◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 商品データの整備を誰の手元に置くかが先で、人数はその後に決まります。3800品種を扱う会社では、品種の単位をそろえる担当が最初の一人になりました3。
- 20000点の登録を抱えた事例では、点数を増やす作業より、載せない商品を決める判断が先に来ました6。
- 5階層まで卸価格を切り替えられる仕組みなら、得意先の本部と支店で違う値を見せる運用も、担当者の手計算に頼らず回せます7。
- 62.1%の企業がDXを推進する人材の大幅な不足を挙げており、これはBtoB ECの担当者に限った数字ではありません2。
- 4か月と2か月、公表された構築期間には幅があります。自社がどちらに近いかは、手元の商品データと価格表の整い方を見て当てをつけてください45。
目次

拡大するBtoB-EC市場と体制整備の背景
BtoB EC運用体制とは、商品データ整備や卸価格設計を担当に割り振る仕組みです。BtoB ECの運用体制は、専任の組織を先に作るのではなく、商品データの整備と卸価格の設計を「誰の手元に置くか」から決まります。品種の棚卸しと価格階層の確認を終えれば、必要な人数と教育の範囲は後から輪郭が出ます。
朝九時の営業所、ファクスの受け皿に重なる注文書。担当者は上から一枚ずつ取り上げ、受注システムへ転記していきます。この作業は「慣れれば速い」と言われますが、速さの裏で、転記を誰が引き継ぐのかという問いは先送りになります。体制の話は、この引き継ぎの空白から始まります。
市場の側の数字は、先に動いています。43.1%は、2024年度の国内BtoB取引に占める電子商取引の割合で、金額にすると514.4兆円にあたります1。取引十件のうち四件あまりが画面の上で回っている勘定になります。
自社の直近一年で、取引先から電子での受注を尋ねられた回数を数えてみてください。
その一件ごとの転記のやり直しと価格の問い合わせが、月末になると「残業代」という名前に変わって請求書の裏側に並びます。
商品データ整備に要する社内体制
商品データの整備は、写真と説明文をそろえる作業だと思われがちです。実務では、その前に「同じ商品を社内で何と呼ぶか」をそろえる工程が入ります。品番の付け方が部署ごとに違えば、同じ商品が画面の上で他人のふりをします。整備の担い手を決めるとは、この呼び名をそろえる責任の置き場所を決めることです。
日東電工CSシステムの品種管理
日東電工CSシステム株式会社は、品種を数えるところから着手しました。3800品種という数は、担当者一人の記憶で捌ける量を越えており、台帳の作り方を先に決めなければ回りません3。品種の単位を「売り方」で括るか「作り方」で括るかで、後の検索の当たり方が変わります。整備の順は、写真より前に呼び名をそろえる工程です。
販売の網の広さも、体制の形を変えます。3000社の販売加盟店それぞれが年に一度だけ尋ねてきたとしても、応対はほぼ毎営業日に生じます3。いずれも2020年の導入時点の値で、「現在の担当人数」を示すものではありません。自社の取引先の数で同じ数え方をしてみてください。
ポディウムの商品点数精査
株式会社ポディウムは、登録済みの商品点数を見直す側から手を付けました。20000点という登録数は、棚の現物を一つずつ確かめて回るには多すぎる量です6。精査とは「載せる商品を選ぶ」作業であると同時に、載せない商品を決める責任を誰が持つかを決める作業でもあります。
判断の材料は、注文の履歴に置きます。2025年に公開された事例の値であり、現在の掲載点数を示すものではありません。載せる商品を決める人と説明文を書く人、価格を入れる人をどう配るかが、「最初の分かれ目」になります。
3000社の加盟店網を思えば、価格表を一度改める手間は、そのまま人件費として決算に残ります3。
開発期間と卸価格階層に見る立ち上げ準備
開発期間からみる体制組成
立ち上げに要する期間は、着手の前にどこまで整えていたかに左右されます。4か月と2か月、公表されている開発期間にはこれだけの幅があります45。前者はフーヅフリッジ株式会社の実質的な開発、後者はフリュー株式会社の構築で、いずれも導入時点の値です。着手の前に「価格表の改定が年に何回あるか」を数えておくと、見積もりの土台になります。
体制の組み方は、期間の長短より先に決まります。承認で公開が止まる場所を一枚の紙に書き出し、商品データ・卸価格・受注の担当をそこへ当てはめます。兼務でも構いませんが、「兼務である」と書いておかないと、休んだ日に画面の更新が止まります。
卸価格階層による運用設計
卸価格は、商品ごとの値付けであると同時に、得意先ごとの約束です。5階層まで組織の階層に応じて価格を切り替えられる仕組みなら、本部・支社・営業所と数えていっても収まる深さになります7。「帳合の付け替え」(取引先の卸を切り替えること)が起きたとき、どの階層の価格を書き換えるのかを先に決めておきます。
階層を何段使うかは、値引きの決め方で決まります。単価で持つか、掛率で持つか。この選択を先に済ませないと、同じ登録番号の商品に二通りの価格が並びます。2026年に示された上限であり、上限まで使い切る必要はありません7。
DX人材不足時代の教育と運用体制
体制を自前で組めるかどうかは、人が足りているかではなく、任せる範囲を書き出せているかで測れます。不足感そのものは、業種を問わず共通しています。62.1%は、DXを推進する人材が「大幅に不足している」と答えた企業の割合で、過半を大きく超える水準です2。BtoB ECの担当者に限った調査ではなく、DX人材全般への問いに対する回答です。
その不足感を前提にすれば、教育は研修の日数ではなく引き継ぎの形で残ります。商品データの登録手順を一枚にまとめ、「この欄には何を入れるか」を欄ごとに書いておけば、担当が替わった日にも同じ登録を再現できます。2024年の調査に表れた不足感は当面続く前提で組んだほうが、採用の可否に運用を預けずに済みます。
数えるのは、品種の数と得意先の階層の深さ、それに価格改定の頻度です。この三つが出そろってから、社内で持つ範囲と外へ委ねる範囲を分けます。次に決めるのは、手順書の一枚目。
ここから先は、体制の組み方を会社の事情ごとに分け、よくある問いとあわせて詳しく見ていきます。
帳合の付け替えと卸価格の設定を社内の誰に持たせるかは、他社の体制図を眺めるより、自社の品種数と得意先の階層を前にして詰めたほうが早く決まります。
商品データの整備にどれだけの手が要るか、教育を含めた立ち上げの段取りまで一度に見積もれます。無料相談で要件を整理する
運用体制づくりで先に片づける順序

- 商品データの整備を誰の手元に置くかを決める
- 掲載する商品を絞り、載せない判断の責任者を決める
- 卸価格の階層を何段使うかを確かめる
- 受注から出荷までの承認が止まる場所を書き出す
- 登録手順を一枚にまとめ、担当交代の日に渡す
この並びに優劣の順序はありません。
同じ順序でも、会社の事情によって最初の一手の置き場所は変わります。

会社の事情別に見る体制の組み方
| 会社の事情 | 先に決めること | 最初に置く担当 |
|---|---|---|
| 品種の多い製造業 | 画面に出さない品種の決裁者 | 品種の単位をそろえる担当 |
| 得意先の階層が深い卸売業 | 価格を単価で持つか掛率で持つか | 卸価格の決裁者 |
| 専任を置けない営業部門 | 社内に残す仕事と外へ委ねる仕事 | 登録手順を書く担当 |
品種が数千に届く会社の整備の進め方
品種が数千に届く会社では、掲載の前に統廃合の判断が要ります。ここでの基準は、「画面に出さない品種」を決める権限の所在です。25000品という初期の掲載数は、規格や寸法の違いまで一品ずつ並べた結果で、品種の数の何倍にも膨らみます3。品種の棚卸しを終えてから、規格ごとの展開と掲載へ進みます。
工程の順を決めたら、決裁の欄を一つ足します。難易度は中ほどで、工数は品種の棚卸しに数週間、画面に出さない品種の決裁に数日という見当です。
| 整備の工程 | 担当 | そろえる書類 |
|---|---|---|
| 品種の棚卸し | 商品部の担当者 | 品種台帳 |
| 画面に出さない品種の決裁 | 商品部の責任者 | 掲載可否の一覧 |
| 規格ごとの展開 | 登録の担当者 | 規格と寸法の対応表 |
| 掲載と更新 | 登録の担当者 | 更新の手順書 |
| 整備の工程 | 担当 | そろえる書類 |
|---|---|---|
| 品種の棚卸し | 商品部の担当者 | 品種台帳 |
| 画面に出さない品種の決裁 | 商品部の責任者 | 掲載可否の一覧 |
| 規格ごとの展開 | 登録の担当者 | 規格と寸法の対応表 |
| 掲載と更新 | 登録の担当者 | 更新の手順書 |
品種が数千に届く会社では、画面に出さない品種の決裁を誰が担うかで整備の期間が変わるため、棚卸しの前に相談しておくと手戻りが減ります。
規格ごとの展開をどこまで自動で作れるか、登録の担当に残る作業量を確かめられます。無料相談で自社の条件を持ち込む
本部と支店で値が変わる会社の価格の持ち方
得意先が本部と支店に分かれている会社では、同じ商品でも見せる価格が変わります。ここでの基準は、値引きの根拠を「誰との約束」として記録できるかです。帳合の付け替えが起きた月に、どの価格を書き換えるのかを台帳へ残しておきます。先に挙げた階層の上限まで使わなくとも、本部と支店だけで足りる会社もあります。
価格の改定は、通知までが一つの作業です。難易度はやや高く、工数は価格表の整理に数週間、得意先への通知に数日を見込みます。
| 価格の持ち方 | 切り替える単位 | 確認する相手 |
|---|---|---|
| 単価で持つ | 得意先ごと | 営業の担当者 |
| 掛率で持つ | 得意先の階層ごと | 卸価格の決裁者 |
| 期間限定の価格 | 商品と期間の組み合わせ | 商品部と経理 |
帳合の経路が本部と支店に分かれている会社では、価格の階層を何段で持つかが運用の負担を左右するため、価格表の整理と同時に詰めておくのが向いています。
自社の得意先の並びをそのまま当てはめた場合の切り替えの見え方を、具体の形で持ち帰れます。無料相談で自社の条件を持ち込む
兼務で回す部門の引き継ぎの作り方
専任を置けない営業部門では、運用を人に貼り付けると休暇のたびに止まります。ここでの基準は、交代しても同じ結果が出る手順になっているかです。「今日は誰が登録するか」を朝の時点で決め、登録番号の付け方と価格の決裁者だけは固定します。残る作業は、既存の受注応対の延長で担えます。
手順書は、迷った箇所だけ書き足していきます。難易度は低めで、工数は手順書の作成に数日、担当交代のたびの引き継ぎだけを残し、ここまでの型を次の表に整理します。
| 社内で持つ仕事 | 外へ委ねる仕事 | 交代時に渡すもの |
|---|---|---|
| 卸価格の決裁 | 商品データの初期整備 | 価格の決め方の控え |
| 得意先への通知 | 画面の構築と改修 | 通知先の一覧 |
| 注文の履歴の確認 | 登録作業の代行 | 登録番号の付け方 |

兼務で回す部門では、教育に割ける時間が限られるぶん、社内に残す仕事と外へ委ねる仕事の境目を早い段階で引いておく必要があります。
手順書に何を書けば担当交代の日でも止まらないか、残す作業の範囲を絞り込めます。無料相談で自社の条件を持ち込む
要点の整理
| 数える対象 | 判断の分かれ目 | 決める人 |
|---|---|---|
| 品種の数 | 画面に出さない品種があるか | 商品部の責任者 |
| 得意先の階層の深さ | 本部と支店で価格が違うか | 卸価格の決裁者 |
| 価格改定の頻度 | 月次で改めるか随時で改めるか | 営業の管理職 |
| 担当の交代 | 登録手順が一枚にまとまっているか | 現場の責任者 |
体制と教育の設計は、商品データの量と帳合の複雑さによって形が変わるため、自社の数字を持ち寄った場で話すと具体の案に落ちます。 品種の数と価格の階層から、必要な担当の置き方と立ち上げの日程を並べられます。
よくある質問
商品データの整備は、何人から始められますか。
人数より先に、品種の単位と呼び名を決める担当を一人立てるところからです。その一人が「この商品は何と呼ぶか」を裁ける立場にあれば、登録作業そのものは分担できます。写真と説明文は後から足せますが、呼び名の不一致は後から直すほど手間が増えます。
取引先ごとに違う卸価格は、どこまで細かく分けられますか。
先に挙げた階層の上限までなら、得意先の組織階層に沿って切り替えられます7。ただし段数を増やすほど、改定のたびに確認する相手も増えます。本部と支店で価格が違うのか、帳合の経路ごとに違うのかを整理してから、必要な段数だけを使う進め方が現実的です。
立ち上げまでの期間は、どのくらい見ておけばよいですか。
先に挙げた二つの事例では、構築と実質的な開発の期間に幅がありました54。期間の見通しを立てるには、着手の時点で商品データと価格表がどこまで整っているかを確かめます。自社の価格表が最後に全面改定された時期を確かめてから、逆算して日程を置いてください。
専任のDX人材がいなくても運用できますか。
運用の仕事を、登録・価格の決裁・受注応対に分けてみてください。専任の判断が要るのは価格の決裁で、残りは既存の業務の延長で担える場合があります。先に挙げた不足感は業種を問わない傾向であり、BtoB ECの担当者に限った数字ではありません2。
担当者が交代すると、運用が止まりませんか。
止まるかどうかは、手順書に「欄ごとの入力の決まり」が書かれているかで分かれます。画面の操作手順だけでは、登録番号の付け方や価格の丸め方が引き継がれません。交代の前に、前任者の作業を見ながら同じ登録を再現してもらうと、抜けが見つかります。
外部へ委ねる範囲は、どう決めればよいですか。
商品データの初期整備と画面の構築は外へ出しやすく、卸価格の決裁と得意先への通知は社内に残るのが通例と見られます。目安になるのは、間違えたときに謝りに行くのが誰かという一点です。謝りに行く人が社内なら、その仕事の決裁も社内に置きます。
- 1 出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2025年) 経路
- 2 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2024」(2024年) 経路
- 3 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider B2B 導入事例(日東電工CSシステム株式会社様)」(2020年) 経路
- 4 出典:株式会社イーシー・ライダー「EC-Rider B2B 導入事例(フーヅフリッジ株式会社様)」(2017年) 経路
- 5 出典:株式会社イーシー・ライダー「EC-Rider B2B 導入事例(フリュー株式会社様)」(2016年) 経路
- 6 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider 導入事例(株式会社ポディウム様)」(2025年) 経路
- 7 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Riderお役立ちコラム「BtoB向けECサイトで取引先ごとに卸価格を切り替える」」(2026年) 経路
画像の出典元
- Close-up of modern skyscrapers with diverse architectural st/Photo by Matheus Natan on Pexels
- An urban cityscape of skyscraper facades with glass reflecti/Photo by Mike van Schoonderwalt on Pexels
- Stunning aerial view of Los Angeles showcasing urban sprawl/Photo by Jazmine Film on Pexels
- Dramatic low angle view of towering modern skyscrapers reaching into the cloudy sky./Photo by Anna Kozlova on Pexels