◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 電子化の前に、納品書が適格請求書を兼ねるかと、取引先が受け取った後の作業を書き出し、変えてよい部分と変えられない部分を分ける
- 取引先は受け取った後の作業で3つに分けて打診し、受け入れを確かめた先から段階的に切り替え、送り方を一覧で管理する
- 下請法の承諾手続は親事業者が発注時の取引条件を電磁的に提供する場面の規定で、納品書への当てはまりは確認できていないため、迷う運用は公的な窓口に確認する
- 訂正・再発行・返品の扱いと迷ったときの相談先を先に決め、旧来の方法へ戻る余地を減らす
- 定着は導入前の自社の件数と比べて判断し、最初の締めの後や取引先を追加する前に見直す
目次

納品書を手で作って送る運用のどこが、電子化で変わるのか
取引先ごとに様式も送り方も違う納品書を、毎回Excelで作ってメールに添付したり紙で同梱したりしていると、電子化したくても手が止まりがちです。
どの取引先が受け取ってくれるのか、現場が使い続けるのかが見えないからです。
納品書の電子化は、システム選びより先に二つを書き出すことから始めます。
一つは、自社の納品書が適格請求書の役割を担っているか。
もう一つは、取引先が受け取った後に何をしているかです。
そのうえで取引先を受け入れの可否で分け、受け入れてくれる先から小さく切り替えます。
訂正や再発行の扱いも先に決めておくと、紙と電子が混在する期間の混乱を抑えやすくなります。
発行から受領までの流れを書き出す
紙やExcelで納品書を作っている現場では、一枚の納品書の裏にいくつもの作業がつながっています。
受注データや出荷の記録から品目と数量を拾い、様式に転記し、印刷して商品に同梱するか郵送するか、PDFにしてメールに添付する。
控えを綴じたりフォルダに保存したりして、月末には請求書と突き合わせる。
電子化で変わるのは、主にこの「作る」「渡す」「控えを残す」の部分です。
一方で、取引先が納品書を受け取った後にしていることは、自社が方式を変えただけでは変わりません。
取引先の担当者が納品物と照らして検品し、発注書と数量を突き合わせ、経理が請求書と照合しているなら、その作業に必要な情報や受け取り方は、電子化した後も満たし続ける必要があります。
ここを見ずに自社の発行作業だけを効率化すると、取引先が受け取ったPDFを印刷して回覧することになったり、照合に使っていた番号が抜けて問い合わせが来たりして、手間が自社に戻ってきます。
そこで、システムを比べる前に、今の納品書がどう流れているかを取引先ごとに書き出します。
項目は次のようなもので足ります。
- 誰が作るか(営業事務、出荷担当など)
- 何をもとに作るか(受注データ、出荷指示、手書きの伝票など)
- いつ作り、いつ渡すか(出荷時、納品時、月末にまとめてなど)
- どの形式で、どう渡すか(紙の同梱、郵送、PDFのメール添付など)
- 取引先側で誰が受け取り、何に使っているか(検品、発注書との照合、請求書との照合など)
- 自社の控えをどこに、どの形で残しているか
書き出してみると、同じ「納品書」でも取引先によって役割が違うことが見えてきます。
ある取引先では検品の場で紙を確認するための書類であり、別の取引先では月末の請求書と照合するための明細になっている、という具合です。
この違いが、取引先を分けて打診するときの材料になります。
書き出した流れのうち、自社の中だけで完結する作業(転記、印刷、控えの保管)は、電子化で変えやすい部分です。
取引先の検品や照合に使われている情報と、次に見る税務上の記載事項は、方式を変えても変えられない部分として扱います。
電子化の範囲は前者をどこまで減らせるかで考え、後者が欠けないかで確かめる。
この見方を持っておくと、システムの機能に目移りしても判断がぶれにくくなります。
納品書がインボイスを兼ねているかの確認
書き出した流れの中で、もう一つ確かめておきたいのが、自社の納品書が消費税のインボイス(適格請求書)の役割を担っているかどうかです。
国税庁は、適格請求書発行事業者が相手方に交付する書類として「請求書、納品書等」を挙げ、主な記載事項として次のものを示しています2。
- 適格請求書発行事業者の名称と登録番号
- 取引年月日
- 税率ごとに区分した対価の額と適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者の名称
自社がインボイスの登録をしていて、納品書に登録番号や税率ごとの消費税額を載せている場合は、納品書が適格請求書の役割を担っていると考えられます。
納品書と請求書を合わせて記載事項をそろえて渡している場合も同様です。
このとき電子化で変えられないのは二つです。
新しい様式や出力データでもこれらの記載事項が欠けないこと、そして請求書とどの納品書が対応するかが取引先にも分かる状態を保つことです。
複数の書類を組み合わせて記載事項をそろえる場合の細かな扱いは、国税庁のインボイス制度の資料で自社の様式に当てはめて確かめておくと安心です。
なお、小売業・飲食店業・タクシー業などでは、記載事項が一部異なります2。
反対に、納品書は納品の事実を伝えるだけで、記載事項はすべて請求書に載せている運用なら、この条件は納品書には当てはまりません。
その場合、納品書の電子化は、取引先が受け取りやすい形と社内の控えの残し方を中心に考えられます。
どちらに当たるかで、後の訂正・再発行のルールに求められる慎重さも変わるため、ここで一度はっきりさせておく価値があります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 自社の発行担当
- 転記・印刷・控えの保管は電子化で変えやすい
- 取引先の受領担当
- 納品物との検品と発注書との数量照合に使う情報は変えられない
- 取引先の経理
取引先が電子の納品書を受け入れるか、どう見極めて打診するか
取引先を3つに分けて見る
流れを書き出した後は、取引先ごとに電子の納品書を受け入れてもらえそうかを見ていきます。
判断のよりどころは、取引先が納品書を受け取った後にしている作業です。
その作業が電子のままでも回るかどうかで、取引先は大きく3つに分けられます。
- 電子で受け取れる先:すでにメールやシステムで書類を受け取っており、検品や照合も画面やPDFで済ませている先
- 紙を求める先:検品の現場で紙の納品書に押印して回している、社内の承認が紙で回っているなど、紙が作業の一部になっている先
- 請求書・検収と連動が必要な先:取引先が自社のシステムやEDI(企業間で受発注などのデータを決まった形式でやり取りする仕組み)で発注・検収をしており、納品の情報もその形式に合わせる必要がある先
1つ目の先は、自社側の準備が整えば切り替えの話を進めやすい相手です。
2つ目の先は、電子に切り替えると取引先の側で印刷や回覧の手間が新たに生まれる可能性があり、こちらの都合だけでは決められません。
無理に切り替えるより、当面は紙を続ける先として一覧に残しておくほうが、混乱を小さくできます。
3つ目の先は、判断の仕方が他の2つと違います。
受け入れてもらえるかどうかより、取引先が使っている形式に自社が合わせられるかが問題になるからです。
中小企業庁の解説では、中小企業共通EDIという標準について、受注側と発注側の双方が同じ標準に対応するプロバイダー(データのやり取りを仲介する事業者)と契約すれば、プロバイダーが情報を変換する仕組みが紹介されています1。
相手と同じシステムを入れなくてもつながる道があるということですが、これは2018年時点の記事で示された共通EDIの仕組みであり、取引先が使うすべての方式に当てはまるわけではありません。
取引先がどの方式を使っているかを聞き、自社が対応できるかを個別に確かめることになります。
打診で確認する項目
分け方の見当をつけたら、取引先に打診して実際の受け入れ条件を確かめます。
このとき「納品書を電子化してよいか」とだけ聞くと、相手も何が変わるのか分からず、可否の返事しか返ってきません。
受け取った後の作業に関わる点を具体的に聞けば、切り替えられるかどうかに加えて、どう切り替えればよいかまで見えてきます。
聞いておきたいのは、たとえば次の項目です。
ここに挙げるのは編集部が整理した確認の例で、取引先の業種や規模によって足し引きが必要です。
- 受け取り方法(メール添付でよいか、取引先のシステムへの登録が必要か)
- 受け取りの窓口(宛先のメールアドレス、担当部署)
- 検収のタイミングと、納品書を何と照合しているか(発注書、納品物、請求書)
- 紙の原本や押印が必要な場面があるか
- 受け取った納品書を取引先側で誰がどう保存するか
- 請求書との対応をどの番号で取っているか
- 切り替えの時期と、紙と電子を並行する期間を置くか
なかでも、検収のタイミングと照合の相手は聞き漏らしやすい項目です。
たとえば取引先が月末に請求書と納品書を突き合わせているなら、納品書番号が請求書の明細に載っているかどうかで、取引先の照合のしやすさが変わります。
自社の様式を変えるときに、その番号の載せ方まで崩さないようにするための確認です。
回答は取引先ごとに一覧へ記録しておきます。
すぐに答えが出ない取引先や、担当者が社内確認を要するという取引先は、いったん紙を求める先として扱い、切り替えの候補から外しておくと、送り方の取り違えを防げます。
この一覧が、後で段階的に切り替えるときに、どの取引先をどちらの方式で扱うかを決める正本になります。
| 取引先の区分 | 受け取った後の作業 | 最初の対応 |
|---|---|---|
| 電子で受け取れる先 | 画面やPDFで検品・照合 | 先行して切り替えを打診 |
| 紙を求める先 | 紙の納品書で検品・押印・回覧 | 当面は紙を続けて一覧で管理 |
| 請求書・検収と連動が必要な先 | 取引先の形式で発注・検収 | 方式を聞いて合わせられるか確認 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 電子で受け取れる先
- 検品や照合を画面やPDFで済ませている
- 先に切り替えを打診する
- 紙を求める先
- 検品の押印や社内の承認が紙で回っている
法令上、納品書の電子化で確認しておく条件は何か
適格請求書との関係
法令面で最初に確かめるのは、前に見た、納品書が適格請求書を兼ねているかどうかです。
兼ねているなら、紙でも電子でも、登録番号、取引年月日、税率ごとの対価と適用税率、税率ごとの消費税額等、受領者の名称といった記載事項がそろっている必要があります2。
電子化の際に注意したいのは、様式の移し替えに伴う抜けです。
新しいシステムの標準の様式に置き換えた結果、これまで手で入れていた登録番号や税率ごとの集計が出力されなくなる、といったことが起こりえます。
切り替え前に、新しい様式の見本を実際の取引の内容で1件出してみて、旧様式と項目を照らし合わせておくと、この抜けを取引先より先に見つけられます。
電子データの保存
2つ目は、電子でやり取りした納品書のデータをどう残すかです。
紙の運用では控えを綴じておけば済んでいたものが、メール添付やシステムでの送付に変わると、送ったファイルそのものを残すのか、印刷した控えでよいのかという問いが出てきます。
これは電子帳簿保存法に関わる論点で、国税庁は電子データを送ったり受け取ったりした場合の保存について資料を公表しています。
保存の要件は事業者の状況によって確かめるべき点があるため、自社の扱いは国税庁の電子取引に関する資料で確認し、必要に応じて顧問の税理士に相談してください。
段取りとして言えるのは、保存の方法を決めないまま送付を始めないことです。
送信のたびに担当者が自分のフォルダへ保存する、メールの送信履歴にだけ残る、といった状態で始めると、後から探せない控えが散らばります。
どこに、誰が、どの名前で残すかを、送り方を決めるのと同じタイミングで決めておきます。
取引先の側でも受け取ったデータの扱いが変わる可能性があるため、打診で保存の担当を聞いておいたことがここで生きてきます。
下請法の承諾手続が当てはまる範囲
3つ目に、下請法(取適法)の電磁的方法による提供の承諾手続が、納品書にも関係するのかという疑問があります。
公正取引委員会の規則が定めているのは、親事業者が下請事業者に対して、法律の3条2項にある事項(発注の際に書面で示す取引条件)を電子メールなどの電磁的方法で提供する場面です3。
この場合、親事業者はあらかじめ方法の種類と内容を示して、書面または電磁的方法で承諾を得る必要があります3。
下請事業者から電磁的方法で受け取らないという申出があれば電磁的方法で提供してはならず、再び承諾を得れば再開できるとされています3。
この規定は、発注する側が発注の内容を伝える書面についての手続です。
受注側が納品のときに取引先へ渡す納品書に、この承諾手続がそのまま当てはまるかは確認できていません。
納品書について承諾が必要とも不要とも、ここでは断定できません。
自社の納品書が取引条件を記した書面を兼ねているなど、扱いに迷う運用がある場合は、公正取引委員会や中小企業庁の相談窓口に確認するのが確実です。
法令上の手続とは別に、打診で取引先が電子での受け取りに同意したことを記録に残しておくのは、実務の上でも役に立ちます。
後から担当者が替わっても、どの取引先とどの方式で合意したかをたどれるからです。

全面切替か、取引先別の段階導入・紙との併用か
比較の軸
取引先の分類と確認事項がそろったら、どの範囲から切り替えるかを決めます。
選択肢は大きく二つです。
すべての取引先を一度に電子へ切り替える全面切替と、受け入れてくれる取引先から順に切り替える段階導入で、段階導入では紙を求める取引先との併用が続きます。
どちらが合うかは、発行担当者の作業負担、取引先の受領条件、紙と電子が混在する期間の確認の手間という3つの軸で見ると整理しやすくなります。
全面切替の利点は、発行の方法が一つにそろい、混在期間がほとんどないことです。
発行担当者は、取引先ごとにどちらで送るかを確かめる必要がありません。
その一方で、紙を求める取引先にも一律に電子で送ることになります。
取引先の検品や回覧の作業に合わない先から、問い合わせや差し戻しが一度に返ってくるおそれがあります。
発行担当者は新しい操作に慣れる前に、例外の対応も同時に引き受けることになります。
段階導入では、受け入れを確かめた取引先から始めるため、取引先側の受領条件で行き違う場面が少なくなります。
発行担当者も、限られた取引先で操作を覚え、うまくいかない点を直してから範囲を広げられます。
代わりに、紙と電子が混在する期間が長くなり、その間は「この取引先はどちらで送るのか」を毎回確かめる手間が残ります。
確かめる先が担当者の記憶や過去のメールだと、送り方の取り違えが起きやすくなります。
このため段階導入を選ぶなら、取引先ごとの送り方を記録した一覧を一つに決め、発行担当者が送るたびにそこを見る形にしておきます。
一つの取引先には一つの方式で送り、同じ納品書を紙と電子の両方で送らないことも決めておくと、取引先にどちらが正しい書類か迷わせずに済みます。
受け入れの状況が分からないまま全面切替に踏み切る特別な理由がない限り、受け入れ済みの先から小さく始めるほうが、現場と取引先の双方にとって無理の少ない進め方だと考えます。
どちらを選ぶ場合も、変えてはいけない部分は共通です。
納品書が適格請求書を兼ねているなら、切り替えた取引先でも紙のままの取引先でも、記載事項と請求書との対応が保たれていることが判断の前提になります2。
段階導入の途中で紙の様式と電子の様式の項目がずれていくと、どちらかで記載事項が欠けかねません。
様式の項目は、両方で合わせておきます。
受注側の費用と実証事業の読み方
切り替えの範囲を考えるとき、費用と効果の見込みも気になるところです。
中小企業庁の解説では、中小企業共通EDIに対応するプロバイダーなどを使う場合について、受注側の導入には「大きな費用はかかりません」と説明されています1。
ただし具体的な金額は示されておらず、これを自社の見積もりの代わりにはできません。
どの方式を使い、取引先の形式に合わせるためにどんな設定が要るかで費用は変わるため、実際の見積もりで確かめることになります。
同じ解説には、平成28年度補正の実証事業の結果も載っています。
12件の実証プロジェクトで中小企業の業務時間が平均51.4%削減され、大企業より削減率が高かったというものです1。
この数字は受発注業務全体を対象にしたもので、納品書の発行だけを電子化したときの効果ではありません。
また、2018年時点の記事で紹介された、企業間のデータ連携の実証の結果です。
受発注のデータを企業間でつなぐ取り組みで業務時間が変わった例として背景を知る材料にはなりますが、自社が納品書を電子化したときにどれだけ時間が減るかの見込みとしては使えません。
自社にとっての効果を知る手がかりは、自社の数字の中にあります。
今、月に何件の納品書を手で作っていて、どれだけの訂正や問い合わせが来ているかを導入前に数えておけば、切り替えた後と比べられます。
数える項目は、定着の判断を扱う節で挙げます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 全面切替
- 発行の方法が一つにそろい、混在期間がほとんどない
- 紙を求める取引先から問い合わせや差し戻しが一度に返るおそれがある
- 段階導入
- 受け入れ済みの取引先から始め、操作を覚えて範囲を広げられる
訂正・再発行・返品の扱いと担当者の操作をどう決めるか
例外対応の決め方
電子化した納品書が現場で使われなくなる流れとして考えやすいのは、通常の発行よりも、いつもと違う場面です。
数量を間違えて訂正したい、取引先から再発行を頼まれた、返品があった。
そうした場面で新しい方法での手順が決まっていないと、担当者は慣れたExcelや紙に戻って対応し、その一件をきっかけに旧来の運用が残り続けることになりかねません。
例外の扱いを先に決めておくのは、この戻り道をふさぐためです。
決めておきたい場面と項目は、たとえば次のとおりです。
以下は編集部の提案で、自社の取引に合わせて場面を足してください。
- 訂正(数量・単価・品目の誤り):誰が訂正を判断するか、元の納品書を取り消すのか訂正版を出すのか、どちらを正とするか
- 再発行(紛失、宛先違いなど):同じ内容を送り直すときに、再発行であることをどう示すか
- 返品・数量不足:納品書を出し直すのか別の書類で扱うのか、請求書側にどう反映するか
- 方式の変更(紙の取引先が電子を希望する、またはその逆):誰が送り方の一覧を書き換え、いつから切り替えるか
どの場面でも共通して決めるのは、誰が判断するか、どの書類を正とするか、取引先へどう知らせるかの3点です。
電子では送り直しが手軽な分、同じ納品書番号の書類が何通も取引先に届くことがあります。
取引先の担当者がどれを使えばよいか迷うと、問い合わせが自社に返ってきます。
訂正版や再発行分には元の納品書番号と、訂正・再発行である旨を記します。
送付のメール本文にも同じことを書いておけば、取引先は手元の書類を差し替えるだけで済みます。
納品書が適格請求書を兼ねている場合は、訂正版や再発行分でも記載事項がそろっているか、請求書の明細がどの版の納品書を指すかを確かめます2。
誤りを訂正したときに交付し直す書類の扱いは、国税庁のインボイス制度の資料で自社のケースに当てはめて確認してください。
担当者の操作ルール
導入を進める担当者と、毎日納品書を発行する担当者は、別の人であることもあります。
導入担当者が仕組みを理解していても、発行担当者が迷ったときに見るものがなければ、運用はその人の判断に委ねられます。
操作のルールは、発行担当者が送るたびに確かめる事柄に絞って、1枚にまとめておくと参照しやすくなります。
- どの画面・どのデータから納品書を作るか
- 送る前に何を見るか(取引先の送り方一覧、宛先、記載事項)
- 送ったことをどこで確かめるか(送信履歴、送付済みの記録)
- 控えをどこに、どの名前で残すか
- 例外の場面で誰に相談するか
手順書には、操作の手順だけでなく、迷ったときの相談先を書いておきます。
例外の扱いを決めてあっても、発行担当者がその判断を一人で抱えると、慣れた方法で処理してしまう余地が残ります。
相談先が決まっていれば、例外の情報が導入担当者のもとに集まり、次の見直しの材料にもなります。
切り替え直後は、最初の数件の発行に導入担当者が立ち会うか、送信後に内容を一緒に見ておくと、手順書の書き漏れを早いうちに見つけられます。
手順書は一度作って終わりではなく、そこで見つかった点を書き足していくものとして扱います。
導入後に定着したかを何で判断し、どう見直すか
見る指標
導入した後、電子化が定着したかを判断するには、感覚ではなく件数で見るほうが確かです。
見る指標として、次のものを提案します。
- 手作業(Excelや手書き)で作った納品書の件数
- 取引先からの問い合わせ・訂正依頼の件数
- 再発行の件数
- 紙のまま残っている取引先の数
ここでは目安となる数値は示しません。
業種や取引先の数、取引の頻度によって普通の水準が違うため、外の数字と比べても判断の材料になりにくいからです。
比べる相手は、自社の導入前の件数です。
切り替える前の一定期間を数えておき、切り替えた後の同じ長さの期間と並べます。
件数の変化からは、どこに手を入れればよいかも読み取れます。
手作業の発行が減らないなら、新しい方法で作れない取引や、発行担当者が旧来の方法に戻ってしまう場面が残っているということです。
その場合は例外の扱いと手順書を見直します。
問い合わせや訂正依頼が特定の取引先に集まっているなら、打診のときの確認が足りず、その取引先の受け取り方と方式が合っていない可能性があります。
紙のまま残る取引先が減らないこと自体は、取引先の事情によるものであれば問題ではありません。
ただ、紙を求める理由が打診のときから変わっていないかは、見直しのたびに確かめる価値があります。
見直しの時期
見直しは、思い立ったときに行うより、きっかけを先に決めておくほうが続きます。
たとえば次のような時点です。
- 切り替えた後、最初の締めと請求書の発行を終えたとき
- 電子で送る取引先を新たに追加する前
- 同じ種類の例外や問い合わせが繰り返されたとき
- 取引先から受け取り方や方式の変更を求められたとき
最初の締めの後を挙げているのは、納品書と請求書の対応がうまく取れているかが、請求書を出して初めて分かるからです。
取引先を追加する前に見直すのは、今の範囲で残っている問題を抱えたまま範囲を広げると、同じ問題が取引先の数だけ増えるためです。
見直しで分かったことは、取引先の送り方一覧、例外の扱い、手順書へ戻して書き換えます。
そのうえで次に切り替える取引先を選び、また件数を見る。
この繰り返しにしておけば、紙を求めていた取引先の事情が変わったときにも、同じ手順で範囲を広げられます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 受け入れ済みの取引先で切り替える
- 手作業の発行・問い合わせ・再発行・紙の取引先の件数を数える
- 導入前の件数と比べる
- 送り方一覧・例外の扱い・手順書を書き換える
- 次に切り替える取引先を選ぶ
取引先ごとの受け取り方と、納品書が請求書と組み合わさって担う役割は、自社の様式と取引先一覧を並べて見ないと整理しにくいためです。
現在の納品書の流れをもとに、変えてよい部分と変えられない部分、最初に切り替える取引先の候補を一緒に確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 最初に書き出すこと | 納品書が適格請求書を兼ねるかと、取引先が受け取った後に何をしているか |
| 取引先の分け方 | 電子で受け取れる先、紙を求める先、請求書・検収と連動が必要な先 |
| 切り替えの範囲 | 受け入れを確かめた先から始め、送り方の一覧で一取引先一方式に |
| 法令の確認順 | 記載事項、電子データの保存、下請法の承諾手続の当てはまり |
| 例外対応 | 訂正・再発行・返品ごとに判断者・正とする書類・知らせ方を決める |
| 定着の判断 | 導入前の自社の件数と比べ、最初の締めの後や取引先追加の前に見直す |

切り替えた後の件数の見方や例外の扱いは、自社の取引の事情によって答えが変わり、一般的な手順だけでは決めきれないためです。 導入前後の件数や問い合わせの傾向をもとに、手順書や取引先の送り方一覧のどこを見直すかを確かめられます。
よくある質問
納品書をメールでPDF送付するだけでも電子化と言えますか。保存はどうすればよいですか。
紙の郵送や同梱をやめて電子で渡すという意味では、電子化の一つの形です。
ただ、納品書をExcelで手作業で作っている状態が変わらなければ、転記や作成の手間は残ります。
どこまで変えるかは、発行から受領までの流れを書き出して決めるのが確実です。
送ったデータの保存は電子帳簿保存法に関わるため、国税庁の電子取引に関する資料で自社の扱いを確認し、保存場所と担当を送付の開始前に決めておいてください。
納品書が適格請求書を兼ねている場合、電子化で気をつけることは何ですか。
新しい様式でも、登録番号、取引年月日、税率ごとの対価と適用税率、税率ごとの消費税額等、受領者の名称といった記載事項が欠けないことです2。
システムの標準様式に移したときに抜けやすいため、実際の取引で見本を出して旧様式と照らし合わせます。
請求書とどの納品書が対応するかが取引先に分かる状態も保ちます。
小売業・飲食店業・タクシー業などは記載事項が一部異なります2。
取引先が紙を希望する場合、併用はいつまで続ければよいですか。
一律の期限は決められません。
紙を求める理由が、検品の現場や社内承認の流れなど取引先側の作業にあるなら、自社の都合で打ち切ると取引先に手間を移すことになります。
紙の先は送り方の一覧に記録して一つの方式で送り続け、見直しの時期に紙を求める理由が変わっていないかを確かめるのが現実的です。
下請法(取適法)の電磁的方法の承諾は、納品書にも必要ですか。
公正取引委員会の規則は、親事業者が下請事業者に3条2項の事項(発注の際に示す取引条件)を電磁的方法で提供する場合に、方法の種類と内容を示して承諾を得ることなどを定めています3。
受注側が渡す納品書にこの手続が当てはまるかは確認できておらず、必要とも不要とも断定できません。
納品書が取引条件を記した書面を兼ねるなど迷う運用があれば、公正取引委員会や中小企業庁に確認してください。
訂正した納品書を再発行するとき、請求書との関連づけはどうすればよいですか。
訂正版には元の納品書番号と訂正である旨を記し、請求書の明細がどの版の納品書を指すのかが分かるようにします。
送付のメール本文にも同じ内容を書いておくと、取引先が差し替えやすくなります。
納品書が適格請求書を兼ねる場合は、訂正版でも記載事項がそろっているかを確かめ2、交付し直す書類の扱いは国税庁のインボイス制度の資料で確認してください。
- 1 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(2018年)
- 2 出典:国税庁「No.6625 適格請求書等の記載事項」(2026年)
- 3 出典:公正取引委員会「下請代金支払遅延等防止法の電磁的方法による提供に関する規則」(2026年)
画像の出典元
- Two business professionals in suits reviewing documents and writing notes at a table./Photo by Ketut Subiyanto on Pexels