◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 手書きと電子の併用に外から決まる期限はないため、年度の区切りなど取引先にも通じる節目に合わせて、自社で終わりの時点を仮に置く。
- 併用の間に起きやすいのは二重登録と記載漏れで、放っておくと確認の手間が積み重なり、併用期間そのものが延びていく。
- 取引先は「すでに電子で受けている」「移行に応じる意向がある」「当面は手書きを続けたい」の三つに分けて数え、移行の時期は区分ごとに分けてよい。
- 併用の間は受付の窓口を一本にし、手書き分は自社の担当者が電子システムへ入力し直して、注文書と突き合わせる。
- 併用を終える判断は、移行済み取引先の割合と試験運用の結果という二つの目安をあらかじめ決めておく。
目次

手書きと電子はいつまで併用できるか
手書き注文書と電子受発注の併用は、終わりの時点を決めないまま続けると、取引先ごとに管理の仕方が分かれたままになります。やることは決まっています。併用を終える目標の時点を自社で仮に置き、取引先ごとに移行の時期を分け、併用の間は受付の窓口を一本にして手書き分を自社で電子システムへ入力し直す。そのうえで、移行済み取引先の割合と試験運用の結果という二つの目安で併用を終える。この順で決めておけば、手書きを続けたい取引先の都合を待ちながらでも、注文の管理は一本に戻せます。
外から決まる期限はないので、自社で置く
まず押さえておきたいのは、併用をいつまでに終えなければならないという期限が、外から一律に与えられるわけではないという点です。電子受発注そのものは広がっており、2024年の国内のBtoB-EC化率は43.1%でした3。卸売業に限っても、2024年度のBtoB-EC市場規模は128.9兆円と示されています2。国の側でも、電子受発注の普及率を2023年度までに50%とすることを目指す、という目標が掲げられていました1。
こうした数字は、電子での受発注が珍しい選択ではなくなったことを示しますが、自社の取引先が何月までに切り替わるかを決めてくれるものではありません。期限は自社で置くしかない、という前提から始めます。置き方としては、年度の区切りや決算の区切りなど、取引先にも通じる節目に合わせるのが伝えやすい形です。仮の時点でかまいません。仮でも置いておくと、取引先と話すときに「いつまでに」を言えるようになります。
併用の間に起きやすいのは、二重登録と記載漏れ
併用そのものが悪いわけではありません。困るのは、受け口が二つあるために、同じ注文が両方の経路をたどることです。取引先が手書きで送った後に「念のため」とシステムからも入れてしまえば、同じ注文が二重に登録されます。逆に、手書きの注文書が担当者の手元で止まり、システムへ入力されないまま出荷日を迎えることもあります。
もう一つは記載漏れです。手書きの注文書には、電子受発注の画面では必須になっている項目が書かれていないことがあります。納品先の指定、希望納期、単位の別といったところです。入力する段になって初めて空欄に気づき、取引先へ電話で確かめる。この確認が積み重なると、併用期間そのものが長引いていきます。
つまり併用の期間は、放っておくと延びる方向にしか動きません。だからこそ、区切りを先に置いて、その中で何をするかを決めておく必要があります。
この四つの区切りのうち、最初の準備をどう進めるかは、自社の取引先が今どこにいるかを数えるところから決まります。
自社の取引先はどの状態にあるか
取引先を三つに分けて数える
取引先の半数がまだ手書き、という状態を一つのかたまりとして扱うと、打つ手が決まりません。取引先名簿を開いて、「すでに電子で受けている」「電子への移行に応じる意向がある」「当面は手書きを続けたい」の三つに分けて数えてみてください。分ける材料は、システム導入の案内をしたときの返事や、日ごろのやり取りで聞いている事情です。
数えると、たいてい真ん中の区分がいちばん多くなります。移行そのものに反対しているのではなく、社内の手が回らない、担当者が変わる予定がある、といった理由で先送りになっている取引先です。ここが動けば併用は一気に縮みます。逆に、三つ目の区分に入る取引先が少数であれば、その分だけ自社で入力を引き受ける、という判断もしやすくなります。
受付の窓口を一本にして、手書き分は自社で入力し直す
併用の間の運用は、単純にしておくほど漏れが減ります。手書きの注文書がファクスで届いても、郵送で届いても、営業担当が預かってきても、いったん受発注の窓口に集める。窓口で受け付けた順に、担当者が電子システムへ入力する。入力した内容は、元の注文書と突き合わせて確かめる。ここまでを一つの流れにしておきます。
大事なのは、入力を営業担当や取引先の善意に任せないことです。誰が入力するかを決めずに併用へ入ると、忙しい日は後回しになり、後回しになった注文が記載漏れの確認とぶつかって、その日のうちに片づかなくなります。入力の担当を決め、窓口で受け付けた注文書がすべてシステムに入ったことを一日の終わりに確かめる。この確かめ方を決めておけば、二重登録も入力漏れもその日のうちに見つかります。
窓口と入力の担当が決まったら、次は、決めるべき事柄を抜けなく並べて順に片づけていきます。
ここまでで、併用の期限は自社で置くこと、取引先を三つに分けて数えること、受付の窓口を一本にして手書き分を自社で入力し直すことを決めました。残るのは、区分ごとの移行時期と、併用を終える目安です。
併用の期限をどこに置くかも、取引先をどう分けるかも、自社の取引先の顔ぶれで答えが変わります。社内だけで進めると、日ごろ接している担当者の印象で区分が決まってしまい、手書きを続けたい相手への伝え方が後回しになりがちです。
受発注の流れを一度外から見てもらうと、どの取引先から移行を持ちかけるのが早いか、入力の手間がどこに寄っているかを、名簿の数と合わせて確かめられます。無料相談で要件を整理する
併用を終えるまでに決めておく事柄
先に決めておかないと次が決められない、という前後の関係で並べました。
- 併用を終える目標の時点を、年度の区切りに合わせて仮に置く
- 取引先を区分に分け、区分ごとに移行の時期を決める
- 受付の窓口を一本にし、手書き分を電子システムへ入力する担当を決める
- 二重登録と記載漏れを見つけるための突き合わせのやり方を決める
- 併用を終える目安として、移行済み取引先の割合と試験運用の結果を決める
この五つのうち、二つ目の区分ごとの移行時期から具体的に見ていきます。
取引先ごとに時期を分けてよいか
| 区分 | 移行時期の決め方 | 併用の間の受け方 |
|---|---|---|
| すでに電子で受けている | 移行済みとして扱い、手書きへ戻さない | 電子受発注のみ |
| 移行に応じる意向がある | 相手の社内の区切りに合わせて時期を決める | 切替日まで手書き、以後は電子 |
| 当面は手書きを続けたい | 目標の時点を伝え、期日は保留にする | 手書きを自社で入力し直す |

移行済みの取引先は、手書きへ戻さない
例外を一件認めると全体が緩む
全取引先を一律の期限で切り替える必要はありません。取引先ごとに時期を分けてよい、というのが答えです。ただし分けてよいのは移行の時期であって、いったん電子に移った取引先の受け方まで揺り戻していい、という意味ではありません。
移行済みの取引先から、担当者の都合で一度だけ手書きで送りたい、という連絡が入ることがあります。ここを受け入れると、窓口では「この取引先は電子」という前提が崩れ、届いていない注文があるのではないかと毎回確かめることになります。急ぎの事情があるなら、電話で受けた内容を自社で入力する、という形にとどめ、手書きの注文書を受ける経路は開かないでおきます。
この段取りで分けたうち、次に手を付けるのは、移行に応じる意向がある取引先です。
| 確かめること | 窓口での扱い |
|---|---|
| 電子で受けた注文がその日のうちに記録されているか | 一日の終わりに件数を確かめる |
| 手書きで送りたいという連絡が入っていないか | 経路を開かず、内容を自社で入力する |
相手の区切りに合わせて切替日を決める
こちらの都合ではなく、相手の区切りを聞く
この区分の取引先には、こちらから期限を示すより先に、いつなら手が空くかを聞くほうが早く進みます。決算の前後、担当者の交代の時期、繁忙期の山。聞いてみると、動ける時期と動けない時期がはっきり分かれていることが多いものです。そのうえで切替日を一日決め、その日から電子で受ける、それまでは手書きで受ける、と両者で確認します。
切替日を決めたら、自社の名簿にも書き込んでおきます。窓口の担当者が名簿を見れば、どの取引先が今どちらの経路かが分かる。この状態を作っておくと、切替日を過ぎたのに手書きが届いた、という取りこぼしにすぐ気づけます。
| 聞くこと | 決めること |
|---|---|
| 社内で手が空く時期 | 切替日 |
| 電子受発注を操作する担当者 | 切替日までに伝えておくこと |
期日は保留にし、入力は自社で引き受ける
断られた相手にこそ、目標の時点だけは伝えておく
これまでどおり手書きで送りたい、と言われた取引先に、期日を切って迫っても関係が固くなるだけです。ここは期日を保留にし、自社で入力を引き受けます。ただし、自社が併用を終えようとしている目標の時点だけは伝えておきます。伝えていないと、こちらが終了を判断した段になって、相手にとっては突然の話になります。
伝えたうえで入力を引き受けると、どの取引先の注文書にどれだけ手がかかっているかが自社側に見えてきます。記載漏れの確認が多い取引先、注文書の様式が読み取りにくい取引先。そこが分かれば、注文書の様式をこちらから渡す、記入してほしい項目を一枚にまとめて送る、といった手当てができます。手当てをした結果、相手のほうから電子に移ってもよいと言い出すこともあります。
区分ごとの進め方が決まったら、最後に、併用そのものをどこで終えるかを決めます。
| 手当て | ねらい |
|---|---|
| 注文書の様式をこちらから渡す | 記載漏れの確認を減らす |
| 目標の時点を伝えておく | 終了の話を突然にしない |

要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 併用の期限 | 外から決まらないので、年度の区切りに合わせて自社で置く |
| 移行の時期 | 一律にせず、取引先の区分ごとに分ける |
| 併用中の受付 | 窓口を一本にし、手書き分は自社で電子システムへ入力し直す |
| 漏れの確認 | 入力内容を注文書と突き合わせ、一日の終わりに全件を確かめる |
| 終了の判断 | 移行済み取引先の割合と、試験運用の結果の二つで決める |
併用を終える判断は、移行済みの割合をどこに置くか、試験運用をどう試すかという二つの決めごとに関わり、一度決めると取引先へ伝えることになります。社内で数字だけを眺めていると、終了の時点を動かし続けることになりかねません。 終了の目安と試験運用のやり方を一緒に組み立てれば、いつ何を取引先へ伝えるか、終了後に手書きが届いた場合をどう扱うかまで、あらかじめ確かめられます。
よくある質問
併用をいつ終わらせるか、どう判断すればよいですか。
判断の目安を二つ先に決めておきます。一つは移行済み取引先の割合で、名簿のうちどこまで電子に移れば単一の運用に切り替えるかを数で置きます。もう一つは試験運用の結果で、一定の期間、手書き分を止めた状態で受発注が回るかを実際に試し、漏れが出なければ終了と判断します。この二つを満たしたら、残る取引先へ終了の時点を伝えます。
最後まで手書きを続けたいという取引先が残ったら、取引をやめるべきですか。
やめる必要はありません。併用を終えるというのは、自社の管理を電子受発注に一本化するという意味で、手書きの注文書を一切受け取らないという意味とは限りません。残った取引先の分は、窓口で受けて自社が入力する形を続け、管理そのものはシステム側に寄せておきます。件数が少なければ、その手間は許容できる範囲に収まります。
手書き分の入力は、誰が担当するのがよいですか。
受発注の窓口を担う担当者が引き受けるのが確実です。営業担当や取引先に任せると、忙しい日に後回しになり、入力漏れの形で表に出ます。担当を決めたうえで、入力した内容を元の注文書と突き合わせる手順まで含めて一人の仕事として組み、一日の終わりに全件が入ったことを確かめます。
併用を終えた後に手書きの注文書が届いたら、どうしますか。
扱いを先に決めておきます。窓口でいったん受け付けたうえで担当者が入力し、その取引先へ電子での送り方をあらためて案内する、という形にしておけば、受け取れずに注文が宙に浮くことは避けられます。決めずに終了日を迎えると、現場ごとに判断が分かれます。
- 1 出典:中小企業庁経営支援部技術・経営革新課(委託:EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社)「受発注のデジタル化に関する推進方策 報告書」(2022年) 経路
- 2 出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2025年) 経路
- 3 出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査報告書」(2025年) 経路
画像の出典元
- 30代前半の日本人男性が発注画面の操作をしている場面/画像:生成AI(自社)
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- 40代前半の日本人男性が書店での発注をしている場面/画像:生成AI(自社)