算ソフトで作っていると、優良な電子帳簿の軽減措置は受けられませんか。

それだけを理由に受けられなくなることはありません。国税庁の一問一答は、商品有高帳が優良な電子帳簿の対象帳簿に一般的には含まれないことを前提とした整理を示しています*4。ただし他の帳簿の記載事項を商品有高帳で管理している場合は扱いが異なるため、個別に確認が必要です。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

  1. *1 出典:国税庁「法人税基本通達 第5章第4節 棚卸しの手続 5-4-1」(昭55年直法2-15「八」により追加)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/05/05_04.htm
  2. *2 出典:日本公認会計士協会「監査基準報告書501 特定項目の監査証拠」(2011年12月22日、最終改正2022年10月13日)https://jicpa.or.jp/specialized_field/2-24-501-2-20221013.pdf
  3. *3 出典:e-Gov法令検索「会社法 第432条」(平成十七年法律第八十六号)https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086
  4. *4 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】問3・問26・問27・問42」(令和7年6月)https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/03-2.pdf
  5. *5 出典:公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法テキスト」(令和7年11月、施行 令和8年1月1日)https://www.jftc.go.jp/toriteki/r7text.pdf
  6. *6 出典:e-Gov法令検索「法人税法施行令 第28条」(昭和四十年政令第九十七号)https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000097

画像の出典元

  1. 在庫のイメージ/Photo by Tianlei Wu on Unsplash
  2. 原因のイメージ/Photo by Harshit Suryawanshi on Unsplash
  3. 工程のイメージ/Photo by Harald Müller on Unsplash
  4. 手順のイメージ/Photo by Kelly Sikkema on Unsplash
  5. 仕入のイメージ/Photo by Russ Murray on Unsplash

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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