◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 電子取引のデータは、印刷した書面だけの保存が認められず、PDFやスクリーンショットなど電子データで残す必要がある
- 法人の保存期間は確定申告書の提出期限の翌日から原則7年で、欠損金額が生じた事業年度などは10年になる
- 保存の要件は真実性と可視性の2つで、真実性は改ざん・削除を防ぐ社内ルールで対応する方法が取りやすい
- メール受信箱・共有フォルダ・クラウド・EDIは、改ざん・削除の防止、検索、画面での確認の3点で点検できる
- 検索要件の免除や猶予措置があっても、データの保存とダウンロードの求めに応じられることが前提になる
目次

取引先からPDFやEDIで届いた請求書は、印刷して保管するだけで足りるのか
取引先からメールで届いたPDFの請求書を印刷して綴じれば済むのか、受信箱に置いたままで大丈夫なのか。
電子データで取引をする機会が増えるほど、保存を担当する人はこの点で迷います。
電子取引のデータは、印刷した紙だけを残す方法が認められず、電子データのまま保存する必要があります1。
義務化は2024年(令和6年)1月に始まりました1。
保存では、改ざんや削除を防ぐ措置(真実性)と、内容を確認して検索できる状態(可視性)を整えます。
メール受信箱や共有フォルダも、この要件を満たす運用なら使えます。
満たせない部分は、免除や猶予の条件に当たるかどうかで直す順序が変わります。
電子取引に当たるやり取り
取引先から、PDFの請求書を添付したメールが届く。
EDI(企業間で注文や請求のデータを決まった形式でやり取りする仕組み)の画面で、注文データを受け取る。
取引先のWebサービスにログインして、請求書のファイルをダウンロードする。
どの場合も紙の書類を手渡しされたわけではなく、取引の内容は電子データの形で自社に届いています。
電子帳簿保存法では、このように取引の情報を電子データで授受することを電子取引と呼び、そのデータの保存方法を定めています。
「授受」なので、受け取った側だけの話ではありません。
自社が見積書や請求書をPDFにしてメールで送った場合も、自社の手元に残す控えを同じ考え方で扱います。
どの書類ややり取りが対象に入るかの細かな線引きは、国税庁の電子帳簿等保存制度特設サイトにある制度別の手引きやQ&Aで確かめられます3。
印刷だけの保存が認められない理由
紙の書類で長く経理をしてきた会社では、届いたPDFを印刷して取引先別のファイルに綴じる運用が根付いていることがあります。
紙で綴じておけば、税務調査でもその紙を見せればよいと考えるのは自然です。
しかし電子取引のデータについては、プリントアウトした書面だけを保存する方法は認められず、電子データの保存が必要とされています1。
紙では足りない理由は、保存の要件が何に向けられているかを見ると分かりやすくなります。
後の節で説明するとおり、要件は「データが改ざん・削除されていないこと」と「データの内容を確認でき、探せること」の2つです1。
どちらも、受け取ったデータそのものに対する条件です。
印刷した紙は元のデータを写した別の物なので、紙をいくら丁寧に綴じても、データの側の条件を満たしたことにはなりません。
一方で、保存するファイルの形式には幅があります。
受け取ったPDFをそのまま残す方法のほか、Web画面で確認した請求内容をスクリーンショット画像で残す方法でもよいとされています1。
また、回覧や承認のために社内で紙に印刷すること自体が禁じられているわけではありません。
問題になるのは、紙「だけ」を残して元のデータを消してしまう運用です。
印刷した後に受信メールを削除する習慣がある場合は、そこを最初に見直すことになります。
義務化が始まった時期
電子取引データの保存は、2024年(令和6年)1月に義務化がスタートしました1。
対象は、所得税または法人税の帳簿書類の保存義務がある事業者です1。
それより前に紙への出力で保管する運用を始めた会社では、担当者が替わっても手順書が古いまま残っていることがあります。
運用を引き継いだ担当者が「前からこうしている」という手順に迷ったら、2024年1月以降に授受した分がデータで残っているかを最初に確かめると、見直す範囲がはっきりします。
なお、次の節で説明する保存期間は法人税法の考え方に基づきます。
個人事業主の保存期間や、税法以外の法令で定められた保存期間は、この記事では扱っていません。
| 残し方 | 扱い | 補足 |
|---|---|---|
| 印刷した書面だけを残す | 認められない | 電子データの保存が必要 |
| 受け取ったPDFをそのまま残す | 電子データの保存に当たる | 真実性と可視性の要件を整える |
| Web画面をスクリーンショット画像で残す | ファイル形式として認められる | 同じく真実性と可視性の要件を整える |
保存する期間は何年か:法人税法の7年と10年の考え方
原則7年の数え方
電子データのまま残すと決まったら、次に悩むのは「いつまで残すか」です。
法人税法では、帳簿書類の保存期間は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間が原則とされています2。
ここで間違えやすいのは、起算点が請求書を受け取った日ではないことです。
たとえば、ある事業年度の初めに受け取った請求書と、同じ事業年度の終わりに受け取った請求書は、受け取った日が1年近く離れていても、数え始めはどちらも「その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日」です。
そのため、受け取った日から見ると、実際にデータを残しておく期間は7年より長くなります。
受け取った日付ごとに1件ずつ期限を計算するより、事業年度ごとにまとめて管理するほうが、いつ消してよいかを判断しやすくなります。
国税庁のタックスアンサーでは、電子取引を行った場合の取引情報の電磁的記録の保存について、電子帳簿保存法のQ&A(一問一答)を参照するよう案内しています2。
保存期間は法人税法の帳簿書類の説明で、保存の方法は電子帳簿保存法の資料で、と確認先を分けておくと迷いにくくなります。
10年になる場合
青色申告書を提出した事業年度に欠損金額が生じた場合などは、保存期間が10年間になります2。
欠損金額とは、税務上の所得の計算がマイナスになった額のことです。
実務で気を付けたいのは、どの事業年度が10年になるかは、決算を終えるまで分からないことです。
請求書を受け取った時点では、その事業年度が欠損になるかは決まっていません。
クラウドストレージやメールに一定期間で自動削除する設定を入れる場合、7年で一律に消えるようにしておくと、10年の保存が必要な事業年度のデータまで消えるおそれがあります。
削除は事業年度ごとに、その年の保存期間を確かめてから行う手順にしておくと、取り違えを防ぎやすくなります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 印刷だけの保存
- 印刷した書面だけを残す方法は認められない
- 印刷後に受信メールを削除する習慣は最初に見直す
- 電子データで残す
- 受け取ったPDFをそのまま残す
- Web画面の請求内容をスクリーンショット画像で残す
- 社内での印刷
- 回覧や承認のために印刷すること自体は禁じられていない
- 元のデータは消さずに残す
真実性と可視性:データ保存に求められる要件を具体的に確認する
真実性の確保
保存する期間が分かったら、次は「どんな状態で残せばよいか」です。
電子取引データの保存に求められる要件は、真実性の確保と可視性の確保の2つです1。
真実性とは、保存したデータが後から不正に書き換えられたり削除されたりしていないと言える状態のことです。
これを満たす方法として4つの措置が用意されており、そのいずれかを採ればよいとされています1。
なかでも取りやすいとされているのが、不正な改ざんや削除を防ぐ社内ルールを定めて運用する方法です1。
4つの措置それぞれの内容や、社内ルールに盛り込む事項の詳細は、国税庁の特設サイトにある電子取引データ保存の手引きやQ&Aにまとまっています3。
社内ルールというと文書を作れば終わりに見えますが、要は「誰がどこに保存し、誰なら直したり消したりできるのか」「誤りに気付いたときにどう扱うのか」を決めて、そのとおりに運用することです。
たとえば、経理担当者が受け取った請求書を決まった共有フォルダに保存し、内容の訂正が必要になったら上長の承認を得てから行う、という流れを決めておくイメージです。
これは記事としての例示であり、ルールに記載すべき事項の公式な内容は先の手引きで確かめられます。
可視性の確保と検索
可視性は、保存したデータを必要なときに見られ、探し出せる状態にしておくことです。
具体的には、モニターや操作説明書などを備え付けてデータの内容を確認できる状態にしておくことと、検索の要件を満たすことが求められます1。
検索の要件は、最後の節で説明する免除に当たる場合を除いて必要です1。
「確認できる状態」と聞くと当たり前に思えますが、つまずく場面は意外と身近にあります。
前任者の個人のパソコンにだけ保存されていて、後任者がどこにあるか分からない。
パスワード付きのファイルで、パスワードを知っている人がいない。
契約していたクラウドサービスを解約して、過去のデータを開けなくなった。
どれも、データ自体は存在していても、求められたときに内容を表示できない状態です。
検索は、たくさんのデータの中から特定の取引のデータを後から取り出せるかどうかです。
税務調査や社内の確認で「この取引先との、この時期の請求書を見せてほしい」と言われたとき、受信箱を1件ずつさかのぼるしかないのでは時間がかかります。
どの項目で検索できるようにするかの細目は、電子帳簿保存法のQ&Aや手引きに示された内容に沿って確かめる必要があります3。
この記事では、取引の日付や取引先、金額といった、後から探すときの手掛かりになる情報で探せるかを、点検の目安として使います。
小規模な事業者が取りやすい運用
専用のシステムを入れる予算や人手がない会社にとって、社内ルールで真実性を確保する方法は、新しい仕組みを導入せずに始められる点で現実的な選択肢になり得ます1。
ただし、ルールは実態と合っていなければ機能しません。
規程には「削除は禁止」と書いてあるのに、受信箱は誰でも自由にメールを消せる設定のままで、実際に整理のつもりで消している。
この状態では、ルールで改ざんや削除を防いでいるとは言いにくくなります。
ルールを作るときは、今の保存場所で実際に誰が何をできるのかを先に洗い出し、その操作に合わせて決めると、書いたことと運用がずれにくくなります。
検索の要件は、売上高などの条件で免除される場合があります。
免除に当たるかを先に確かめてから手段を考えると、必要のない作業を抱え込まずに済みます。
▼ 図の内容を文字で読む
- その事業年度の確定申告書の提出期限
- 提出期限の翌日(数え始め)
- 翌日から7年間(原則)
▼ 図の内容を文字で読む
- 真実性の確保
- 4つの措置のいずれかを採る
- 改ざん・削除を防ぐ社内ルールを定める方法が取りやすい
- 可視性の確保(確認できる状態)
- モニターや操作説明書などを備え付ける
- データの内容を確認できる状態にしておく
- 可視性の確保(検索)
- 検索の要件を満たす
- 免除に当たる場合を除いて必要
メール受信箱・共有フォルダ・クラウド・EDIの保存は要件を満たせるか
3つの点検項目
ここまでの要件を、今使っている保存方法に当てはめてみます。
次の3つの問いで点検すると、保存方法が違っても同じ物差しで比べられます。
- 改ざん・削除を防ぐ措置があるか:社内ルールやシステムの機能で、データを勝手に直したり消したりできないようになっているか
- 日付・金額・取引先で探せるか:後から特定の取引のデータを取り出せるか
- 画面で確認できるか:必要なときに、誰が担当でも内容を表示できるか
1つ目が真実性、2つ目と3つ目が可視性に当たります。
この点検は要件を保存方法ごとに確かめるための提案で、特定の製品やサービスが要件を満たすかどうかを示すものではありません。
同じメールソフトやクラウドでも、設定と社内ルールの組み合わせによって結果が変わるからです。
保存方法ごとの満たす条件と不足しやすい場面
メール受信箱は、多くの会社で最初に請求書が届く場所です。
メールソフトには検索機能があるため、取引先名や件名で目当てのメールを探すことはできます。
一方で、受信箱は利用者が自由にメールを削除したり、フォルダを移したりできるのが普通です。
削除を防ぐルールや設定がないまま受信箱に置いているだけだと、真実性の面で不足する可能性があります。
また、添付されたPDFに書かれた金額や取引日で探せるかどうかは、メールの検索機能とは別の問題です。
担当者個人のアドレスで受け取っている場合は、その人が異動や退職をしたときに、後任が中身を見られるかも確かめておきたい点です。
共有フォルダは、メールから請求書のファイルを取り出して置き直す先として使われることが多い方法です。
ここでは、ファイル名とフォルダの付け方をどう決めているかで、探しやすさが大きく変わります。
たとえば「取引年月日_取引先_金額」のように並びを決めて保存していれば、ファイル名で並べ替えたり絞り込んだりできます。
ただし、名前の付け方を決めただけで検索の要件を満たしたことになるかは、Q&Aに示された条件と照らして判断する必要があります。
真実性の面では、誰でもファイルを上書き・削除できる権限設定になっていないか、ルールで何を決めているかが分かれ目です。
請求書の受け取りや保管にクラウドサービスを使っている場合は、サービスの機能と設定で結果が決まります。
変更や削除の履歴が残るか、誰がどの操作をできるかの権限を設定できるか、どの項目で検索できるかは、サービスごとの仕様を見なければ分かりません。
見落としやすいのは、解約したときの扱いです。
保存期間は原則7年、場合によっては10年に及ぶため、その間にサービスを乗り換えることは十分に考えられます。
解約後も過去のデータを取り出して自社で保存し続けられるかを契約の段階で確かめておくと、後から慌てずに済みます。
EDIでは、注文や請求のデータがシステムの中でやり取りされ、紙やPDFが作られないこともあります。
この場合、保存の対象はシステムの中に残っている取引データそのものです。
点検の焦点は、過去の取引データがいつまでシステムに残るのか、自社の担当者が画面で表示したりファイルとして出力したりできるのか、取引の日付や取引先で絞り込めるのか、です。
取引先が用意したEDIを使っている場合、データが取引先側のシステムにだけ残り、自社からは一定期間を過ぎると見られなくなることもあり得ます。
保存するのは自社なので、必要な期間データを手元に残せるかを確かめておく必要があります。
点検の結果、3つの問いのどれかで不足が見つかっても、すぐにすべてを作り直す必要があるとは限りません。
何から直すかは、検索の要件が免除されるかどうかで変わります。
| 保存方法 | 改ざん・削除の防止 | 日付・金額・取引先での検索 | 画面での確認 |
|---|---|---|---|
| メール受信箱 | 削除を防ぐルールや設定がないと不足しやすい | メールを探せても添付の中身の項目で探せるとは限らない | 担当者個人の受信箱だと後任が見られないことがある |
| 共有フォルダ | 編集・削除の権限とルールで決まる | ファイル名やフォルダの付け方の決まりで探しやすさが変わる | 置き場所が決まっていれば誰でも開きやすい |
| クラウドサービス | 履歴や権限の機能と設定で決まる | サービスの検索機能の仕様で決まる | 解約後もデータを取り出せるかを見る |
| EDI | 履歴の残り方とシステム上の権限で決まる | システムの検索機能の仕様で決まる | 過去のデータを自社で表示・出力できるかを見る |
要件を満たせていないときの直し方:検索要件の免除と猶予措置
検索要件が免除される条件
点検で検索の手段が足りないと分かったとき、最初に確かめたいのは免除の条件に当たるかどうかです。
財務省の広報誌によれば、検索の要件は次のいずれかに当たる場合に免除されます1。
- 基準期間の売上高が5,000万円以下である
- データを出力した書面を、取引年月日と取引先ごとに整理した状態で提示・提出できる
どちらの場合も、税務職員からデータのダウンロードを求められたときに応じられることが前提です1。
免除されるのは検索の機能を用意することであって、データそのものを残すことや、求められたときに渡せることまで不要になるわけではありません。
真実性の確保と、内容を確認できる状態の確保も、検索の免除とは別の要件として残ります。
2つ目の条件は、紙だけの保存が認められないことと矛盾するように見えるかもしれません。
ここでの書面は、データを残したうえで、探すための手段として出力し整理したものです。
元のデータを消して紙だけにしてよいという意味ではありません。
なお、この売上高の基準は、財務省の広報誌「ファイナンス」令和6年8月号の時点の内容です1。
その後の税制改正で基準が変わっているかどうかは、この記事では確認できていません。
自社が当てはまるかを判断するときは、基準期間がいつを指すかとあわせて、国税庁の電子帳簿等保存制度特設サイトにある最新の手引きやQ&Aで確かめるのが確実です3。
猶予措置の条件
免除に当たらず、検索の手段や真実性の措置もすぐには整えられない会社もあるでしょう。
その場合に関係するのが猶予措置です。
相当の理由があると税務署長が認める場合には、要件に沿わないままでもデータをそのまま保存できるとされています1。
事前の申請は不要です1。
ただし、猶予措置は「何もしなくてよい」という仕組みではありません。
この措置も、税務職員のダウンロードの求めと、出力した書面の提示・提出に応じられることが前提です1。
データ自体は残しておく必要があり、紙だけにしてデータを消してしまえば、この措置の前提から外れます。
また、特段の事情がないのに対応しない場合は対象外とされています1。
どのような事情が「相当の理由」に当たるかは税務署長が判断するもので、記事の側で当てはまると言い切ることはできません。
猶予措置を頼りにする場合でも、なぜ今は要件を満たせないのか、いつまでに何を整えるのかを社内で説明できるようにしておくと、対応を先送りしているだけの状態と区別しやすくなります。
直す順序の考え方
ここまでを踏まえると、直す順序は次のように考えると無理がありません。
これは制度が定めた順番ではなく、限られた人手で進めるための編集上の提案です。
- 電子データが消えない保存場所を決める
- 改ざん・削除を防ぐ社内ルールを決め、保存場所の権限や設定と合わせる
- 検索要件の免除に当たるかを確かめる
- 免除に当たらなければ、検索の手段を整える
最初に保存場所を固めるのは、消えてしまったデータは後から取り戻せないことがあるからです。
検索の手段は後から付け足せても、受信箱から削除した請求書や、解約したサービスに残したままのデータは戻ってこない場合があります。
次に真実性の措置を置くのは、検索の免除に当たる会社でも必要な要件だからです。
検索の手段を最後に回すのは、免除に当たればその作業が要らなくなり、当たらない場合でも、保存場所が決まっていればどこにどの機能を足せばよいかが見えやすくなるためです。
保存場所を決める段階では、メール受信箱、共有フォルダ、クラウド、EDIのどれを正式な保存先にするのかを、取引の経路ごとに一つに決めておくのが有効です。
同じ請求書が複数の場所に散らばり、どれが元のデータか分からなくなる事態を防ぎやすくなります。
保存先が一つに決まれば、社内ルールで決める操作も、点検する権限や設定も、その場所に絞って考えられます。
▼ 図の内容を文字で読む
- メール受信箱
- 削除を防ぐルールや設定がないと真実性で不足しやすい
- 添付PDFの金額や取引日で探せるとは限らない
- 個人のアドレスだと後任が見られないことがある
- 共有フォルダ
- 編集・削除の権限とルールで決まる
- ファイル名とフォルダの付け方で探しやすさが変わる
- クラウドサービス
- 履歴・権限・検索はサービスの仕様と設定で決まる
- 解約後も過去のデータを取り出せるかを見る
- EDI
- 過去の取引データがいつまでシステムに残るかを見る
- 自社で表示・出力でき、日付や取引先で絞り込めるかを見る
メール、共有フォルダ、クラウド、EDIをどう組み合わせて使っているかは会社ごとに違います。要件に照らした不足の場所は、実際の受け取り方と保存の流れを並べてみないと見えにくいものです。
取引の経路ごとに、データがどこに届き、どこに残り、誰が消せるのかを整理し、3つの点検項目のどこから手を付けるかを確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 保存の形 | 紙だけの保存は不可。PDFやスクリーンショットなど電子データで残す |
| 保存期間(法人) | 確定申告書の提出期限の翌日から原則7年。欠損金額が生じた事業年度などは10年 |
| 真実性 | 4つの措置のいずれか。社内ルールで改ざん・削除を防ぐ方法が取りやすい |
| 可視性 | 内容を確認できる状態と検索。検索は免除の条件に当たる場合を除き必要 |
| 検索の免除 | 基準期間の売上高5,000万円以下など(令和6年8月号時点)。ダウンロードの求めに応じることが前提 |
| 猶予措置 | 相当の理由を税務署長が認める場合。事前申請不要。データの保存とダウンロード等への対応が前提 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 免除される条件(いずれか)
- 基準期間の売上高が5,000万円以下
- 出力した書面を取引年月日と取引先ごとに整理して提示・提出できる
- 免除の前提
- 税務職員からデータのダウンロードを求められたときに応じられる
- 免除されても残る要件
- データそのものを残す
- 真実性の確保
- 内容を確認できる状態の確保
▼ 図の内容を文字で読む
- 電子データが消えない保存場所を決める
- 改ざん・削除を防ぐ社内ルールを決め、保存場所の権限や設定と合わせる
- 検索要件の免除に当たるかを確かめる
- 免除に当たらなければ、検索の手段を整える
免除や猶予に当たるか、どの保存先を正式にするかは、自社の売上高や取引の経路、使っているサービスの仕様によって判断が分かれます。 直す順序の考え方をもとに、保存場所の決め方や社内ルールで決めておく操作を、自社の運用に合わせて整理できます。
よくある質問
PDFをスクリーンショットで保存してもよいですか
保存するファイルの形式は、PDFのほかスクリーンショット画像でもよいとされています1。
受け取ったPDFが手元にあるならそのまま残すのが素直ですが、Web画面でしか請求内容を確認できない場合などは、画面のスクリーンショットで残す方法も取れます。
どちらの形式でも、改ざん・削除を防ぐ措置と、確認・検索できる状態の確保は同じように必要です。
取引先ごとのフォルダ分けとファイル名の付け方は、検索要件の代わりになりますか
取引先ごとのフォルダ分けや、日付・取引先・金額を並べたファイル名は、後からデータを探しやすくする工夫として役立ちます。
ただ、その方法だけで検索の要件を満たしたことになるかは、電子帳簿保存法のQ&Aや手引きに示された条件と照らして判断する必要があり、この記事では言い切れません3。
基準期間の売上高が5,000万円以下など検索要件の免除に当たる場合は、ダウンロードの求めに応じられることを前提に、検索の要件自体が免除されます1。
基準期間の売上高が5,000万円以下なら、真実性の措置も不要になりますか
売上高の基準で免除されるのは検索の要件です1。
真実性の確保は4つの措置のいずれかを採ることが求められる別の要件で、売上高による免除の対象として示されているのは検索の要件だけです1。
小規模な事業者でも、改ざん・削除を防ぐ社内ルールを定めるなど、真実性の措置は整えておく必要があります。
この基準は財務省広報誌(令和6年8月号)時点の内容なので、最新の基準は国税庁の特設サイトで確かめられます3。
自社が送った請求書の控えも電子データで保存する必要がありますか
電子取引は取引の情報を電子データで授受することを指すため、受け取った側だけでなく、送った側も自社の控えをデータで保存することになります。
請求書をPDFにしてメールで送った場合は、受け取った請求書と同じように保存場所とルールを決めて残しておきます。
送信済みメールに残っているだけの状態は、受信箱と同じく削除や担当者の交代で見られなくなるおそれがあるため、点検の対象に含めておくと安心です。
猶予措置を使えば、当面は何も対応しなくてよいですか
いいえ。
猶予措置は、相当の理由があると税務署長が認める場合に、要件に沿わないままデータを保存できるものです1。
ダウンロードの求めや、出力した書面の提示・提出に応じられることが前提で、特段の事情がないのに対応しない場合は対象外とされています1。
データそのものを残すことは変わらないため、紙だけにしてデータを消す運用は、この措置を使う場合でも前提から外れます。
- 1 出典:財務省「広報誌「ファイナンス」令和6年8月号 特集 電子帳簿等保存制度の内容と中小企業の対応策」(2024年)
- 2 出典:国税庁「タックスアンサー 帳簿書類等の保存期間(法人税)」(令和7年4月1日現在の法令等)
- 3 出典:国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」
画像の出典元
- Hands typing on a laptop in a minimalist workspace with coffee and file organizers./Photo by Cup of Couple on Pexels