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伝票の種類と流れ・食い違いの突き合わせ・電子化の条件:BtoB取引で伝票の扱いを整える手順

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 伝票は名称ではなく、取引の流れのどこで渡され、何の確認の根拠になるかで整理する。
  • 突き合わせは発注内容・受領・検査・請求の順に、根拠が確定した段階ごとに行う。
  • 取適法の対象取引では、支払期日は受領日から数え、検査の長期化や請求書の遅れでは動かない。
  • 受け渡し方法は取引先の対応可否と処理量で選び、方法が違っても照合項目と保存ルールは社内でそろえる。
  • 電子で受け取る伝票は電帳法の電子取引として扱い、取適法の記録とインボイスの保存は目的を分けて管理する。

40代後半の日本人男性が会議室での法人商談をしている場面

同じ取引なのに書類の内容が合わない:伝票を「流れ」と「根拠」で整理する

同じ注文のはずなのに、発注書と納品書で数量が違う。
請求書の単価が発注時と合わない。
取引先ごとに様式も届き方も違うと、そのたびに確認の電話や修正が発生します。
伝票は名称で覚えるより、「取引の流れのどこで誰が誰に渡し、何の確認の根拠になるか」で並べ直すと、突き合わせる項目は数量・単価・受領日・検収に絞れます。
受け渡し方法は取引先の対応状況と処理量で選びます。
電子化や保存は電子帳簿保存法・取適法・インボイス制度の条件を確かめてから、取引の多い取引先から順にそろえていきます。

注文→納品・受領→請求・支払の流れと書類の位置づけ

企業間取引で伝票と呼ばれる書類には、発注書(注文書)、納品書、受領書や検収の記録、請求書などがあります。
様式はばらばらに見えても、どれも一つの取引を「注文する」「受け取って確かめる」「請求を受けて支払う」という段階ごとに記録したものです。
発注側の立場から見ると、自社が出すのは発注書、取引先から受け取るのは納品書と請求書、社内で残すのが受領と検査の記録という位置づけになります。

食い違いが見つかったときに確認が長引く場面では、どの書類を基準に見るかが社内で決まっていないことがあります。
数量なら発注書と納品書と受領記録、単価なら発注時に合意した内容、支払期日なら受領日というように、項目ごとに根拠にする書類を決めておけば、差が見つかったときにどちらを直すべきかを判断できます。
書類の数を減らすことより、項目と根拠の対応を先に決めることが整理の出発点です。

この考え方は、法令が発注時に求める内容とも重なります。
取適法(中小受託取引適正化法)の対象取引では、委託事業者は発注時に、当事者の名称、委託日、給付内容、受領の期日と場所、検査完了期日、代金額、支払期日などを記載した書面または電磁的記録を直ちに交付します1。
受領・検査・支払の基準を、発注の段階で先に決めておく仕組みだと読めます。

ただし取適法は、旧下請法などを改称・改正して2026年1月に施行された法律で、資本金と従業員数の基準を満たす委託事業者が中小受託事業者に製造などを委託する取引だけが対象です3。
自社の取引がこの基準に当てはまらない場合、記載事項は法律上の義務ではありません。
それでも、同じ項目を取引基本契約や自社の発注書様式に入れておくと、後の照合で根拠にする書類がはっきりします。

書類の名称と役割は一致しない(納品書が請求書の役割を持つ場合)

書類の名称だけで扱いを決めると、取引先ごとの違いでつまずきます。
インボイス制度では、売り手の名称と登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとの合計額と適用税率、税率ごとの消費税額、買い手の名称が記載されていれば、請求書という名前でなくても適格請求書になり得ます6。
ある取引先は請求書で、別の取引先は記載事項を備えた納品書で、というように、同じ役割の書類が取引先によって違う名前で届くことがあり得ます。

発注側として受け取る立場では、届いた書類を名称ではなく「何の根拠として残すのか」で仕分けます。
買い手は仕入税額控除のため原則として適格請求書を保存し、売り手は交付した写しを保存します6。
納品書が適格請求書を兼ねる取引先の場合、その納品書は数量を確かめる書類であると同時に、税の保存書類にもなります。

逆に、記載事項を満たしていない納品書は、数量の確認には使えても請求書の代わりにはなりません。
「納品書は数量確認用のファイルへ、請求書は経理へ」という名称ごとの振り分けでは、適格請求書を兼ねる納品書が税の保存書類から漏れるおそれがあります。
取引先ごとに、どの書類が適格請求書の役割を持つかを一覧にしておくと、振り分けの迷いがなくなります。

確認項目ごとに根拠にする書類(本文の例をもとにした模式図)
数量は発注書・納品書・受領記録、単価は発注時の合意内容、支払期日は受領日を根拠にすることを項目別に示した図
▼ 図の内容を文字で読む
  • 数量
    • 発注書
    • 納品書
    • 受領記録
  • 単価
    • 発注時に合意した内容
  • 支払期日
    • 受領日

食い違いが起きやすい項目(数量・単価・納品日・検収)と突き合わせの進め方

受領日・検査・支払期日の食い違い

書類と根拠の対応を決めても、日付の扱いが違えば照合は合いません。
一つの取引には、納品書の日付、実際に受け取った日、検査が終わった日、請求書の日付と、複数の日付が並びます。
どれを起点に支払期日を数えるかが社内と取引先で違うと、支払予定の日がずれ、問い合わせが発生します。

取適法の対象取引では、原則として納品された時点が受領日です2。
検査が終わった時点を受領日とする扱いをとる場合でも、検査中に納期が来れば、納期が受領日になります2。
支払期日は受領日から60日以内で、できる限り短く定め、検査の有無は問われません1。
検査に60日を超える期間がかかる場合でも、支払期日は受領後60日以内に定めます2。
事前の合意がある場合の例外もQ&Aで扱われているため、自社の取引が当てはまるかどうかは個別に見る必要があります2。

請求書との関係も同じ考え方です。
請求書の提出が遅れても支払期日までに支払う必要があり、支払期日は具体的な日が特定できるように定めます2。
社内の支払処理を「請求書が届いてから照合を始める」流れで組んでいると、この規律と合わなくなります。

たとえば、月末に納品された加工品の請求書が翌月の半ばまで届かない場合を考えます。
照合を請求書待ちで止めていると、受領日から数えた期日までに照合と支払の承認が間に合わない可能性があります。
受領記録と発注内容の照合を納品の時点で済ませておけば、請求書が届いた後に残る確認は金額と記載事項に限られます。

取適法の対象外の取引では、受領日の定義や支払期日の数え方は契約で決まります。
その場合も、何をもって受領とするか、検査の期限、支払期日の起算日を取引基本契約に書いておくと、日付の食い違いは「どちらの解釈が正しいか」という話し合いではなく、契約の定めとの照合で片付けられます。

単価が未確定のときの発注の扱い

単価の食い違いは、発注の時点で単価が決まっていなかったことから生じる場合があります。
仮の単価で発注データを作り、後から決まった単価で請求書が届くと、発注データと請求書の金額が合いません。
そのたびに、どちらが正しいかを一件ずつ確かめることになります。

取適法の対象取引でEDI(企業間で取引データを電子的にやり取りする仕組み)によって発注する場合、単価が未定なら、実際の単価でないことを明示したうえで「0円」と表記できます2。
その際は、未定である理由と決定予定日を示し、単価が決まった後に補充して明示する必要があります2。
EDIの画面やデータで記号を使うときは、その記号の意味を事前に書面または電磁的方法で示しておきます2。

照合の側から見ると、「0円」や記号の意味が社内で共有されていなければ、0円の発注データと金額の入った請求書がそのまま差異として上がってきます。
単価未定の発注を一覧で持ち、補充明示した単価を発注データに反映してから請求と照合する順序にすれば、未定だったことによる差と、本当の誤りとを分けて見られます。
取適法の対象外の取引でも、単価未定の発注をどう表記し、いつまでに確定させるかを取引先と決めておくと、同じ効果が見込めます。

発注→受領→請求の順に突き合わせる手順

ここまでの扱いを踏まえると、突き合わせは書類が届いた順ではなく、根拠が確定した順に進めるのが筋です。
次の手順は、その考え方を実務に置き換えた一案です。

  1. 発注内容を確定させる:数量、単価(未定なら未定の旨と決定予定日)、納期、受領場所、検査の期限を、発注書または発注データで確認する。
  2. 受領を記録する:実際に受け取った日と数量を、納品書と照らして記録する。
    数量に差があれば、この段階で取引先に確認する。
  3. 検査結果を記録する:検査をした場合は、完了日・結果・不合格品の扱いを残す。
  4. 請求を照合する:請求書の数量・単価・金額を、受領記録と確定した単価に照らして確かめ、適格請求書の記載事項がそろっているかを見る。

手順の2と3は、法令上の記録とも重なります。
取適法の対象取引では、給付内容や代金額などの記録に加え、検査をした場合は検査完了日・結果・不合格の扱い、給付内容の変更ややり直しがあればその内容と理由まで記録し、2年間保存します1。
発注書の写しを記録として使うことはできますが、それだけでは記録すべき事項を満たしません2。
受領と検査の記録を発注書とは別に残すことが、照合の作業と記録の義務の両方を兼ねることになります。

この順序にしても、食い違いそのものがなくなるわけではありません。
変わるのは、食い違いが見つかる段階です。
数量の差は受領の時点で、単価の差は単価の確定時に見つかるため、請求書の段階では金額と記載事項の確認が中心になり、月末にまとめて原因をさかのぼる作業が減ります。

発注から請求までの突き合わせの手順(本文の一案)
発注内容の確定、受領の記録、検査結果の記録、請求の照合の順に進める突き合わせの手順図1発注内容を確定させる2受領を記録する3検査結果を記録する4請求を照合する

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 発注内容を確定させる
    • 数量・単価(未定なら決定予定日)
    • 納期・受領場所・検査の期限
  2. 受領を記録する
    • 実際に受け取った日と数量
    • 数量に差があれば取引先に確認
  3. 検査結果を記録する
    • 完了日・結果・不合格品の扱い
  4. 請求を照合する
    • 数量・単価・金額を受領記録と確定単価に照らす
    • 適格請求書の記載事項の有無

紙・FAX・メール・EDI・受発注システム:自社の取引先と処理量に合う受け渡し方法の選び方

中小企業共通EDIの仕組みと取引先側の条件

照合する項目を絞れたら、次に考えるのは、その項目がどの形で自社に届くかです。
紙やFAXで届けば、数量や単価を目で読んで入力し直す必要があります。
データで届けば、発注データと並べて比べる仕組みを作れます。
受け渡し方法の違いは、照合のどこに手作業が残るかの違いと言い換えられます。

データで受け渡す方法のうち、中小企業庁が普及を推進してきた中小企業共通EDIは、取引先ごとに異なるEDIのデータ形式を国際標準に沿って共通化し、導入の手間とコストを減らすことを狙う仕組みです4。
発注側と受注側の双方が標準に対応したプロバイダーと契約し、プロバイダーがデータを変換して、統一された形でやり取りします4。
この紹介記事は2018年時点のものなので、現在の提供状況や対応サービスは、利用を検討する時点で改めて確かめる必要があります。

取引先側の負担について、紹介記事では、受注側は対応するプロバイダーと業務アプリを使えば大きな費用はかからないとされています4。
一方で、効果は1社だけでは得られず、取引先の状況を考えて導入の要否を判断するよう勧められています4。
発注側の自社がEDIに切り替えても、取引の多い取引先が対応しなければ、紙やメールの処理はそのまま残ります。

共通EDIが扱うのは受発注のやり取りで、納品書や請求書との突き合わせまで仕組みが用意されているかは、紹介記事からは読み取れません。
発注データがそろった後も、受領と請求の照合をどう組むかは自社で別に決める必要があります。
取適法の対象取引でEDIを使う場合は、前の節で見た記号の意味の事前明示や、単価未定時の表記もEDIの設定に含めておきます2。

比較軸(照合の手作業・取引先の対応要否・保存の手間)

紙・FAX・メール・EDI・受発注システムを、照合と保存の作業から同じ軸で並べると、次のようになります。
公的資料による比較ではなく編集部の整理で、どれが優れているかを示すものではありません。

判断が分かれるのは「取引先に求めること」の列です。
EDIや受発注システムは、転記や読み取りの手作業を減らせる見込みがある一方、取引先にも契約や操作の変更を求めます。
取引先がそれに応じられるかどうかは、自社だけでは決められません。
紙・FAX・メールは取引先に新たな対応を求めない代わりに、読み取りと入力の作業と、保存方法の区別が自社側に残ります。

取引先の構成によって、現実的な組み合わせは変わります。

  • 取引量の大きい取引先が少数に集中している場合:その取引先とデータで受け渡せるかを話し合う意味が大きい。
    少数の相手と合意できれば、照合する伝票の多くがデータで届く形に近づく。
  • 小口の取引先が多数ある場合:一社ずつEDIをそろえる負担が重くなりやすい。
    まずは発注書・納品書の記載項目と、メールの送付先などの受け渡し先をそろえる方が進めやすいことがある。
  • 取引先によって対応状況がまちまちな場合:方法を一つに統一しようとするより、方法が違っても照合項目と保存先が同じになるよう、社内側をそろえる。

どの組み合わせを選んでも、方法を変えれば保存の扱いも変わります。
メールのPDFやEDIのデータで受け取る取引が増えれば、電子データとして保存する対象が増えるため、方法の変更と保存の条件は一緒に考える必要があります。

受け渡し方法 照合で残る手作業 取引先に求めること 保存で考えること
紙(郵送・手渡し) 書類を読み取り発注内容と見比べる 新たな対応は求めない 紙で保管するか、スキャンして電子で残すかを決める
FAX 紙と同じく読み取りと見比べが残る 送受信の設備 紙で受けるかデータで受けるかで保存の扱いが変わる
メール(PDF添付) PDFから読み取って転記する 送付先と送り方をそろえる 電子データの授受として保存する
EDI 項目がデータで届き、発注データとの比較をシステムで組める 双方の対応(共通EDIでは双方のプロバイダー契約) 電子データの授受として保存する
受発注システム(Web画面) 同じ画面のデータを双方が見るため転記が少なくなる 取引先が画面を操作する運用への合意 電子データの授受として保存する
取引先の構成別に見た受け渡し方法の進め方(編集部の整理)
取引量が少数に集中、小口が多数、対応状況がまちまちの三つの構成ごとの進め方を並べた図取引量が少数に集中、小口が多数、対応状況がまちまちの三つの構成ごとの進め方を並べた図取引量が少数の取引先に集中その取引先とデータで受け渡せるかを話し合う小口の取引先が多数発注書・納品書の記載項目をそろえるメールの送付先などの受け渡し先をそろえる取引先によって対応状況がまちまち方法が違っても照合項目と保存先を社内でそろえる

▼ 図の内容を文字で読む
  • 取引量が少数の取引先に集中
    • その取引先とデータで受け渡せるかを話し合う
  • 小口の取引先が多数
    • 発注書・納品書の記載項目をそろえる
    • メールの送付先などの受け渡し先をそろえる
  • 取引先によって対応状況がまちまち
    • 方法が違っても照合項目と保存先を社内でそろえる

電子化・保存の法令条件:電子帳簿保存法・取適法・インボイスで確かめること

電子帳簿保存法の3区分と電子取引

受け渡し方法を紙から電子に変えると、まず影響を受けるのが電子帳簿保存法(電帳法)です。
国税庁の案内では、電帳法は電子取引・電子帳簿等・スキャナ保存の3つの区分に分けられています5。
取引書類に通常記載される事項を含む電子データを授受した場合は、電子取引として同法の保存規定が適用されます5。

伝票に当てはめると、メールに添付されたPDFの請求書、EDIで受け取った発注データ、受発注システムからダウンロードした納品データは、取引書類に通常記載される事項を含んでいれば電子取引の区分で考えることになります。
紙で受け取った書類をスキャンして電子で残す場合はスキャナ保存、自社で作成する帳簿を電子で残す場合は電子帳簿等というように、同じ伝票でも受け取り方と残し方で入口の区分が分かれます。

区分ごとの具体的な保存要件や、要件が緩和される場合の条件は、国税庁の各区分の案内で確かめる必要があります5。
受け渡し方法を変える前に、変更後に増える電子データがどの区分に入るかを決めておくと、保存場所やファイル名の付け方を後から作り直さずに済みます。

取適法の発注内容の明示と2年保存

取適法の対象取引では、発注内容の明示は書面または電磁的記録で行い、取引の記録も書類または電磁的記録で作成して2年間保存します1。
紙の発注書をEDIや受発注システムに切り替えても、明示すべき事項と記録すべき事項そのものは変わりません。

切り替えのときに見直したいのは、紙の発注書では欄外や備考に書いていた事項が、データの項目として持てるかどうかです。
受領場所、検査完了期日、支払期日を発注データの項目に持たせるのか、別の書面や電磁的記録で示すのかを決めておかないと、データ化した後に明示事項が欠けることになります。
記号を使う場合の事前明示も、この見直しに含めます2。
電磁的方法で明示する際の手続きの細部は、切り替えの前に公正取引委員会の案内で確かめておくと安心です。

2026年1月に施行された取適法では、手形払いなどの禁止、協議に応じない一方的な価格決定の禁止、従業員数による基準の追加などが改正の柱になっています3。
従業員数の基準が加わったことで、資本金だけで見ていた頃とは対象になる取引先の範囲が変わる場合があります。
取引先一覧に「取適法の対象かどうか」の区分を持たせておくと、記録や支払期日の規律が及ぶ取引先を、伝票を処理する担当者がその場で判断できます。

インボイスの記載事項と保存

インボイス制度で問われるのは、請求の役割を持つ書類に記載事項がそろっているか、そしてそれを保存しているかです6。
発注側の自社は買い手として、仕入税額控除のため原則として適格請求書を保存します6。
電子で受け取った適格請求書であれば、その保存は電帳法の電子取引の扱いとも重なります。

取適法の記録とインボイスの保存は、同じ書類を対象にすることがあっても、目的が違います。
取適法の記録は取引の内容と受領・検査・支払の経過を残すためのもので、インボイスの保存は仕入税額控除を受けるためのものです。
目的が違う以上、保存期間もそれぞれの制度の定めで確かめ、取適法の記録期間に合わせて一律に廃棄する運用にはしないようにします。
なお、免税事業者などからの仕入には、一定割合を控除できる経過措置があります6。

書類種類×制度の対応表

書類ごとに、どの制度がどの理由で関わるかを並べると次のようになります。
取適法の列は対象取引に限った話です。

表から読み取れるのは、一つの書類が複数の役割を同時に担うことがあるという点です。
適格請求書の記載事項を備えた納品書は、数量の照合、取適法の記録、税の保存書類という三つの役割を兼ねることがあります。
保存場所を書類の名称で分けるより、発注番号などで取引ごとに発注・受領・検査・請求をまとめ、制度ごとに必要な書類を引き出せる形にしておく方が、名称の違う取引先が混ざっても扱いがぶれにくくなります。

書類 電子帳簿保存法 取適法(対象取引のみ) インボイス制度
発注書・発注データ 電子で授受すれば電子取引の区分 発注内容の明示。写しは記録に使えるがそれだけでは足りない 記載事項を満たす書類かどうかで判断
納品書・受領記録 電子で授受すれば電子取引の区分 受領日と給付内容を記録として残す 記載事項を満たせば適格請求書になり得る
検査記録 取引先と授受しない社内記録は残し方に応じて区分を確かめる 検査完了日・結果・不合格の扱いを記録 直接の保存対象ではない
請求書 電子で授受すれば電子取引の区分 代金額の記録。請求の遅れで支払期日は動かない 買い手は控除のため原則保存、売り手は写しを保存
電子帳簿保存法の3区分と、伝票の受け取り方・残し方(本文の整理)
電子取引、スキャナ保存、電子帳簿等の三区分に、メールのPDFやEDIのデータ、紙のスキャン、自社作成の帳簿を当てはめた図
▼ 図の内容を文字で読む
  • 電子取引
    • メールに添付されたPDFの請求書
    • EDIで受け取った発注データ
    • 受発注システムからダウンロードした納品データ
  • スキャナ保存
    • 紙で受け取った書類をスキャンして電子で残す
  • 電子帳簿等
    • 自社で作成する帳簿を電子で残す

取引先ごとに様式が違う状況で、何を決めてどの順に変えるか

取引先の優先順位づけ

照合の項目と順序、受け渡し方法の選び方、方法を変えるときの法令の条件がそろうと、残るのは「どこから手を付けるか」です。
全取引先を同時に変えようとすると、取引先側の対応を待つ間、新旧の運用が社内で並び、かえって確認が増えることがあります。
ここからは編集部の提案として、変える順番を考えます。

並べる手がかりは、取引先ごとの処理量(伝票の件数や取引金額)と、食い違いの件数、修正や問い合わせにかかった時間です。
記録がなければ、まず一定期間、食い違いが起きるたびに項目(数量・単価・受領日・検査)と、差の出た書類を残しておきます。
この記録が、後で変更の前後を比べる基準にもなります。

  • 処理量が多く、食い違いも多い取引先:最初に取り組む候補。
    照合項目の確認と、受け渡し方法の見直しを合わせて話し合う。
  • 処理量は少ないが、食い違いが多い取引先:方法の変更より先に、様式の記載項目や単価の決め方を確かめる。
  • 処理量は多いが、食い違いが少ない取引先:照合の手作業が負担になっているなら、データでの受け渡しを相談する候補。

これに加えて、取適法の対象となる取引先かどうかも順番に影響します。
対象取引では受領・検査の記録と支払期日の規律が法令で決まっているため、照合の仕組みが整っていないことの影響が支払や記録に及びます。
EDIのようにデータで受け渡す方法を考える場合は、効果は1社だけでは得られないという点を踏まえ4、対応できる取引先がまとまって見込めるかも合わせて見ます。

照合項目と保存ルールの統一

取引先に何かを頼む前に、社内でそろえられることがあります。
一つは照合項目です。
数量、単価(未定かどうかを含む)、受領日、検査完了日と結果、請求金額、適格請求書の記載事項の有無を、全取引先で共通の照合表に決めます。
取引先の様式が違っても、担当者はこの表に沿って見比べるため、取引先ごとに確認の手順を覚え直す必要がなくなります。

もう一つは保存ルールです。
保存場所、ファイル名の付け方(取引先名、取引年月日、発注番号など)、紙で受け取るものと電子で受け取るものの分け方を決めます。
紙と電子の分け方は、前の節で見た電帳法の区分に対応させておくと、受け渡し方法を変えたときにもルールを作り直さずに済みます。

社内がそろってから、取引先に頼むことを絞ります。
たとえば、納品書と請求書に自社の発注番号を記載してもらえれば、届いた書類を発注データに結び付ける作業が楽になります。
そのうえで、対応できる取引先から順に、メールの送付先の統一やデータでの受け渡しへ寄せていきます。
対応できない取引先は無理に方法を変えず、照合項目と保存ルールだけを共通にしておけば、方法の違いが社内の手順の違いに広がりにくくなります。

変更後の確かめ方

変更の効果は、優先順位づけのときに残した記録と比べて確かめます。
見る数値は、食い違いの件数、修正や問い合わせにかかった時間、請求書が届いてから照合が終わるまでの日数などです。
取引先ごとに変更前と変更後を並べれば、どの変更が照合のどの作業を減らしたのかを判断できます。

Business meeting with professionals reviewing documents in an indoor office setting.
▽ 写真の出典元

数値が思ったように変わらないときは、どの項目の食い違いが残っているかで原因を読み分けます。
受け渡し方法をデータに変えても単価の差が減らないなら、原因は受け渡し方法ではなく、単価を確定させて発注データに反映する手順の側にあると考えられます。
受領日の差が残るなら、受領の記録を付けるタイミングや、取引先との受領日の定義を見直します。
原因を確かめてから次の取引先へ範囲を広げることで、最初の取引先で見つかった手順の不備を、他の取引先に持ち込まずに済みます。

取引先ごとの対応状況と自社の照合項目を同時に見なければ、どの取引先から受け渡し方法を変えるかは決めにくいためです。

取引先の一覧と現在の書類の流れをもとに、照合項目のそろえ方と、データで受け渡す取引先の候補を整理できます。無料相談で要件を整理する

要点の整理

軸 基準
書類の整理 名称ではなく、流れの段階と何の確認の根拠になるかで仕分ける
照合の順序 発注内容→受領記録→検査記録→請求の順に、根拠が確定した順で突き合わせる
支払期日(取適法の対象取引) 受領日から数える。検査の長期化や請求書の遅れでは動かない
単価未定のEDI発注(同) 実際の単価でない旨の0円表記、未定の理由と決定予定日、決定後の補充明示
受け渡し方法 取引先の対応可否と処理量で選び、方法が違っても照合項目と保存先はそろえる
保存 電子で授受したデータは電帳法の電子取引。取適法の記録とインボイスの保存は目的を分けて管理する
進め方 処理量と食い違い件数で取引先を並べ、変更の前後を記録で比べる
Business professional reviewing documents at a workspace with laptop and notebook.
▽ 写真の出典元

受け渡し方法の変更や電子化は、照合の手順と保存のルールを同時に変えるため、変更後の運用を先に描いておく必要があるためです。 変更後の発注・受領・請求のデータの流れと、保存先や前後比較の確かめ方をどう組むかを相談できます。

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よくある質問

納品書だけで請求書の代わりにできますか(インボイスの記載事項を満たす場合)

適格請求書の記載事項(売り手の名称と登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとの合計額と適用税率、税率ごとの消費税額、買い手の名称)が記載されていれば、納品書でも適格請求書になり得ます6。
その場合、買い手は仕入税額控除のためにその納品書を保存し、売り手は写しを保存します6。
社内では、その取引先の納品書を数量確認の書類と税の保存書類の両方として扱えるよう、保存先を決めておきます。
記載事項が欠けている納品書は請求書の代わりにならないため、取引先ごとにどちらの形かを一覧にしておくと迷いません。

検収に時間がかかる場合、支払期日はいつから数えますか

取適法の対象取引では、原則として納品された時点が受領日で、支払期日は受領日から60日以内でできる限り短く定めます1。
検査期間が60日を超える場合でも、支払期日は受領後60日以内に定めます2。
事前の合意による例外の扱いもQ&Aにあるため、当てはまりそうな場合は個別に確かめます2。
対象外の取引では契約の定めによるため、受領の定義と支払期日の起算日を取引基本契約で明確にしておくと、検収待ちによる日付の食い違いを話し合いにせずに済みます。

単価が決まっていない状態で発注データを送ってよいですか

取適法の対象取引でEDIによって発注する場合、実際の単価でないことを明示した「0円」表記が可能です2。
その際は、未定である理由と決定予定日を示し、単価が決まった後に補充して明示する必要があります2。
社内では単価未定の発注を一覧で管理し、確定した単価を発注データに反映してから請求書と照合すると、未定による差と誤りを分けて見られます。
対象外の取引でも、未定の表記方法と確定の期限を取引先と決めておくと同じ考え方が使えます。

取引先がEDIや電子データに対応していない場合はどう進めますか

EDIは1社だけでは効果が得られないため、取引先の状況を考えて導入の要否を判断するよう勧められています4。
対応できない取引先は紙やFAXのまま残し、その代わりに照合項目と保存ルールを社内で共通にしておきます。
納品書や請求書に自社の発注番号を記載してもらうなど、方法を変えずに頼める範囲から始めると、取引先の負担を増やさずに照合の手間を減らせる余地があります。
紙で受け取った書類をスキャンして電子で残す場合は、電帳法のスキャナ保存の区分で要件を確かめます5。

FAXやメールで受け取った注文書はどう保存すればよいですか

メールに添付されたPDFのように、取引書類に通常記載される事項を含む電子データで受け取った場合は、電帳法の電子取引の保存規定が適用されます5。
紙で受け取ったFAXは紙の書類として保存し、スキャンして電子で残すならスキャナ保存の区分になります5。
FAXを紙に印刷せずデータとして受け取る運用の場合は、電子データの授受として考えることになります。
具体的な保存要件は区分ごとに国税庁の案内で確かめ、受け取り方ごとに保存先を分けておくと扱いがぶれません。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

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  1. 1 出典:公正取引委員会「委託事業者の義務(取適法)」(2026年)
  2. 2 出典:公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」(2026年)
  3. 3 出典:公正取引委員会「取適法(中小受託取引適正化法)」(2026年)
  4. 4 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「中小企業共通EDIの紹介記事」(2018年)
  5. 5 出典:国税庁「電子帳簿保存法特設サイト」(2026年閲覧)
  6. 6 出典:国税庁「適格請求書等保存方式(インボイス制度)の概要」(2026年閲覧)

画像の出典元

  1. Business meeting with professionals reviewing documents in an indoor office setting./Photo by Mikhail Nilov on Pexels
  2. Business professional reviewing documents at a workspace with laptop and notebook./Photo by Tima Miroshnichenko on Pexels

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◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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