◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 2024年1月以降、電子でやり取りした請求書などは印刷して保管するだけでは足りず、電子データのまま保存する必要がある
- 保存要件は真実性・可視性・検索の3つで、真実性は4つの措置のいずれか1つを選べばよく、事務処理規程が取りかかりやすい
- 基準期間の売上高5,000万円以下(2024年8月時点の財務省資料の基準)や出力書面の整理で免除されるのは検索の要件だけで、電子保存は引き続き必要
- 保存要件を満たさないと青色申告承認の取消しの対象になり得るが、直ちに必ず取り消されるわけではなく、重加算税の加重は隠蔽・仮装がある場合の扱い
- 着手は保存場所と運用ルールの決定から始め、事務処理規程、検索要件の免除の確認、契約・システムの確認へ進める
目次

取引先から電子で届いた請求書を印刷して保管している。それで足りるのか
取引先からメールで届いたPDFの請求書を印刷し、紙のファイルに綴じて保管している。
経理の現場で長く続いてきた運用ですが、電子取引でやり取りした取引情報は、2024年1月以降、印刷して保管するだけでは足りません1。
受け取ったデータを電子のまま保存し、真実性(改ざん防止の措置)・可視性・検索の3つの保存要件を満たす必要があります。
真実性は事務処理規程を備える方法が取りかかりやすく、売上高などの条件によっては検索要件が不要になります。
罰則として気になる青色申告の取消しも、違反すれば直ちに行われるものではありませんが、対象にはなり得ます。
2024年1月から印刷だけでは足りない
財務省の広報誌は、令和6年(2024年)1月に電子取引データ保存の義務化がスタートしたと説明しています1。
大阪府が国税庁の案内をもとにまとめた資料でも、電子的にやり取りした請求書・領収書等は、プリントアウトせず、一定の保存要件に従って電子データのまま保存することが必要とされたと整理されています2。
迷いやすいのは、「紙でも中身は同じなのに、なぜ印刷では駄目なのか」という点です。
制度が保存を求めているのは、取引先とやり取りした取引情報そのもの、つまり受け取ったデータです。
印刷した紙はそのデータから作った写しにあたるため、写しをどれだけ丁寧に保管しても、元のデータが要件に沿って残っていなければ、求められている保存にはなりません。
たとえば、経理担当者が請求書のPDFを印刷して承認印をもらい、元のメールは各自の受信箱に残ったまま、という状態を考えてみます。
データが消えたわけではありませんが、どこに何があるかは担当者の受信箱を開かないと分からず、書き換えを防ぐ手立ても決まっていません。
次の節で見る3つの要件は、この「どこかに残っているだけ」の状態を、後から確かめられる保存へ変えるためのものです。
対象になるのは誰か
対応が必要なのは、申告所得税・法人税に関して帳簿書類の保存義務が課されているすべての者です1。
会社の規模や業種で対象から外れる仕組みにはなっておらず、法人だけでなく、所得税の帳簿書類を保存している個人事業者も含まれます。
後で触れる売上高の基準は、検索の要件を軽くする条件であって、保存の義務そのものを免れる線ではありません。
大阪府の資料はNPO法人に向けた案内ですが、国税庁の説明を引いており、法人税法上の帳簿書類の保存義務がある法人に共通する考え方として読めます2。
取引の相手が大企業か個人商店かも関係しません。
自社が帳簿書類を保存する立場にあり、取引の情報を電子でやり取りしているなら、この制度の対象として準備を進めることになります。
メール・Web・EDIはどれも電子取引か
電子取引かどうかは、やり取りが紙を介したかどうかで考えると整理しやすくなります。
メールに添付されたPDFの請求書、取引先のWebシステムから取得した請求データ、EDI(企業間で受発注などのデータを決まった形式で交換する仕組み)で受け取った注文情報は、いずれも紙を介さず電子的にやり取りした取引情報です2。
国税庁の整理でも、メールの添付ファイル、EDI、クラウドでの授受を前提に保存の方法が示されています3。
受け取る側だけの話ではない点にも触れておきます。
資料は「やり取りした」「授受」という言葉で書かれており、自社が請求書をPDFにしてメールで送った場合も、その送ったデータが保存の対象として扱われます2。
どの書類のどの情報までが対象になるかという細かな範囲は国税庁の一問一答で個別に扱われているため、判断に迷う書類はそこで該当する問を探すのが確実です。
▼ 図の内容を文字で読む
- 受け取ったデータ
- 制度が保存を求める取引情報そのもの
- 3つの保存要件に沿って電子のまま残す
- 印刷した紙
- データから作った写しにあたる
電子のまま保存するときに満たす3つの要件:真実性・可視性・検索
真実性:4つの措置から1つ選ぶ
真実性とは、保存したデータが受け取った後に書き換えられていないことを示せる状態のことです。
国税庁は、そのための措置として次の4つを挙げ、いずれか1つを講じればよいとしています3。
- タイムスタンプが付いたデータを受け取る
- 受け取った後、速やかにタイムスタンプを付ける
- 訂正・削除の履歴が残る、または訂正・削除ができないシステムで授受・保存する
- 訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定め、備え付けて運用する
タイムスタンプは、ある時刻にそのデータが存在し、その後変更されていないことを外部の仕組みで証明する技術です。
確実な方法ですが、受け取る請求書のすべてに付ける運用を組むには、対応したサービスを使うことが前提になります。
これに対して事務処理規程は、社内ルールとして訂正・削除の手続きを定める方法で、財務省の広報誌も取り入れやすい方法として紹介し、国税庁のサイトにひな形があると案内しています1。
注意したいのは、規程は作って置いておくだけでは足りず、備え付けたうえで運用することまでが措置に含まれる点です3。
たとえば規程に「保存したデータの訂正・削除は責任者の承認を得て、その経緯を記録する」と書いたなら、実際に誰かが請求書データを差し替えるときに、その承認と記録が残っている必要があります。
規程の文言と現場の動きがずれていると、書類はあっても措置を講じているとは言いにくくなります。
可視性:表示機器と説明書類
可視性は、保存したデータを必要なときに見られる状態にしておく要件です。
具体的には、データを表示するディスプレイやプリンタ、保存に使うシステムの概要書などを備え付けることが求められます3。
パソコンとプリンタを日常的に使っている事務所なら、機器の面で新たに用意するものは少ないはずです。
見落としやすいのは説明書類のほうです。
クラウドサービスや会計ソフトに保存しているなら、そのサービスの操作説明や仕様の資料をすぐ示せるようにしておく、共有フォルダに保存しているならフォルダの構成と命名のルールを書面にしておく、といった形が考えられます。
税務調査などで「このデータはどこにあり、どう開くのか」と聞かれたときに、担当者が不在でも答えられる状態を目標にすると、何を備えればよいかが見えてきます。
検索:日付・金額・取引先
検索の要件は、保存したデータを取引年月日・取引金額・取引先の3項目で探せることです。
加えて、日付と金額は範囲を指定して検索でき、2つ以上の項目を組み合わせて検索できることも求められます3。
「3月中に、ある取引先から受け取った10万円以上の請求書」を探し出せる状態をイメージすると分かりやすいでしょう。
ただし、範囲指定と組み合わせ検索は、税務職員からデータのダウンロードを求められたときに応じられるようにしておけば不要になり得ます1。
その場合に残るのは、3項目それぞれで探せることです。
専用のシステムがなくても、ファイル名を「日付_取引先_金額」のようにそろえておけば、パソコンの検索機能で3項目を探せる状態に近づけられます。
この工夫で足りるかは保存の仕方全体で判断されるため、細目は国税庁の最新の資料と照らし合わせておくと安心です。
▼ 図の内容を文字で読む
- 真実性(4つの措置のうち1つ)
- タイムスタンプ付きで受け取る
- 受け取った後に速やかにタイムスタンプを付ける
- 訂正・削除の履歴が残る、またはできないシステムで授受・保存する
- 事務処理規程を備え付けて運用する
検索要件が不要になる条件と、保存が間に合わなかった場合の猶予
基準期間売上高5,000万円以下の場合
財務省の広報誌(2024年8月号)は、基準期間、つまり2課税年度前の売上高が5,000万円以下の保存義務者について、税務職員からのダウンロードの求めに応じられることを条件に、検索の要件を不要としています1。
判断に使うのは、いま記帳している年度の売上高ではなく、2課税年度前の売上高です。
今年度の売上が伸びていても基準期間の売上高が基準以下なら対象になり、反対に今年度の売上が落ちても、基準期間が基準を超えていればこの免除は使えません。
この金額は2024年8月時点の財務省資料に記載された基準です。
税制は改正されることがあるため、自社に当てはめる前に、その年度に適用される基準を国税庁の資料で確かめておく必要があります。
また、免除されるのは検索の要件だけで、データを電子のまま保存すること自体は変わりません。
「小さい会社だから印刷で構わない」とはならない点が、この基準で読み違えやすいところです。
ダウンロードの求めに応じるとは、税務調査などで職員から保存データの提示や提出を求められたときに、そのデータを渡せる状態にしておくことです。
保存場所が担当者個人のパソコンや受信箱に散らばっていると、求められてから集めるだけで時間がかかり、見つからないものも出てきます。
検索の要件が外れても、保存場所を1か所に決めておく意味はここにあります。
出力書面を整理して提示できる場合
もう一つの免除は、売上高に関係なく使えるものです。
電子データを印刷した書面を、日付と取引先ごとに整理して提示できるようにしておき、あわせてダウンロードの求めに応じられる場合も、検索の要件が不要になります1。
これまで印刷して保管してきた会社にとっては、その紙の綴りを活かせる道です。
ただ、ここでも電子データの保存は前提として残ります。
紙は検索の代わりになるだけで、データの代わりにはなりません。
今の綴じ方が請求書の到着順や担当者ごとになっているなら、日付と取引先で引けるように並べ直すことが、この免除を使うための作業になります。
相当の理由がある場合の猶予
システムの整備や社内ルールづくりが追いつかず、要件どおりの保存ができていない場合の扱いもあります。
保存要件に従って保存できなかったことに相当の理由があり、税務職員からのダウンロードの求めと、出力した書面の提示・提出の求めに応じられる場合には、猶予が認められます1。
この猶予に事前の申請は要りません1。
一方で、意図的に対応しない場合はこの猶予に含まれません1。
どのような事情が相当の理由に当たるかは個別に判断されるため、「猶予があるから当面このままでよい」と構えるより、間に合っていない部分を把握し、データそのものは消さずに残しておくことが先になります。
猶予の条件にもダウンロードへの対応が入っている以上、データを1か所に集めておく作業は、どの道を選んでも無駄になりません。
▼ 図の内容を文字で読む
- 電子のまま保存する
- 免除があっても、データを電子で保存すること自体は必要
- 基準期間(2課税年度前)の売上高が5,000万円以下か
- 以下:ダウンロードの求めに応じられれば検索要件は不要
- 出力書面を日付と取引先ごとに整理して提示できるか
メール添付・EDI・クラウドでの保存の組み立て方
メール添付
メールに添付されて届いた請求書は、添付ファイルをデータのまま保存します3。
受信箱に残しておくだけでもすぐには消えませんが、メールソフトの容量整理や担当者の異動で、意図せず消えたり探せなくなったりする余地が残ります。
添付ファイルを取り出し、決めておいた保存先へ移すところまでを、受け取った日の作業に組み込むと扱いやすくなります。
メールという受け取り方そのものに改ざんを防ぐ仕組みがあるわけではないため、真実性は事務処理規程で満たす形が組みやすいでしょう。
保存先の共有フォルダに日付・取引先・金額が分かるファイル名で置き、規程で訂正・削除の手順を定めれば、細目の確認は残るものの、3つの要件を一通り押さえる組み立てになります。
EDI・取引先システム
EDIや取引先が用意したシステムで受発注・請求のデータをやり取りしている場合、データはそのサービスの中に記録されています。
このとき、サービス提供者との契約で訂正・削除の防止が定められていれば、事務処理規程の代わりとして認められる場合があります3。
ただし、その契約は事前に締結されていることが前提です3。
確かめるのは、利用規約や契約書に訂正・削除の防止についての定めがあるかどうかです。
取引先に指定されて使っているシステムでは、自社が契約の当事者になっていないこともあり、その場合は契約による代替が自社に当てはまるかを個別に見る必要があります。
また、データが相手のシステムの中にしかないと、利用をやめたときや取引が終わったときに取り出せるかが問題になるため、自社の保存先へ取り込むかどうかも合わせて決めておくと安心です。
個々のシステムが要件に合うかの最終的な判断は、国税庁のQ&Aや税理士に照らして行うのが確実です。
クラウド保存
クラウドストレージやクラウド型の会計・経費サービスに保存する場合も、検索・表示ができる形で保存されていれば要件を満たし得ます3。
保存先が社内のサーバーか社外のクラウドかで、扱いが分かれるわけではありません。

ただ、クラウドに置いたことだけで真実性の措置を講じたことにはなりません。
訂正・削除の履歴が残るサービスであれば、その機能が4つの措置のうち履歴の残るシステムに当たるかを確かめ、当たらない場合や判断がつかない場合は事務処理規程を併せて備えるのが無理のない組み立てです。
共有の設定によっては誰でもファイルを上書きできる状態になっていることもあるため、保存先の権限の設定も規程の内容と合わせておきます。
| 方式 | 保存の仕方 | 真実性の確保の考え方 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| メール添付 | 添付ファイルをデータのまま決めた保存先へ移す | 事務処理規程で訂正・削除の手順を定める形が組みやすい | 受信箱に残すだけでは所在が担当者任せになる |
| EDI・取引先システム | サービス内の記録を保存として扱うか自社の保存先へ取り込む | 契約で訂正・削除の防止を定めていれば規程の代わりになる場合がある | 契約は事前の締結が前提。自社が契約の当事者かを確かめる |
| クラウド保存 | 検索・表示できる形で保存する | 履歴が残るシステムに当たるか、当たらなければ規程を備える | 置いただけでは真実性の措置にならない。権限設定を規程と合わせる |
保存しなかった場合に何が起きるか:青色申告の取消しと重加算税の加重
青色申告承認の取消し
災害などのやむを得ない事情がないのに、電子取引データが保存要件に従って保存されていない場合、青色申告の承認の取消しの対象となり得ます2。
青色申告は帳簿書類をきちんと備えることを前提に税務上の取扱いが認められる仕組みで、その前提となる保存が崩れていれば承認が問われる、というつながりです。
ただし、違反があれば直ちに必ず取り消されるわけではありません。
取消しは、事務運営指針に基づいて検討したうえで行われるものとされています2。
保存の一部に不備が見つかったことだけで自動的に承認を失うわけではない一方、不備を放置してよいという意味でもありません。
重加算税の10%加重と令和9年以降の除外
重加算税は、事実を隠したり仮装したりして申告していた場合に課される加算税です。
電子取引の取引情報に係るデータについては、隠蔽・仮装があった場合に、この重加算税を10%加重する措置が設けられています4。
令和7年度税制改正の大綱は、届出をしたうえで一定の要件を満たす特定電磁的記録を、この加重措置の対象から除くとしています4。
適用は、令和9年(2027年)1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税からです4。
押さえておきたいのは、加重の対象になるのは隠蔽・仮装があった場合だという点です。
保存の手順が整っていないことと、データを改ざんして事実を隠すことは別の問題で、前者がそのまま後者の扱いになるわけではありません。
除外を受けるために必要なシステムの具体的な条件は、大綱の記述だけでは判断できないため、この除外を目当てにシステムを選ぶなら、国税庁が示す要件を見てからにするのが順序です。
罰則という言葉をどう読むか
「電子取引の保存を怠ると罰則がある」と聞くと、罰金のような処分を思い浮かべるかもしれません。
ここまでの資料から確認できる不利益は、大きく2つに分かれます。
保存の不備に対しては青色申告承認の取消しの可能性があり、隠蔽・仮装があった場合には重加算税の加重がかかる、という形です。
2つを並べると、保存の不備だけで自動的に重い処分が決まる仕組みではないことが分かります。
取消しは個別の検討を経て行われ、加重は隠蔽・仮装という別の事情が前提です。
反対に、意図的に対応しないままにしていれば猶予の対象からも外れるため、「どうせすぐには処分されない」と放置する理由にもなりません。
追徴される税額や取消しに至る具体的な基準は事案ごとに異なり、一般的な金額で示せるものではありません。
また、電子帳簿保存法そのものに刑事罰があるかどうかや、会社法など他の法令で別の保存義務がかかるかどうかは、ここで扱った税務上の不利益とは別に確かめる必要がある事柄です。
心配な点があるときは、自社の状況を伝えたうえで税理士や所轄の税務署に相談すると、該当するかどうかを具体的に判断できます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 災害などの事情なく、保存要件に従って保存されていない
- 青色申告承認の取消しの対象となり得る
- 事務運営指針に基づき検討され、直ちに必ず取り消されるわけではない
- 相当の理由があり、ダウンロードと出力書面の求めに応じられる
- 猶予が認められる(事前の申請は不要)
自社の状況別に、まず何を決めるか
保存場所と運用ルール
ここからは、印刷保管を続けてきた会社が電子保存へ切り替えるときの、着手の順番の提案です。
順番に意味があるのは、後の作業ほど、先に決めたことを前提にしているためです。
最初に決めるのは、電子で受け取った取引データをどこに集めるかです。
共有フォルダでもクラウドサービスでも構いませんが、「この種類のデータはここ」と1か所に決まっていないと、規程に書く対象も、検索の方法も、ダウンロードの求めに応じる手順も定まりません。
あわせて、ファイル名の付け方とフォルダの分け方、受け取ってから保存するまでの担当と期限を決めます。
冒頭の例でいえば、経理担当者がPDFを印刷して承認印をもらう流れの中に、「印刷する前に、添付ファイルを決めた名前で保存先へ置く」という一手を挟む形です。
これで、各自の受信箱を一つずつ開いて探す作業がなくなり、担当者が休んでもデータの所在が分かります。
承認を紙で回す運用を続けるかどうかは、この段階で無理に変えなくても構いません。
事務処理規程
保存先が決まったら、真実性の措置として事務処理規程を備えます。
国税庁のサイトにあるひな形を起点にすれば、一から条文を考える必要はありません1。
書き換えが必要なのは、責任者や担当者の役職、訂正・削除を行うときの承認の流れ、保存先の名前など、自社の実際の運用に合わせる部分です。
規程を作るときは、前の手順で決めた保存場所と運用ルールを書き写すつもりで進めると、規程と現場の動きがずれにくくなります。
反対に、ひな形の文言を残したまま実際の承認者が決まっていないと、規程はあっても運用していない状態になりかねません。
検索要件の免除の確認
次に、検索の要件をどこまで整える必要があるかを判断します。
基準期間の売上高が5,000万円以下に当たるか(2024年8月時点の財務省資料の基準)、当たらない場合は印刷した書面を日付と取引先ごとに整理して提示できるか、を順に見ていきます1。
どちらかに当たり、ダウンロードの求めに応じられるなら、検索の仕組みに手をかける範囲を小さくできます。
どちらにも当たらない場合は、取引年月日・取引金額・取引先の3項目で検索できるようにし、ダウンロードの求めに応じられない場合は範囲指定と組み合わせ検索にも対応させることになります。
すでに使っている会計ソフトやクラウドサービスの検索機能でこれが足りるのか、ファイル名の工夫で補うのかが、ここでの判断の分かれ目です。
契約・システムの確認
最後に、EDIや取引先のシステム、クラウドサービスを使っている取引について、契約や利用規約を確かめます。
訂正・削除の防止が事前の契約に定められていれば事務処理規程の代わりになる場合があり、定めがなければ、その取引のデータも自社の規程の対象に含めておく必要があります3。
取引先のシステムからデータを取り出せるか、取り出したデータを最初に決めた保存先へ移すかも、ここで決めます。
この4つの作業は、どれも一度で完成させる必要はありません。
保存先を決めてデータを集め始めるだけでも、猶予やダウンロードへの対応に必要な土台はできます。
規程や検索の整備は、その土台の上に順に足していく形で進められます。
保存先や規程の組み方は、取引の方式と社内の承認の流れによって変わり、制度の説明を読むだけでは自社に当てはめにくいためです。
メール・EDI・クラウドなど自社の授受の方式ごとに、いまデータがどこにあり、真実性と検索の要件のどこが空いているかを整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 印刷保管だけで足りるか | 2024年1月以降は足りない。電子データのまま保存する |
| 真実性 | 4つの措置のいずれか1つ。事務処理規程が取りかかりやすい |
| 可視性 | ディスプレイ・プリンタ・システム概要書等を備える |
| 検索 | 取引年月日・取引金額・取引先。売上高基準や出力書面の整理で免除あり(電子保存は必要) |
| 猶予 | 相当の理由があり、ダウンロードと出力書面の求めに応じられる場合。事前申請不要 |
| 保存しない場合 | 青色申告承認の取消し対象になり得る(個別に検討)。隠蔽・仮装には重加算税の加重 |

検索要件の免除や猶予は条件の読み違いが起きやすく、着手の順番を誤ると保存先の決め直しなど作業が二重になりやすいためです。 基準期間の売上高や印刷書面の綴り方を前提に、どの免除が使えそうか、最初に決める保存場所と運用ルールは何かを確かめられます。
よくある質問
印刷した請求書とPDFの両方を保存しておけば、どちらかの要件を省けますか
紙があることで省けるのは、検索の要件に限られます。
印刷した書面を日付と取引先ごとに整理して提示でき、ダウンロードの求めに応じられる場合は、検索の要件が不要になります1。
電子データのまま保存すること、真実性の措置、表示できる機器や説明書類の備付けは、紙を持っていても省けません。
取引先が紙で発行し、こちらがPDFをメールで送っている場合、送る側にも保存義務がありますか
自社がPDFにしてメールで送ったデータは、電子的にやり取りした取引情報にあたり、送った側も保存の対象になります2。
確認した資料は受け取った場合に限らず「やり取りした」取引情報を対象としています。
元の書類が紙で発行されている場合に、どのデータをどの扱いで保存するかは書類の種類によって分かれ得るため、国税庁の一問一答で該当する問を確かめておくと確実です。
売上高5,000万円以下であれば、保存の要件はすべて不要になりますか
いいえ。
基準期間(2課税年度前)の売上高が5,000万円以下で不要になるのは検索の要件だけで、税務職員からのダウンロードの求めに応じられることが条件です1。
電子データのまま保存することや真実性の措置は引き続き必要です。
この金額は2024年8月時点の財務省資料に記載された基準のため、適用する年度の基準は国税庁の資料で確かめてください。
EDIやクラウドサービスを使っていれば、自社で別途保存しなくてよいですか
サービスの中にデータが保存され、検索・表示ができる形であれば、それを保存として扱える場合があります3。
ただし真実性の措置としては、事前に締結した契約で訂正・削除の防止が定められているか、履歴の残るシステムに当たるかといった確認が要ります3。
利用をやめた後や取引終了後にデータを取り出せない契約であれば、自社の保存先へ取り込んでおくほうが安全です。
事務処理規程は、どのような内容を定めておけばよいですか
目的は、保存した取引データを勝手に訂正・削除できない状態を社内のルールで作ることです。
国税庁のサイトにひな形があるため、それを起点に、責任者と担当者、訂正・削除が必要になったときの承認と記録の残し方、保存先などを自社の運用に合わせて書き換えます1。
規程は備え付けたうえで運用することまでが措置に含まれるため、書いた手順を実際に回せる内容にしておくことが大切です3。
- 1 出典:財務省「広報誌『ファイナンス』令和6年8月号 特集 電子帳簿等保存制度の内容と中小企業の対応策」(2024年)
- 2 出典:大阪府「電子取引データの保存について(NPO法人向けお知らせ)」
- 3 出典:国税庁「電子帳簿保存法 Ⅱ適用要件【基本的事項】」
- 4 出典:財務省「令和7年度税制改正の大綱(納税環境整備)」(令和7年度)