◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 伝票の電子化は電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引データ保存の3区分で要件が変わり、電子取引のデータは2024年1月から電子のまま保存する扱いです。
- 検索の要件は取引年月日・取引金額・取引先の3項目で、基準期間の売上高5,000万円以下なら不要になる場合があります。
- 紙を読み取って保存する場合は、解像度200dpi以上と、受領からおおむね7営業日以内の入力が原則です。
- 移行は伝票の棚卸し・対象範囲の決定・運用ルールの整備・並行稼働の4段階で進め、取引先の調整は別の軸で並行させます。
目次

伝票の電子化とは何を指すのか
伝票の電子化への移行とは、注文書・納品書・請求書などの取引の記録を、紙の授受から電子データの授受と保存へ移し、基幹システムが扱える項目として引き継ぐ取り組みです。紙をPDFに変えるだけの対応と、項目を持つデータとして連携する対応では、到達点が大きく異なります。制度の側でも保存の方法は3つの区分に整理されており、どの区分に当てはまるかで守るべき要件が変わります*1。まず自社の伝票がどの区分に入るかを見極めることが出発点になります。
紙をスキャンしてPDFにする対応は、見た目を電子の形で残す方法です。ファイルの保管場所は片づきますが、金額や品番は画像のままで、会計システムへは流れていきません。担当者は画面を見ながら数字を打ち直し、転記の手間と打ち間違いはそのまま残ります。項目を持つデータとして受け取れば、取引先コード・品番・数量・単価がそのまま基幹システムへ入ります。同じ電子化という言葉でも、この2つは業務の負荷がまったく違います。
制度の上では、伝票の電子的な保存は3つの区分に分かれています*1。会計ソフトなどで最初から電子的に作った帳簿・書類をそのまま保存する区分、紙で受け取った書類を読み取って画像で保存する区分、電子的にやり取りしたデータを電子のまま保存する区分です。このうち電子取引のデータについては、2024年1月から電子のまま保存する扱いに一本化されました。紙に出力して保存する運用は、原則として認められません。自社の受け取り方が紙なのか電子なのかで、適用される区分が決まります。
伝票は1枚で完結せず、取引の進行に沿って連なります。発注の内容が出荷の指示になり、出荷の実績が検収の対象となり、検収の結果が請求の根拠になります。最後は入金消込まで届いて、ようやく1件の取引が閉じます。電子化の検討では、どの1枚を電子にするかではなく、この連なりのどこが切れているかを見る必要があります。切れ目に紙が挟まると、その前後で人手の突き合わせが発生します。
切れ目は、取引先ごとに違う形で現れます。発注は電子でも、納品書だけが紙で届く取引先があります。請求書は電子で届くのに、支払通知が紙で戻る場合もあります。伝票の種類と取引先の組み合わせで一覧を作ると、どこに紙が残っているかが見えてきます。この一覧が、後の工程で優先順位を決める土台になります。
到達点は3段階で考えると整理しやすくなります。第一に紙の授受をやめる段階、第二に電子ファイルを制度に沿って保存する段階、第三にデータを基幹システムへつなぐ段階です。第一段階で止まると、保管の手間は減っても入力の負荷が残ります。第三段階まで届くと、転記そのものが業務から消えます。どこまで目指すかを最初に決めておくと、途中の判断がぶれません。
移行の着手順に並べた5つの確認事項(順位根拠:後工程が前工程の結果に依存する着手順序)
- 保存義務のある伝票の洗い出しから始めます。国税関係書類は原則7年、欠損金の繰越控除がある事業年度では10年の保存が求められます。
- 受け取り方の区分けを済ませます。電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引データ保存のどの区分に当たるかで、守るべき要件が変わります。
- 検索項目の設計を先に固めます。取引年月日・取引金額・取引先の3項目を、ファイル名で持つのか台帳の列で持つのかを決めます。
- 真実性を担保する方法を決めます。タイムスタンプ、訂正削除の履歴が残るシステム、事務処理規程の運用のいずれかを選びます。
- 並行稼働の判定基準を設定します。紙と電子の正本を1つに決め、本稼働へ移す条件を文書にしてから切り替えを始めます。
電子化への移行が求められる背景
移行が求められる理由は、社内の効率だけではありません。取引データの受け渡し方が業界ごとに標準化され、請求から決済までを同じデータでつなぐ仕組みが公開されています24*5。紙とFAXだけが残る取引は標準の外側に取り残され、そこへ人手が集中します。制度と実務の両面から、電子で受け取る前提の業務設計が現実的な選択になりつつあります。切り替えの時期を先送りするほど、紙の側に残る作業の比重が重くなっていきます。
取引メッセージの標準は、以前から業界単位で整備されてきました。流通業界向けの標準では、発注・出荷・受領・請求といった取引の各段階に対応するメッセージが定義され、項目の並びと意味が共通化されています*4。共通化されていれば、取引先が増えても受け取り方は同じままです。個別に取り決めを重ねる方式と比べ、接続を追加するときの負担が小さくなります。
請求の側では、国内向けのデジタルインボイスの標準仕様が公開されています2。売り手と買い手が、それぞれの利用するサービスを介して4者の間でデータを受け渡す方式です。相手ごとにファイル形式を合わせる作業が減り、消費税の扱いも同じ仕様の中で表現できます。適格請求書として求められる記載事項は6項目あり、これをデータの項目として持たせる形になります1。
請求の次の段階である決済にも、データをつなぐ仕組みがあります。従来の振込電文では、支払の内容を伝える欄が20桁に限られ、請求書番号を十分に載せられませんでした*5。この制約を緩めた仕組みでは、支払と請求の対応関係をデータとして送れます。入金消込の突き合わせが、通帳と請求書の目視照合から、データどうしの照合へ移ります。
社内側の負荷は、突き合わせの回数に比例して増えます。注文書・納品書・請求書の3点を人の目で照合し、差異があれば取引先へ問い合わせ、回答を待って再照合します。1件あたりの時間は短くても、月末に件数が集中すると残業の山になります。差異の原因が転記の打ち間違いであれば、その手間は本来なくせるものです。
国内のデジタル化の状況は、公的な白書や民間の継続調査で毎年整理されています36。自社の位置づけを測るときは、こうした継続的な調査を基準にすると判断しやすくなります。取引先が電子に移るほど、紙のまま残る側に人手が集中します。切り替えの時期を自社の都合だけで決めにくいのが、この分野の難しさです。
移行しない場合の費用は、目に見えにくい形で積み上がります。紙の保管場所、印刷と郵送の実費、問い合わせ対応の時間、担当者が抜けたときの引き継ぎです。これらは1件ずつでは小さく、決算の数字にも独立した項目としては現れません。現状のやり方を続ける費用を一度書き出すと、移行の費用と比べる土台ができます。
自社の商流に合わせた要件整理を進めたい場合は、無料相談で要件を整理するのが近道です。
移行の対象になる伝票と保存のルール
移行の対象になるのは、税法上の保存義務がかかる伝票です。注文書・契約書・納品書・請求書・領収書といった国税関係書類は、原則として7年間の保存が求められ、欠損金の繰越控除がある事業年度では10年間に延びます*1。電子で保存する場合は、内容が後から書き換えられていないことと、必要なときに読める状態であることの2つを満たす必要があります。この2つを、要件の言葉では真実性の確保と可視性の確保と呼びます。
対象の見極めは、書類の名前ではなく役割で判断します。取引の成立や履行を示す記録であれば、社内の様式であっても保存の対象に入ります。見積書のように、後の請求内容の根拠になる書類も同じ扱いです。社内の連絡メモや作業指示は、税務上の保存義務とは別の枠で管理できます。
真実性の確保は、記録が後から差し替えられていないことを示す仕組みです*1。方法は一つではなく、タイムスタンプを付す、訂正や削除の履歴が残るシステムを使う、訂正削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用する、といった選択肢があります。システムを入れ替えない場合は、規程を整備して運用で担保する道もあります。どの方法を選ぶかで、必要な費用と社内の手間が変わります。
可視性の確保は、求められたときにすぐ読める状態のことです。画面と書面の両方へ速やかに出力でき、システムの操作説明書が備え付けてあることが前提になります*1。加えて、検索できる状態にしておく必要があります。検索の項目は取引年月日・取引金額・取引先の3項目です。日付や金額は範囲を指定して探せること、2つ以上の項目を組み合わせて探せることが求められます。
検索の要件には緩和の定めもあります。基準期間の売上高が5,000万円以下である場合は、税務職員のダウンロードの求めに応じられれば検索の要件は不要になります*1。日付や取引先ごとに整理した出力書面を提示できる場合も同様です。さらに、相当の理由があると認められる事業者には猶予の措置が置かれています。適用の条件は改正のたびに動くため、参照する版が最新であるかを確かめてください。
紙で受け取った伝票を画像で保存する場合は、読み取りの品質にも定めがあります。解像度は200dpi以上、色は赤・緑・青それぞれ256階調以上が原則で、一般書類と呼ばれる区分ではグレースケールでも認められます*1。入力の期限は、受け取ってからおおむね7営業日以内です。業務処理サイクルを設ける場合は、最長2か月とおおむね7営業日以内が上限になります。読み取り後の原本の扱いも、社内の規程で決めておく必要があります。
電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引データ保存の3区分は、対象になる伝票も主な要件も異なります。同じ請求書でも、紙で受け取れば読み取りの品質と入力期限が問われ、データで受け取れば真実性と検索の要件が問われます。取引先ごとに受け取り方が違えば、1つの伝票種別が2つの区分にまたがることもあります。区分と伝票種別の対応を一覧にしておくと、運用の設計で迷いません。
| 区分 | 対象になる伝票 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 電子帳簿等保存 | 最初から電子で作成した帳簿・書類 | 訂正削除の履歴と検索の項目を備えること |
| スキャナ保存 | 紙で受け取った請求書・領収書など | 解像度200dpi以上と入力期限を守ること |
| 電子取引データ保存 | データでやり取りした注文書・請求書 | 真実性の確保と検索の3項目を満たすこと |
電子化への移行を進める手順
移行は、伝票の棚卸しから始めて、対象範囲の決定、運用ルールの整備、並行稼働という4つの段階で進めると無理がありません。最初にすべてを電子にしようとすると、取引先の対応待ちで全体が止まります。件数の多い伝票から順に切り替え、紙が残る取引は後続の段階へ回す進め方が現実的です。各段階で何を決めたかを記録しておくと、税務調査や社内監査の場面で説明しやすくなります。
最初の段階は伝票の棚卸しです。帳票の一覧化から着手し、伝票の名称・発生する部門・月あたりの件数・保存の担当を1つの表にまとめます。次に授受経路の確認として、取引先ごとに紙・FAX・メール・データのどれで受け取っているかを記録します。ここで漏れた伝票は、後の工程でも漏れたままになります。時間はかかりますが、この一覧が移行の設計図になります。
次の段階は対象範囲の決定です。件数の把握を先に済ませ、月あたりの発生件数が多い伝票と、担当者の手戻りが目立つ伝票を並べます。そのうえで優先順位の設定に移り、自社だけで完結する伝票を先に、取引先の合意が要る伝票を後に置きます。受け取り側の変更で済む範囲から着手すると、初期の停滞を避けられます。
三つめの段階は運用ルールの整備です。保存方法の選定では、真実性の確保をシステムで担保するのか、事務処理規程で担保するのかを決めます。あわせて検索項目の設計として、取引年月日・取引金額・取引先の3項目をどのファイル名や台帳の列で持つかを具体化します*1。ファイル名の付け方を後から変えると、既に保存した分の付け直しが発生します。
最後の段階が並行稼働です。二重運用の点検では、紙と電子の両方が届く取引先について、どちらを正とするかを一覧で明示します。あらかじめ決めた期間を置いたら切り替えの判定に移り、件数と差異の発生状況を見て本稼働へ移します。判定の基準を先に決めておかないと、並行稼働が終わらないまま定着してしまいます。
4つの段階を通じて、決めたことを文書に残す作業が伴います。誰がいつ何を決めたかが残っていないと、担当者が替わった時点で運用が崩れます。規程・手順書・一覧表の3点を更新し続ける体制を、移行と同時に作ってください。移行の完了は、システムが動いた時点ではなく、運用が回り始めた時点です。

移行でつまずきやすい論点と対処
つまずきは、システムそのものよりも、紙と電子が混ざる期間の運用で起きます。同じ請求書が紙とデータの両方で届き、どちらを保存の正本とするかが決まっていないと、要件を満たさない側が残ります*1。既存の基幹システムとのコード不一致、承認と押印の見直しも、同じ時期に重なります。論点を先に洗い出しておけば、稼働後の手戻りを減らせます。
紙と電子が混在する期間は、取引先の対応速度によって長くなります。同じ取引先から、注文書はデータで、納品書は紙で届くことも珍しくありません。対処は、伝票の種別と取引先の組み合わせごとに正本を1つ決め、一覧に明記することです。紙で受け取った分は読み取って保存し、原本の廃棄時期も同じ一覧に書いておきます。判断を担当者の記憶に委ねると、引き継ぎの時点で崩れます。
要件を満たさないまま保存を続けると、後から取り返すのが難しくなります。7年分の保存が求められる伝票で、検索の3項目が欠けていれば、遡って台帳を作り直す作業が発生します*1。データの件数が多いほど、この作り直しは重くなります。稼働の前に少量の伝票で運用を確かめ、要件を満たしていることを確認してから件数を増やしてください。
基幹システムとの連携でつまずく典型は、コードの不一致です。取引先コード・品番・単位が自社と取引先で違えば、データを受け取っても自動では取り込めません。変換の対応表を用意し、どちらの側で変換するかを決める必要があります。対応表の更新を止めると、新しい品番が入るたびにエラーが出ます。連携の設計では、この維持の担当まで決めてください。
承認と押印の見直しは、権限の設計と同時に進めます。紙の回覧では押印の順序が承認の記録を兼ねていましたが、電子では誰がどの金額まで承認できるかを設定として書き出す必要があります。上長の不在時の代理承認、金額区分ごとの経路、差し戻しの扱いも決めておきます。ここを曖昧にしたまま稼働すると、内部統制の説明が難しくなります。
内製で進める場合に求められる知識は、1人分では収まりません。税法上の保存要件、基幹システムのデータ項目、取引先とのデータ授受の方式、社内の承認経路の設計という4領域です。担当者が通常業務と兼務すると、要件の確認が後回しになりがちです。外部の支援を使う場合も、自社の伝票の実態を説明できる担当は社内に置いてください。
取引先を巻き込みながら移行する進め方
取引先が絡む移行は、自社の準備だけでは完了しません。対応状況の把握から始め、方式の選定、移行の案内、切り替え時期の調整という順で進めます。相手にシステム改修を求める方式か、相手の様式のまま自社で受け止める方式かで、必要な期間も費用も変わります。取引の力関係にかかわらず、相手の負担が小さい選択肢を用意しておくと、合意までが早くなります。案内の順序を決めずに動くと、断られた時点で全体が止まります。
最初に、取引先ごとの対応状況の把握を済ませます。既にデータでやり取りできる先、電子ファイルは送れるが様式が独自の先、紙とFAXのみの先の3つに分けると整理しやすくなります。調べ方は、営業担当への聞き取りと、受信している電子ファイルの実物確認の2つで足ります。件数の多い順に並べると、どこから当たれば効果が大きいかが見えます。全社の取引先を一度に調べる必要はありません。
次に方式の選定です。業界の標準仕様に沿わせる方式は、接続の追加が繰り返し使える形になります4。請求の領域では、国内向けのデジタルインボイスの仕様に合わせる選択肢もあります2。取引先の数が少なく様式も安定している場合は、個別対応のほうが早く動き出せます。標準と個別のどちらが有利かは、取引先の数と今後の増減の見込みで決まります。
移行の案内では、相手が判断できる情報をまとめて渡します。切り替える伝票の種別、必要なデータ項目、送付の方法、開始の希望時期、問い合わせ先の5点です。相手の社内でも稟議が要るため、口頭ではなく書面で残してください。紙を続けたい場合にどう受け止めるかも案内に書いておくと、断られて止まる事態を避けられます。
切り替え時期の調整では、月次の締めを避けるのが基本です。締め処理と重なると、差異が出たときに調査の時間が取れません。締めの直後から並行稼働を始め、1か月分の突き合わせが問題なく終わってから紙を止める進め方が安全です。相手の決算期や繁忙期も確かめておくと、断られる回数が減ります。
取引先との調整は、一度で終わりません。断られた先は記録に残し、相手の設備更新や担当交代の時期に合わせて再度案内します。年度をまたいで見れば、対応できる先は入れ替わります。一度の案内で決めきろうとせず、継続的な働きかけとして予定に組み込んでください。

電子化を定着させる運用と次の一手
稼働の後に決まるのは、定着するかどうかです。運用の担当と点検の周期を決め、効果を数えられる指標で測り、見直しの機会を予定に組み込みます。保存が求められる期間は原則7年に及ぶため、担当が替わっても同じ運用が続く形にしておく必要があります*1。伝票の電子化は到達点ではなく、受発注そのものをデータでつなぐための土台になります。
運用の担当は、伝票の種別ごとに決めます。点検は、保存の要件を満たしているかを確かめる作業で、検索の3項目が入っているか、ファイルが欠けていないかを見ます。決算の締めと同じ周期で点検すると、業務の予定に組み込みやすくなります。点検の結果は記録に残し、指摘が出た項目は次の周期で再確認します。
効果は、感覚ではなく数えられる形で測ります。転記の件数、差し戻しの件数、受領から支払までにかかる日数の3つは、社内の記録から集められます。移行の前に同じ指標を測っておかないと、後から比較できません。数値が動かない場合は、紙が残っている経路がどこかにあります。
見直しの周期は、制度の改正に合わせて考えます。電子帳簿保存法の要件は改正が重なっており、参照する版が古いままだと、旧要件を現行として運用してしまいます*1。改正の情報は所管官庁の特設サイトで公開されているため、点検の際に版を確かめる作業を組み込んでください。運用の記録が残っていれば、要件が変わった箇所だけを直せます。
保存の整備が済んだら、次は受発注そのものをデータでつなぐ段階です。業界の標準仕様に沿って発注と出荷のデータを受け渡し、請求はデジタルインボイスの仕様に合わせ、決済では支払と請求の対応関係を送ります24*5。3つがつながると、入金消込までが同じデータで追えるようになります。伝票の保存は、この土台の最初の一段です。
ここまでの工程を内製で進めるには、税法・システム・取引先調整の3領域を同時に見られる人員が要ります。兼務のまま進めると、要件の確認が後回しになり、稼働後に作り直しが発生します。外部の支援を使う判断は、難しいからではなく、作り直しの範囲を小さくするためのものです。自社の伝票の実態を説明できる担当を社内に置き、要件の確認と設計を外部と分担する形が現実的です。
移行の成否は、切り替えた伝票の枚数ではなく、人手の突き合わせがどれだけ消えたかで決まります。紙が1経路でも残れば、その経路のために担当者が待機します。すべてを一度に変える必要はありませんが、残す経路は意図して残してください。意図せず残った紙が、次の担当者の負担になります。
よくある質問
紙の原本は読み取った後に廃棄してよいですか
読み取りが保存の要件を満たし、社内の規程で廃棄の時期と確認者を定めていれば廃棄できます。要件の充足は保存の方法と運用によって変わるため、解像度200dpi以上と入力期限を満たしたことを確認してから廃棄の判断へ進んでください*1。確認の記録を残しておくと、後から説明できます。
取引先が紙のままでも、自社だけ電子化する意味はありますか
受け取り側の処理は自社の判断で電子に寄せられます。紙で届いた伝票を読み取って保存し、検索の3項目を付けておけば、探す時間と保管場所は減らせます。取引先が電子に移った時点で、受け皿が既にできている状態にもなります。先に社内側を整える順序が現実的です。
電子化にかかる費用はどのくらいかかりますか
金額は伝票の件数と選ぶ方式で変わるため、内訳で考えると比べやすくなります。読み取りの機器、保存の仕組み、取引先とのデータ授受、社内の規程整備と教育の4つが主な費目です。既存の会計システムに保存の機能が含まれる場合もあるため、追加が要る範囲を先に切り分けてください。
猶予措置があれば当面は紙のままでよいのですか
猶予は保存の要件の一部を緩める措置で、電子取引のデータを紙だけで保存してよいという意味ではありません。相当の理由があると認められることや、ダウンロードの求めと書面の提示に応じられることが前提になります*1。適用の条件は改正で動くため、最新の版で確認してください。
小さく始めるならどの伝票から手を付けるとよいですか
自社だけで完結し、件数の多い伝票から始めると効果が見えやすくなります。受け取る請求書や社内の経費関係は、相手の合意なしに保存の方法を変えられます。注文書のように取引先の対応が要る伝票は、社内の運用が固まってから案内する順序が安全です。
- *1 出典:国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト(電子取引データ保存・スキャナ保存・電子帳簿等保存)」(随時更新・確認日2026年9月) 経路
- *2 出典:デジタル庁「JP PINT(日本におけるデジタルインボイスの標準仕様)」(随時更新・確認日2026年9月) 経路
- *3 出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」(2025) 経路
- *4 出典:流通BMS協議会/GS1 Japan(一般財団法人流通システム開発センター)「流通ビジネスメッセージ標準(流通BMS)標準仕様」(随時更新・確認日2026年9月) 経路
- *5 出典:一般社団法人全国銀行資金決済ネットワーク「全銀EDIシステム(ZEDI)」(随時更新・確認日2026年9月) 経路
- *6 出典:一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)/株式会社アイ・ティ・アール「企業IT利活用動向調査2025」(2025) 経路
画像の出典元
- Professional discussing documents over a wooden table in an/Photo by Vanessa Garcia on Pexels
- Business professionals analyzing financial charts and graphs during a meeting./Photo by Adventure Studio on Pexels
- Business meeting with handshake and financial analysis displayed on a tablet./Photo by AlphaTradeZone on Pexels