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注文書の受付は差別化になるか:受注側の負担と手段の選び方

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 注文書の扱いを理由に取引先が発注先を選ぶことを直接示すデータは確認できず、差別化を前提にせず自社の負担と取引先の待ち時間を同時に減らす改善を選ぶ。
  • 受付手段は取引先側の変更の要否、自社の入力・確認の負担、導入の条件で比べ、取引先がFAXのままでも受け取った後の処理は自社で変えられる。
  • FAX注文書のAI-OCRは提供元の基準帳票で認識率98%だが、自社の注文書で試し、品番・数量・納品日の照合は残す。
  • メールなど電子で受けた注文書は原則として電子データで保存し、法人税法上は確定申告書の提出期限の翌日から原則7年保存する。
  • 効果は確認連絡の回数、手入力の時間、納期回答までの時間を導入前後に自社で測って確かめる。

40代後半の日本人女性が見積書の照合をしている場面

注文のたびに起きる手入力・確認連絡・変更対応の往復

取引先からFAXやメールで届く注文書を受注システムに打ち直し、読みにくい数量や納品日を電話で確かめ、変更が来ればまた入力し直す。
食品の受注業務担当者を対象にした調査では、注文書の手入力に手間がかかるという回答が60%でした1。
受付手段や確認の進め方を見直せば、この往復は減らせます。
ただし、注文書の扱いを理由に取引先が発注先を選ぶことを直接示すデータは、現時点では確認できません。
差別化を前提に置かず、負担の種類に合う手段を選び、保存の条件を押さえてから着手するのが現実的です。

手入力と確認連絡の負担

冒頭の数字は、2023年に小売・卸売業(食品)の受注業務担当者106名を対象に行われたインターネット調査の結果です1。
同じ調査では、注文確認の連絡、注文変更への対応、オペレーションの属人化も課題として挙がっています1。
食品の受注担当者という限られた範囲の回答なので、他業種や、注文を出す取引先の側の感じ方をそのまま表すものではありません。
それでも、受注側の手間が「読む・打つ・確かめる」に集まっている様子は、自社の作業と照らし合わせる手掛かりになります。

手入力と確認連絡は別々の課題に見えますが、実際の作業ではつながっています。
たとえば、得意先の小売店から手書きの注文書がFAXで届いたとします。
担当者は品番、数量、納品日を読み取って受注システムへ打ち込みますが、数量の「1」と「7」が判別しにくかったり、ケース単位かバラ単位かが書かれていなかったりすると、その場で手が止まります。
迷った箇所はそのまま電話やメールでの確認になり、返事が来るまで出荷の指示も納期回答も出せません。

つまり、入力に迷う注文書ほど確認の往復が増え、確認が長引くほど取引先が回答を待つ時間も延びます。
反対に、受け取った時点で項目が読み取りやすく、単位や品番の書き方がそろっていれば、入力も確認も一緒に軽くなります。
受付手段を比べるときに、入力と確認を同時に減らせるかどうかを見るのはこのためです。

変更対応と属人化

注文は一度受けて終わりとは限りません。
数量の追加、納品日の前倒し、品目の差し替えといった変更が、FAXの再送や電話で届きます。
元の注文書に手書きで修正が入ったものなのか、別の注文として新しく届いたものなのかを見分ける作業が加わり、受注システムの登録内容も直す必要があります。
変更が電話だけで伝えられた場合は、記録が担当者のメモにしか残らないこともあります。

ここで属人化が効いてきます。
得意先ごとの書き方の癖、変更が入りやすい品目、確認の電話を誰にかければ早いかといった知識は、毎日注文を処理している担当者の頭の中に蓄積されます。
その知識があるから処理が回っている面もありますが、共有された形になっていないと、担当者が休んだ日に確認が増え、回答が遅れます。
取引先から見れば、同じ注文でも担当者によって回答の速さが変わることになります。

保管義務の負担

同じ調査では、注文書の管理(保管義務)が煩雑だという回答が30%ありました1。
手入力とは別の項目への回答なので、二つの割合を足し合わせて全体の何割が困っているかを読むことはできません。
受け取った注文書は処理が済んでも一定期間保存しなければならず、FAXの紙、メールの添付ファイル、電話のメモと受け取り方がばらばらだと、保管場所も探し方もばらばらになります。
受付手段を変えれば保存の方法も変わるため、保管の負担は入力や確認と切り離さずに考える必要があります。

負担の種類 調査での回答 取引先とのやり取りへの影響
注文書の手入力 60% 読み取りにくい箇所が確認連絡につながる
注文確認の連絡 課題に挙がった 返事を待つ間は納期回答が出せない
注文変更への対応 課題に挙がった 最新の注文を取り違えるおそれがある
オペレーションの属人化 課題に挙がった 担当者不在の日に回答が遅れやすい
注文書の管理(保管義務) 30% 後から注文を探し照合する手間が増える
注文書1件の処理で生まれる往復(模式図)
注文書を受信して入力し、確認と納期回答を行い、変更連絡で入力に戻る流れ

注文書の扱いは「選ばれる理由」になるのか:言えることと言えないこと

確認できるのは受注側の負担まで

前の節で見た数字は、注文を受け取る側の担当者が感じている手間です。
取引先が発注先を決めるときに、注文書の受け付け方や回答の速さをどの程度重視しているのかは、この調査からは分かりません。
注文書の扱いを理由に発注先を選んだ、あるいは切り替えたことを直接示す調査や事例も、現時点では確認できていません。
そのため、注文書の受付を整えれば差別化になる、とは言い切れないのが正直なところです。

ここで差別化を前提に計画を立てると、効果を測る物差しがずれてしまいます。
取引が増えたかどうかは、価格、品ぞろえ、営業の関係など多くの要因で動くので、受付の改善だけの結果として読み取るのは困難です。
改善の成果は、まず自社の作業と取引先とのやり取りの中で確かめられるものに置くほうが、判断を誤りにくくなります。

それでも取引先の手間に重なる場面

一方で、受注側の手間が取引先の手間と重なる場面ははっきりあります。
受注側がかける確認の電話は、取引先の発注担当者が手を止めて受ける電話でもあります。
納期回答が遅れれば、取引先は自社の販売や生産の予定を組めないまま待つことになり、待ちきれずに「あの注文はどうなっているか」と問い合わせてくることもあります。
変更を伝えたのに反映されていなければ、取引先は同じ内容を伝え直さなければなりません。

受注側が入力と確認の手間を減らし、確認連絡の回数や回答までの時間が縮めば、取引先の待ち時間や問い合わせの手間も減る可能性があります。
これは調査で確かめられた効果ではなく、作業のつながりから考えられる見立てです。
見立てである以上、自社で回数と時間を測り、取引先からの問い合わせが減ったかを見て確かめることになります。
測り方は最後の節で具体的に扱います。

ITを差別化に使っている中小企業はまだ一部

周辺の状況として、主に東京23区内の中小企業を対象に2024年に行われた調査(1,218社が回答)では、ITを差別化や競争力強化に積極的に活用している企業は8.9%でした5。
受注業務に限った数字ではなく、対象地域も限られています。
食品の受注担当者の調査とは対象も時期も定義も異なるため、二つの割合を組み合わせて、受注業務でITを使いこなせていない企業が何割といった計算はできません。

言えるのは、ITを差別化の道具として使い込んでいる中小企業はまだ一部にとどまっている、という程度です。
取り組む余地は残っていますが、それは差別化が約束されているという意味ではありません。
だからこそ、自社の負担と取引先の待ち時間を同時に減らす改善を選び、その結果として取引先の反応を見る順番が現実的です。
反対に、自社の入力を減らすために取引先へ入力作業を移す改善は、取引先の手間を増やすこともあります。
次の節の比較で「取引先側の変更」を軸の一つに置くのは、この違いを見落とさないためです。

確認できることと言えないこと(模式図)
受注側の負担、発注先を選ぶ理由、取引先の手間の見立てを分けた図

受付手段の選び方:FAX受注のOCR化から標準EDIまで

FAX注文書のOCR化と精度の条件

取引先がFAXで注文書を送り続ける場合、最初に検討しやすいのが、受け取った後の手入力をOCRに置き換える方法です。
OCRは、紙や画像に書かれた文字を読み取ってデータに変える技術で、AIの学習を使って読み取りの精度を高めたものはAI-OCRと呼ばれます。
取引先は今までどおりFAXを送ればよく、変わるのは受注側の処理だけです。

精度の目安として、OCR製品の提供元であるPFUが自社の基準帳票で行った検証では、FAX注文書の認識率が従来のOCRで80%、AI-OCRで98%でした4。
この数字は提供元が用意した帳票での検証値で、自社に届く注文書で同じ精度が出ることを示すものではありません。
手書きの割合、取引先ごとの書式の違い、送信元のFAX機の画質によって結果は変わります。

同じ資料では、精度を上げる条件として次の点が挙げられています4。

  • FAXの文字に合わせて学習したAI-OCRを使う
  • 複合機が受信したデータをそのまま取り込む(受信した紙をスキャンし直すと、FAX送信時と読み取り時で画質が二重に劣化する)
  • 読み取りの前に、傾きや拡大縮小を補正する

認識率が高くても、読み違いがなくなるわけではありません。
品番、数量、納品日のように、誤ると出荷や請求に響く項目は、読み取り結果を元の画像と照らして人が確定する工程を残しておくほうが安全です。
OCR化で減るのは全項目を打ち込む作業であり、重要な項目を目で確かめる作業は残ります。
導入前には、実際に届いた注文書を使って、どの取引先のどの欄で読み違いが出るかを試しておくと、照合にかかる手間を見積もれます。

メール・Web・EDIとの違い

メールで注文書が届く場合、添付がPDFか表計算ファイルかで手間が分かれます。
決まった形式の表計算ファイルなら受注システムへ取り込める余地がありますが、取引先ごとに形式が違うPDFを受け取って転記しているなら、手入力の手間はFAXと大きくは変わりません。
また、メールで受け取った注文書は電子データとして保存する必要があり、この点は後の節で扱います。

Web受注は、取引先が受注側の用意した画面に品番や数量を入力して注文する方法です。
受注側の転記は減りますが、入力の作業は取引先側へ移ります。
FAXを送れば済んでいた取引先にとっては、画面へのログインと入力という新しい手順が増えることになります。
取引先の担当者が手間に感じれば、受注側の負担は減っても取引先の満足にはつながりません。

EDIは、企業間で注文などの取引データをシステム同士でやり取りする仕組みです。
データ形式がそろっていれば、受け取った注文を受注システムへ取り込む作業は自動化しやすくなります。
一方で、取引先のシステムと同じ形式・接続方法を使えることが前提で、取引先ごとに方式が違えば、その数だけ対応が必要になります。
業界や中小企業向けに標準化された形式もありますが、どの形式を使えるかは取引先のシステム次第で、受注側だけでは決められません。

3軸での比較

ここまでの手段を、取引先側の変更の要否、自社の入力・確認の負担、導入の条件という三つの軸で並べると次のようになります。
並び順は取引先に求める変更が小さいものから大きいものへの順で、優劣の順位ではありません。

表で判断が分かれるのは、取引先側の変更の列です。
FAXのままOCRを使う方法は取引先に何も頼まずに始められますが、照合の作業は残ります。
Web受注やEDIは自社の転記を大きく減らせる可能性がある反面、取引先の協力がなければ始まりません。
自社の負担が減る手段ほど、取引先の作業が変わりやすいという関係になっています。

一つの手段に絞る必要もありません。
FAXで送ってくる取引先の注文はOCRで取り込み、注文の多い取引先には別の受付方法を相談する、という併用は自然な選択です。
費用は製品や処理する注文書の量で大きく変わるため、一般的な相場で判断するより、候補を絞った段階で自社の注文書の枚数と書式の種類を伝えて見積もりを取り、照合に残る手間と合わせて比べるほうが確実です。

受付手段 取引先側の変更 自社の入力・確認の負担 導入の条件
FAX+手入力(現状) なし 全項目の入力と読み取りにくい箇所の確認が残る 追加の条件はない
FAX+AI-OCR なし 入力は読み取り結果の確認と修正に変わる。重要項目の照合は残る 受信データの取り込みと実際の注文書での試行
メール(PDF・表計算ファイル) 送付方法の切り替えを頼む場合がある 形式がそろえば取り込める。PDFの転記は残りやすい 受け取ったデータを電子のまま保存する
Web受注 取引先が受注画面で入力する 転記は減るが取引先の入力内容の確認は残る 取引先の了解と操作への慣れ
EDI 取引先のシステムとの接続が要る 取り込みを自動化しやすい 取引先と同じ形式・接続方法を使えること
FAX注文書をAI-OCRで取り込む流れ(提供元の検証をもとにした手順)
受信データの取り込みから補正、読み取り、重要項目の確定までの手順

取引先が発注方法を指定しているとき、どこまで合わせどこから提案するか

受け取った後の処理は自社で変えられる

取引先が「注文はFAXで送る」「自社の発注システムから出力した注文書を使う」と決めている場合、受注側から受付手段を変えてほしいと頼むのは簡単ではありません。
ただ、取引先が指定しているのは注文書の受け渡しの方法で、受け取ってから先の処理は受注側の領域です。
指定された方法には合わせたまま、自社だけで変えられる範囲として次のような改善があります。

  • OCRで手入力を置き換え、重要項目だけを照合する
  • 取引先ごとに確認が必要になりやすい項目を一覧にし、疑問点はまとめて一度で問い合わせる
  • 納期回答を返す時期と、回答に含める項目(出荷予定日、欠品時の代替の有無など)を決めておく
  • 変更の連絡は受け取った方法に関係なく一か所に記録し、最新の注文がどれか分かるようにする

確認の電話を一度にまとめるだけでも、取引先の担当者が電話を受ける回数は減ります。
納期回答の時期が決まっていれば、取引先はいつ返事が来るかを見込んで予定を組めます。
どれも取引先の手順を変えないので、取引先の了解を取る必要がなく、うまくいかなければ元に戻すのも簡単です。
属人化していた確認の勘所を一覧に書き出すことは、担当者が休んだ日の遅れを防ぐことにもつながります。

取引先の作業が変わる改善は提案として持ち込む

その次の段階が、取引先の了解があれば変えられる範囲です。
注文書の書式に品番欄や単位欄を設けてもらう、FAXからメール添付に切り替えてもらう、といった小さな変更なら、取引先の作業はほとんど増えません。
確認の電話でいつも聞き返している項目がはっきりしていれば、なぜその欄が必要なのかを説明しやすくなります。

Web受注の画面での入力やEDIでのデータ連携は、取引先の作業そのものを変えます。
持ちかけるときは、取引先にとっての変化を、確認の電話が減るか、回答がいつ届くか、入力の手間が増えるか、という点で具体的に説明できるようにしておきます。
自社の入力が楽になるという話だけでは、取引先が協力する理由になりません。

提案の順番としては、先に自社だけでできる改善を進め、確認連絡の回数や回答までの時間がどう変わったかを測っておくと話を進めやすくなります。
数字を示しながら、注文の多い一社に限って試す、FAXとの併用期間を設けるといった小さな始め方を持ちかければ、取引先も判断しやすくなります。
断られた場合も、受け取った後の改善はそのまま続けられます。
なお、受付手段を変える前には、次の節で扱う保存の条件を満たせるかを確かめておく必要があります。

取引先の指定に合わせる範囲と提案する範囲(模式図)
自社だけで変えられる範囲、了解があれば変えられる範囲、取引先の作業が変わる範囲に改善策を分けた図

外せない書面と保存の条件:電子で受けた注文書の扱い

電子取引データの保存

受付手段をメールやWeb受注、クラウドへ移すと、注文書の保存方法も変わります。
電子帳簿保存法では、取引に関する注文書等を電子的に授受することを「電子取引」と呼び、電子メール、インターネットサイト、クラウドサービスなどでのやり取りがこれに当たります3。
電子取引で受け取った注文書のデータは、紙に印刷して保存することが原則として認められていません3。
一定の条件のもとで紙への出力だけで差し支えない場合も示されていますが、その条件は国税庁の一問一答で個別に確かめる必要があります3。

実務に置き換えると、メールで届いた注文書のPDFを印刷して紙のファイルに綴じるだけの運用は、原則として認められないということです。
FAXの紙とメールのPDFが混在している現場では、紙は紙として、データはデータとして保存する二本立てになりやすく、受付手段を増やすほど保管の手間が増えることもあります。
最初の節で見た保管の煩雑さも、こうした二本立てが一因になり得ます。
受付手段を見直すときは、受け取ったデータをどこに置き、後から特定の注文をどう探し出すかまで一緒に決めておくと、受付と保存の両方が整います。

FAXを紙に印刷せず、複合機の受信データとして取り込む運用に変える場合、その保存がどう扱われるかは、上の定義だけでは判断しきれません。
OCR化と合わせて受信方法を変えるときは、保存の方法を税理士や国税庁の資料で確かめてから運用を決めると安心です。

保存期間の原則と例外

法人税法では、注文書を含む帳簿書類を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存することになっています2。
欠損金が生じた事業年度などは、これより長い期間の保存が求められます2。
これは法人税法上の期間で、他の法令で別の保存期間が定められている場合はそちらも確認が必要です。

見落としやすいのは起算点です。
期間は注文書を受け取った日からではなく、確定申告書の提出期限の翌日から数えるため、実際に手元に置いておく期間は7年より長くなります。
受注システムやクラウドに注文データを置く場合は、そのサービスでデータを保持できる期間がこの期間を満たすかも、受付手段を選ぶときの条件に加えておく必要があります。

取適法の確認先

取引の相手や内容によっては、中小受託取引適正化法(取適法)も関わります。
旧下請法を改めた法律で、令和8年(2026年)から施行されています6。
公正取引委員会のページには、第四条の明示に関する規則等が整備されたことが掲載されています6。

取適法の対象になるかどうかは、自社と取引先の資本金や従業員数、取引の内容によって決まります。
注文内容を書面や電子でどう明示し、書類をどう保存するかといった具体的な条件は、公正取引委員会が公表している条文や規則で確かめる必要があります。
受け取る注文書が明示の書面に当たる取引であれば、受付手段の変更がその明示の方法に関わることもあるため、取引先と受付方法を相談する前に、自社の取引が対象かを確かめておくと話が食い違いません。

注文書の保存期間の数え方(法人税法上の原則・模式図)
受け取った事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存する流れ

自社の状況別に何から着手し、効果をどう確かめるか

負担の種類から着手点を選ぶ

ここまでの比較と条件を、自社の状況から着手点を選ぶ形に置き換えると次のようになります。

複数の状況に当てはまる場合に迷いやすいのですが、目安は、取引先に頼まずに始められて、いま手間が最も大きい場面から着手することです。
自社だけで完結する改善は試しやすく、うまくいかなければ戻すことも簡単です。
取引先への提案が必要な改善は、自社の改善で測った結果がそろってから持ちかけるほうが話を進めやすくなります。
メールで届く注文が多い場合は、取り込み方より先に電子データの保存方法を決めておかないと、後から運用を作り直すことになりかねません。

効果は導入前後の自社計測で確かめる

効果を確かめるときに、他社の事例にある削減率を自社に当てはめるのは避けたほうが安全です。
注文の件数、取引先の数、書式の種類が違えば、同じ仕組みでも結果は変わります。
代わりに、次の三つを導入前と導入後で自社で測ります。

  • 確認連絡の回数:受注側から取引先へ確認した電話・メールの件数と、取引先から届いた「注文はどうなっているか」という問い合わせの件数
  • 手入力にかかる時間:注文書1件を受注システムに登録し終えるまでの時間(OCRを使う場合は照合と修正の時間)
  • 納期回答までの所要時間:注文書を受信してから取引先に納期を回答するまでの時間

測り方の手順は次のとおりです。

  1. 導入前の通常の時期に、取引先ごとに上の数字を記録する
  2. 改善を一つずつ入れ、同じ取引先・同じ条件で記録する
  3. 注文件数の増減に左右されないよう、1件あたりの回数や時間に直して比べる
  4. 取引先からの問い合わせの内容に変化がないかも合わせて見る

季節によって注文の量や変更の多さが変わる業種なら、導入前と後で時期をそろえて比べないと、改善の効果と季節の違いを取り違えます。
一度に複数の改善を入れると、どれが効いたのか分からなくなる点にも気をつけます。

差別化につながっているかどうかの手掛かりも、この計測の延長にあります。
取引先からの問い合わせが減り、確認の電話を受ける回数が減ったと取引先の担当者が感じているなら、注文書の扱いが取引先の手間を減らしていることになります。
それが発注先を選ぶ理由として評価されるかは、取引先との会話の中で確かめていくしかありません。
確かめられる変化を積み重ねた先に、選ばれる理由として語れる材料ができていきます。

自社の状況 最初に着手すること 取引先への依頼
FAXでの注文が中心で手入力に時間がかかる 受信データの取り込みとAI-OCRの試行 不要
メールのPDFや表計算ファイルで届く注文が多い 電子データの保存方法を決めてから取り込み方を検討 形式をそろえる相談をする場合がある
確認の電話が多い 取引先ごとの確認項目の一覧化とまとめての問い合わせ 不要
変更連絡が多く最新の注文を取り違えやすい 変更の記録先を一か所に決める 送り方を相談する場合がある
担当者によって処理の仕方が違う 取引先ごとの癖や確認項目を共有の形に書き出す 不要
注文の多い取引先が限られている その取引先にWeb受注やEDIの試行を提案 必要
導入前後に自社で効果を測る手順
確認連絡の回数、手入力の時間、納期回答までの所要時間を導入前後で比べる手順

取引先ごとに注文の受け取り方や確認の手間の出方が違うと、どこから手を付けるかを社内だけで決めるのは難しくなります。

現在の注文の受け取り方と確認連絡の状況をもとに、取引先に頼まずに始められる改善と、提案が必要な改善の切り分けを確かめられます。無料相談で要件を整理する

要点の整理

軸 基準
差別化への期待 注文書の扱いで発注先が選ばれることを直接示すデータは確認できない。自社の負担と取引先の待ち時間を同時に減らす改善を優先する
受付手段の比較 取引先側の変更の要否、自社の入力・確認の負担、導入の条件で比べる
FAX注文書のOCR AI-OCRの認識率98%は提供元の基準帳票での値。自社の注文書で試し、重要項目の照合は残す
電子で受けた注文書 原則として電子データのまま保存する。紙出力のみで済む例外は条件を確認する
保存期間 法人税法上は確定申告書の提出期限の翌日から原則7年。欠損金が生じた年度などは長くなる
効果の確かめ方 確認連絡の回数、手入力の時間、納期回答までの時間を導入前後に自社で測る

試行後の計測結果をどう読み、取引先への提案につなげるかは、判断が分かれやすいところです。 導入前後に測る項目の決め方や、取引先に受付方法の変更を持ちかける際の説明の組み立てを確かめられます。

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よくある質問

FAXで届く注文書をそのままOCRで取り込んでも問題ないか。精度は何で決まるか

使えますが、全件をそのまま自動で登録するより、品番・数量・納品日など重要な項目を人が照合する工程を残すのが前提です。
精度は、FAX向けに学習したAI-OCRを使うか、複合機の受信データを直接取り込むか(紙をスキャンし直すと画質が二重に劣化する)、傾きや拡大縮小を補正するか、で変わるとされています4。
提供元の検証ではAI-OCRの認識率は98%でしたが、これは提供元の基準帳票での値です4。
手書きの多さや取引先ごとの書式によって結果は変わるため、実際に届いた注文書で試してから判断します。

メールで受け取った注文書を印刷して保管するだけでよいか

原則として足りません。
メールで受け取った注文書は電子取引に当たり、そのデータは紙への出力だけで保存することが原則として認められていません3。
一定の条件のもとで紙出力のみでも差し支えない場合がありますが、その条件は国税庁の電子帳簿保存法一問一答で確かめてください3。

注文書の保存期間は何年か。欠損金が出た年度は変わるか

法人税法では、注文書を含む帳簿書類は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間の保存が原則です2。
欠損金が生じた事業年度などは、これより長い期間の保存が必要になります2。
起算点は注文書を受け取った日ではない点と、他の法令で別の期間が定められている場合があることにも注意が必要です。

取引先がFAXしか使わない場合でも、受注側でできる改善は何か

受け取った後の処理は自社で変えられます。
受信データをAI-OCRで取り込んで重要項目だけ照合する、確認が必要な項目を取引先ごとに一覧にしてまとめて問い合わせる、納期回答の時期と項目を決めておく、変更連絡を一か所に記録する、といった改善は取引先の手順を変えずに始められます。
注文書の書式に品番欄や単位欄を加えてもらうなど、取引先の作業がほとんど増えない小さな変更なら、相談の余地もあります。

取適法の対象になる取引か、どう確かめればよいか

対象かどうかは、自社と取引先の資本金や従業員数、取引の内容によって決まります。
取適法は令和8年(2026年)から施行されており、公正取引委員会のページで第四条の明示に関する規則等の整備が案内されています6。
具体的な基準や、注文内容の明示・保存の条件は公正取引委員会の公表資料で確かめ、判断が難しい場合は専門家に相談してください。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

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  1. 1 出典:株式会社ハンモック(IDEATECH「リサピー」企画)「食品業の受注業務に関する実態調査」(2023年)
  2. 2 出典:国税庁「タックスアンサー No.5930 帳簿書類等の保存期間」(現行制度)
  3. 3 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答 Ⅰ 通則(電子取引関係)」(現行制度)
  4. 4 出典:株式会社ピーエフユー「FAX注文書はOCRできる?精度を向上させる3つのポイント」(2025年)
  5. 5 出典:東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査」(2025年)
  6. 6 出典:公正取引委員会「取適法(中小受託取引適正化法)関連ページ」(令和8年)

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

監修確認日:

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