◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 「帳合」は取引先ごとの掛け率・締め日・支払条件をひとまとめに指す取り決めで、受注から入金消込までを動かします。
- 手形等の支払サイトの上限は振興基準に示され、向かう先は下請法の対象取引に限られます2。
- 43.1%がBtoB-EC化率で、この数字は受発注の電子化を示し、帳合の整理までは含みません1。
- 52%と51%は「理想は電子データ」と答えた割合であり、導入済みの割合ではありません4。
- 移行の負担は取引先ごとの条件表の棚卸しに集まるため、請求の電子化より先に条件の整理を置きます。
目次

取引先ごとに違う掛け率と締め日
「帳合」とは、取引先ごとに定めた掛け率・締め日・支払条件の取り決めを指します。60日以内という手形等の支払サイトの上限は、下請法(下請代金支払遅延等防止法)の対象取引に向けられたものです2。請求書の電子化を急ぐ前に、条件表の棚卸しから始めてください。
月初の朝、経理の机の上に積まれた納品書の束。担当者は紙をめくる音を立てながら、取引先ごとの「掛け率」を一覧表から拾い上げます。同じ商品でも、相手が変われば適用する単価が変わります。一覧表を作った人が異動していれば、その率になった経緯を聞ける相手も残っていません。
支払条件も同じで、「末締め翌月末払い」か「末締め翌々月払い」かは取引先ごとに違います。表計算ソフトの列は増築を重ねた家のように右へ伸び、注記が欄外に貼り付いていきます。入金消込の段では、その列を一つずつ確かめながら、入金額と請求額を突き合わせます。取引先が増えるほど、確認の往復も増えていきます。
条件を確かめる往復は、月次の締めのたびに人件費として積み上がります。
帳合とは何か
帳合とは、取引先ごとに定めた掛け率・締め日・支払条件をひとまとめに指す言い方です。現場で「A社の帳合」といえば、その相手へ適用する売価の条件と、代金を回収するまでの取り決めの両方を指します。単なる取引先の一覧ではなく、受注から入金消込までを動かす前提そのものです。ここが曖昧なままだと、請求金額の根拠を社内で説明できなくなります。
掛け率・締め日・支払条件という三つの取り決め
掛け率は、定価に対してその取引先へ適用する売価の割合です。締め日は請求の対象期間を区切り、支払条件は締めのあと何日で代金が入るかを定めます。この三つは別々の書類に散らばりやすく、基本契約書に書かれた条件と、受注システムに登録された条件が食い違う場合もあります。「どちらが正か」を確かめる作業が、月次の締めのたびに起きます。
実務では、掛け率・締め日・支払条件のどれか一つを変えるだけで、請求書の金額も入金予定日も動きます。値上げの交渉で「掛け率」だけを直し、支払条件の欄を直し忘れると、入金の予定と実際がずれます。自社の直近1年の取引先について、契約書と登録内容が一致しているかを数えてみてください。ずれが見つかる相手ほど、電子化のときに手が止まります。
電子で動く取引と、手元に残る条件表
受発注そのものは、電子データでやり取りする場面が増えています。ウェブの発注画面やEDI(企業間電子データ交換の仕組み)で注文を受け、出荷と検収まで同じ仕組みで進む取引も珍しくありません。それでも「どの取引先へどの掛け率を当てるか」という条件表だけは、担当者の表計算ソフトに残っていることがあります。
まずBtoB取引の電子化がどこまで進んでいるか、その規模を確かめます。514.4兆円が、2024年の国内BtoB-EC市場規模です1。43.1%が同じ年のEC化率にあたり、企業間の取引が半ばに届くところまで電子で動いていることになります1。この二つは受発注の電子化を映す数字で、「帳合」の条件表が整っているかどうかまでは含みません。
26.68兆円が、インボイス制度の開始後6カ月間にある請求書プラットフォーム1社で流通した電子データの金額で、紙のまま受け取る側には転記と保存の手間が残り続けます3。
| 取り決め | 定める内容 |
|---|---|
| 掛け率 | 定価に対して適用する売価の割合 |
| 締め日 | 請求の対象期間を区切る |
| 支払条件 | 締めのあと代金が入るまでの日数を定める |
支払サイトの上限ルール
支払サイトは、締め日から代金が入るまでの日数を指します。ここには取引先ごとの慣行が残りやすく、「昔からこの条件で」という説明のまま続いている契約もあります。近年は公的な基準の側が動き、手形などによる支払いの日数に上限が示されました。
60日以内という上限と、その適用の範囲
上限の日数から確かめます。60日以内が、「振興基準」(下請中小企業振興法に基づく基準)に示された手形等の支払サイトの上限です2。月次の締めに置き換えれば、およそ二回分の間隔にあたります。ただしこの基準が向くのは全てのBtoB取引ではなく、下請法の対象となる取引です2。資本金の区分と取引の内容で対象かどうかが決まるため、取引先ごとに仕分けてください。
対象の切り分けは、書類の上で行います。基本契約書と発注書を並べ、「支払条件」の欄の日数を取引先ごとに数えてください。手形や電子記録債権で支払う相手があれば、その日数が先の上限の内側かを確かめます。超える契約が見つかれば、話し合う順番が決まります。
施行を控える改正法への備え
支払いの決まりは、これから先も動きます。下請代金の支払遅延を防ぐ法律と、下請中小企業の振興に関する法律の改正が成立し、施行の時期も定まりました2。取引先との交渉には時間がかかるため、「いつまでに何を直すか」を先に決めておきます。
時期を押さえます。2025年に成立した改正法は、2027年の施行が予定されています2。成立から施行までの間に、契約の棚卸しと条件の交渉を終えられるかが分かれ目です。取引先の数が多いほど、「先に話す相手」から並べる必要が出てきます。
請求書電子化の広がり
請求書の授受は、支払サイトの管理と切り離せません。締めた金額を請求書にして送り、相手が受け取って支払処理に回すまでの日数が、入金の日を左右します。ここを紙でやり取りするか電子データでやり取りするかで、社内に残る手作業の量が変わります。紙から電子データへの移行がどれだけ進んでいるかで、この日数は変わります。
電子データの流通額がどれだけ伸びたか、その幅を見ます。1.6倍が、ある請求書プラットフォームで前年同期と比べた電子データの流通金額の伸びです3。これは市場全体の値ではなく、その一社の「利用実績」を集計したものです3。紙のまま残る取引先が見えてきたら、次は移行先をどう選ぶかを考える番です。
電子データへの期待と移行先の決め方

移行先を決める前に、望まれている形を確かめます。請求書のやり取りを電子データへ移したいという声は、発行する側にも受け取る側にもあります4。ただし尋ねられたのは「理想」の形であり、すでに導入している割合ではありません4。望みと実態の間にある距離が、そのまま移行の作業量になります。
電子データを理想とする声がどれだけの割合か、それを見ます。52%が、取引先へ発行する請求書は電子データが理想と答えた割合です4。51%が、受け取る請求書について同じく理想と答えた割合で、発行する側と受け取る側でほぼ並びます4。いずれも2025年の声4であり、次は契約書から支払条件を洗い直す番です。
移行先を選ぶときの手がかりは、機能の多さではなく、いまの帳合をそのまま持ち込めるかどうかです。取引先ごとの掛け率と締め日と支払条件を、取り込みの形式ごと確かめてください。手形や電子記録債権を含む支払方法を扱えるか、支払サイトの日数を条件として持てるかも見ます。決め手は、月次の締めと入金消込が「いまの手順」のまま回るかどうか。
ここから先は、取引先の数や下請法の対象かどうかで変わる進め方を、条件ごとにたどります。
| 確認する観点 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 帳合 | 掛け率と締め日と支払条件を取り込みの形式ごと確かめる |
| 支払方法 | 手形や電子記録債権を含む支払方法を扱えるか |
| 支払サイト | 支払サイトの日数を条件として持てるか |
| 入金消込 | 月次の締めと入金消込がいまの手順のまま回るか |
掛け率と締め日と支払サイトを取引先ごとに抱えたままでは、請求書の電子化だけを先に進めても、条件表の確認が手元に残り続けます。
いまの条件表をそのまま移せるのか、それとも作り直しが要るのかを、取引先の数と支払条件の種類から切り分けられます。無料相談で要件を整理する
請求の電子化より先に済ませる作業
- 取引先ごとの掛け率・締め日・支払条件を一つの表へ書き出す
- 基本契約書と受注システムの登録内容が一致しているかを突き合わせる
- 下請法の対象になる取引を、資本金の区分と取引の内容で仕分ける
- 手形等で支払う契約を抜き出し、支払サイトの日数が上限の内側かを確かめる
- 請求書を紙で受け取っている取引先を枚数の順に並べ、依頼の順番を決める

この並びに優劣の順序はありません。
どこから始めるかは、取引の相手と請求書の枚数によって変わります。

取引の条件ごとに変わる進め方
| 取引の条件 | 先に手をつける工程 | 確かめる数値 |
|---|---|---|
| 下請法の対象取引が中心の製造業 | 支払条件の棚卸し | 手形等の支払サイトの日数 |
| 掛け率を表計算ソフトで管理する卸売業 | 条件表の一本化 | 取引先ごとの掛け率の件数 |
| 受け取る請求書の枚数が多い経理部門 | 受け取る形式の統一 | 電子データで受け取る枚数の割合 |
契約書から支払条件を洗い直す進め方
親事業者との取引が中心の場合、支払条件はこちらから決められる場面が限られます。それでも「対象となる取引かどうか」の仕分けは自社でできますし、書類の日数を数える作業も社内で完結します。先に条件表を整えるより、対象取引の仕分けを前へ置いてください。手形での支払いが残る相手を抜き出せば、話し合いの順番がそのまま決まります。
難易度は高くなく、基本契約書と発注書を開いて「支払条件」の欄を写す作業が中心で、工数は取引先の数にそのまま比例します。
| 確かめる書類 | 数える項目 | 次に決めること |
|---|---|---|
| 基本契約書 | 支払条件の欄の日数 | 上限の内側かどうか |
| 発注書 | 支払方法の記載 | 手形を続けるかどうか |
| 取引先台帳 | 資本金の区分 | 下請法の対象かどうか |
対象となる取引かどうかの仕分けと、手形での支払いに付いた日数の見直しは、契約書を一件ずつ開かなければ終わりません。
どの契約から交渉の順に載せるべきかを、支払条件の欄の書き方まで含めて詰められます。無料相談で自社の条件を持ち込む
条件表を一本化してから移す進め方
表計算ソフトで掛け率を持っている場合、困るのは値そのものより、同じ取引先が別の名前で二行並ぶことです。「得意先コード」で名寄せし、適用を始めた時期を列として持たせると、履歴が追える形になります。支払サイトの見直しより先に、重複と例外を潰す順で進めてください。例外条件を本表へ混ぜず、別の欄へ分けておくと移行のときに迷いません。
難易度は中ほどで、名寄せの判断に時間がかかるため工数は取引先の数よりも例外条件の多さで決まり、条件表が整えば次は受け取る請求書の形式をそろえる番です。
| 整理する対象 | いまの持ち方 | 移したあとの形 |
|---|---|---|
| 掛け率 | 取引先名で並ぶ表の列 | 得意先コードで一意にする |
| 締め日 | 注記や欄外のメモ | 取引先ごとの項目にする |
| 例外条件 | 本表への直接の書き込み | 別の欄で管理する |
取引先ごとの掛け率と例外条件が担当者の手元にあるうちは、受発注の仕組みを入れ替えても同じ表を開き直すことになります。
名寄せの単位や例外の持たせ方をどう決めれば移行が止まらないかを、手元の表の形から確かめられます。無料相談で自社の条件を持ち込む
受け取る形式をそろえる進め方
受け取る請求書が多い部署では、形式が相手任せになりやすく、紙と電子データが混ざります。授受の規模を見ます。26.68兆円が、ある請求書プラットフォーム1社でインボイス制度の開始後6カ月間に流通した電子データの金額です3。自社の発行側を整えるより先に、受け取る形式をそろえる方が支払処理の日数が読めるようになります。枚数の多い相手から順に、電子データでの送付を依頼してください。「登録番号」の確認と保存の手順を、形式ごとに書き分けておくと迷いが減ります。
難易度は依頼する相手が多いほど上がり、工数は自社の作業よりも取引先との連絡に寄ります。
| 受け取る形式 | 確かめること | 次の手 |
|---|---|---|
| 紙の請求書 | 開封と登録番号の確認 | 枚数の多い相手から依頼する |
| PDFの添付 | 保存場所と検索のしやすさ | 保存の手順をそろえる |
| 電子データ | 支払処理への取り込み | 締めと入金消込へつなぐ |

受け取る側の形式は相手任せになりやすく、電子データと紙が混ざったままでは支払処理に要する日数が読めません。
どの取引先から電子データでの送付を頼めば受け取りの手間が減るのかを、枚数の並びを見ながら組み立てられます。無料相談で自社の条件を持ち込む
要点の整理
| 確かめること | 判断の基準 |
|---|---|
| 取引先ごとの掛け率 | 基本契約書と受注システムの登録が一致しているか |
| 締め日と支払条件 | 書類の欄に書かれた日数を取引先ごとに数えたか |
| 手形等の支払サイト | 振興基準に示された上限の内側に収まっているか |
| 下請法の対象かどうか | 資本金の区分と取引の内容で仕分けたか |
| 請求書の授受の形式 | 紙と電子データのどちらで受け渡しているかを枚数で数えたか |
| 着手の順番 | 条件表の棚卸しを請求の電子化より前に置いたか |
支払サイトの決まりは施行を控えた改正法でさらに動くため、条件の棚卸しを後ろへ回すほど交渉に使える時間が短くなります。 自社の帳合のどこから手を付ければ間に合うのかを、取引先の数と締めの回数をもとにした見通しとして持ち帰れます。
よくある質問
帳合と掛け率は同じ意味ですか
掛け率は、定価に対して適用する売価の割合そのものを指します。帳合はその掛け率に加えて、締め日と支払条件まで含めた取り決め全体を指す使い方が一般的です。社内で「帳合を直す」と言うときに、どこまでを直すのかが人によって違うと手戻りが出ます。指す範囲を先に決めておいてください。
支払サイトの上限は、すべての取引先に適用されますか
示された上限が向かうのは、下請法の対象となる取引です2。資本金の区分と取引の内容で対象かどうかが決まるため、すべてのBtoB取引へ一律に及ぶものではありません。自社の取引先を台帳の上で仕分け、「対象」と「対象外」を分けた一覧を作ってから条件を見直してください。
手形をやめて振込にすれば、条件の見直しは不要になりますか
上限が示されたのは手形などによる支払いの日数ですが、振込であっても締めから入金までの日数は残ります2。取引先ごとに「締めから何日で入金するか」を書き出し、資金繰りの前提と突き合わせてください。支払方法を変えたかどうかとは別に、条件の一覧は要ります。
請求書を電子データにすれば、帳合の管理も自動になりますか
請求書の授受が電子データへ移っても、どの取引先へどの掛け率を当てるかという条件は別に持つ必要があります。むしろ移行のときには、いまの条件表を取り込める形へ整える作業が先に来ます。「仕組みを入れれば片づく」と見積もると、棚卸しの分がそのまま遅れになります。
調査で電子データを理想とする回答が多いなら、取引先も応じてくれますか
その回答は「理想」を尋ねた結果であり、すでに電子データで授受している割合ではありません4。望む声があることと、相手の社内が対応できることは別です。自社の取引先へ個別に確かめ、電子データで受け取れる相手と、紙のままの相手を数えてください。
表計算ソフトのまま続ける場合、何を決めておけばよいですか
更新した日と、更新した理由を残す欄を先に作ってください。「誰が直したか分からない」状態は、取引先との確認が要るときに必ず時間を食います。あわせて、例外条件を本表へ書き込まず別の欄に分ける決まりにしておくと、後から移すときの手戻りが減ります。
- 1 出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2025年) 経路
- 2 出典:中小企業庁・公正取引委員会「下請中小企業振興法「振興基準」改正・下請代金支払遅延等防止法等改正法」(2024〜2025年) 経路
- 3 出典:株式会社インフォマート「「BtoBプラットフォーム 請求書」利用状況分析」(2024年) 経路
- 4 出典:株式会社インフキュリオン「ビジネス決済総合調査2025」(2025年) 経路
画像の出典元
- 40代後半の日本人男性が二人で画面を覗くをしている場面/画像:生成AI(自社)
- 40代前半の日本人男性が自席での作業場面/画像:生成AI(自社)
- Women working together on a business project with laptops an/Photo by olia danilevich on Pexels
- Focused woman typing on laptop during a collaborative business meeting with a presentation./Photo by Yan Krukau on Pexels
- Woman in black blazer works on laptop with charts in a contemporary office setting./Photo by olia danilevich on Pexels