◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 「伝票」は取引の段階ごとの書類に分け、注文と納品、納品と請求の二組で突き合わせると、誤りの出どころを絞れる。
- インボイスとして出された請求書の誤りは、発行した売手が修正した書類を交付するのが原則で、受け取った側が書き換えて済ませない。
- 取引先へ連絡する前に、自社の注文・入荷・取引条件の記録に当たり、どちらの書類が誤りかを切り分ける。
- メール添付のPDFなどデータで受け取った書類は、印刷してもデータの保存が必要で、法人は原則7年間保存する。
- 見直しは、すでに電子で受け取っている取引先の保存の整備から始め、件数や食い違いの多い取引先へ広げる。
目次

取引先の伝票が合わないとき、どの書類とどの書類を突き合わせるのか
月末に届いた請求書の金額が、手元にある納品書の合計と合わない。
どちらを基準に会計へ入力すればよいのか、取引先に何を頼めばよいのか、迷う場面です。
こうしたときは「伝票」をひとまとめにせず、注文・納品・請求という取引の段階ごとの書類に分けて見ると、誤りの出どころを絞れます。
突き合わせるのは、注文と納品、納品と請求の二組です。
請求書の誤りは、発行した売手に修正した書類を出し直してもらうのが原則です。
また、PDFで受け取った書類は、印刷するだけでなくデータのまま保存しておく必要があります。
「伝票」と呼ばれる書類を取引の段階に当てはめる
社内で「伝票」と呼んでいるものは、一つの書類の名前ではありません。
注文書、納品書、請求書、受領書や検収書など、取引の途中で行き来する書類をまとめた呼び方として使われがちです。
そのため「伝票が合わない」と言っても、どの書類とどの書類が合わないのかを言い分けないと、取引先に問い合わせても話がかみ合いません。
そこで、書類を取引の段階に置き直します。
ここでは、自社が買手として仕入れる場面を例にします。
- 注文の段階:自社が取引先に注文書(または発注データ)を出し、取引先が注文請書を返す取引もある。
- 納品の段階:取引先が品物と一緒に納品書を出し、自社が受領書や検収書を返す取引もある。
- 請求の段階:取引先が請求書を出し、月末などで締めて複数回の納品をまとめて請求することもある。
国税庁の保存期間の解説でも、取引で作成したり受け取ったりする書類の例として、注文書・契約書・領収書などが挙げられています1。
ただし、どの呼び名の書類をどの段階に置くかは、突合のためにここで整理したもので、法令が定めた区分ではありません。
業界や取引先によって、同じ役割の書類を「納品明細」「出荷案内」と呼んだり、注文請書や検収書を省いて段階が少なかったりします。
自社で受け取っている書類を一枚ずつ、「誰が出したか」「どの段階のものか」で当てはめてみると、呼び名が違っても役割で比べられるようになります。
注文と納品、納品と請求の突合
段階に置き直すと、突き合わせる組み合わせが決まります。
基本は、注文と納品、納品と請求の二組です。
注文と納品の突合で確かめるのは、頼んだものが頼んだ数だけ届いたかです。
品目、数量、納期を、自社の注文書の控えや発注データと、届いた納品書・実際の入荷数で照らします。
納品と請求の突合で確かめるのは、届いたものに対して正しく請求されているかです。
数量に加えて、単価、金額、税率や税額を、納品書と請求書の明細で照らします。
注文書と請求書をいきなり比べると、食い違いの理由が見えにくくなります。
たとえば、ある部品を100個注文し、取引先が60個と40個の2回に分けて納品したとします。
月末締めの請求書には100個がまとめて載ってくるので、注文書とだけ比べれば一致して見えます。
ところが、2回目の40個がまだ届いていないのに請求されていた場合、注文書との比較では気づけません。
納品書と請求書を照らしてはじめて、届いていない分への請求だと分かります。
逆の場面もあります。
請求書の合計が手元の納品書の合計より多いとき、取引先の請求誤りとは限りません。
納品書を社内で紛失していた、締め日の前に届いた納品の書類が別の部署に回っていた、といった自社側の理由も考えられます。
差額の大きさから原因を当てにいくより、請求書の明細を一行ずつ納品書に当て、対応する納品書がない行を探すほうが、誤りの出どころを確かに絞れます。
検収書を出す取引の場合
検収書は、届いた品物を買手が検査し、受け入れたことを売手に伝える書類です。
検収書を出す取引では、納品と請求の間にもう一つ段階が入ります。
品物が届いても、検査で不良が見つかって一部を返品すれば、受け入れた数量は納品書の数量より少なくなります。
このとき、請求書と突き合わせる相手は、取引先と何を基準に請求すると決めているかで変わります。
受け入れた数量で請求する約束なら、照らす相手は納品書ではなく検収書です。
納品書の数量で請求する約束なら、請求書と納品書が一致していても、返品した分がどこで差し引かれるのかを取り決めに沿って確かめる必要があります。
検収書を出さない取引では、自社の入荷記録がその役目を担います。
受け取った数量を誰も記録していないと、納品書の数量をそのまま正しいとみなすしかなくなります。
検収書の有無にかかわらず、受け入れた数を自社側で残しておくことが、突合の土台になります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 注文書
- 納品書と照らす:品目・数量・納期
- 納品書
- 注文書と照らす:頼んだ数が届いたか
- 請求書と照らす:数量・単価・金額・税率や税額
- 検収書(出す取引のみ)
- 受け入れた数量で請求する約束なら、請求書と照らす
- 請求書
- 分けて納品された分をまとめた請求は、注文書だけでは見抜けない
内容が食い違ったとき、誰がどの書類をどう直すのか
修正した書類の交付義務は売手にある
突合で、請求書のどの行が合わないかが分かったとします。
次に迷うのは、誰がどの書類を直すかです。
手元の請求書に正しい金額を書き込み、そのまま会計に入力したくなるかもしれません。
しかし、受け取った側が書き込んでも、売手の手元に残る請求書の内容は変わらず、両社の記録は食い違ったままです。
インボイス制度のもとでは、この点に決まりがあります。
国税庁のインボイス制度に関するQ&Aによると、適格請求書発行事業者(インボイスを発行できる登録を受けた事業者)は、交付した適格請求書に誤りがあった場合、取引先である課税事業者に対して、修正した書類を交付しなければなりません。
請求書がインボイスとして出されているなら、買手がすることは、誤りの箇所と根拠を売手に伝え、修正した請求書を出してもらうことです。
この決まりが当てはまるのは、適格請求書発行事業者が課税事業者に交付したインボイスです。
免税事業者から受け取る請求書や、納品書の数量違いそのものは、このルールの対象ではありません。
それでも、書類を出した側に直してもらう進め方は、両社の記録をそろえるうえでどの書類にも使えます。
納品書の誤りなら納品書を、請求書の誤りなら請求書を、それぞれ出した側に出し直してもらうと決めておけば、社内の扱いを統一しやすくなります。
修正版を受け取ったら、誤りがあった元の書類と取り違えないようにしておきます。
どれが修正版かを書類名やファイル名で分かるようにし、修正を依頼したやり取りと一緒に残しておくと、後から金額の経緯をたどるときに迷いません。
元の書類をどう扱うかは、税理士などと相談して社内で決めておくと安心です。
買手が仕入明細書で直す例外
売手に出し直してもらう以外の方法もあります。
同じQ&Aでは、買手が修正した内容を記載した仕入明細書などを作成し、売手の確認を受ける方法も示されています。
仕入明細書は、買手が自分で仕入れの内容をまとめて作る書類です。
この方法は、もともと自社が仕入明細書を作って取引先に確認してもらう運用をしている場合に向きます。
売手からの修正版を待たずに済む一方で、記載する内容や確認の受け方には決まりがあるため、使うかどうかは顧問の税理士や取引先と相談して決めるのが現実的です。
普段その運用がない取引先に、食い違いのときだけ仕入明細書で対応すると、どちらの書類を正とするかで新たな行き違いが生じかねません。
食い違いの原因を切り分ける順序
誰が直すかの前に、どちらの書類が誤っているのかを決める必要があります。
請求書が合わないからといって、請求書が誤りとは限りません。
自社の注文入力が誤っていて、取引先は正しく出荷し正しく請求していた、ということもありえます。
そこで、取引先に連絡する前に自社の記録に当たり、次の順で切り分けることを提案します。
- 食い違った項目を特定する:品目、数量、単価、税率・税額のどれが合わないのかを、明細の行で示せるようにする。
- 数量が合わないとき:自社の注文記録と入荷・検収の記録に当たり、分納、返品、締め日をまたいだ納品がないかを見る。
- 単価が合わないとき:見積書や取引条件の取り決めに当たり、価格改定や数量による単価の違いが反映されているかを見る。
- 税率や税額が合わないとき:品目ごとの税率の区分と、端数の扱いが自社の計算と同じかを見る。
- 誤りの側が決まったら:取引先の書類の誤りなら発行元に修正を依頼し、自社の記録の誤りなら社内で訂正する。
この順にするのは、取引先への問い合わせを一度で済ませやすくするためです。
「請求書が合わない」とだけ伝えると、取引先も自社の記録を一から調べ直すことになり、回答を待つ間に月次の締めが進んでしまいます。
「○月○日納品分の明細3行目、納品書では48個、請求書では50個」と行と根拠を示せば、相手が確かめる範囲は一箇所に絞られます。
自社側の誤りだった場合も、問い合わせる前に気づけます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 食い違った項目を特定する
- 品目・数量・単価・税率や税額のどれかを、明細の行で示す
- 項目に応じて自社の記録に当たる
- 数量:注文記録と入荷・検収の記録(分納・返品・締め日をまたぐ納品)
- 単価:見積書や取引条件(価格改定・数量による単価の違い)
- 税率・税額:品目ごとの税率の区分と端数の扱い
- 誤りの側を決めて直す
- 取引先の書類の誤り:発行元に修正を依頼する
- 自社の記録の誤り:社内で訂正する
紙・FAX・PDF・EDIで、照合の手間と保存の扱いはどう変わるのか
受け渡し方法の比較表
ここまでの突合と訂正は、書類がどんな形で届いても必要な作業です。
ただ、紙で届くのか、FAXか、メールに添付されたPDFか、EDIのデータかによって、照合の前にかかる手間と、受け取った後の保存の扱いが変わります。
EDIは、企業間で受発注や請求の情報を、あらかじめ決めた形式のデータでやり取りする仕組みです。
表の中で判断を誤りやすいのは、メール添付のPDFです。
画面で見れば紙の請求書と同じ見た目なので、印刷して紙と一緒に綴じれば済むように感じます。
しかし国税庁は、取引先とデータで請求書などをやり取りした場合も保存の対象であり、紙に印刷すること自体は認められるものの、PDFなどで受け取ったデータもルールに基づいて保存する必要があると説明しています2。
見た目は紙に近くても、保存の扱いはEDIと同じ側に入ります。
一方、手入力の手間で見ると、PDFは紙とあまり変わりません。
担当者が画面の数字を読み取り、会計や基幹のシステムに打ち込む作業は残ります。
EDIで受け取ったデータは、自社のシステムがその形式を取り込めるなら、数字を打ち直す転記が減ります。
ただし、データが届くことと、自社のシステムがそれを読み込めることは別です。
取り込みに対応していなければ、EDIの画面を見ながら手で入力することになり、手間は紙やPDFと同じところに戻ります。
FAXは、紙に出力して受け取っている限り、紙の書類と同じように扱えます。
複合機などで紙に出さずデータのまま受け取る運用にしている場合は、紙と同じとは限らないため、扱いを税理士などに確かめておくと安心です。
また、FAXは文字がかすれやすく、「8」と「6」、「1」と「7」のような読み違いが、突合で見つかる食い違いの原因になることもあります。
EDIの標準(流通BMS・中小企業共通EDI)
EDIで転記が減るとしても、取引先ごとにデータの形式が違えば、自社は取引先の数だけ別々の形式に対応しなければなりません。
この負担を減らすために、業界や対象を決めた共通の標準が作られています。
消費財の流通業界には、流通BMSという標準があります。
流通BMSは、この業界で唯一の標準となることを目標に策定された、電子取引文書(メッセージ)と通信の方式・セキュリティに関するEDIの標準仕様です4。
卸売業とメーカーで導入している企業は、2025年時点の推計で21,600社以上とされています4。
この数は消費財流通の卸・メーカーを対象にした推計であり、業界を問わずEDIがどれだけ使われているかを示すものではありません。
中小企業の受発注を対象にしたものとしては、中小企業庁が公開した中小企業共通EDIがあります。
取引先ごとにばらばらだったEDIのデータ形式を、国際標準に準拠した形で共通にするもので、初版は2018年に公開されました3。
どの標準を使えるかは、自社の都合よりも、取引先がどの業界に属し、すでにどの方式で取引しているかで決まります。
消費財を扱う小売や卸との取引が中心なら流通BMSが候補になり、業種をまたぐ中小企業との受発注なら中小企業共通EDIが検討の対象になる、という分かれ方です。
自社から新しい方式を持ちかける前に、主要な取引先がいま何を使っているかを聞いておくと、検討の範囲が絞れます。
取引先に求める対応
受け渡し方法を変えると、取引先にも作業が生じます。
紙のままなら取引先に新しく頼むことはありません。
PDFに切り替えるなら、送り先のメールアドレスを一つに決めて伝え、件名やファイル名に取引先名や請求月を入れてもらうといった依頼が考えられます。
EDIに切り替えるなら、取引先側も同じ標準や方式に対応している必要があり、システムの準備や取り決めが要ります。
相手の負担が大きい依頼ほど、すぐには進みません。
このため、方法の良し悪しを比べるより、取引先ごとに「いまの方法」と「無理なく変えられる方法」を並べて見るほうが、着手の順序を決める材料になります。
そして、電子で受け取る取引先が一社でも増えれば、そのデータを保存する仕組みが必要になります。
| 受け渡し方法 | 手入力の要否 | 取引先に求める対応 | 保存の扱い |
|---|---|---|---|
| 紙(郵送・手渡し) | 必要(目視で読み取って入力) | 特になし | 紙の書類として保存 |
| FAX(紙に出力して受け取る) | 必要(かすれによる読み違いに注意) | 送信先の番号の統一程度 | 紙に出力したものは紙として保存。データのまま受信する運用は扱いを確認 |
| メール添付のPDF | 必要(画面から読み取って入力) | 送信先アドレスの統一 | 印刷は可だがデータの保存も必要 |
| EDI | 自社システムが取り込めれば転記が減る | 同じ標準・方式への対応 | データでやり取りした書類として保存の対象 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 流通BMS
- 消費財の流通業界の標準仕様(電子取引文書と通信の方式・セキュリティ)
- 卸売業とメーカーの導入は2025年時点の推計で21,600社以上(卸・メーカーが対象の数で、EDI全体の普及度ではない)
- 中小企業共通EDI
- 中小企業の受発注が対象
- データ形式を国際標準に準拠して共通化、初版は2018年に公開
- どちらを検討するか
- 取引先の業界と、すでに使っている方式で決まる
- 新しい方式を持ちかける前に、主要な取引先がいま何を使っているか聞く
受け取ったPDFや請求データは、どう保存し会計・基幹へ入力すればよいのか
電子で受け取った書類の保存
メールに添付されたPDFの請求書、取引先のウェブサービスからダウンロードした請求書、EDIで届いた請求データは、いずれも取引先とデータでやり取りした書類です。
こうした書類は、受け取ったデータそのものをルールに基づいて保存する必要があります2。
印刷して紙で綴じること自体は差し支えありませんが、紙だけを残してデータを消してしまうと、データの保存という求めを満たせません。
保存の仕方には細かな決まりがあり、国税庁は電子帳簿保存法に関するQ&Aなどで説明しています。
自社の保存方法がそれに沿っているかは、使っている会計ソフトや保存の仕組みの設定とあわせて、税理士などと確かめながら決めるのが確実です。
見落としやすいのは、受け取ったデータが担当者個人のメールボックスに置かれたままになっている状態です。
受信メールの中に請求書が残っていても、担当者の異動や退職でアカウントが整理されれば、データごと失われるおそれがあります。
受け取った時点で会社として決めた保存場所へ移すことが、後の手順すべての前提になります。
猶予の条件と注意点
保存のルールに沿った仕組みがすぐに整わない会社のために、猶予の扱いがあります。
国税庁の説明では、2024年以後に行う電子取引について、ルールに従って保存できなかったことに相当の理由があると税務署長が認め、データのダウンロードの求めと、データを印刷した書面の提示・提出の求めに応じられる場合は、データを保存しておくだけでよいとされています2。
この扱いに事前の申請は要りません2。
ただし、相当の理由があるかを判断するのは税務署長であり、自社で当てはまると決められるものではありません。
ここで読み違えやすいのは、猶予が「データを保存しなくてよい」という意味ではない点です。
猶予で緩むのは保存の仕方の決まりであり、データそのものは保存しておく前提です。
さらに、求めがあったときに該当するデータを取り出して見せ、印刷した書面も出せる状態にしておく必要があります。
受け取ったPDFが複数の担当者のパソコンに散らばっていると、求められた請求書を探し出すだけで手間取ります。
猶予を使う場合でも、保存場所と探し方を決めておく必要は残ります。
保存期間
受け取った伝票をいつまで残すかも、保存場所を選ぶうえで決めておく必要があります。
法人の場合、帳簿書類は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から原則7年間保存します1。
欠損金が生じた事業年度などは10年間です1。
7年という長さは、受け取りの仕組みを選ぶときの条件になります。
今年受け取ったPDFを、数年後に担当者が替わっても、システムを入れ替えても開ける場所に置けるかどうかです。
取引先のウェブサービス上でしか見られない請求書は、そのサービスで閲覧できる期間が保存期間より短い場合に備えて、受け取った時点で自社の保存場所へダウンロードしておくほうが安全です。
二重入力と紛失を防ぐ受領ルールの案
保存の決まりを満たすことと並んで、現場で困るのは、同じ請求書を二度入力したり、届いたはずの書類が見つからなかったりすることです。
同じ請求書がメールでも郵送でも届き、別々の担当者がそれぞれ入力してしまう、といった行き違いは、受け取る経路が複数あると起きやすくなります。
次のような受領のルールを、社内の運用として決めておくことを提案します。
- 受け取り窓口を一つにする:請求書を送ってもらうメールアドレスを部署共有の一つにまとめ、取引先にもそのアドレスを伝える。
- 受け取った日に保存する:受信したPDFは、その日のうちに取引先ごとのフォルダへ移す。
- ファイル名をそろえる:取引日、取引先名、金額を決まった順で入れ、修正版には「修正」と付ける。
- 受領一覧に状態を残す:取引先、日付、金額、対応する注文番号と、「突合済み」「入力済み」の状態を一行ずつ記録する。
- 入力は保存済みのファイルから一度だけ行う:会計や基幹への入力は、保存場所のファイルと受領一覧を見て行い、受信メールから直接入力しない。
このルールで減るのは、主に「この請求書はもう入力したか」を確かめ直す手間です。
受領一覧に「入力済み」と残っていれば、郵送で同じ請求書が届いたときに、取引先と金額で一覧を引けば二重かどうかがすぐ分かります。
対応する注文番号を一覧に書いておけば、突合のときも、請求書から注文記録をたどる手順が短くなります。
ただし、ファイル名や一覧の付け方は、探しやすさと突合のための社内の工夫であり、それだけで法令の保存の要件を満たすと示すものではありません。
また、一覧への記録を担当者が忘れれば、二重入力は防げません。
記録漏れに気づけるよう、月次の締めの前に受領一覧と会計の入力件数を照らす確認を一つ加えておくと、漏れが月をまたいで残りにくくなります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 猶予で緩むもの
- ルールに従った保存の仕方の決まり
- 事前の申請は要らない
- 猶予でも残るもの
- データそのものを保存しておく
- 求めに応じてデータをダウンロードでき、印刷した書面も提示・提出できる
- 保存場所と探し方を決めておく
- 猶予が使えるかの判断
- 相当の理由があるかを判断するのは税務署長
- 自社で当てはまると決められるものではない
取引先の数と件数に応じて、まず何から変えるか
取引先を3つに分けて洗い出す
突合の組み合わせ、訂正の進め方、受け渡し方法の違い、保存の条件が分かったら、次は自社の取引先にどう当てはめるかです。
すべての取引先を一度に変えようとすると、取引先ごとの事情に振り回されて進みません。
まず取引先ごとに、月あたりの伝票の件数、いまの受け渡し方法、食い違いや問い合わせの多さを一覧にします。
そのうえで、取引先を次の3つに分けます。
- すでにPDFやデータで送ってくる取引先
- 紙やFAXで送ってくるが、PDFやEDIに変えられそうな取引先
- 当面は紙やFAXのままになりそうな取引先
どの取引先が「変えられそう」かは、相手に聞いてみないと分からない部分があります。
請求書をすでに他社へPDFで送っている取引先なら、送り先に自社を加えてもらうだけで済むかもしれません。
判断がつかない取引先はいったん2つ目に入れておき、問い合わせの結果で振り分け直せば足ります。
切り替えやすい取引先から始める
最初に手を付けるのは、1つ目の、すでに電子で受け取っている取引先です。
これらの書類は、いまの時点でデータとして保存する必要があるものなので、受け取り窓口、保存場所、受領一覧を先に整えます。
保存の仕組みがないまま電子で受け取る取引先を増やすと、行き場の決まっていないデータが増えるだけになります。
次に、2つ目の取引先のうち、伝票の件数が多い相手、または食い違いが多い相手から切り替えを打診します。
件数が多い相手ほど、紙の綴じ込みや受け取った書類の仕分けにかかる作業がまとまって減ります。
食い違いが多い相手とは、受け渡し方法と同時に、どの書類を基準に突合するか、誤りがあったら誰が出し直すかを話し合う機会にもなります。
主要な取引先がすでに流通BMSなどのEDIを使っているなら、その方式に合わせることが候補になります。
どこから始めるかに決まった答えはなく、ここで示した順は一つの考え方です。
ただ、保存の整備を先にし、件数の多い相手から変える順にしておけば、切り替えた分だけ、受け取った後の作業が同じルールに乗ります。
紙・FAXが残る相手への対応
3つ目の取引先は、無理に変えようとしなくてかまいません。
日本公庫総研が2018年に中小の商業・サービス業を対象に行った調査では、「電子文書での商取引や受発注情報管理」を導入している割合は18.5%と、2割を下回っていました3。
現在の割合を示す数字ではありませんが、紙やFAXでのやり取りを続ける取引先が残ることは、前提として受け止めておくほうが現実的です。
紙やFAXの取引先では、受け取った後の手順を整えることで、転記と照合の手間を減らします。
役立つのは、自社の注文の記録を先に持っておくことです。
注文した時点で品目・数量・単価を自社のシステムや一覧に入れておけば、届いた納品書は、数字を一から打ち込む対象ではなく、注文の記録と違うところがないかを照らす対象になります。
違いがなければ確認の印を付けるだけで済み、違いがあれば先に述べた切り分けの順序に入ります。

紙の書類は、受け取った日付と突合済みかどうかが分かるように印を付け、取引先ごとに綴じておくと、後で探すときの手掛かりになります。
紙で受け取った書類をスキャンしてデータで保存し、原本を処分したい場合は、データで受け取った書類とは別の決まりが関わります。
原本を処分する前に、その要件を税理士などに確かめてください。
取引先ごとに書類の種類や受け渡し方法が違うと、どの組み合わせで突合し、どこから手順を変えるかを社内だけで決めにくいためです。
いまの取引先と書類の流れを伺いながら、突合の基準と受領のルールを自社にどう当てはめるかを整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 突合の組み合わせ | 注文と納品、納品と請求の二組。検収書を出す取引では、請求の基準に応じて検収書と請求書を照らす |
| 食い違いの切り分け | 取引先へ連絡する前に、自社の注文・入荷・取引条件の記録に当たる |
| インボイスの誤り | 発行した売手が修正した書類を交付する。買手が仕入明細書などで直し、売手の確認を受ける方法もある |
| データで受け取った書類 | 印刷してもデータの保存が必要。猶予の扱いでもデータ自体は保存する |
| 保存期間(法人) | 確定申告書の提出期限の翌日から原則7年。欠損金が生じた事業年度などは10年 |
| 着手の順 | 電子で受け取っている取引先の保存の整備から始め、件数や食い違いの多い取引先へ広げる |

電子で受け取る取引先が増えるほど、保存と入力の手順を早めに決めておく必要が高まるためです。 取引先の一覧をもとに、どの相手から受け渡し方法を見直すかの順序を一緒に確かめられます。
よくある質問
注文書と納品書の数量が違うとき、請求書は直してもらうべきか、納品書を直してもらうべきか
まず、実際に届いた数量を自社の入荷記録で確かめます。
納品書の数量が実際に届いた数と違うなら、直してもらうのは納品書です。
納品書が実際の数どおりで注文書と違うだけなら、分納や過不足の納品なので、残りを待つのか、余った分を返品するのかを取引先と決めます。
そのうえで、請求書が確定した数量と違っていれば、請求書を出し直してもらいます。
請求書がインボイスとして出されている場合、修正した書類を交付するのは売手の側です。
取引先が紙やFAXのままのとき、自社だけで電子化できる範囲はどこまでか
自社の側で決められるのは、受け取った後の手順です。
注文の記録を先にデータで持ち、届いた紙の納品書や請求書をそれと照らす、受領一覧で突合や入力の状態を管理する、といった部分は取引先の協力なしに進められます。
一方、紙の書類をスキャンして原本を処分することには、データで受け取った書類とは別の決まりが関わります。
原本を処分する前に、要件を税理士などに確かめてください。
メールで受け取ったPDFの請求書を印刷して綴じていたが、問題はないか
印刷して綴じること自体は認められていますが、それだけでは足りません。
PDFなどデータで受け取った書類は、データもルールに基づいて保存する必要があります2。
メールにPDFが残っているなら、会社として決めた保存場所へ移しておきます。
ルールに沿って保存できなかった相当の理由があると税務署長が認め、ダウンロードの求めと印刷した書面の提示・提出の求めに応じられる場合は、データを保存しておくだけでよいという扱いもあります2。
その場合でも、データ自体の保存は必要です。
検収書(受領書)は必ず必要か、出さない取引で何を突合の基準にするか
検収書を出すかどうかは取引先との取り決めによって分かれ、すべての取引で出しているわけではありません。
出さない取引では、自社で記録した入荷の数量が、納品書や請求書と突き合わせる基準になります。
受け取った数を誰も記録していないと、納品書の数量を正しいものとみなすしかなくなるため、受け入れた数量を自社側で残しておくことが大切です。
EDIに切り替えたいが、取引先が対応しないときはどうするか
EDIは取引先側も同じ標準や方式に対応する必要があるため、自社の希望だけでは切り替えられません。
EDIが難しい相手には、PDFをメールで送ってもらう方法を打診するのも一つの手です。
それも難しければ紙やFAXのまま受け取り、自社の注文記録と照らす手順を整えます。
主要な取引先がすでに流通BMSや中小企業共通EDIなど特定の方式を使っているかを先に聞いておくと、自社がどの方式に合わせるかを決めやすくなります。
- 1 出典:国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」(2025年)
- 2 出典:国税庁「【国税庁の取組紹介】電子帳簿保存」(2025年)
- 3 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(2020年)
- 4 出典:流通システム標準普及推進協議会(GS1 Japan/流通システム開発センター)「流通BMS(第28回 卸・メーカーの流通BMS導入企業数推計)」(2025年)
画像の出典元
- Close-up of a businesswoman holding and reviewing documents in an office setting./Photo by cottonbro studio on Pexels
- Close-up of a business meeting with documents and digital tablet on a wooden desk./Photo by cottonbro studio on Pexels