まずは卸売ECを小規模でスタートしたい方へ。リーズナブルなSaaS(ASP)版『EC-Rider Primo(プリモ)』誕生! 詳しくはこちら

得意先への損害賠償責任、どこまで負う?発生場面と契約条項・対応の整理

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 得意先への賠償責任は、契約の不履行・不法行為・製造物の欠陥のどれを根拠に問われるかで、確認すべき資料も考え方も変わる
  • 製造物責任法でいう欠陥は製造物が通常有すべき安全性を欠いていることを指し、自らを製造業者として表示した者等も責任主体に含まれるため、製造を委託している場合でも無関係とは限らない
  • 契約書の上限条項や免責条項は責任の枠を左右するが、文言や故意・重過失の有無によって働き方が変わるため、原文の精査と専門家への確認が前提になる
  • 製造物責任法に基づく請求権は、損害及び賠償義務者を知った時から3年、製造物の引渡しから10年で時効によって消滅する
  • PL保険は商品の欠陥による身体障害・財産損害の賠償金を補償する一方、納期遅延や情報漏洩は当然には対象にならず、得意先の倒産による回収不能は与信管理として別に備える必要がある

取引上の合意を示す握手のイメージ
▽ 写真の出典元

得意先との取引でどんな場面に損害賠償責任が生じるか

納めた商品に不具合が見つかった、納期に間に合わなかった、預かっていた得意先の情報が外に出てしまった——そうした連絡が入った瞬間に気になるのは、自社がどこまで負担する立場にあるのかという一点だと思います。
賠償責任の範囲は取引金額で自動的に決まるものではなく、契約違反として問われるのか、引き渡した物の欠陥として問われるのかといった根拠ごとに考え方が分かれ、そのうえで契約書に上限や免責の定めがあれば実際に負う範囲も変わります。
いま動かせるのは、相手が何を根拠に請求しているのかを見極め、手元の契約書の該当条項と突き合わせることです。
あわせて、得意先の倒産で代金が回収できない与信の問題とは別の話だと切り分けておくと、対応の優先順位を誤らずに済みます。

損害賠償責任が問われる三つの根拠の違い(模式図)
三つの根拠ごとに主な場面を分けた図

契約違反(債務不履行)によるケース

得意先との取引で最も起こりやすいのは、約束した内容をそのとおりに果たせなかった場面です。
納期に間に合わなかった、数量が足りなかった、仕様と違うものを納めてしまった、指定された作業を期日までに終えられなかった——いずれも契約で決めた内容を履行できていない状態で、一般に債務不履行として整理される場面です。

このとき得意先側に生じる不利益は、その先の事情によって大きく変わります。
代替品を急いで手配した費用だけで収まることもあれば、生産ラインが止まって人員の待機費用が発生することもあり、得意先がさらにその先の販売先へ納められず違約金を支払った、という連鎖が起きることもあります。
同じ「一日の納期遅れ」でも、汎用品の在庫補充なのか、組立ラインに直結する部品なのかで、損害の大きさは桁が変わります。

押さえておきたいのは、得意先が申告してきた金額がそのまま自社の負担額になるわけではない、という点です。
実務で争点になるのは、主張されている損害のうちどこまでが自社の不履行と結びついたものか、そしてその損害が取引の時点で見込めた範囲のものかという部分で、内訳ごとに見方が分かれます。
生産ライン停止の人件費と、その先の取引先へ支払った違約金とでは、自社の行為からの距離が違いますし、得意先側で在庫や代替手段を持っていたかどうかも議論に影響します。

つまり、請求額を見て呆然とする前に、内訳を一つずつ分解できる状態にしておくことが実質的な出発点になります。
そしてこの分解の枠組み自体を、契約書の条項が先回りして決めている場合があります。

不法行為によるケース

契約で何を約束したかとは別に、相手の権利や利益を侵害したことによって責任が生じる枠組みもあります。
一般に不法行為と呼ばれる整理で、取引関係の有無にかかわらず問題になり得る点が契約違反との違いです。

たとえば、納品のために得意先の構内へトラックを入れ、旋回する際に倉庫のシャッターを壊してしまったとします。
契約書のどこにも「シャッターを壊さないこと」とは書かれていませんが、修理費の負担を求められる場面です。
常駐作業を請け負っている現場で、作業員の不注意によって得意先の設備を停止させてしまった場合も同じように、契約に書いた債務の中身とは別のところで責任が問われます。

ややこしいのは、一つの出来事が契約違反としても不法行為としても主張され得ることです。
納めた機械の取付作業中に相手の別の設備を損傷させたような場面では、取付という債務の履行が不十分だったという筋と、他人の財産を侵害したという筋の両方が考えられます。
得意先がどちらを根拠にしているかによって、自社が用意すべき記録も、後で触れる期間の数え方も変わってくるため、請求書面の文言を丁寧に読む必要があります。

製造物の欠陥(製造物責任法)によるケース

納めたものが「物」である場合には、契約の内容とは別に、製造物責任法という枠組みが関わってきます。
この法律でいう欠陥とは、製造物が通常有すべき安全性を欠いていることを指します1。

ここは読み違えやすいところで、品質の不具合と安全性の欠如は同じではありません。
色ムラがある、寸法が許容差を外れている、見た目が悪いといった不具合は、契約で定めた仕様に合っているかという問題であり、通常は契約上の責任として扱われます。
一方、使用中に発火した、部品が外れてけがをしたというように、安全性に関わる事象が起きた場合に、この枠組みが正面から問題になります。

もう一つ確認しておきたいのが、誰が責任を負う立場なのかという点です。
製造物責任法における責任主体は、製造物を業として製造・加工・輸入した者に加えて、自らを製造業者として表示した者等とされています1。
製造は外部に委託していて自社では一切作っていない、という会社でも、自社名やブランドを表示して販売していれば、表示のあり方によっては責任主体に当たり得るということです。
「うちは作っていないから関係ない」と早合点すると、想定していなかった立場で請求を受けることになります。

逆に、この枠組みの対象は製造物の欠陥に限られます。
ソフトウェアの運用代行やコンサルティングのようにサービスの提供にとどまる取引、あるいは納期遅延や情報漏洩といった事象は、製造物の欠陥の話ではないため、契約の内容や一般の不法行為の枠組みで判断されることになります。
自社の取引がどちらに当たるかで、見るべき資料も、相手が持ち出してくる論点も変わります。

責任の根拠 主に問題になる場面 確認の起点になる資料
契約違反(債務不履行) 納期遅延・数量不足・仕様違いなど約束した内容を果たせなかった場合 取引基本契約書・個別契約書・発注書・検収の記録
不法行為 納品作業中の設備破損など、契約で定めた債務とは別に相手の利益を侵害した場合 作業記録・事故発生時の報告・現場の写真
製造物の欠陥(製造物責任法) 引き渡した製造物が通常有すべき安全性を欠いていた場合 設計・製造の記録・出荷検査記録・表示や取扱説明の内容

契約書の条項によって責任範囲はどう変わるか

賠償額の上限条項と免責条項の考え方の違い(模式図)
二つの条項と書面の優先関係を分けた図

賠償額の上限条項の考え方

同じ事故が起きても、契約書に賠償に関する定めがあるかないかで、話し合いの出発点はまったく違います。
何も書かれていなければ、損害の範囲を一から主張し合うことになりますが、上限を定めた条項があれば、その枠の中で議論が進むことが期待されます。

上限条項は、賠償額を一定の金額や基準に結び付けて区切る形で置かれます。
個別契約の対価相当額を上限とする、直近一定期間に受領した金額を上限とする、といった書き方や、賠償の対象を直接かつ現実に生じた損害に限るという形で範囲を絞る書き方があります。
数千円の部品が原因で工場が半日止まった、というように取引額と損害額が大きく離れ得る取引ほど、この条項の有無が効いてきます。

ただし、上限が書いてあれば必ずその額で収まる、と考えるのは危険です。
故意や重大な過失があった場合の扱い、条項の文言がどこまでの場面を対象にしているかの解釈、取引の実態といった事情によって、条項がそのまま働くとは限りません。
どの程度の上限が一般的かという相場や、有効性を一律に判断できる基準は、公的な資料の範囲では確認できていません。
実際にその条項が自社の場面で働くかどうかは、契約書の原文を精査したうえで弁護士等に確認することが前提になります。

自社の契約書を開くときに見てほしいのは、その条項が誰の責任を限定しているかです。
相手方の書式をそのまま使って取引を始めた場合、上限条項が入っていても、限定されているのは得意先側の責任だけで、自社の責任には上限がない、という構成になっていることがあります。
「上限条項がある」という記憶だけで安心せず、主語がどちらになっているかを確かめるだけでも、見える景色が変わります。

免責条項がある場合の注意点

上限とあわせて置かれることが多いのが、一定の種類の損害を賠償の対象から外す免責の定めです。
逸失利益や間接損害、データの滅失などを対象外とする書き方がよく見られます。
得意先が請求してくる内訳の中で、実はこの種類に当たるものが含まれていることがあるため、内訳ごとに条項と突き合わせる意味があります。

ここで実務的に厄介なのが、適用される書面が一つとは限らない点です。
取引基本契約書があり、注文請書の裏面にも取引条件が刷られていて、見積書には但し書きが付いている、という状態は珍しくありません。
それぞれに賠償の定めがあり、内容が食い違っていることもあります。
基本契約に「個別契約が基本契約と異なる場合は個別契約が優先する」といった定めが置かれている場合もあれば、その逆もあるため、どの書面の条件で議論しているのかが定まらないまま話を進めると、双方の前提がずれたまま時間だけが過ぎていきます。

もう一点、免責条項の読み方として覚えておきたいのは、それが責任の有無そのものを消す性質のものとは限らないことです。
賠償の対象となる損害の種類を限っているだけで、対象に残る損害については通常どおり議論になります。
また、条項の効き方が故意や重過失の有無によって左右され得ることは上限条項と同じで、契約書に書いてあるという事実だけで結論を出せる領域ではありません。
だからこそ、契約書は「答えが書いてある文書」ではなく「議論の枠を決めている文書」として扱うのが実際に近い読み方になります。

実際に得意先から賠償請求されたときの初動対応

賠償請求を受けた際の初動対応の手順
確認の手順を順に示した図

事実関係と契約書の確認

得意先から連絡が入った直後は、どうしてもその場を収めたくなります。
ただ、誠実に対応することと、責任を認める発言をすることは別です。
「こちらの不手際です、弁償します」とその場で答えてしまうと、後から内訳を検討しようとしたときに、前提が動かしにくくなります。
まずは事実を受け止め、確認のうえで回答する旨を伝えるところから始めるのが現実的です。

並行して、社内に残っている記録を集めます。
出荷や納品の記録、検査記録、担当者と得意先とのやり取りのメール、不具合の報告を受けた日時、現物の保管状況。
時間が経つほど記録は散逸し、担当者の記憶も曖昧になります。
特に現物は、原因を確かめるうえでも、相手の主張を検証するうえでも中心的な材料になるため、勝手に廃棄せず保全しておく必要があります。

得意先側に確認したいのは、何を根拠に、いくらを、どういう計算で請求しているのかです。
口頭のやり取りだけで金額が独り歩きすると、後から内訳を分解しづらくなるため、書面で示してもらう形にしておくと整理が進みます。
請求の根拠が、納期遅延という契約の不履行なのか、引き渡した物の安全性の欠如なのかによって、自社が用意すべき資料も反論の組み立ても変わります。

そのうえで、前の節で見た契約書の条項に戻ります。
どの書面に基づく取引なのか、賠償に関する定めはあるのか、検収や不適合時の対応について期限や手順が決められていないか。
不適合が見つかった場合はまず修補を求める、といった手順が定められているのに、いきなり金銭の賠償として請求が来ているのであれば、そこも確認の対象です。
相手の主張をそのまま受け止めるのではなく、契約で決めた枠に照らして読み直す作業が、この段階の中心になります。

時効期間を踏まえた対応

請求を受けたとき、意外と見落とされるのが期間の観点です。
製造物責任法に基づく損害賠償請求権については、原則として損害及び賠償義務者を知った時から3年、製造業者等の引渡しから10年が基準です。ただし、生命・身体の侵害では知った時から5年となり、蓄積性・潜伏性の損害には10年の起算点の特則があります。具体的な事案では適用時期や時効の完成猶予・更新なども確認します(消費者庁・製造物責任法Q&A)。

この3年と10年という期間は、製造物責任法に基づく請求の場合のものです1。
契約の不履行を根拠とする請求や、一般の不法行為を根拠とする請求では、起算点も期間も異なり得ます。
したがって、「何年経っているから大丈夫」と先に結論を置くことはできず、相手がどの根拠で請求しているのかを特定してから期間を確認する、という順序になります。
同じ出来事について複数の根拠が主張され得ることを踏まえると、一つの期間だけを見て判断するのは危うい場面もあります。

この期間は、請求を受けた側の防御の話だけでなく、平時の記録の残し方にも関わります。
引渡しから10年という長さを踏まえると、出荷ロットの記録や検査記録、設計の変更履歴をどこまでの期間保存するかは、事故が起きてからでは取り返しがつかない判断です。
数年前に納めた分について問い合わせが来たときに、当時の製造条件を説明できるかどうかで、反論できる幅がまったく違ってきます。

逆に、自社が期間内の対応を漫然と先送りすることにも注意が要ります。
回答を保留したまま事実確認が進まず、相手との認識の差だけが広がると、後で交渉の余地が狭くなります。
期間を理由とした主張ができるかどうかも、いつ何を知ったのかという事実関係が固まって初めて検討できるものです。

製造物責任法の時効期間と主な特則(個別事案の確認が必要)
知った時からの期間、引渡しからの期間、確認する特則を分けた図

賠償リスクを抑える契約設計とPL保険などの選択肢

契約書でできる備え

ここまでは起きてしまった後の話ですが、契約書は本来、起きる前に読む文書です。
そして事後に効いてくる条項ほど、締結時には「細かい話」として後回しにされがちです。

後から効いてくるのは、たとえば次のような取り決めです。

<ul><li>検収の方法と期間。
いつ、どの基準で合格とみなすのか、期間が過ぎたらどう扱うのか</li><li>納めたものが仕様に合わなかった場合の対応。
修補、代替品の納入、代金の減額のうちどれを先に行うのか</li><li>不具合を見つけた得意先が自社へ通知する期限</li><li>賠償の範囲と上限、対象から外す損害の種類</li><li>納期に遅れた場合の扱い</li><li>製造や作業を外部に委託する場合の責任の所在</li><li>得意先から預かる図面や個人情報の取扱いと、漏えい時の対応</li></ul>

これらは並べると当たり前のようですが、実際の交渉では利害が正面からぶつかります。
検収期間を短くすれば自社は早く状態が確定して安心できますが、得意先にとっては検査体制の負担が増えます。
賠償の上限を個別契約の代金額に揃えたいと考えても、自社の部品が得意先の生産ラインに組み込まれる取引では、その水準では受け入れられないこともあります。
つまり落としどころは、取引の性質——納めるものが相手の事業のどこに入るのか、不具合が起きたときに相手側でどれだけ被害が広がるのか——によって動きます。
この見立てを持たずに条項だけを見比べても、交渉の材料になりません。

見直しの機会という意味では、契約書がないまま注文書だけで続いている取引こそ確認の価値があります。
取引開始時は小口だったものが、いつの間にか自社の主力になっているのに、賠償の取り決めは何も交わしていない、という状態は起こり得ます。
新たに条件を持ち出しにくいと感じる場合でも、単価改定や契約更新、取引条件の見直しといった節目であれば、話題として自然に載せられます。

契約書で備えておく取り決め事項の分類(模式図)
三つの観点に分けた契約条項の項目図

PL保険など賠償責任保険の活用

契約条項でできるのは責任の範囲を整理することまでで、実際に支払うことになった金額そのものを消すことはできません。
そこで選択肢に入るのが賠償責任保険です。

生産物賠償責任保険、いわゆるPL保険は、製造または加工した商品、あるいは販売した商品の欠陥により他人が身体障害または財産損害を被った場合を補償の対象とし2、製造業者等が法律上の賠償責任を負う場合の損害賠償金を補償する保険とされています2。
前半で見た製造物の欠陥に関わる責任と、対象の考え方が重なっていることが分かります。

ここで注意したいのが、補償の対象が商品の欠陥に起因する対人・対物の事故だという点です2。
納期に遅れたことで得意先に生じた損害や、預かっていた情報が漏えいしたことによる賠償は、商品の欠陥に起因する身体障害・財産損害とは性質が異なるため、この保険で当然に手当てされるわけではありません。
自社が抱えているリスクの原因がどこにあるのかを整理してから、どの部分を契約条項で抑え、どの部分を保険で移すのかを考える順序になります。

補償の限度額や適用の条件、免責となる場面は保険の契約内容によって決まるため、自社の取引の中身に即して確認する必要があります。
また、実際に事故が起きたときに、それが補償の対象になり得る事故なのかを自社だけで判断するのは難しい場面が多いはずです。
得意先との話し合いをどこまで進めてよいかを含め、加入先へ早い段階で相談する流れを作っておくと、対応が進んでからの食い違いを避けやすくなります。

得意先の経営リスク(与信)と賠償責任リスクの違い

賠償責任リスクと与信リスクの違い(模式図)
原因・主な備え・重なる場面を分けた図

与信管理とは何か

「得意先のリスク」という言葉は、ここまで見てきた賠償責任とは別の意味で使われることもあります。
それが、得意先の経営が傾いて代金を回収できなくなるという、与信の問題です。

与信管理とは、取引先の信用状況を把握し、どの程度まで安全に取引ができるかを設定する取り組みを指します3。
企業が継続的に成長していくためには、取引先が突然倒産するなどのリスクに備える必要があるとされています3。

なぜ備えが要るのかは、掛け売りの構造を思い出すと分かりやすくなります。
商品を納めてから請求し、入金されるまでには期間があり、その間は代金が未回収のまま積み上がっています。
月末締め翌月末払いといった条件であれば、常に一定額の売上が回収前の状態で残っている計算になり、取引が増えるほどその残高も増えていきます。
得意先が支払えなくなれば、その残高がそのまま損失になり得ます。

だからこそ、どこまでの残高なら抱えられるかをあらかじめ決めておく3、という発想が出てきます。
受注が増えることは営業の成果ですが、同時に未回収の残高が増えることでもある、という両面を見る仕組みが与信管理です。

両方のリスクをどう切り分けて考えるか

賠償責任と与信は、混同されやすいわりに、性質がまるで違います。
賠償責任のリスクは自社の納品や作業、製品に問題があったことから生じるのに対し、与信のリスクは得意先側の支払能力や存続が損なわれたことから生じます。
原因の所在が自社側か相手側かという、根本の違いです。

そのため備えの手段も分かれます。
賠償責任のほうは、契約条項の設計と賠償責任保険が中心になりますが、これらをどれだけ整えても得意先の倒産による回収不能は防げません。
逆に、信用状況を把握して取引可能な範囲を設定する取り組み3をどれだけ丁寧に行っても、自社の製品に欠陥があったときの責任は軽くなりません。
社内で担当が分かれやすいのも自然で、契約条項は営業や法務、品質の側が、与信は経理や管理の側が見ていることが多いはずです。

ややこしいのは、一つの得意先に両方が同時に集中しやすいことです。
売上の大きい先ほど納品量も多く、不具合が起きたときの影響も大きく、同時に未回収の残高も大きくなります。
会議で「あの得意先はリスクが高い」と誰かが言ったとき、それが賠償を指しているのか回収を指しているのかで、打つべき手はまったく違います。
前者なら契約条件の見直しや検査体制の話になり、後者なら支払条件や取引残高の話になります。
言葉を切り分けるだけで、会議の空転はかなり減らせます。

自分の心配がどちらなのかをはっきりさせることは、読者にとっても最初の整理になります。
トラブルの連絡が来て請求を心配しているのなら前半の話、得意先の資金繰りの噂を聞いて不安になっているのなら与信の話、という具合です。
両方が気になるのであれば、それは別々に管理する対象が二つある、ということになります。

見る観点 自社が負う賠償責任のリスク 得意先の経営に起因する与信のリスク
起こる原因 自社の納品・作業・製品に問題があったこと 得意先の支払能力や存続が損なわれること
損失の出方 得意先に生じた損害を自社が支払う 納品済みの代金が回収できない
主な備え 契約条項の設計と賠償責任保険 信用状況の把握と取引できる範囲の設定
主に見る社内の部門 営業・法務・品質 経理・管理

実際に請求を受けた場面では、ここまでの内容を手元の資料と突き合わせる作業になります。
次にまとめたのは、その突き合わせの入口として社内で確認できる事柄です。

賠償の条項がどう働くかは、取引基本契約・個別契約・注文請書といった書面の組み合わせや、納めているものが得意先の事業のどこに入るかによって変わり、条文を読むだけでは自社の場面に当てはめきれない部分が残ります。

どの書面がいまの取引に適用されているのか、賠償の範囲や検収の条件がどこまで書かれているのかを一緒に洗い出すことで、社内で判断できる部分と、専門家へ相談する際に持ち込むべき論点とを切り分けられます。無料相談で要件を整理する

賠償請求を受けた際に手元で確認できること

請求の当否と範囲を判断するために、自社の記録・契約書面・相手からの請求内容という確認先ごとに整理した軸です。

  • いつ納めたどの分についての話か、不具合や遅延に気づいたのはいつかを、出荷記録や検査記録と照らして時系列に並べる
  • 得意先が主張する損害の内訳と金額の計算根拠を、口頭ではなく書面で受け取る
  • 取引基本契約書・個別契約書・注文請書など、適用される書面をすべて出し、条件が食い違っていないかを確かめる
  • 賠償の範囲や上限、対象から外す損害の種類を定めた条項があるか、あるとすればどちらの責任を限定しているかを読む
  • 請求が契約の不履行・不法行為・製造物の欠陥のどれを根拠としているかを、請求書面の文言から見極める
  • 根拠に応じて異なる期間の定めを確認し、社内で回答する期限を決める
  • 現物や不具合品を保全し、原因を確かめられる状態のまま保管する
  • 加入している賠償責任保険の対象になり得る事故かどうかを、加入先へ早い段階で相談する

請求の根拠が製造物の欠陥なのか契約の不履行なのかで、突き合わせる資料も、期間の数え方も変わります。

要点の整理

請求の根拠 契約の不履行・不法行為・製造物の欠陥のどれを根拠とするかで、確認する資料も期間の扱いも変わる
製造物責任法の対象 通常有すべき安全性を欠いた製造物の欠陥が対象で、品質の不具合や納期遅延とは枠組みが異なる
責任を負う立場 業として製造・加工・輸入した者に加え、自らを製造業者として表示した者等も責任主体に含まれる
契約書の条項 賠償の上限・免責の定めは責任の枠を左右するが、文言や事情によって働き方が変わり、原文の精査と専門家への確認が前提
時効の期間 製造物責任法では原則として知った時から3年(生命・身体の侵害は5年)、引渡しから10年。蓄積性・潜伏性の損害等には特則があり、他の根拠では起算点や期間も異なり得る
保険の対象 PL保険は商品の欠陥による身体障害・財産損害の賠償金が対象で、納期遅延や情報漏洩は当然には含まれない
リスクの切り分け 自社の行為に起因する賠償責任と、得意先の支払能力に起因する与信は、原因も備えも別に管理する

賠償責任と与信は備える手段も見る部門も違うため、同じ得意先について心配が重なると、どちらから手を付けるかの判断が社内だけでは付きにくくなります。 取引の実態と現在の書面の状態を照らし合わせながら整理することで、契約条件の見直しで対処する部分と、取引残高や支払条件の管理で対処する部分の切り分けが見えてきます。

BtoB通販システムのご相談

貴社の商習慣に合わせたご提案をいたします。

無料相談はこちら

よくある質問

得意先との契約書に賠償に関する条項がない場合、責任はどう扱われますか

条項がないことは、責任が生じないことを意味しません。
契約で特別な取り決めをしていない場合は、契約の不履行や不法行為といった一般的な法的枠組みに照らして判断されることになります。
むしろ、賠償の範囲や上限について合意した内容がない分、どこまでが自社の負担かをめぐって主張が真正面から対立しやすくなります。
現に請求を受けている場面では、注文書や見積書の但し書き、過去のやり取りの中に条件に当たる記載がないかを確認し、あわせて次の契約更新や条件改定の機会に定めを置くことを検討する流れになります。

製造物ではなくサービス提供の契約不履行の場合も、同じ考え方で整理できますか

根拠の見極めから始める点は同じですが、当てはまる枠組みは変わります。
製造物責任法の対象は製造物の欠陥であり、欠陥とは製造物が通常有すべき安全性を欠いていることを指します1。
したがって、運用代行や保守、コンサルティングのようにサービスの提供にとどまる取引で約束した内容を果たせなかった場合は、契約の内容と一般の不法行為の枠組みで判断されることになります。
この場合、何をどこまで行う約束だったのかを示す資料が契約書や仕様書しかないことも多いため、業務範囲や成果の基準をどう書いてあるかが、物の取引以上に重みを持ちます。

PL保険は個人事業主や小規模な事業者でも加入できますか

加入の資格や条件は保険会社ごとの商品設計によるため、公的・業界の資料で確認できる範囲では一律に申し上げられません。
取扱いのある保険会社や代理店に、自社の業種と取引の内容を伝えて確認する形になります。
補償の中身については、製造または加工した商品、販売した商品の欠陥により他人が身体障害または財産損害を被り、法律上の賠償責任を負う場合の損害賠償金を補償するものとされています2。
自社で製造していない商品を仕入れて販売しているだけであっても、販売した商品の欠陥による事故は起こり得るため、規模よりも「何を扱っているか」から検討するほうが実態に合います。

賠償請求の時効は、請求の法的根拠によって異なりますか

異なり得ます。
製造物責任法に基づく請求権については、損害及び賠償義務者を知った時から3年間行使しないとき、または製造業者等が当該製造物を引き渡した時から10年を経過したときに時効によって消滅するとされています1。
これは製造物責任法に基づく請求の場合の定めであり、契約の不履行を根拠とする請求や一般の不法行為を根拠とする請求では、起算点も期間も異なり得ます。
そのため、経過した年数から先に結論を出すのではなく、相手がどの根拠で請求しているかを特定したうえで、該当する期間を確認する順序になります。

与信管理と賠償責任リスクの両方に備える場合、社内の担当はどう分けるべきですか

どちらも同じ得意先について見るものですが、扱う材料が違います。
与信は、取引先の信用状況を把握してどこまで安全に取引できるかを設定する取り組みであり3、決算情報や支払の履歴、未回収の残高といった数字を継続的に追う仕事です。
賠償責任のほうは、契約条項の内容、納品や検査の実務、保険の手当てが中心になります。
分業そのものは自然ですが、取引額が急に増えた、品質のクレームが続いている、といった変化はどちらの判断にも影響するため、営業が掴んだ情報が両方に届く場をどう作るかが、分け方以上に効いてきます。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

> プロフィールの詳細を見る

  1. 1 出典:消費者庁「製造物責任法の概要Q&A」(2026年確認時点)
  2. 2 出典:日本損害保険協会「損害保険Q&A(からだの保険・他 問94)」(2026年確認時点)
  3. 3 出典:三井住友銀行「Business Navi(与信管理のポイントと与信限度額設定方法)」(2026年確認時点)

画像の出典元

  1. 取引上の合意を示す握手のイメージ/philreeseabb on Pixabay

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

監修確認日:

記事内容に関するお問い合わせ:お問い合わせフォーム

BtoB EC(受発注)サイト構築システム「EC-Rider B2B Ⅱ」への
各種お問い合わせ

ページTOPへ戻る
無料相談を予約 お見積
平日10:00~18:00
page
top