◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 個別価格は「誰に」「何個で」「交渉の結果」「理由不明」に仕分け、顧客区分の階層を土台にして数量段階を足す
- 顧客区分は説明でき見直しやすい単純な基準で少数から始め、ECのカタログ数の上限に収める
- 数量段階は出荷単位に合わせて刻み、顧客区分の掛け率と重ねた最低価格で割引幅を確かめる
- 固定価格優先か最小価格かなど、複数の価格が当たったときの優先順位をカートの仕様で設計前に確かめる
- 例外は理由・期限・承認者を台帳に残して階層の外で管理し、改定の通知と協議を記録する
目次

取引先ごとの価格がバラバラになる原因を、どの理由の違いに仕分けるか
取引先ごとに卸値が違い、見積を出すたびに過去のメールや価格表を探して確認する。
取引先が増えるほど、この運用は回らなくなります。
変えられるのは、価格の決め方を「誰に売るか」と「何個売るか」に分けて持つことです。
まず顧客区分の階層を少数で決め、数量段階は必要な商品だけに足し、交渉で決まった個別の例外は階層の外で台帳管理します。
ECでは個別に入れた固定価格が一括の掛け率より優先されるなど、複数の価格が当たったときの優先順位がカートごとに決まっています。
設計の前にこの順位をそろえておくと、法人向けECの卸値の階層は運用で崩れにくくなります。
個別価格が増える典型的な場面
取引先ごとの卸値は、最初から複雑に設計されたわけではないことがほとんどです。
新しい取引先との取引を始めるときに競合の提示額へ合わせた、まとめて発注してもらったときに一度だけ値引きした価格がそのまま続いた、原価が上がった際に一部の取引先だけ旧価格を据え置いた。
こうした一回ごとの判断が積み重なって、価格表の上では理由の分からない差になっていきます。
困るのは、価格そのものより理由が残っていないことです。
見積の依頼が来たとき、担当者は「この取引先にはいくらで出していたか」を探し、さらに「なぜこの価格なのか」を前任者や営業に聞いて確かめることになります。
ECに載せようとしても、理由の分からない価格は一括の掛け率で表せず、取引先×商品の組み合わせを一つずつ登録するしかなくなります。
「誰に」と「何個で」は別の仕組み
価格差の理由を大きく分けると、取引先の属性や取引条件による差(誰に売るか)と、一回の注文数量による差(何個売るか)があります。
前者は取引先が変わらない限り同じ価格が当たり、後者は同じ取引先でも注文のたびに価格が変わります。
性質が違うので、管理の仕組みも分けたほうが扱いやすくなります。
ECの機能も、この二つを別の設定として用意しています。
Shopifyでは、会社単位の価格を持つカタログと、数量に応じて価格が変わる数量ブレーク(数量段階価格)が別々に設定できます1。
Adobe Commerceの段階価格(ティアプライス)は、店舗ビュー・顧客グループ・共有カタログのいずれかに適用範囲を限定できるため、数量段階を顧客区分ごとに分けて持つこともできます2。
なお共有カタログへの割り当ては Adobe Commerce B2B に限られます2。
二つを混ぜたまま価格を決めると、たとえば「A社は100個以上なら8%引き」という条件が残ったときに、それがA社だから安いのか、100個だから安いのかが後から分かりません。
別の取引先が100個発注したときに同じ値引きを当てるべきかどうか、担当者がその都度判断することになります。
価格差の理由を仕分けて先に決める軸を選ぶ
そこで最初の作業は、新しい価格を決めることではなく、いまの個別価格を理由ごとに仕分けることです。
取引先×商品で現行の卸値を並べ、それぞれに「取引先の属性や条件による差」「購入量による差」「個別交渉の結果」「理由不明」のどれに当たるかを付けていきます。
仕分けた結果、属性や条件による差が多ければ、顧客区分の階層を先に決めるのが自然です。
購入量による差が多くても、基準となる価格をどの取引先に当てるかは決めなければならないため、顧客区分を土台にして数量段階を足す順になります。
個別交渉の結果と理由不明の価格は、階層に収められるかどうかを後で判断する例外の候補として別に置きます。
どの軸を先に決めるかは、理由別の件数の比率を見れば判断の手掛かりになります。
これは実績から導いた法則ではなく、整理の進め方としての提案です。
| 価格差の理由 | 生じる場面の例 | 収める先 |
|---|---|---|
| 取引先の属性や条件(誰に) | 業態や取引規模で価格を変えている | 顧客区分の階層 |
| 購入量(何個で) | まとめて発注すると単価が下がる | 数量段階 |
| 個別交渉の結果 | 競合の提示額に合わせた | 例外の台帳(階層に戻せるか判断) |
| 理由不明 | 前任者の設定がそのまま残っている | 例外の台帳(理由を確認して振り分け) |
顧客区分の階層は何を基準に分け、いくつから始めるか
取引実績・業態・取引条件の比べ方
顧客区分の階層を作るとき、基準の候補は主に三つあります。
年間の購入額などの取引実績、小売店・卸・業務用といった業態、支払条件や納品の頻度などの取引条件です。
どれが正しいというより、見直しのときに区分を入れ替える判断がしやすいかどうかで選び方が変わります。
取引実績は数字で決まるので、区分の入れ替えを機械的に判定しやすい基準です。
その代わり、実績が境目付近の取引先は期ごとに区分が上下し、価格が頻繁に変わる不満につながることがあります。
業態は「なぜこの価格なのか」を取引先に説明しやすい一方、業態の境界があいまいな取引先をどちらに入れるかで迷います。
取引条件はコストの差と結び付けて説明しやすいものの、条件が変わったことを売り手側で追いかけ続ける必要があります。
価格差を説明できる基準にする
取引先によって価格を変えること自体に不安を持つ担当者もいます。
公正取引委員会の考え方では、取引先によって価格に差があること自体は直ちに違法ではなく、競争の反映や結果とは認められない価格差によって競争者や取引相手を競争上著しく不利にするおそれがある場合に問題となります3。
同委員会の相談事例では、購入実績の上位という単純な基準で対象の卸売業者を決め、品目ごとに一律で価格を引き下げる計画が、基準が単純で累進的でないことなどから問題ないとされました3。
ただし、価格の引き下げが納入価格を拘束する手段となる場合は問題になるとも示されています3。
この事例は平成12年度の化学品メーカーと卸売業者の仕切価格に関するもので、どの業種でも同じ価格差が許されるという意味ではありません。
実務で受け取れるのは、階層の基準を単純にし、なぜその取引先がその区分なのかを説明できる状態にしておくことの意味です。
担当者の裁量で一社ずつ決めた価格より、確認できる指標で区分した価格のほうが、取引先に問われたときにも社内で見直すときにも根拠を示しやすくなります。
特定の取引先の扱いが法的に問題ないかの個別判断は、専門家に確認する前提で考えてください。
少数から始めて見直す
階層の数について、何段階が最適かを示す実測の根拠は見当たりません。
そのうえでの提案として、階層は少数から始め、運用しながら必要に応じて増やす進め方を勧めます。
階層が一つ増えるたびに、掛け率の改定、例外との突き合わせ、取引先への通知の対象が増えるためです。
ECの側にも上限があります。
Shopifyでは、1つの会社ロケーションに割り当てられるカタログは最大25件で(2026年閲覧時点)、プランによってはストア全体で有効にできるカタログ数にも上限があります1。
階層をECのカタログに対応させるなら、契約しているプランで何件まで持てるかが設計の前提になります。
単純な基準で区分すること、ECに載せられる粒度に収めることを合わせると、管理しやすい階層の姿が見えてきます。
これは公取委の考え方とECの仕様を組み合わせた編集上の分析で、価格差が適法であることを保証するものではありません。
| 基準 | 分けやすさ | 見直しの手掛かり | 迷いやすい点 |
|---|---|---|---|
| 取引実績(購入額など) | 数字で機械的に判定できる | 期ごとの実績 | 境目付近の取引先の区分が上下する |
| 業態(小売・卸・業務用など) | 価格の役割を説明しやすい | 取引先の業態の変化 | 業態の境界があいまいな取引先 |
| 取引条件(支払・納品頻度など) | コストの差と結び付けやすい | 条件変更の記録 | 条件の変化を追い続ける手間 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 誰に売るか
- 取引先の属性や取引条件による差
- 取引先が変わらない限り同じ価格が当たる
- 顧客区分の階層で持つ
- 何個売るか
- 一回の注文数量による差
- 同じ取引先でも注文のたびに価格が変わる
- 数量段階は必要な商品だけに足す
- 交渉で決まる個別の価格
- 個別交渉の結果は階層の外に置く
- 例外として台帳で管理する
数量段階は刻みと割引幅をどう決めるか
刻みは出荷単位に合わせる
顧客区分で「誰に」の価格が決まったら、次は一部の商品に数量段階を足すかどうかです。
数量段階は、注文数が増えると売り手側の手間やコストが下がる商品に置くと、値引きの理由を説明しやすくなります。
刻みは、自社で確認できる単位に合わせると決めやすくなります。
たとえば1ケースの入数が12個の商品なら、12個、24個、ケース単位の数量で段階を置けば、ばら出しの手間が減る分を値引きに回すという筋が通ります。
反対に、入数と関係のない「50個」「100個」といった区切りは、ちょうど区切りを超えるための発注を誘い、出荷作業はかえって煩雑になることがあります。
割引幅は商品別の粗利から逆算する
割引幅の相場値は、根拠のある数字として示せるものがありません。
代わりに、商品別の粗利から逆算する手順を提案します。
顧客区分の掛け率を当てたあとに残る粗利を確かめ、その上に数量段階の割引を重ねても許容できる幅を上限にします。
数量段階を顧客区分と重ねると、最も安い区分の取引先が最も多い数量を買ったときの価格が、その商品の最低価格になります。
階層と数量段階を別々に決めると、この組み合わせを見落としがちです。
最低価格になる組み合わせを一つ計算しておけば、割引幅を決めすぎていないかを確かめられます。
もう一つ意識したいのは、数量段階が取引規模の大きい取引先ほど有利になる構造でもあることです。
前節の公取委の相談事例では、一律の引き下げで、購入量に応じて段階的に大きくなる累進的な仕組みではない点が、影響が小さいと判断された理由の一つとされていました3。
これは数量段階を置くこと自体が問題だという意味ではありません。
ただ、刻みと割引幅の根拠を出荷単位やコストの差で説明できるよう記録しておくと、後から問われたときに答えやすくなります。
段階数の上限と適用順位
ECに載せるときは、1商品に置ける段階数にも上限があります。
Shopifyでは、数量ブレークと価格ブレークは1商品につきそれぞれ最大10組まで設定できます(2026年閲覧時点)1。
出荷単位に合わせて刻めば、10段階を使い切るような設計になることは多くないはずです。
Adobe Commerceの段階価格は、固定価格または基準価格からの割引率で設定でき、ストアフロントでは数量の多い段階から順に適用されます2。
同社のページには段階数の上限は明記されていません。
固定価格で段階を置くと、基準価格を改定したときに段階価格は自動では動かず、割引率で置くと基準価格に連動します。
改定の頻度が高い商品ほど、どちらで持つかで改定時の作業量が変わります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 階層を一つ増やすと
- 掛け率の改定の対象が増える
- 例外との突き合わせの対象が増える
- 取引先への通知の対象が増える
- ECの側の上限
- 1つの会社ロケーションに割り当てるカタログは最大25件(2026年閲覧時点、あるカートの例)
- プランによって有効にできるカタログ数にも上限がある
- 進め方
- 階層は少数から始める
- 運用しながら必要に応じて増やす
ECで階層価格・顧客別価格を実現する方法と、運用負担の違い
割合調整と固定価格
顧客区分の階層と数量段階が決まると、それをECの価格設定にどう置き換えるかに進みます。
多くの場合、価格の持ち方は二層になります。
全商品をまとめて動かす割合の調整と、特定の商品だけを上書きする固定価格です。
Shopifyのカタログでは、割合調整はカタログ内の全商品に一括で値上げ・値下げを適用し、固定価格は特定の商品やバリアントに個別の価格を設定します1。
そして、固定価格は割合調整より優先されます1。
顧客区分の掛け率を割合調整に、数量段階や個別の例外を固定価格に置く、という対応関係で考えると整理しやすくなります。
複数の価格が当たるときの優先順位
運用で崩れやすいのは、一つの取引先に複数の価格が当たる場面です。
どれが表示されるかの決まりは、提供者ごとに異なります。
Shopifyでは、Shopify Plusで会社ロケーションに複数のカタログを直接割り当て、同じ商品の価格が異なる場合は、最も低い価格が表示されます1。
会社ロケーションのカタログと一致する市場のカタログが両方ある場合は、より特定的な会社ロケーション側の価格が表示されます1。
BasicからAdvancedのプランでは、カタログは会社ではなく市場に割り当てる形です1。
Adobe Commerceでは、最終価格は基準価格・グループの段階価格・特別価格・カタログ価格ルールのうち最小の関連価格になります2。
つまり、ある取引先向けに高めの価格を置いても、別の仕組みで安い価格が当たっていれば、そちらが採られる仕組みです。
Shopifyでも直接割り当てたカタログ同士では最も低い価格が表示されるため、似たことが起こり得ます。
表の中で判断が分かれるのは優先順位の行です。
Shopifyの固定価格優先は「個別の上書きが勝つ」決まりで、両社の最小価格は「安いほうが勝つ」決まりです。
同じ設計でも、どちらの決まりで動くかによって、例外価格が意図どおり表示されるかが変わります。
ここで比べたのは2社の公式ドキュメントに記載された仕様で、他のカートでは決まりが逆になることもあります。
使っているカートの仕様で、複数の価格が当たった場合の扱いを設計前に確かめておくのが確実です。
一括設定と個別設定の運用負担
割合調整は、顧客区分の掛け率を一つ変えれば全商品の価格が動くため、改定の手間が小さく済みます。
固定価格は商品ごとに登録するので、件数が増えるほど改定のたびの更新作業が増えます。
もう一つ、価格を社外の台帳や基幹システムと突き合わせるときの違いがあります。
ShopifyのカタログをCSVで書き出すと、含まれるのは固定価格が設定された商品の価格だけで、割合調整で決まる価格は含まれません1。
取引先別の全商品の価格一覧を書き出して見積の価格と照合したい場合、割合調整分は書き出したデータの外で計算する必要があるということです。
どの価格をどこで正とするかを決めておかないと、ECと見積で別々の価格が育っていきます。
| 比較の軸 | Shopify(B2Bカタログ) | Adobe Commerce(段階価格) |
|---|---|---|
| 価格の決め方 | カタログ内の割合調整と商品別の固定価格 | 固定価格または基準価格からの割引率 |
| 優先順位 | 固定価格が割合調整より優先。直接割当の複数カタログでは最安。会社ロケーションと市場の両方では会社ロケーション側 | 基準・グループ段階・特別価格・カタログ価格ルールのうち最小の関連価格 |
| 一括管理の手段 | CSV書き出しには固定価格のみ含まれる | 顧客グループ・共有カタログ単位で段階価格を紐づける |
| 制約 | 1会社ロケーションに最大25カタログ。プランにより有効カタログ数の上限。数量ブレークは1商品10組まで | 共有カタログはB2B版のみ。段階数の上限は明記なし |
▼ 図の内容を文字で読む
- 顧客区分の掛け率を当てたあとの粗利を確かめる
- 数量段階の割引を重ねても許容できる幅を上限にする
- 最も安い区分が最も多い数量を買ったときの価格を計算する
- 割引幅を決めすぎていないかを確かめる
例外価格と価格改定を階層設計を崩さずに扱う
例外は階層の外で台帳管理する
階層を作っても、交渉で決まる個別価格はなくなりません。
問題は、例外が増えるほど階層の改定が効かなくなることです。
Shopifyの仕様では固定価格が割合調整より優先されるので1、例外として固定価格を入れた商品は、顧客区分の掛け率を改定しても価格が動きません。
掛け率を上げたのに、例外の多い取引先の価格はほとんど変わっていない、という状態が起こり得ます。
そこで、例外は階層の外に置き、理由・期限・承認者を記録した台帳で管理する運用を提案します。
期限が来たら、階層の価格へ戻すか、理由を確かめて延長するかを判断します。
期限のない例外は、誰も見直さないまま残りがちです。
台帳を持つ効果は、例外の件数と内容が見える状態になることです。
固定価格を入れた商品数と取引先数が期ごとにどう推移しているかを見れば、階層が実態から離れていないかを確かめる手掛かりになります。
例外が特定の区分に集中しているなら、その区分の掛け率そのものを見直す時期かもしれません。
改定の通知と協議の記録
原価の上昇などで卸値を改定するとき、階層があると改定の説明は単純になります。
「この区分の掛け率をこう変える」と伝えれば、どの取引先にも同じ理屈で説明できるからです。
改定の背景として、取引全体での価格転嫁の状況も参考になります。
中小企業庁の2025年9月の価格交渉促進月間フォローアップ調査では、コスト全体の価格転嫁率は53.5%でした4。
受注企業から見た「価格転嫁してもらいやすい業種」では卸売が3位でした4。
ただし、これは受注側の企業が自社のコスト上昇分をどの程度転嫁できたかの調査で、売り手が卸値をどの程度改定できるか、取引先に受け入れられやすいかを示すものではありません。
実務として残しておきたいのは、改定の記録です。
改定日、対象の顧客区分、改定前後の掛け率、取引先へ通知した日と方法、協議した内容、例外価格を持つ取引先の扱いを残しておくと、後から問い合わせがあったときに経緯をたどれます。
取引の類型によっては法令上の協議の扱いが関わる場合もあるため、自社の取引に何が当てはまるかは専門家に確認してください。
見積価格とEC価格をずらさない
見積で出した価格とECの画面の価格が食い違うと、取引先はどちらが正しいのかを問い合わせてきます。
食い違いの多くは、見積担当がECとは別の価格表を見て計算していることから生じます。
防ぐには、見積の価格も顧客区分と数量段階から計算し、そこから外れる価格は例外として台帳を通すことです。
見積で例外を出したら、台帳に記録した上でECにも固定価格として登録する、という順番を決めておけば、見積だけに存在する価格は減ります。
前の節で触れたCSV書き出しの仕様のように、ECから取り出せる価格の範囲はカートによって違うため、照合の手順もそれに合わせて決めておく必要があります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 割合調整
- カタログ内の全商品に一括で値上げ・値下げを適用する
- 顧客区分の掛け率を置く
- 掛け率を一つ変えれば全商品の価格が動く
- 固定価格
- 特定の商品やバリアントに個別の価格を設定する
- 数量段階や個別の例外を置く
- 割合調整より優先される
- 件数が増えるほど改定のたびの更新作業が増える
- CSVで書き出すとき
- 含まれるのは固定価格が設定された商品の価格だけ
- 割合調整で決まる価格は書き出したデータの外で計算する
自社の取引構造に応じて、どの設計から始めるか
現行価格の棚卸し
ここまでの判断を、実際の作業の順番に戻します。
最初の一歩は、第1節で仕分けた現行の個別価格を、取引先×商品の単位で棚卸しすることです。
仮の顧客区分と掛け率を当ててみて、その価格に収まるものと、収まらずに例外として残るものに分けます。
階層に収まる割合が高ければ、顧客区分の掛け率だけで多くの価格を表せるということです。
例外の比率が高ければ、区分の切り方が実態と合っていないか、交渉で決まる価格が多い取引構造だということになります。
この例外比率が、どの設計から始めるかを選ぶ手掛かりになります。
状況別の始め方
以下は実績から導いた目安ではなく、ここまでの説明を状況別に束ねた仮の整理です。
- 取引先は少ないが交渉で決まる価格が多い場合:顧客区分は少数にとどめ、交渉で決まった価格を例外台帳で管理することから始める。
台帳の理由欄から、区分に戻せるものを探していく。 - 商品点数が多く、取引条件が取引先間でそろっている場合:顧客区分の掛め率を割合調整で一括設定し、固定価格は最小限にする。
改定の作業量を最も抑えやすい。 - まとめて発注される商品が一部に限られる場合:顧客区分を先に決め、数量段階は出荷単位がはっきりした商品だけに足す。
どの状況でも、顧客区分を土台にして数量段階と例外を重ねる順番は変わりません。
違うのは、どこに手間をかけるかです。
交渉の多い取引構造では台帳の運用に、商品点数の多い取引構造では一括設定の仕組みづくりに、それぞれ時間を使うことになります。
試行と見直しの時期
階層は一度で正解に決まるものではありません。
少数の区分で試行し、例外の件数や取引先からの問い合わせの内容を見て、区分の切り方や掛け率を直していきます。
見直しの時期は、取引実績を基準にした区分なら実績が締まる期ごと、原価の変動が大きい商品なら改定のたびなど、区分の基準と連動させると判断しやすくなります。
見直しのたびに例外台帳の期限も確かめれば、階層と例外を同じ時期に整えられます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 例外の申請(交渉の結果など)
- 台帳に理由・期限・承認者を記録する
- ECに固定価格として登録する
- 期限が来たら見直す
- 階層の価格へ戻すか、理由を確かめて延長するかを判断する
現行の個別価格をどの理由に仕分け、どの顧客区分で階層を切るかは、取引先ごとの事情を知る社内だけでは判断が偏りやすく、第三者と棚卸しの結果を見ながら整理すると進めやすくなります。
現行の卸値の棚卸し結果をもとに、先に決める軸と、階層に収まる価格・例外として残す価格の分け方を一緒に確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 価格差の整理 | 現行価格を「誰に」「何個で」「交渉の結果」「理由不明」に仕分ける |
|---|---|
| 顧客区分の基準 | 取引実績・業態・取引条件から、説明でき見直しやすいものを選ぶ |
| 階層の数 | 少数から始め、ECのカタログ数の上限に収める |
| 数量段階 | 出荷単位に合わせて刻み、区分の掛け率と重ねた最低価格で割引幅を確かめる |
| ECの優先順位 | 固定価格優先か最小価格かをカートの仕様で設計前に確かめる |
| 例外と改定 | 例外は理由・期限・承認者を台帳に残し、改定の通知と協議を記録する |
▼ 図の内容を文字で読む
- 現行の個別価格を取引先×商品で棚卸しする
- 理由別の件数の比率から先に決める軸を選ぶ
- 少数の顧客区分と、必要な商品だけの数量段階で試行する
- 例外の件数や問い合わせの内容を見て、区分や掛け率を直す
階層と数量段階を決めても、使っているカートで複数の価格がどう優先されるかによって、例外や改定が意図どおりに反映されないことがあります。 設計した顧客区分・数量段階・例外価格を、運用中のECの価格設定と見積の手順にどう載せるか、優先順位と照合の方法を確かめられます。
よくある質問
階層は何段階にするのがよいですか。まず少数で始めてもよいですか。
最適な段階数を示す実測の根拠はありません。
階層が増えるほど掛け率の改定や例外との突き合わせの対象が増えるため、少数から始めて、例外の比率を見ながら必要に応じて増やす進め方を勧めます。
ECのカタログに対応させる場合は、Shopifyなら1つの会社ロケーションに最大25件、プランによって有効なカタログ数にも上限がある、といった仕様上の制約も前提になります1。
数量割引と顧客別の掛け率を併用すると、どちらが優先されますか。
カートの仕様で決まります。
Shopifyでは個別の固定価格がカタログの割合調整より優先されます1。
Adobe Commerceでは、基準価格・グループの段階価格・特別価格・カタログ価格ルールのうち最小の関連価格が最終価格になります2。
使っているカートで、複数の価格が当たったときの扱いを設計前に確かめておくと、意図しない価格の表示を避けやすくなります。
特定の取引先だけ安くすることは問題になりませんか。
公正取引委員会の考え方では、取引先によって価格に差があること自体は直ちに違法ではなく、競争の反映や結果とは認められない価格差で競争者や取引相手を著しく不利にするおそれがある場合に問題となります3。
購入実績などの単純で説明できる基準で区分しておくと、根拠を示しやすくなります。
個別の判断は専門家に確認してください。
例外価格が増えて階層が形骸化したときは、どう戻せばよいですか。
例外を理由・期限・承認者とともに台帳に記録し、期限ごとに階層へ戻すか延長するかを判断します。
例外が特定の区分に集中している場合は、個々の例外を戻すより、その区分の掛け率自体を見直したほうが早いこともあります。
見積価格とEC価格が食い違わないようにするには、どうすればよいですか。
見積も顧客区分と数量段階から計算し、そこから外れる価格は例外台帳を通してECに固定価格として登録する順番を決めておきます。
ECから書き出せる価格の範囲はカートによって違い、たとえばShopifyのCSV書き出しには固定価格のみが含まれるため1、照合の手順もそれに合わせて決めます。
価格改定を取引先へ通知するとき、何を記録しておくべきですか。
改定日、対象の顧客区分、改定前後の掛け率、通知した日と方法、協議した内容、例外価格を持つ取引先の扱いを残しておくと、後から経緯をたどれます。
取引の類型によっては法令上の協議の扱いが関わる場合もあるため、自社の取引への当てはまりは専門家に確認してください。
- 1 出典:Shopify「Creating and managing B2B catalogs(ヘルプセンター)」(2026年閲覧)
- 2 出典:Adobe「Tier pricing(Adobe Commerce 管理ガイド)」(2026年閲覧)
- 3 出典:公正取引委員会「独占禁止法 相談事例集(流通・取引慣行・差別対価)」(平成12年度)
- 4 出典:中小企業庁(J-Net21掲載)「価格交渉促進月間(2025年9月)フォローアップ調査」(2025年)