◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
目次

インボイス制度でBtoB通販サイトに求められること
BtoB通販サイトのインボイス対応は、サイトの機能の話ではなく、そこから出ていく請求書が適格請求書の記載事項を満たしているかどうかの話です。確かめる順序は決まっています。まず国税庁が示す記載事項2を一覧にし、次に自社の受発注システムが実際に出力している請求書と画面をその一覧に突き合わせ、足りない箇所だけを取り出します。取り出したあとで、設定の変更で埋まるのか、帳票の様式を作り直すのか、外部の請求書発行機能をつなぐのか、システムを改修するのかを分けます。この順序を守れば、対応が要る範囲は思ったより狭く収まることが多く、逆に順序を飛ばして改修の相談から入ると、設定で済む箇所まで費用に数えてしまいます。
求められているのは「サイトの対応」ではなく「請求書の記載」
取引先から「インボイスに対応していますか」と問われたとき、問われているのは通販サイトの機能一覧ではありません。取引先が仕入税額控除を受けるために必要なのは、自社が交付する書類に決められた事項が記載されていることです。つまり対応の可否は、サイトの画面ではなく、そこから出力された請求書の紙面やPDFの上で判定されます。
この見方に切り替えると、点検の対象がはっきりします。受注の画面がどれほど整っていても、出力された請求書に登録番号が入っていなければ要件を満たしません。逆に、サイトの見た目が古くても、出力される請求書の記載が揃っていれば、その取引については求められたものを渡せています。
国税庁が示す適格請求書の記載事項は、発行者の氏名または名称と登録番号、取引の年月日、取引の内容(軽減税率の対象品目であればその旨)、税率ごとに区分して合計した対価の額と適用税率、税率ごとに区分した消費税額等、そして書類の交付を受ける事業者の氏名または名称です2。点検の一覧はここから起こします。
BtoB通販に固有の詰まりどころは、明細の粒度と端数処理
BtoB通販サイトは、一度の受注で品目が多く、同じ取引先に対して月をまたいで何度も出荷が起きます。ここで詰まるのが、税率ごとの区分と消費税額の計算です。明細が商品単位で並ぶこと自体は要件ではありませんが、税率ごとに区分して対価の額と消費税額を出せる形になっていることは要件に含まれます2。
もうひとつが端数処理です。一の適格請求書につき、税率ごとに1回だけ端数処理をするのが決められた扱いです1。商品行ごとに消費税額を出して端数を丸め、それを合計して請求書の消費税額とする作りになっていると、この扱いから外れます。従来の販売管理システムをそのまま通販サイトにつないでいる場合、この行単位の計算がそのまま残っていることがあります。
端数処理は画面上で目立たないため、点検から漏れやすい箇所です。合計金額が数円ずれるだけなので気づきにくく、取引先の会計処理と突き合わせた段階で初めて表に出ます。請求書を出す前に、税率ごとの合計に対して1回だけ丸めているかを確かめておきます。
交付したあとの控えまでが範囲
適格請求書は交付して終わりではなく、交付した側にも控えの保存が求められます。BtoB通販サイトでは請求書を画面からダウンロードさせる運用が多く、この場合「取引先がいつでも取得できる状態」と「自社が控えを保存している状態」は別物です。ダウンロードの導線があることと、自社に控えが残っていることを分けて確かめます。
控えが残っていないと、後から取引先に記載内容を問われたときに、当時どの様式で何を出したかを再現できません。様式を途中で変更した場合はなおさらです。点検の一覧には、交付の要件だけでなく控えの保存も入れておきます。
ここまでで、求められているのは出力された請求書の記載であり、範囲は交付だけでなく控えの保存まで届くことを確かめました。次は、この見方を自社の請求書に当てて、どこが欠けているかを一件ずつ取り出していきます。
記載事項の一覧を読み合わせても、自社の受発注システムのどの画面のどの設定がその要件に当たるのかは、実際の出力を見ないと突き合わせられません。制度の解釈ではなく自社の実装の話になったところが、外の手を借りる頃合いです。
手元の請求書の出力が記載事項のどこまでを満たしているか、足りない箇所は設定で埋まるのか帳票の作り直しが要るのかを、出力された現物を見ながら切り分けられます。無料相談で要件を整理する
登録番号・税率表示と請求書様式の点検
記載が欠けたときに、その書類が適格請求書として成り立たなくなる度合いで並べました。
- 自社の登録番号が、出力される請求書の書面と、取引先が見る画面の両方に出ているか
- 取引の年月日と取引の内容が、請求書の上で読み取れる形になっているか(軽減税率の対象品目があれば、その旨の印が付くか)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額と、適用税率が記載されているか
- 税率ごとに区分した消費税額が記載され、端数処理が税率ごとに1回で収まっているか
- 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称が、取引先の正式な名称で入っているか
- 交付した請求書の控えが自社に残り、後から同じ内容を再現できるか
取引先から先に問われやすい順に並べ替えると、登録番号の次に端数処理の扱いが上がってきます。金額が数円ずれる形で相手の帳簿に表れるため、記載の有無より先に指摘が来ることがあるためです。
改修の要否の見極めと対応の進め方
| 型 | 当てはまる状態 | 最初の一手 |
|---|---|---|
| 設定の型 | 項目を出す仕組みはあるが、値が未入力か表示が切られている | 管理画面の設定項目を洗い、値を入れて出力を確認する |
| 帳票の型 | データは持っているが、請求書の様式に欄が無い | 帳票テンプレートに欄を足し、様式を作り直す |
| 外部機能の型 | 請求書の発行そのものを自社で抱えきれていない | 外部の請求書発行機能につなぎ、発行を切り出す |
| 改修の型 | 計算や区分の仕組み自体が要件と合っていない | 改修の範囲を切り出し、優先順位を付けて着手する |
設定の型|まず管理画面だけで埋まる箇所を潰す
点検で見つかった不足を、設定の画面に当ててみる
点検で取り出した不足のうち、かなりの割合が設定で埋まります。登録番号の欄が用意されているのに値が未入力、帳票の表示項目として用意されているのに非表示のまま、といった状態です。導入時にインボイスの記載を前提としていなかった場合、この取りこぼしが残っていることがあります。
この型の見分け方は単純で、管理画面に該当する入力欄や表示の切り替えがあるかどうかです。あれば設定の型、無ければ次の型に送ります。判断に迷ったら、実際に値を入れてテストの請求書を出力し、書面の上で確認します。画面のプレビューと実際の出力で結果が違うことがあるためです。
| 確かめる箇所 | 見るところ |
|---|---|
| 自社情報の設定 | 登録番号の入力欄に値が入っているか |
| 帳票の表示設定 | 登録番号・適用税率・税率ごとの消費税額の各欄が表示になっているか |
| 取引先の登録情報 | 請求書に出る宛名が正式な名称になっているか |

帳票の型|データはあるが様式に欄が無い
欄を足すだけで済むのか、集計の単位から見直すのか
設定の画面に該当する項目が無く、しかしシステムの中には必要なデータが揃っている場合は、帳票の様式を作り直す型になります。税率ごとの合計は内部で計算できているのに、請求書の様式が税率の区分を持たない古い形のまま、といった状態です。

この型で気をつけるのは、欄を足すだけで足りるのか、集計の単位から見直す必要があるのかの切り分けです。税率ごとの区分欄を足しても、集計が行単位のままなら消費税額の値が要件どおりになりません。様式の作業に入る前に、どの単位で集計された値を欄に流すのかを決めておきます。
| 足す欄 | 流す値の単位 |
|---|---|
| 登録番号 | 自社情報から固定で |
| 適用税率 | 税率ごとの区分から |
| 税率ごとの対価の合計額 | 税率ごとに合計した額 |
| 税率ごとの消費税額 | 税率ごとの合計に対して1回だけ端数処理した額 |
外部機能の型|発行そのものを切り出す
自社の帳票を作り込まずに要件を満たす道
請求書の発行を外部の機能に任せ、通販サイトからは受注と金額のデータを渡すだけにする組み方もあります。様式の維持を自社で抱えなくてよいのが利点です。
ただし、渡すデータの側が税率ごとに区分されていなければ、外部につないでも要件は満たせません。この型を選ぶ場合も、税率ごとの区分と端数処理を自社側のどこで確定させるのかは決める必要があります1。連携の設計に入る前に、区分の責任をどちら側に置くかを先に決めておきます。
| 決めること | 置き方 |
|---|---|
| 税率ごとの区分 | 自社側で確定させて渡すか、外部側で区分させるか |
| 端数処理 | 税率ごとに1回で収まる側はどちらか |
| 控えの保存 | 自社に残すか、外部側の保存を控えとするか |

改修の型|計算の仕組みそのものが合っていない
改修に数える範囲を先に切り出す
設定でも帳票でも埋まらず、計算や区分の仕組み自体が要件と合っていない場合が改修の型です。典型は、消費税額を明細の行ごとに計算して丸め、その合計を請求書の消費税額としている作りです。適格請求書では税率ごとに1回だけ端数処理をするため1、この作りは計算の位置から直すことになります。
改修の型に入ったら、費用の話に進む前に範囲を切り出します。点検で取り出した不足のうち、設定で埋めたもの、帳票で埋めたものを除き、残ったものだけが改修の範囲です。この切り出しをせずに相談に入ると、設定で済む箇所まで見積もりに含まれてしまいます。
優先順位は、取引先に渡る書類が要件を外している箇所から付けます。控えの保存や運用の手間に関わる箇所は、交付の要件を満たしたあとに回せます。
| 改修に入りやすい箇所 | 要件との食い違い |
|---|---|
| 消費税額の計算位置 | 行ごとに丸めており、税率ごとに1回の端数処理になっていない |
| 税率の区分 | 税率ごとに対価の額を合計する仕組みを持たない |
| 控えの保存 | 交付した内容を後から再現できない |
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 点検の対象 | 管理画面ではなく、出力された請求書そのもの |
| 記載事項 | 登録番号・取引年月日・取引内容・税率ごとの対価の額と適用税率・税率ごとの消費税額・交付先の名称が揃っているか |
| 端数処理 | 税率ごとに1回で収まっているか |
| 範囲 | 交付だけでなく、控えの保存まで |
| 対応の切り分け | 設定・帳票・外部機能で埋まる分を除き、残りを改修の範囲とする |
改修の要否は、見積もりの前に切り分けの精度で決まります。設定で済む箇所まで改修に数えれば範囲が膨らみ、計算の位置を直すべき箇所を設定で押し切れば、請求書が要件を外れたまま取引先に渡ります。 自社の取引の形と現行の帳票をもとに、設定・帳票・外部機能・改修のどの型に当てはまるか、着手の順序をどう置くかを確かめられます。
よくある質問
通販サイトの画面に登録番号を載せていれば、請求書には無くてもよいですか。
いいえ。記載事項は交付する書類の側に求められます2。サイトの会社概要ページに登録番号があることと、請求書に登録番号が記載されていることは別です。両方に出しておくのが確実です。
明細の行ごとに消費税額を出してはいけないのですか。
行ごとに参考として表示すること自体が禁じられているわけではありませんが、請求書の消費税額としては、税率ごとに1回だけ端数処理をした額を記載します1。行ごとに丸めた額を積み上げた値を消費税額としている場合は、計算の位置を直すことになります。
点検はどこから手をつければよいですか。
出力済みの請求書を一枚手元に置き、記載事項の一覧と突き合わせるところからです2。仕様書や管理画面から入ると、実際の出力との差に気づけません。不足を書き出したうえで、設定・帳票・外部機能・改修のどれで埋まるかに振り分けます。
取引先ごとに請求書の様式を変えている場合はどうしますか。
様式ごとに点検します。要件は書類ごとに判定されるため、一つの様式が揃っていても、別の様式が欠けていればその取引では要件を満たしません。控えを見て、現に使っている様式をすべて洗い出します。
- 1 出典:株式会社フライトソリューションズ「BtoB ECの消費税端数処理設定|税率ごとに1回の実装(EC-Rider B2B Ⅱ 公式サイト)」(2026年) 経路
- 2 出典:国税庁「No.6625 適格請求書等の記載事項」(2026年) 経路
画像の出典元
- 20代後半の日本人女性が請求書の封入をしている場面/画像:生成AI(自社)
- 20代前半の日本人女性が手順の指導をしている場面/画像:生成AI(自社)
- 50代前半の日本人女性が倉庫事務所での受注対応をしている場面/画像:生成AI(自社)
- オフィスの自席で納品書とノートパソコンを見比べる日本人の会社員/画像:生成AI(自社)