◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 帳合業務で属人化しやすいのは作業そのものより、取引先ごとの例外扱いや条件を変えた経緯といった判断の部分である
- 手作業でのやり取りが中心の食品小売・卸売業の受注担当者では、4割近くがオペレーションの属人化を自覚している(2023年3月調査、FAX・メール・電話で受注する90名が母数)
- 属人化の影響は引継ぎの困難さとして最初に表れやすく、業種を限定しない調査では手順が文書化されていないという回答も半数近くにのぼる
- 解消の手段はマニュアル化・受発注のシステム化(流通BMS等のEDI)・複数人での分担体制があり、システム化は取引先側の対応が前提になる
- 全取引先を一度に切り替えるより、処理量の多い先から洗い出しと文書化を進め、対応できる取引先から順にシステム化するほうが業務を止めずに済む
目次

帳合業務のどの作業が属人化しやすいのか
「この卸の掛け率と締め日は、あの人しか分からない」という状態のまま、月末の処理が毎月どうにか回っているお店は少なくありません。
異動や退職の話が出て初めて、取引条件も伝票の扱いも一人の頭の中にあったと気づきます。
この場面でまず変えられるのは、どの作業が担当者の記憶に依存しているかを取引先ごとに書き出すことです。
そのうえで、手順を文書に残す・受発注のやり取りを標準化する(流通BMS等のEDI)・担当を複数人に分ける、のどれで補うかを取引先数と担当人数に照らして決めていきます。
すべてを一度に替える必要はなく、処理量の多い取引先から順に手をつけるほうが、日々の仕入れを止めずに進められます。
取引先ごとの条件・価格交渉
帳合とは、どの卸を通して商品を仕入れるかという小売業と卸売業の取引関係のことで、実務では取引条件の管理から伝票処理までをまとめて帳合業務と呼ぶことが多くあります。
この業務で最初に個人へ寄っていくのは、たいてい取引先ごとの条件です。
基本の掛け率や支払サイトは契約書に書かれていても、特定のカテゴリだけ別扱いにしている、特売期間中は返品の取り扱いを変えている、といった個別の取り決めは、担当者と先方の営業担当とのやり取りの中で少しずつ積み上がっていきます。
条件そのものは一覧にできても、なぜその条件になったのかは書類に残りにくい部分です。
前回の価格改定でどこまで受け入れ、その代わりに何を据え置いてもらったのか。
先方の担当者が代わったときに、どの話を引き継ぎ済みとして扱ってよいのか。
こうした経緯は次の交渉の前提になりますが、メールの履歴を追っただけでは復元できず、結局「当時やり取りした本人に聞く」という形で残ります。
価格交渉の場面では、この差がはっきり出ます。
条件表だけを渡された人は、提示された改定案が妥当なのかを判断する材料を持ちません。
一方で長く担当してきた人は、過去の経緯と先方の事情を踏まえて、どこなら譲れてどこは譲れないかを即座に見分けます。
属人化が問題になるのは作業が面倒だからではなく、この判断の部分が誰にも渡らないまま一人に溜まっていくからです。
表の左側は、担当者が抜けても手元に残ります。
引継ぎで詰まるのは右側で、ここが埋まっていないと、残された人は書類を見ながら「この伝票はどう扱うのが正しいのか」を一件ずつ先方に確かめることになります。
FAX・電話・メールでの手作業受注
条件の次に個人へ寄るのが、日々のやり取りの手段そのものです。
食品業の小売・卸売業で受注業務を担当する106名を対象にした2023年3月のインターネット調査では、受注方法としてFAXを利用すると答えた人が67%にのぼりました1。
そして、FAX・メール・電話で受注していると答えた90名のうち、オペレーションの属人化が発生していると答えた人は38.9%でした1。
手作業でのやり取りが中心の現場では、4割近くが自分たちの業務の属人化を自覚している計算になります。
この調査は受注する側、つまり卸やメーカー側の担当者も含めた数字で、小売業の仕入担当に限った割合ではありません。
ただ、FAXや電話でのやり取りは必ず相手がいます。
発注書をFAXで送っている小売側と、それを受け取って処理している卸側は、同じ一本のやり取りの両端にいます。
相手先の受注が手作業で回っているなら、自社の発注側にも同じだけ手作業が残っていると考えるのが自然です。
手段が人に紐づくと、作業は静かに個人化します。
この卸は専用用紙でないと受け付けない、あの卸は締切の15分前までなら電話で追加できる、別の卸は担当者の携帯に直接かけたほうが早い。
どれも業務上は合理的な工夫ですが、送信先・締切・例外的な連絡経路の組み合わせは帳票のどこにも書かれていません。
代わりの人が同じ発注をしようとすると、まずどこへ何時までに送ればよいかの段階で止まります。
伝票の保管・手入力
同じ調査では、FAX・メール・電話で受注している90名のうち60%が注文書の手入力に手間がかかると答え、30%が注文書の管理(保管義務)が煩雑だと答えています1。
紙やメールで受け取った内容を自社のシステムへ打ち直す作業と、受け取った書類を保管しておく作業は、どちらも手段が手作業である限り必ず残ります。
手入力が属人化につながるのは、入力そのものより読み替えの部分です。
取引先の商品コードと自社の商品コードが一致していなければ、どこかで対応を取る必要があります。
その対応表が担当者の表計算ファイルにしかなければ、入力作業は誰でもできても、正しく入力できるのは一人だけになります。
単位の違い、ケース入数の扱い、同じ商品名で規格違いがある場合の見分け方も同じです。
保管のほうは、場所と分け方が個人の流儀になりやすい部分です。
取引先別にまとめている人もいれば、日付順で一括りにしている人もいます。
どちらでも本人は迷わず取り出せますが、請求書との差額を調べようとした別の人は、該当する納品書が月のどこに入っているかから探し始めることになります。
保管義務のある書類を扱っている以上、探せない状態は手間の問題にとどまりません。
| 作業 | 書類に残っているもの | 担当者の記憶に残りやすいもの |
|---|---|---|
| 取引条件の管理 | 契約書の掛け率・支払条件 | 例外扱いの対象と条件を変えた経緯 |
| 発注・受注のやり取り | 送信した注文書の控え | 取引先ごとの送り先・受付締切・催促の仕方 |
| 伝票の保管 | 受け取った注文書・納品書 | 保管場所の分け方と探し方 |
| システムへの入力 | 入力したあとのデータ | 読み替えや入力順などの手順 |
| 請求・支払の突合せ | 請求書と支払の記録 | 差額が出たときの確認先と進め方 |
| 回答内容 | 割合 | 母数 |
|---|---|---|
| 受注方法としてFAXを利用する | 67% | 受注業務担当者106名 |
| オペレーションの属人化が発生している | 38.9% | FAX・メール・電話で受注する90名 |
| 注文書の「手入力」に手間がかかる | 60% | 同90名 |
| 注文書の管理(保管義務)が煩雑である | 30% | 同90名 |
属人化を放置するとどんなリスクが生じるのか
引継ぎが困難になる
ここまで見てきたのは、帳合業務のどこが個人に寄るかという話でした。
では、その状態を続けたときに何が起きるのか。
帳合業務だけを対象にした公的な統計は見当たらないため、業務の属人化そのものを扱った調査で傾向を確認します。
業務可視化ツールを使った経験がある全国の男女142名に2024年1月に聞いた調査では、属人化の影響として「業務の引継ぎが困難である」を挙げた人が52.8%で最も多くなりました2。
この調査は業種も職種も限定していないため、小売業の帳合業務に限った数字ではありませんが、属人化が真っ先に引継ぎへ表れるという傾向は読み取れます。
引継ぎが難しくなるのは、渡すべきものが作業ではなく判断だからです。
発注の打ち方や伝票の綴じ方は、横について数日見てもらえば伝わります。
伝わらないのは、先ほど見た例外扱いの経緯や、取引先ごとの締切と連絡経路の組み合わせです。
引継ぎ期間が二週間あっても、その間に一度も起きなかった例外は引き継がれません。
月に一度の締め処理、季節ごとの特売、年に数回の棚替えに伴う条件変更は、引継ぎ期間の外側にあります。
キーパーソン不在時に業務が止まる
同じ調査では、44.4%が「キーパーソンの不在が業務に深刻な影響を及ぼす」と答えています2。
帳合業務に当てはめると、この影響は時間の制約を伴って現れます。
発注には取引先ごとの締切があり、支払には期日があります。
担当者が一日不在になるだけなら前倒しや後倒しで吸収できますが、急な休職や退職で数週間空くと、締切のたびに判断が必要な場面が回ってきます。
止まり方は劇的ではなく、じわじわ効いてきます。
まず発注が遅れ、次に納品のタイミングがずれ、月末の突合せで差額が出ます。
差額の原因を調べようにも、どの条件が適用されるはずだったのかを知る人がいないため、取引先へ照会して回答を待つことになります。
日々の売場は回っているように見えても、後工程に確認待ちが積み上がっていく状態です。
手順が文書化されないまま蓄積する
同じ調査で「手順やプロセスが文書化されていない」と答えた人は47.9%でした2。
引継ぎの困難さに次いで多く、キーパーソン不在の影響より高い割合です。
この三つは別々の問題ではなく、文書化されていないことが引継ぎの困難さと不在時の停止を生んでいる、という一続きの関係として読めます。
厄介なのは、文書化されていない状態が年々重くなることです。
取引先が増えれば条件も増え、過去の変更も積み上がります。
担当歴が長い人ほど抱えている判断は多くなり、同じ人が担当し続ける限り業務は滞りなく回るため、着手する理由も見つかりません。
そして実際に着手するきっかけは、たいてい異動や退職の内示という、最も時間のない時点でやってきます。
つまり属人化は、放置している間は問題として表面化しにくく、表面化したときには対処の時間が残っていないという性質を持ちます。
解消の手段を選ぶ前に、いま誰が抜けると何が止まるのかを把握しておくことに意味があるのは、このためです。
属人化を解消する方法にはどんな選択肢があるのか
マニュアル化
文書化されていないことが引継ぎの壁になっているのであれば、まず向き合う対象は手順と条件の書き出しです。
ただし、取引の流れを一般的な手順書として書いても、帳合業務の属人化はあまり解けません。
発注から検収までの標準的な流れは、どの取引先でもだいたい同じだからです。
残された人が困るのは標準から外れる部分なので、書くべきなのは取引先ごとの違いと例外のほうになります。
具体的には、取引先ごとに締切と送信先、適用される掛け率と例外の対象、返品や特売時の扱い、請求との突合せで差が出やすい箇所、差が出たときの確認先を並べていく形になります。
条件を変えた時期と、そのときのやり取りの要点を一行添えておくと、次の交渉のときに前提から組み立て直さずに済みます。
作業量は取引先の数に比例するので、すべてを同じ密度で書こうとすると途中で止まります。
処理件数や取引額の多い先から順に埋めていくほうが現実的です。
なお、マニュアルを整備したことでどれだけ工数が減るかを示す一次資料は今回確認できていないため、数値で効果を示すことはできません。
言えるのは、文書に残った範囲については、担当者に口頭で確認しなくても処理を進められるようになるということです。
受発注のシステム化(流通BMS等のEDI)
手作業でのやり取りそのものを減らす選択肢が、受発注のシステム化です。
EDIは企業間で取引データを電子的にやり取りする仕組みで、流通業界ではその標準規格として流通BMSが整備されています。
流通BMSは卸売(またはメーカー)と小売の間の発注・出荷・受領・返品・請求・支払の6業務を標準化したもので、2007年4月に基本形Ver.1.0として公開されました3。
導入効果としては、標準化による個別対応の負荷軽減、日次での照合の効率化、伝票レス化によるコスト削減、出荷業務の早期化、通信コストの削減が挙げられています3。
属人化との関係で見ると、効いてくるのは個別対応の負荷が減る部分です。
取引先ごとに送信先も様式も締切も違うという状態が、規格に沿ったやり取りに置き換われば、覚えておくべき取引先ごとの差が小さくなります。
注文内容がデータで届けば、商品コードの読み替えを手作業で行う場面も減ります。
ただし、これは置き換えが済んだ取引先についての話です。
流通BMSは取引する双方が対応するシステムを整えて初めて成り立つ規格なので、自社だけで決められるものではありません。
導入にいくらかかるかについては、個々の企業の費用を示す一次資料を今回確認できていないため、金額の目安は示せません。
検討する段階では、取引先のうち何社が対応できるのか、残る取引先の処理をどう扱うのかを先に把握しておくほうが、見積もりを取る前の判断材料になります。
複数人での分担体制
三つ目が、担当を一人に集めない体制です。
不在時に業務が止まる状態を直接解くのはこの方法で、締切のある処理を別の人が代われるようにしておけば、休職や退職があっても日々の仕入れは続きます。
ただし、人を増やすだけでは属人化は解けません。
渡せる手順が文書になっていない状態で二人目を置くと、二人目は一人目に聞きながら作業することになり、一人目の負荷はむしろ増えます。
そして聞いて覚えた内容はまた記憶に残るので、属人化の対象が一人から二人になるだけ、ということも起こり得ます。
分担が機能するのは、取引先ごとの条件と手順が読める形になっている範囲か、やり取りが標準化されていて差を覚える必要がない範囲です。
この体制についても、効果を数値で示す資料は確認できていません。
期待できるのは、特定の人が不在の日に処理を止めずに済むことと、作業を複数人で見ることで手順の抜けに気づきやすくなることです。
| 選択肢 | 主に補えること | 進めるうえでの前提 |
|---|---|---|
| マニュアル化 | 取引先ごとの条件と例外を担当者以外が読める形にする | 例外と変更の経緯まで書き出す作業量がかかる |
| 受発注のシステム化(流通BMS等のEDI) | 発注・出荷・受領・返品・請求・支払のやり取りを標準化し個別対応の負荷を下げる | 取引先側も対応するシステムを整えている必要がある |
| 複数人での分担体制 | 担当者が不在の日も締切のある処理を続けられるようにする | 渡せる手順が文書になっていないと口頭での説明が増える |
自社の規模に応じてどう選べばよいのか
中小企業者・小規模企業者の区分を確認する
三つの選択肢のうちどれにどこまで手をかけられるかは、自社の体制によって変わります。
自社の規模感を客観的に押さえる目安として、中小企業基本法に基づく区分があります。
小売業では常時使用する従業員が50人以下の会社および個人、卸売業では100人以下が中小企業者にあたり、業種を問わず従業員5人以下は小規模企業者に区分されます4。
この区分は法令上の定義であって、属人化対策の適用可否や予算の配分を直接定めるものではありません。
50人以下だからシステム化できない、という意味でもありません。
ここで確認する意味は、自社がどのくらいの人数で帳合業務を抱えているかを、感覚ではなく数字で捉え直せる点にあります。
取引先数・担当人数で優先度を決める
実際に優先度を決めるときに効いてくるのは、会社全体の従業員数よりも、帳合業務に関わっている人数と取引先の数の組み合わせです。
ここからは編集部の整理になります。
担当が一人で取引先も少ない場合、まず必要なのは記録です。
取引先が少なければ書き出す量も限られるので、条件と手順を文書に落とすだけで、不在時に別の人が代われる状態にかなり近づきます。
担当が一人で取引先が多い場合は、文書化だけでは追いつかないことがあります。
取引先ごとの差が多いほど書く量も増え、書いたあとの更新も続くからです。
この場合は、処理量の多い取引先から文書化を進めつつ、同じ取引先でシステム化が可能かを並行して確認する価値があります。
やり取りが標準化されれば、覚えておくべき差そのものが減るためです。
担当が複数いる場合は、すでに分担しているように見えても、取引先ごとに実質一人ずつ張り付いている状態がよくあります。
人数の問題ではなく担当の割り方の問題なので、この場合は互いの担当先の手順を読める形にしておくことが先になります。
どの状況でも共通するのは、書き出す前に全体へ手を広げると終わらないという点で、処理量の多い取引先から始めるほうが早く効果が見えます。
| 区分 | 小売業 | 卸売業 |
|---|---|---|
| 中小企業者(常時使用する従業員数) | 50人以下 | 100人以下 |
| 小規模企業者(常時使用する従業員数) | 5人以下 | 5人以下 |
業務を止めずに導入を進める手順・注意点
洗い出し→マニュアル化→システム化の順で進める
帳合業務は日々の仕入れそのものなので、整備のために止めることができません。
この制約のもとでは、全取引先を一度にシステム化するより、段階を踏んだほうが進めやすくなります。
以下の順序は一次資料で効果が示されたものではなく、ここまでに見た条件から編集部が整理したものです。
最初に行うのは洗い出しです。
目的は資料を作ることではなく、いま誰が抜けると何が止まるのかを把握することにあります。
取引先ごとに、誰が何をどの手段で処理していて、判断が必要になるのはどこかを並べていくと、文書化すべき優先順位が自然に見えてきます。
この段階で手を動かすのは現に担当している人になるため、締め処理の直後など、比較的余裕のある時期を選ぶほうが現実的です。
次に文書化、そのあとにシステム化という順序を勧める理由は、順番を逆にすると移行時に確認の経路がなくなるためです。
システムへ切り替える際には、既存の条件をどう設定するか、例外をどう扱うかを決める必要があります。
その判断材料が担当者の記憶にしかない状態で切り替えを進めると、結局その人に問い合わせが集中し、通常業務と並行して対応することになります。
分担体制への移行を最後に置いているのも同じ理由で、渡せる形が整ってから人を増やすほうが、引き渡しが一度で済みます。
取引先ごとの対応状況を個別に確認する
システム化へ進む段階で必ず出てくるのが、取引先側の事情です。
流通BMSは卸売(またはメーカー)と小売の間の取引を標準化する規格なので、双方が対応するシステムを整えていなければ成立しません3。
自社が導入を決めても、相手先が紙や電話でのやり取りしかできなければ、その取引先についてはこれまでの手順が残ります。
このため、切り替えは全取引先一斉ではなく、対応できる先から順に進める形になります。
確認するのは、相手先が流通BMSに対応しているか、対応している場合に自社との取引で使える状態か、使えない場合は何がネックになっているか、といった点です。
相手先の担当者に聞けば分かることも多いので、洗い出しの段階で併せて聞いておくと二度手間になりません。
注意したいのは、切り替えの過渡期には二つの手順が並走する点です。
データでやり取りする取引先と、これまで通りFAXや電話でやり取りする取引先が混在するため、しばらくは覚えることが一時的に増えます。
この期間に文書化が済んでいれば、どちらの手順も読める形で残り、担当者以外も入れます。
済んでいなければ、新旧両方の手順が同じ人の記憶に乗ることになり、属人化はかえって深まります。
文書化を先に置く理由は、ここにもあります。
最初の洗い出しで何を見ればよいかを、観点ごとに整理しておきます。
取引先ごとの条件や連絡手段を書き出す作業は、現に担当している人が日々の処理と並行して進めることになり、自社だけでは優先順位を決めにくくなりがちです。
発注から請求の突合せまでのどこに手作業が残っているかを現状の流れに沿って確認し、どの取引先から着手すると負荷が小さいかを一緒に整理できます。無料相談で要件を整理する
属人化している作業を洗い出すときに見る観点
引継ぎの場面で担当者本人の口頭説明が必要になるかどうかで分けた観点を並べた。
- 取引先ごとの掛け率・リベート・締め日など、条件が標準と違う箇所
- 条件を変えた時期と経緯、口頭だけで合意している例外の有無
- 発注・受注の連絡手段と、取引先ごとの送信先・受付締切
- 受け取った注文書や納品書の保管場所と、取引先別か日付順かの分け方
- 自社システムへ入力する際の商品コードの読み替えや単位の扱い
- 請求と支払の突合せで差が出たときに、誰にどう確認しているか
取引先が数社にとどまる場合は、観点ごとに追うより取引先ごとに一枚の一覧を作るほうが早く終わる。
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 属人化の所在 | 取引条件・連絡手段・伝票保管・入力・突合せの各作業を取引先別に書き出す |
| 着手の順序 | 処理量や取引額の多い取引先から、洗い出し→文書化→システム化→分担の順で進める |
| 文書化の範囲 | 標準の手順ではなく、取引先ごとの差・例外・条件を変えた経緯を書く |
| システム化の可否 | 流通BMSは取引先双方の対応が必要なため、対応状況を取引先ごとに確認する |
| 規模の目安 | 小売業50人以下・卸売業100人以下が中小企業者、5人以下が小規模企業者(中小企業基本法) |
文書化とシステム化のどちらにどこまで手をかけるかは、取引先の数と対応状況、担当人数の組み合わせで変わり、一般的な正解がありません。 自社の取引先構成を前提に、どの範囲なら日々の仕入れを止めずに切り替えられるのか、切り替え後に手作業として残る部分はどこかを確かめられます。
よくある質問
帳合担当者が急に休職・退職した場合、まず何を確認すればよいですか。
期日のあるものから順に押さえるのが現実的です。
直近の発注締切と支払期日、未処理のまま残っている伝票、取引先ごとの連絡先と受付締切を先に把握すると、当面止まる箇所が見えます。
そのうえで、本人の端末や机にある控えの表計算ファイル、商品コードの対応表、保管中の注文書の置き場所を確認します。
条件の例外は書類に残っていないことが多いため、可能であれば取引先の営業担当に現在の条件を確認して、記録として残しておくと後の突合せで助かります。
流通BMSはすべての取引先と導入しないと意味がないのでしょうか。
そうとは限りません。
流通BMSは卸売(またはメーカー)と小売の間の発注・出荷・受領・返品・請求・支払の6業務を標準化する規格で、個別対応の負荷軽減や伝票レス化によるコスト削減が導入効果として挙げられています3。
これらは切り替えが済んだ取引先のやり取りについて生じるものなので、対応できる先から順に広げる形でも効果は出ます。
ただし導入には取引先側も対応するシステムを整えている必要があるため、何社が対応できるかによって、切り替え後に手作業として残る範囲は変わります。
費用については個々の企業の金額を示す一次資料を確認できていないため、見積もりは取引先の対応状況を把握したうえで個別に取ることになります。
マニュアル化と複数人体制は、どちらを先に着手すべきですか。
どちらが効果的かを数値で比較できる資料は確認できていないため、効果の大小としては示せません。
そのうえで順序を考えると、文書化を先に置くほうが進めやすくなります。
渡せる手順が文書になっていない状態で担当を増やすと、二人目は一人目に都度聞きながら作業することになり、覚えた内容はまた記憶に残るためです。
一方、不在がすでに起きていて日々の処理が止まりかけている場合は、当面の処理を回せる人を確保することが先になります。
その場合も、対応しながら手順を書き残していけば、同じ説明を繰り返さずに済みます。
属人化の解消にはどれくらいの期間を見ておけばよいですか。
期間の目安を示す一次資料は今回確認できていないため、何か月という形ではお答えできません。
所要期間は取引先の数、担当している人数、取引先側がシステム化に対応できるかによって大きく変わります。
見通しを立てるなら、まず処理量の多い取引先を数社決めて文書化し、締めから支払いまでの一巡を担当者以外が読んで追えるか試す方法があります。
その数社にかかった手間が分かれば、残りの取引先へ広げたときの規模が見積もれます。
月次の処理や季節ごとの条件変更は一巡しないと表に出てこないため、締め処理を少なくとも一度は含む期間で確認しておくと抜けが減ります。
- 1 出典:株式会社ハンモック「食品業の受注業務に関する実態調査」(2023年)
- 2 出典:株式会社NEXER「業務可視化ツールを使用して業務を行った経験に関するアンケート調査」(2024年)
- 3 出典:流通BMS協議会(一般財団法人流通システム開発センター)「流通BMS標準仕様(基本形)」(2007年)
- 4 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業・小規模企業者の定義」(2024年)
画像の出典元
- Two individuals reviewing an invoice together in a modern office setting./Photo by Kindel Media on Pexels