◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 「ISDNが終わる」という一言では自社の期限は決まらない。フレッツ・ISDN、INSネット64・64ライト・1500、ディジタル通信モードは案内されている時期が別々のため、契約しているサービス名の特定から始める。
- 自社側の棚卸は、利用の有無と、止まったときの影響度合いを分けて確認し、そのうえで代替策と業界の方針を機器の提供元や取引先に確かめる。
- 取引先の対応状況は一様ではない。2016年の1社の事例では、約500弱の取引先のうち移行済みは10%強で、残りは従来方式のままだった。
- 一斉移行と段階移行に一律の正解はなく、取引先の分布と提供終了までの残り時間を並べて選ぶ。決めた結果は取引先ごとに台帳へ記録しておく。
- 1社あたりの調整に時間がかかるため、台帳の完成を待たず、書けた行から取引先への連絡を始めるほうが全体では早く終わる。
目次

なぜ今、既存EDIからインターネットEDIへの移行が必要なのか
取引先から「インターネットEDIに切り替えたい」と連絡が来た、あるいは回線サービスの終了案内が届いた。
そこで最初に手が止まるのが、何をどこまで洗い出せば移行の計画が立つのか、という点です。
棚卸は二段構えになります。
まず自社側で、どの回線サービス・通信モードでEDIを動かしているかを特定し、期限がいつなのかを押さえる。
次に取引先側を一社ずつ見て、すでにインターネットEDIへ移行済みなのか、まだ従来方式のままなのかを台帳の形にする。
この二つが揃うと、準備の整った先から順に切り替える段階移行にするか、期日を決めて一斉に切り替えるかを判断でき、計画・並行運用・切替・検証という手順に落とし込めます。
フレッツ・ISDN/INSネット64・1500/ディジタル通信モードは終了時期が異なる
「ISDNのサービスが終わるので、インターネットEDIに切り替えてほしい」という連絡は、たいてい一文で届きます。
ところがその一文からは、自社がいつまでに何を終えればよいのかが読み取れません。
NTT東日本の案内では、フレッツ・ISDNというサービスと、INSネット64・INSネット64・ライト・INSネット1500というサービス、さらにINSネット上のディジタル通信モードが、それぞれ別々に案内されています12。
名称が違えば、新規申込の受付を終える時期も、提供そのものを終える時期も一致しません。
この食い違いは、そのまま計画の狂いになります。
フレッツ・ISDNの提供終了として案内された時期はすでに過ぎており、一方でINSネット64・64ライト・1500の提供終了は2028年12月末として案内されています12。
加えて、INSネットのディジタル通信モードについては2024年1月から順次サービスを終了する予定と示されており1、回線契約そのものの提供終了とは時期が分かれています。
「まだ数年ある」という前提が、自社が使っている組み合わせでは成り立たないことがあるわけです。
期限を過ぎると何が起きるのかは、実務の言葉に置き換えると分かりやすくなります。
いつもの時刻に受注データが届かない、送ったはずの出荷予定が相手に着かない、という形で表に出ます。
受発注は毎日動いているので、止まった日にまとめて手作業へ切り替えるのは現実的ではありません。
移行の話がシステムの入替というより、止められない業務の経路を作り替える話になるのは、このためです。
だからこそ、移行の最初の作業は接続方式を選ぶことでも、サービスを比べることでもありません。
自社が契約しているサービスの正式な名称と、EDIで実際に使っている通信モードを特定することです。
ここが決まって初めて、残り時間が何か月なのか、取引先との調整にどれだけ充てられるのかという計算ができます。
期限対応が入口でも、手を入れるのは日々の受発注
移行の動機が外からの期限であっても、触る対象は毎日流れている受発注データです。
中小企業庁のミラサポplusでは、中小企業共通EDIを導入した中小企業で受発注業務の時間が平均51.4%削減されたと紹介されています4。
ただしこれは、EDIを新たに導入した場合に示された効果です。
すでにEDIで受発注を交換している企業が、通信の方式をインターネット経由へ移し替えるときの効果として、この数字をそのまま当てはめることはできません。
移行で変わるのは、まず通信の経路と、そこにつながる機器やソフトです。
受注データを受け取って出荷指示を作る、請求と突き合わせるといった後ろの業務は、移行の前後で同じ形が続くのが基本になります。
この区別をつけておくと、棚卸の対象も自然に絞れます。
業務を作り直すのではなく、いまつながっているものを別の経路でつなぎ直すために、何がつながっているかを数え上げる作業だからです。
棚卸の第一歩:自社の回線・通信モードの利用状況を確認する
最初に分けるのは「使っているか」と「止まると何が困るか」
自社側の棚卸は、二つの問いを分けて進めると迷いにくくなります。
一つは、その回線・通信モードを使っているかどうか。
もう一つは、それが止まったときに何がどこまで困るか、です。
TechTargetジャパンの記事では、何らかのシステムでINSネットを利用している場合、まずディジタル通信モードの利用有無と影響度合いを確認し、そのうえで利用シーンごとの代替策や業界の方針をメーカーやSIerに確認して移行プロセスを検討することが勧められています5。
これはINSネットのディジタル通信モードを使う法人の担当者に向けた手順で、ほかの回線方式まで含めた話ではありませんが、順序の考え方はそのまま使えます。
利用の有無は、契約情報と機器の設定を見ればある程度は答えが出ます。
影響度合いのほうは、業務をたどらないと分かりません。
受注データが届かなければ出荷指示も納品書も作れないのか、それとも当日はFAXや電話で受けて後から入力できるのか。
止まった場合に一日で困るのか、数日は別の手で回せるのかによって、切替に持てる余裕も、並行運用をどれだけ厚くとるかも変わってきます。
利用の有無と影響が分かると、次に聞く相手がはっきりします。
EDIの機器やソフトを納めた事業者、業界で規格を決めている団体、そして取引先です。
ここで自分の業界がどの方式へ寄せているのかを確かめないまま自社だけで接続方式を決めると、取引先との調整の段階でやり直しになります。
代替策を確認するときに聞くことも、あらかじめ整理しておくと一度で済みます。
いま使っている機器やソフトが新しい接続方式に対応できるのか、設定やソフトの更新で足りるのか、それとも入替が必要なのか。
入替が必要なら、調達と設置にどれだけかかるのか。
この答えで、取引先との調整を始められる時期が決まります。
機器の手配に数か月かかるのに取引先へ翌月の切替を打診してしまう、という順番の狂いを避けられます。
自社側の棚卸を並べる四つの単位(本記事での整理)
自社側を数え上げるとき、何を一行にするかが決まっていないと、同じ設備を二度書いたり、拠点の回線が抜けたりします。
公開資料に定められた分類があるわけではありませんが、本記事では次の四つの単位に分けて並べることを提案します。
一つ目は、回線と接続の単位です。
どの拠点に、どのサービス名の回線が何本あり、そのうちEDIで使っているのはどれかを書きます。
二つ目は、通信を行う機器とソフトの単位です。
接続に使っている装置や通信ソフト、その保守をどこが見ているか、設定に書かれている手順の名称まで押さえます。
三つ目は、やり取りしているデータの単位です。
受注、出荷、請求など、どの種類のデータをどの取引先と交換しているかを並べます。
四つ目は、運用の単位です。
誰がいつ送受信を行い、エラーが出たときに誰が気づく仕組みになっているかを書きます。
この四つで並べておくと、後で取引先ごとの表と突き合わせたときに、「この取引先はこの回線のこの機器を通っている」という線がつながります。
逆にどれか一つの単位だけで作った一覧は、切替の順番を決める段になって足りなくなります。
回線だけの一覧では、止めたときに誰との取引が止まるのかが分からないからです。
出典:TechTargetジャパン「ISDNのディジタル通信モード、2024年終了に備えてどんな準備が必要になるのか?」(2019年/対象はINSネットのディジタル通信モードを利用する法人のIT担当者・システム管理者への推奨)
棚卸の次の一歩:取引先ごとの対応状況を洗い出す
取引先の移行状況にはばらつきがある(実例)
自社側が見えたら、次は相手側です。
ここで多くの担当者が引っかかるのは、取引先を「対応済み」「未対応」に分けても、その比率が事前には分からないことです。
日経クロステックが2016年に伝えた事例では、約500弱の小売店との間でEDIを使っている企業で、すでに10%強の取引先がIP網に対応した流通BMSやWeb-EDIなどへ移行していたとされています3。
これは1社の実例であり、業界全体の比率を示した数字ではありません。
それでも、この事例が示していることははっきりしています。
取引先のなかには、こちらが動く前から新しい方式へ移っている先があり、同時に大半がまだ従来のままという状態があり得るということです。
つまり、こちらの都合で一律の案内文を送っても、相手によって返ってくる話が違います。
すでに移行済みの先には接続先と規格の確認、未対応の先には移行の意向と時期の確認と、聞くことが分かれます。
受け皿となる規格そのものは広がっています。
流通システム開発センターの推計では、流通BMSの導入企業数は2025年6月時点で卸・メーカーの累計21,600社以上とされています6。
ただしこれは全国の累計で、自社の取引先がそのなかに含まれているかどうかは別の話です。
結局は、一社ずつ当たって書き出すほかありません。
取引先台帳に何を書くと、後の判断に使えるか
ミラサポplusでも、EDIの導入を検討するときは自社だけでなく取引先企業の状況や環境を考慮しながら要否を判断する必要があるとされています4。
これは新規に導入する場面に向けた説明ですが、移行でも同じことが言えます。
相手の状況が分からないまま自社の切替日だけを決めても、その日に相手がつながらなければ受発注は流れないからです。
台帳に何を書くかは、後でどんな判断をしたいかで決まります。
切替の順番を決めたいなら、相手がいまどの方式でつながっていて、いつ切り替えられるのかが要ります。
接続の準備をしたいなら、相手が指定する規格と窓口が要ります。
検証をしたいなら、テストのやり取りができるかどうかが要ります。
相手から「うちはもう対応済みです」と返ってきたときも、それだけで接続できるかどうかは決まりません。
どの規格で、どのサービスを使い、どんなデータ項目を交換しているのか。
同じインターネットEDIという言い方でも、取引先ごとに指定される中身は違います。
台帳の欄を対応済みと未対応の二択にせず、相手が指定する接続先と規格を書ける形にしておくと、後で問い合わせ直す回数が減ります。

聞き方も、全社に同じ文面を送るだけでは進みません。
案内文で切替の予定を伝えるところまでは共通にできますが、相手の接続方式や時期は、窓口とのやり取りで一社ずつ埋まっていきます。
欄を増やしすぎると埋まらないので、最初は空欄のままで構いません。
取引先の数だけ行を作り、聞けたところから埋めるほうが早く形になりますし、空欄の多い取引先が、そのまま調整に時間のかかる先として浮かび上がります。
| 台帳に設ける欄 | そこから読み取れること |
|---|---|
| 現在の接続方式(回線・通信の手順) | 期限がかかる取引先かどうか |
| 相手が指定する移行先の規格・サービス | 自社側で用意する接続の種類 |
| 相手の切替予定時期 | 自社の期限と噛み合うか |
| 切替の窓口と連絡経路 | 事前調整を始められるか |
| 交換しているデータの種類と届く頻度 | 並行運用をどれだけの期間とるか |
棚卸結果から一斉移行か段階移行かを判断する
一斉移行と段階移行は、何が違うのか
棚卸の結果が並ぶと、次に決めるのは切替の進め方です。
大きく分ければ、期日を決めて取引先をまとめて切り替える一斉移行と、準備の整った先から順に切り替える段階移行があります。
どちらを選ぶべきかという一律の答えはありません。
違うのは優劣ではなく、負荷の出方と、同時に管理しなければならない対象の数です。
一斉移行では、並行運用の期間が短くまとまります。
その代わり、切替日に確認が集中し、取引先の準備が一社でも間に合わなければ、その日にデータが流れません。
段階移行では、相手の都合に合わせて日を分けられます。
その代わり、旧方式と新方式を同時に動かし続ける期間が長くなり、どちらの経路で届いたデータなのかを運用側が常に把握しておく必要があります。
段階移行を選ぶと、社内の確認作業は一時的に増えます。
受注の一覧を見たときに、どの取引先が新しい経路に移っていて、どれがまだ旧方式なのかが分からないと、届いていない分に気づけません。
台帳をそのまま「いまどちらの経路か」の一覧として使える形にしておくと、日々の確認がその一覧で足ります。
棚卸の分布と残り時間を突き合わせる
判断材料になるのは、台帳に並んだ分布と、自社の期限までの残り時間です。
先ほどの事例のように、移行済みが1割程度で残りが未対応という分布であれば、全社をひとつの期日に揃えるのは相手側の準備が追いつきません3。
逆に、大半の取引先がすでに新しい方式へ移っていて、残りが数社という分布なら、期日を決めて揃えたほうが運用は単純になります。
ここに期限が重なります。
自社が使っているサービスの提供終了が先に来るなら、相手の都合を待つ余地は小さくなります12。
まだ時間があるなら、相手の切替予定に合わせて順番を組めます。
一斉か段階かは、この二つ——取引先の分布と、期限までの残り時間——を並べたときに、無理なく収まるほうを選ぶという決め方になります。
実際には、どちらか一方に振り切ることは少なく、対応済みの先を先に片づけ、残りを期日で揃えるという組み合わせになることもあります。
その場合も、どの取引先がどちらの扱いなのかを台帳に書き残しておかないと、切替の途中で誰がどの経路にいるのか分からなくなります。
移行方式を決めることと、決めた結果を記録しておくことは、別の作業です。
| 見る点 | 一斉移行 | 段階移行 |
|---|---|---|
| 切替のタイミング | 期日を決めてまとめて切り替える | 準備の整った取引先から順に切り替える |
| 並行運用の期間 | 短くまとまるが当日に確認が集中する | 長くなり二つの方式を同時に運用し続ける |
| 取引先の準備 | 全社の準備が揃うことが前提 | 相手ごとの都合に合わせられる |
| 管理する対象 | 期日が一つなので残り時間の計算は単純 | 取引先ごとに期日が分かれ台帳での管理が要る |
棚卸から移行手順(計画・並行運用・切替・検証)へのつなぎ
1社あたりの調整時間が、全体の期間を決める
移行の期間を見積もるとき、見落とされやすいのは、作業量よりも相手との調整に時間がかかるという点です。
先ほどの事例では、1取引先あたり、事前調整から利用開始までに1か月ほどかかるとされています3。
2016年時点の1社の数字なので、そのまま自社に当てはまるとは限りません。
ただ、1社あたりに一定の期間がかかるという前提に立てば、取引先の数がそのまま全体の期間に効いてくることが分かります。
同じ事例の企業は、約500弱の小売店とEDIを使っていました3。
この規模で一社ずつ順番に進めれば、単純に足し算しただけでは期限に届きません。
実際には複数の取引先と並行して進められますが、並行できる本数は、こちらで調整にあたれる人数と、相手側の応答の速さで決まります。
だからこそ、棚卸と並行して調整を始める必要が出てきます。
台帳が完成してから着手するのではなく、書ける行から連絡を始めるほうが、結果として早く終わります。
誰がこの作業を担うかは、会社によって置き方が違います。
回線や機器の契約内容をたどるのは情報システム側、取引先の窓口に連絡して切替日を詰めるのは受発注を担当している業務側というように、実際の行為で分けると抜けが見えやすくなります。
どちらか一方だけで進めると、回線は分かるが取引先の事情が分からない、あるいはその逆という状態になります。
計画・並行運用・切替・検証で、棚卸の結果をどう使うか
棚卸は、それ自体が目的ではなく、後に続く四つの段階で使う材料です。
計画では、台帳の行を並べ替えて順番と山を作ります。
相手の切替予定時期が早い先、こちらの期限が近い回線につながっている先から順に置くと、無理のない並びになります。
並行運用では、旧方式と新方式の両方でデータが届く期間をつくります。
このとき先に決めておくのは、どちらを正として業務を進めるかです。
両方に同じ受注が届いたときに、後続の出荷指示を二重に作ってしまわないよう、受け取り側の手順を切替の前に取り決めておきます。
並行運用の期間をどれだけ取るかも、棚卸の結果で変わります。
受注が毎日届く取引先なら、数日間の並行で差が見えます。
月末にまとめて届く種類のデータであれば、その周期を一度またがないと確認できません。
台帳にデータの種類と届く頻度を書いておくと、取引先ごとに必要な並行期間を個別に決められます。
切替では、取引先ごとの切替日と、旧方式をいつ止めるかを台帳に記録します。
検証では、新しい経路で受け取ったデータが従来と同じ結果になるかを突き合わせます。
数量や金額だけでなく、コードの桁や、これまで空欄で届いていた項目が埋まるようになっていないかまで見ると、後続の処理で起きる不一致に気づけます。
ここで見つかった差は、台帳のその取引先の行に戻して記録しておくと、次の取引先で同じ確認をするときに使えます。
棚卸で見落としやすく、手戻りになりやすい点
名称の取り違えが、そのまま期限の取り違えになる
棚卸で最も手戻りになりやすいのは、自社が使っているサービスの名称を取り違えることです。
フレッツ・ISDN、INSネット64・64ライト・1500、そしてディジタル通信モードは、どれもISDNにまつわる名称ですが、案内されている時期は別々です12。
ここを一段違えて読むと、まだ猶予があると思っていた回線がすでに期限を過ぎていたり、逆に慌てて前倒しした結果、取引先の準備が整わないまま切替日を迎えたりします。
契約書や請求の内訳に書かれている名称と、社内での呼び方が一致していないことも珍しくありません。
「ISDNの回線」とだけ台帳に書いてあると、後から見た人にはどのサービスなのか判断できません。
正確なところは契約先の通信事業者に照会するのが確実で、その回答を回線ごとに台帳へ書き写しておけば、以降の確認は一度で済みます。
EDI以外で同じ回線につながっているもの
棚卸の対象をEDIだけに絞ると、同じ回線や同じ通信モードを使っている別の機器が残ります。
拠点に置かれている機器、予備として引いてある回線、受発注とは別の目的で通信している装置などです。
これらはEDIとは違う担当が管理していることも多く、EDIの移行が終わった後に、別々の対応として持ち上がります。
どこまでを一度に扱うかは判断が分かれるところですが、少なくとも同じ回線にぶら下がっているものを書ける欄を台帳に持っておくと、後から探し直す手間がなくなります。
回線を止める段になって初めて別の機器が出てくると、切替日の調整をやり直すことになるためです。
相手側の期限と、自社の期限は別々に動く
もう一つ見落とされやすいのが、取引先側の期限です。
相手が使っている回線サービスが自社と同じとは限らず、名称が違えば終了の時期も違います12。
自社の期限に合わせて切替日を提案しても、相手側の事情では早すぎたり遅すぎたりします。
台帳に相手の切替予定時期を書く欄を設けるのは、このずれを早い段階で見つけるためです。
移行の途中で、相手から日程の変更を告げられることもあります。
そのときに困らないかどうかは、順番を組み替えられる状態にしてあるかで決まります。
段階移行を選んだ場合は特に、ある取引先の遅れが後ろの予定を押し出さないよう、並行して進める本数に少し余裕を持たせておくと動かしやすくなります。

自社の回線やEDIの構成は社内でもたどれますが、取引先ごとの接続方式や規格の違いをどの単位で書き出すかは、一社だけで決めると調整の段階でやり直しになりがちです。
棚卸の欄立てと、取引先へ聞く項目をどこまで揃えるかを、いまの契約状況や取引先の数に合わせて一緒に整理できます。無料相談で要件を整理する
回線サービス・通信モードごとの終了時期の整理
NTT東日本が公表しているサービス・モードの単位で、新規申込受付の終了時期と提供終了の時期を並べています。
- フレッツ・ISDN:新規申込受付の終了は2024年3月末、サービス提供の終了は2026年1月末1
- ディジタル通信モード:2024年1月から順次サービスを終了する予定1
- INSネット64・INSネット64・ライト・INSネット1500:新規申込受付の終了は2024年8月末、提供終了は2028年12月末2
- 名称が違えば期限も違うため、契約しているサービス名を特定しないと自社の期限は決まらない
自社の契約がどの名称に当たるかは、請求内訳や社内資料の表記だけでは判断がつかないことがあります。その場合は契約先の通信事業者へ回線ごとに照会し、どのサービス・どのモードで使っているかを台帳に書き分けてから期限を当てはめます。
要点の整理
| 判断の軸 | 確認する基準 |
|---|---|
| 自社の期限 | 契約しているサービス名とEDIで使っている通信モードを特定し、そのサービスの受付終了・提供終了の時期に当てはめる |
| 自社側の棚卸 | 回線と接続、機器とソフト、交換しているデータ、運用の四つの単位で行を作る(本記事での整理) |
| 取引先側の棚卸 | 対応済みか未対応かの二択にせず、相手が指定する接続先・規格・切替予定時期・窓口を書ける形にする |
| 一斉か段階か | 取引先の対応状況の分布と、提供終了までの残り時間を並べ、無理なく収まるほうを選ぶ |
| 着手の時期 | 1社あたりの調整に時間がかかる前提で、台帳の完成を待たず書けた行から連絡を始める |

一斉と段階のどちらで進めるかは、取引先の分布と残り時間を並べて初めて判断できるため、集めた台帳をどう読むかで迷いやすいところです。 台帳に集まった内容から、切替の順番と並行運用の期間をどう置くか、どの取引先から当たるべきかを確かめられます。
よくある質問
「ディジタル通信モード」と「通話モード」では、確認すべき期限は同じですか
同じとは限りません。
NTT東日本の案内では、INSネット上のディジタル通信モードについて2024年1月から順次サービスを終了する予定と示されており1、INSネット64・64ライト・1500というサービス自体の提供終了とは時期が分かれています2。
自社のEDIがどのモードで通信しているかは、機器やソフトの設定と契約内容の両方を見ないと判断がつかないことが多いため、機器の保守元と契約先の通信事業者の双方に確認するのが確実です。
フレッツ・ISDNとINSネット64・64ライト・1500は同じサービスですか
別々に案内されているサービスで、新規申込受付の終了時期も提供終了の時期も一致していません12。
フレッツ・ISDNの提供終了として案内された時期のほうが先に来ており、INSネット64・64ライト・1500の提供終了は2028年12月末とされています2。
名称が似ているため社内の資料では混ざりやすいところですが、期限が違う以上、台帳には正式な名称で書き分ける必要があります。
棚卸を始める前に、まず何を用意しておけばよいですか
契約している回線の一覧(拠点ごと、サービス名が分かる形のもの)、EDIで使っている機器やソフトとその保守元、EDIでつながっている取引先の一覧という三つがあると動き出せます。
TechTargetジャパンの記事でも、まずディジタル通信モードの利用有無と影響度合いを確認し、そのうえで代替策や業界の方針をメーカーやSIerに確認することが勧められています5。
最初から全部を埋める必要はなく、空欄のまま行だけ作っておくと、どこが分かっていないのかが見えます。
一斉移行と段階移行のどちらを選ぶべきか、一律の結論はありますか
一律の結論はありません。
判断材料になるのは、取引先の対応状況の分布と、自社が使っているサービスの提供終了までの残り時間です。
対応済みが一部にとどまる分布であれば全社同時の期日は置きにくく、逆に残りが数社なら期日を揃えたほうが運用は単純になります。
どちらを選ぶ場合も、取引先ごとの状況を書き出した台帳がないと、比較そのものができません。
「1取引先あたり1か月」という目安は、自社にもそのまま当てはまりますか
そのまま当てはめることはできません。
これは2016年に報じられた1社の事例で、約500弱の小売店とEDIを使っていた企業が、事前調整から利用開始までに1取引先あたり1か月ほどかかるとしていた数字です3。
取引先の数、相手側の窓口の体制、指定される規格によって変わります。
自社では最初の数社を実際に進めてみて、その実績を残りの見積もりに使うほうが精度が上がります。
- 1 出典:NTT東日本「「フレッツ・ISDN」のサービス提供終了日および新規申込受付終了日等について」(2023年)
- 2 出典:NTT東日本「INSネットの新規申込受付・提供終了について」(2024年)
- 3 出典:日経クロステック(xTECH)「ISDN移行のハードルは業界によって様々、EDIなどは早期対応が必要」(2016年)
- 4 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(2020年)
- 5 出典:TechTargetジャパン(ITmedia)「ISDNのディジタル通信モード、2024年終了に備えてどんな準備が必要になるのか?」(2019年)
- 6 出典:一般財団法人流通システム開発センター(GS1 Japan)「卸・メーカーの流通BMS導入企業数推計(第28回)」(2025年)