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取引DXの月額費用の考え方|相場額より先に確認すべき条件と取引先の負担

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 取引DXの月額相場は公的資料に示されておらず、対象業務・取引件数・取引先数・利用者数をそろえて見積もりを比べる
  • 月額だけでなく、初期設定・既存システムとの連携・取引先対応・社内運用を含めた総負担で判断する
  • 受発注の電子化は1社だけでは効果が出ないため、取引先の費用と作業を見積もりの段階で確かめる
  • 電子取引類型は発注側が受注側にアカウントを無償発行するソフトが対象で、受注側が自社の月額を下げるための枠ではない
  • 共通EDI実証の削減率51.4%は実証の平均で月額の根拠にはならず、自社の転記と確認の時間を測って比べる

20代前半の日本人男性が書庫でのファイル探しをしている場面

取引DXの月額は「相場額」より「何が月額を動かすか」で見る

受発注や請求のやり取りを電子化したいのに、月額がいくらになるのか見当がつかず、社内の稟議にも取引先への相談にも進めない。
相場額を探しても、中小企業庁や支援機関の公開資料には、取引DXの月額の目安は示されていません。
見積もりの前にできるのは、月額を動かす条件を自社の数字でそろえ、初期設定や連携、取引先側の作業まで含めた総負担で比べることです。
受発注の電子化は1社だけでは効果が出ず1、補助金の電子取引類型も、発注側が取引先にアカウントを無償で渡す場合の枠です2。
自社が発注側か受注側かで、進め方が変わります。

一つの金額で月額を言い当てにくい理由

取引DXと一口に言っても、電子化したい業務は会社によって違います。
受発注だけを置き換えたい会社もあれば、請求書の発行や支払の管理、契約書のやり取りまでまとめて見直したい会社もあります。
業務の範囲が違えば、使う機能も、画面を触る人の数も、やり取りする相手の数も変わります。
「中小企業ならこのくらい」という一つの金額を探すより、自社の場合に月額を動かす数字を先に押さえるほうが、見積もりの判断に直結します。

月額は、自社の業務量と取引の形に応じて提供者が計算して出すものです。
見積もりを取る前に、どの数字が月額を動かしうるのかを自社の側でそろえておけば、複数の見積もりを同じ物差しで比べられます。
逆に、条件を決めないまま「月額いくらですか」と聞くと、提供者ごとに前提の違う金額が並びます。
そうなると、安く見える見積もりが本当に安いのか、それとも範囲が狭いだけなのかを判断できません。

費用を心配して手が止まるのは、珍しいことではありません。
東京商工会議所が2024年に行った調査では、デジタルシフト・DXの課題として「コスト負担」を挙げた企業が31.9%で、最も多い回答でした3。
この調査は主に東京23区内の中小企業を対象とし、回答は1,218社です3。
全国の傾向や取引DXに限った数字ではありませんが、費用の不安を抱えた担当者が少なくないことはうかがえます。

見積もり前にそろえる4つの条件

月額がどの数字に連動するかは、サービスによって違います。
そこで、どの数え方で見積もられても答えられるよう、次の4つを自社の数字で持っておくことを提案します。

  • 対象業務:受発注だけか、請求・支払・契約書まで含めるか
  • 取引件数:1か月に何件の注文や請求書をやり取りしているか
  • 取引先数:電子化の相手になる取引先が何社あるか
  • 利用者数:自社の中で画面を操作する人が何人いるか

最初に決めるのは対象業務です。
たとえば、取引先からFAXやメールで注文を受け、担当者が販売管理用のExcelへ打ち直している会社なら、困っているのは受注の転記です。
この会社が請求書や契約書まで一度に電子化しようとすると、見積もりの範囲が広がり、どの機能にいくらかかっているのかが見えにくくなります。
いま一番手間がかかっている業務から範囲を決めると、見積もりの比較もしやすくなります。

取引件数と取引先数は、似ているようで別の数字です。
月に300件の注文があっても、そのほとんどが3社からなのか、50社に散らばっているのかで、電子化の進め方は大きく変わります。
前者なら、主要な3社が応じてくれるだけで転記の大半がなくなります。
後者なら、電子化に応じてくれる取引先と、FAXのままの取引先が長く併存すると考えておく必要があります。
数えるときは、電子でやり取りできそうな取引先と、当面は難しそうな取引先を分けておくと、後で取引先へ相談するときにも役立ちます。

利用者数は、自社で画面を操作する人の数です。
注文を受ける担当者だけが使うのか、出荷や経理の担当者も同じ画面を見るのかで人数は変わります。
取引先が画面にログインして注文を入力する形のサービスでは、取引先側の利用者を数えるのかどうかも、見積もりで確かめておきたい点です。

条件 自社で数えるもの 見積もりで確かめること
対象業務 受発注・請求・支払・契約書のどれを電子化するか 選んだ業務以外の機能が月額に含まれていないか
取引件数 1か月あたりの注文書・請求書などの件数 件数が増えたときに月額が変わるか
取引先数 電子化の相手になる取引先の数と電子対応できそうな社数 取引先の数で月額が変わるか
利用者数 自社で画面を操作する人の数 取引先側の利用者を数えるかどうか

月額以外の負担を含めた「総負担」で比べる

初期設定・連携・運用の手間

4つの条件をそろえて見積もりを取ると、月額の数字は比べやすくなります。
ただ、取引DXの負担は月額だけでは終わりません。
電子化を始めるまでの準備、既存の仕組みとのつなぎ込み、始めた後の運用にも、費用か社内の手間のどちらかがかかります。
月額が安く見えても、ほかの負担が大きければ、全体では割高になることもあります。

始める前には、取引先の名前や連絡先、扱う商品や単価といった基本情報を新しい仕組みへ登録する作業があります。
この登録を提供者に頼むのか、自社で行うのかで、初期費用と社内の作業時間の配分が変わります。
見積もりに初期費用が載っていない場合でも、その分の作業が自社に残っていないかを見ておく必要があります。

見落としやすいのが、既存システムとの連携です。
先ほどの、FAXの注文をExcelへ打ち直している会社で考えてみます。
取引先から注文データが電子で届くようになっても、そのデータを販売管理や会計の仕組みへ自動で渡せなければ、担当者は画面に表示された注文を見ながら、販売管理へ入力し直すことになります。
FAXを読む手間は減っても、転記と、その転記が合っているかの確認は残ります。
連携のための設定や開発が別料金になるのか、月額に含まれるのかは、見積もりで分けて書いてもらうと比べやすくなります。

始めた後にも負担は続きます。
取引先から「ログインできない」「注文の入力方法が分からない」と問い合わせが来たとき、答えるのは提供者なのか、自社の担当者なのか。
電子化に応じていない取引先のFAXが残る間は、電子の注文とFAXの注文を両方処理する期間が生まれます。
こうした運用の負担は見積書には出てきませんが、担当者の時間として積み上がります。

費用以外のつまずき(人材・効果の評価)

前出の東京商工会議所の調査では、コスト負担のほかにも、「旗振り役がいない」「従業員がITを使いこなせない」「導入の効果が分からない」といった課題が挙がっています3。
これらは費用の項目ではありませんが、取引DXでは総負担の見積もり方と深く関わります。

旗振り役がいない状態とは、たとえば、導入を決めた経営者と、毎日注文を処理する担当者の間で、誰が取引先に説明し、誰が社内の手順を変えるのかが決まっていない状態です。
この役割が決まっていないと、取引先への案内や問い合わせ対応が後回しになり、FAXと電子の二重運用が長引きます。
見積もりの段階で、取引先向けの説明資料や問い合わせ窓口を提供者がどこまで用意するのかを聞いておくと、社内に残る仕事の量が見えてきます。

従業員がITに不慣れな場合、操作の説明会や手順書の整備にも時間がかかります。
提供者の研修やサポートが月額に含まれるのか、別料金なのかによって、総負担の見え方は変わります。

効果が分からないという課題には、導入前の数字で備えられます。
注文1件を受けてから販売管理に入力し終えるまでに何分かかっているか、月に何件の打ち直しがあるか、入力ミスの修正にどれだけ時間を使っているか。
こうした今の手間を記録しておけば、導入後に何が減り、何が残ったかを比べられます。
比べる相手がないまま月額だけを見ていると、高いか安いかの判断がつきません。

見積もり前に自社で数えておく数字(模式図)
対象業務、取引件数と取引先数、利用者数の三つに分けた、自社で数えるものの整理対象業務、取引件数と取引先数、利用者数の三つに分けた、自社で数えるものの整理対象業務受発注だけか、請求・支払・契約書まで含めるかいま一番手間がかかっている業務から範囲を決める取引件数と取引先数1か月にやり取りする注文や請求書の件数電子化の相手になる取引先の数電子でやり取りできそうな取引先と、当面難しそうな取引先利用者数自社で画面を操作する人の数取引先側の利用者を数えるかどうかを見積もりで確かめる

▼ 図の内容を文字で読む
  • 対象業務
    • 受発注だけか、請求・支払・契約書まで含めるか
    • いま一番手間がかかっている業務から範囲を決める
  • 取引件数と取引先数
    • 1か月にやり取りする注文や請求書の件数
    • 電子化の相手になる取引先の数
    • 電子でやり取りできそうな取引先と、当面難しそうな取引先
  • 利用者数
    • 自社で画面を操作する人の数
    • 取引先側の利用者を数えるかどうかを見積もりで確かめる

取引先の負担と、1社だけの導入が効かない問題

共通EDI標準なら受注側に大きな費用はかからない

受発注の電子化は、自社の中だけでは完結しません。
注文を出す側と受ける側の両方がデータでやり取りできて、はじめて転記がなくなります。
中小企業庁の解説でも、EDIは1社だけが導入しても効果を得ることはできないとされています1。
EDIは、企業同士が注文書などの取引情報を、あらかじめ決めた形式のデータでやり取りする仕組みのことです。

先ほどの会社に当てはめると、自社が受発注の仕組みを入れても、注文を出す取引先がFAXを送り続ければ、担当者はそのFAXを見て入力する作業から抜け出せません。
だからこそ、月額を比べる前に、取引先が電子化に応じられるかを見ておく必要があります。
同じ解説では、導入の要否は相談企業だけでなく、取引先企業の状況や環境も考慮して判断するとしています1。

取引先の負担を抑える方法として、中小企業庁は中小企業共通EDIを紹介しています。
中小企業共通EDIは、受発注データの項目や形式をそろえるために定められた標準の仕様です。
解説によると、受注側企業はこの標準に対応したプロバイダー(標準に沿ったデータのやり取りを提供する事業者)や業務アプリを利用するだけで済み、大きな費用はかからないとされています1。

ただし、ここでいう「大きな費用はかからない」には具体的な金額が書かれていません。
また、共通EDI標準に対応した場合の受注側についての説明であり、取引DXのサービス全般で取引先の負担が小さいという意味ではありません。

クラウド型サービスの取引先負担は個別に確認する

クラウド型の受発注サービスには、発注側が契約し、受注側の取引先には画面にログインして注文を確認してもらう形のものがあります。
この形では、取引先に費用がかかるのか、かかるとすれば誰が払うのかは、サービスと契約によって違います。
個別サービスの取引先負担を一般的な金額として示した公的な資料はありません。

立場を逆にして考えると、負担の中身が見えてきます。
自社が注文を受ける側で、取引先ごとに違うサービスを指定されると、担当者は取引先の数だけ別の画面にログインし、注文を確認し、自社の販売管理へ入力することになりえます。
費用がかからなくても、画面が増えるほど確認と転記の手間は増えます。
自社が発注側として仕組みを選ぶときも、取引先が同じ苦労を抱えないかを考えておくと、協力を得やすくなります。

見積もりの段階で、取引先についても次の点を提供者に聞いておくと、取引先へ説明するときに困りません。

  • 取引先が利用するのに費用はかかるか、かかるなら誰が負担するか
  • 取引先はどんな操作をするのか(画面で入力するのか、データを受け取るのか)
  • 取引先からの問い合わせには誰が答えるのか
  • 電子化に応じない取引先がいる場合、その分の注文をどう扱うか
比べる点 中小企業共通EDI標準に対応する場合 個別のクラウド型サービスの場合
受注側の費用 対応プロバイダー・業務アプリの利用で済み、大きな費用はかからないとされる(金額の記載なし) サービスと契約により異なる
受注側の作業 標準に対応した仕組みを利用する 指定された画面での操作などをサービスごとに確かめる
根拠となる情報 中小企業庁の解説 個別の見積もりと契約条件
月額以外の負担が生じる時期(模式図)
始める前の登録、既存システムとの連携、始めた後の運用の三つの負担を時期順に並べた図始める前の登録、既存システムとの連携、始めた後の運用の三つの負担を時期順に並べた図始める前:取引先の連絡先や商品・単価など基本情報の登録連携:既存の販売管理や会計の仕組みへデータを渡す設定や開発始めた後:取引先からの問い合わせ対応と、電子とFAXの二重処理

▼ 図の内容を文字で読む
  • 始める前:取引先の連絡先や商品・単価など基本情報の登録
  • 連携:既存の販売管理や会計の仕組みへデータを渡す設定や開発
  • 始めた後:取引先からの問い合わせ対応と、電子とFAXの二重処理

共通EDI標準から始める進め方と、期待できる範囲

最低限の項目から始める考え方

取引先の負担を抑えたいとき、もう一つ考えたいのが、最初にやり取りする情報の量です。
中小企業共通EDIの標準仕様は、プロバイダーに対応を求める注文メッセージとして全135項目を定める一方、業務アプリに対応を求める最低限の項目は13項目としています1。
13項目には、注文書番号や注文書発行日などが含まれます1。

この二段構えは、受発注の電子化を小さく始めるときの参考になります。
注文には、毎回必ず書く情報と、取引によっては使わない情報があります。
最初からすべての情報を電子でやり取りしようとすると、取引先にも自社にも準備が増えます。
まずは毎回欠かせない項目をデータで受け取り、転記の多い部分を減らすところから始める、という設計が考えられます。

見積もりの比較にも、この考え方は使えます。
提供者に、最初の段階で取引先とやり取りする項目をどこまで絞れるか、後から項目を増やせるかを聞いておくと、小さく始めて広げる計画が立てやすくなります。
ただし、13項目は標準が業務アプリに求める最低限の水準であって、どの会社もその項目だけで業務が回るという意味ではありません。
自社の注文で欠かせない情報が何かは、いまの注文書を見て洗い出す必要があります。

実証の削減率の読み方と限界

電子化でどれだけ手間が減るのかについては、中小企業共通EDIの実証の結果があります。
2016年度補正で行われた12の実証プロジェクトでは、中小企業の受発注業務の時間が平均して51.4%削減されました1。
中小企業の削減率は、大企業より高かったとされています1。

この数字は、電子化の効果を考える手がかりにはなりますが、月額の妥当性を判断する根拠にはなりません。
共通EDI標準を使った実証の平均であり、特定のサービスを入れたときの効果を示すものではないからです。
また、減ったのは受発注業務の時間であって、費用ではありません。

自社に当てはめるなら、数字を借りるより、測り方を借りるほうが役立ちます。
前の節で記録しておいた、注文1件あたりの転記と確認の時間が、電子化でどこまで減りそうかを考えます。
たとえば、取引先から届いた注文データを販売管理へそのまま取り込めるなら、打ち直しの作業はなくなり、内容の確認が残ります。
取り込めず画面を見て入力するなら、FAXを読む時間は減っても打ち直しは残ります。
どの作業が減り、どの作業が残るのかを分けて見積もると、月額と比べる相手がはっきりします。

受注側の負担の根拠の違いと、取引先について聞く点(模式図)
共通EDI標準の場合、個別のクラウド型サービスの場合、見積もりで聞く点の三つに分けた図共通EDI標準の場合、個別のクラウド型サービスの場合、見積もりで聞く点の三つに分けた図共通EDI標準に対応する場合対応プロバイダーや業務アプリを利用するだけで済む大きな費用はかからないとされる(金額の記載なし)個別のクラウド型サービスの場合取引先の費用はサービスと契約によって違う一般的な金額を示した公的な資料はない見積もりで提供者に聞く点取引先に費用がかかるか、誰が負担するか取引先の操作と、問い合わせに答える人電子化に応じない取引先の注文の扱い

▼ 図の内容を文字で読む
  • 共通EDI標準に対応する場合
    • 対応プロバイダーや業務アプリを利用するだけで済む
    • 大きな費用はかからないとされる(金額の記載なし)
  • 個別のクラウド型サービスの場合
    • 取引先の費用はサービスと契約によって違う
    • 一般的な金額を示した公的な資料はない
  • 見積もりで提供者に聞く点
    • 取引先に費用がかかるか、誰が負担するか
    • 取引先の操作と、問い合わせに答える人
    • 電子化に応じない取引先の注文の扱い

補助金(電子取引類型)が使える立場と条件

発注側が受注側にアカウントを無償発行する枠

費用の負担を下げる手段として、デジタル化・AI導入補助金2026のインボイス枠(電子取引類型)があります。
補助の対象は、インボイス制度に対応した受発注の機能を持つクラウド型のソフトです2。
そのうえで、発注側が受注側にアカウントを無償で発行し、利用させられる機能を持っていることが求められます2。

この条件から、補助金を使う立場が読み取れます。
対象となるのは、中小企業・小規模事業者等と受発注の取引を行う事業者で、大企業も含まれます2。
つまり、注文を出す側がソフトを入れ、注文を受ける取引先にはアカウントを無償で渡す、という使い方を想定した枠です。

自社が発注側で、仕入先や外注先に注文を出している立場なら、この枠は検討の対象になります。
取引先にアカウントを無償で渡せるので、前の節で見た取引先の負担を抑えながら電子化を進める形と重なります。

一方、自社が注文を受ける側の中小企業で、自分の受発注の月額を補助してもらうつもりで読むと、制度の前提を取り違えます。
電子取引類型は、受注側が自社で契約するサービスの月額を下げるための枠ではありません。
受注側の会社にとっては、発注元がこの枠を使って仕組みを入れた場合に、アカウントを無償で受け取れる、という関わり方になります。

取引先への無償提供が補助の要件になっていることから、取引先の負担を減らす設計は公的な制度でも想定されていると言えます。
ただし、これは補助の対象になるソフトの条件であって、民間のサービスが一般に取引先へ無償でアカウントを渡しているという意味ではありません。

補助率・上限と締切

補助率は、申請者が中小企業・小規模事業者等の場合は2/3以内で、それ以外の事業者はこれより低い補助率になります2。
補助額は下限がなく、上限は350万円以下です2。

ここで気をつけたいのは、見積もり総額に補助率を掛けた額を、そのまま実質負担として社内に示さないことです。
どの経費が補助の対象になるのか、クラウドの利用料がどの期間まで認められるのかといった細かな条件は、事務局の公募要領で定められています。
申請しても採択されるとは限りません。
社内の稟議では、補助なしの総負担を基準にし、補助が受けられた場合の負担を別に示しておくと、結果がどうなっても計画を立て直さずに済みます。

公募は回ごとに締切が設けられています。
事務局のページでは、記載時点で第7回公募の交付申請の締切が2026年10月末とされていました2。
読んでいる時期によっては締切が近い、またはすでに過ぎていることもあるため、次の公募の有無や日程は事務局のページと最新の公募要領で確かめてください。

共通EDI標準の項目の範囲と小さく始める考え方
全135項目、最低限の13項目、毎回欠かせない項目から始める考え方の三段で示した図1注文メッセージ全135項目プロバイダーに対応を求める2最低限の13項目業務アプリに対応を求める。注文書番号、注文書発行日など3毎回欠かせない項目をデータで受け取り、転記の多い部分から減らす

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 注文メッセージ全135項目(プロバイダーに対応を求める)
  2. 最低限の13項目(業務アプリに対応を求める。注文書番号、注文書発行日など)
  3. 毎回欠かせない項目をデータで受け取り、転記の多い部分から減らす

見積もり依頼と導入判断の手順

見積もり依頼で確認する項目の順序

ここまでの内容を、見積もりを依頼するときの順番に並べ直します。
順番に意味があるのは、前の項目が決まらないと、後の項目の答えが変わるからです。

  1. 対象業務を決める:受発注、請求、支払、契約書のうち、どこから電子化するか
  2. 取引量・取引先数・利用者数を数える:月の件数、相手の社数と電子対応できそうな社数、自社で操作する人数
  3. 取引先の負担を確かめる:取引先の費用、操作、問い合わせ先、電子化に応じない取引先の扱い
  4. 月額以外の費用と条件を並べる:初期費用、既存システムとの連携、サポートの範囲、契約期間
  5. 補助金が使えるかを確かめる:自社の立場と、対象となるソフトかどうか

対象業務が決まらないうちは、取引件数を数えようにも、注文だけを数えるのか請求書も数えるのかが定まりません。
取引先の負担を月額以外の費用より先に置いているのは、取引先が応じられない仕組みであれば、費用が安くても転記は減らないからです1。
補助金を最後にしているのは、補助の有無で仕組みの選び方を先に決めてしまうと、自社の業務や取引先に合わない仕組みを選ぶおそれがあるためです。

4番目の契約期間も、総負担に関わります。
月額が安くても、最低利用期間が長い契約なら、取引先の協力が得られず効果が出なかったときに、使わない月額を払い続けることになります。
小さく始めて広げる計画なら、途中で範囲を変えられるかどうかも聞いておきたい点です。

社内・取引先への説明の組み立て

社内で説明するときに求められるのは、「月額いくらか」への答えだけではありません。
経営者が知りたいのは、払う額に見合って何が変わるのかです。
そこで、見積もりの月額と月額以外の費用を合わせた総負担を示し、その横に、いまの注文処理にかかっている時間と、電子化で減る作業、残る作業を並べます。
相場額を示せない代わりに、自社の数字で比べた結果を示すほうが、判断の材料として確かです。

あわせて、取引先の状況も説明に含めます。
主要な取引先が電子化に応じられそうか、応じられない取引先が残るならその分の処理をどうするか。
中小企業庁の解説が示すとおり、導入の要否は取引先の状況や環境も考慮して判断するものです1。
この点が説明に入っていると、導入しても効果が出ないのではないかという疑問に先回りして答えられます。

取引先に説明するときは、相手が知りたいことから話します。
取引先にとって大事なのは、仕組みの名前より、費用がかかるのか、何をすればよいのか、困ったときに誰に聞けばよいのかです。
見積もりの段階で提供者に確かめておいた内容は、そのまま取引先への説明に使えます。
自社が発注側で電子取引類型を使う場合は、取引先にはアカウントを無償で渡せることも伝えられます2。

判断に迷うときは、外部の相談先も使えます。
中小企業庁の解説ページでは、導入を検討する企業からの相談を無料で受け付けていると案内されています1。
取引先との調整まで含めて自社だけで決めきれない場合は、見積もりと並行して相談しておくと、判断の材料が増えます。

電子取引類型で想定されている立場ごとの関わり方(2026年度・模式図)
対象となるソフトの条件、発注側の関わり方、受注側の関わり方の三つに分けた図対象となるソフトの条件、発注側の関わり方、受注側の関わり方の三つに分けた図補助の対象となるソフトインボイス制度に対応した受発注の機能を持つクラウド型発注側が受注側にアカウントを無償で発行できる機能自社が発注側の場合仕入先や外注先に注文を出している立場なら検討の対象取引先にアカウントを無償で渡せる自社が受注側の場合自社で契約するサービスの月額を下げる枠ではない発注元が導入した場合に、アカウントを無償で受け取る関わり方

▼ 図の内容を文字で読む
  • 補助の対象となるソフト
    • インボイス制度に対応した受発注の機能を持つクラウド型
    • 発注側が受注側にアカウントを無償で発行できる機能
  • 自社が発注側の場合
    • 仕入先や外注先に注文を出している立場なら検討の対象
    • 取引先にアカウントを無償で渡せる
  • 自社が受注側の場合
    • 自社で契約するサービスの月額を下げる枠ではない
    • 発注元が導入した場合に、アカウントを無償で受け取る関わり方

月額を動かす条件や月額以外の負担は、自社の業務と取引先の状況を並べてみないと、どこまで見積もりに含めるべきか判断しにくいためです。

相談では、自社の対象業務や取引件数、取引先の対応状況を整理し、見積もり依頼で確かめる項目に漏れがないかを確認できます。無料相談で要件を整理する

要点の整理

軸 基準
月額の比べ方 対象業務・取引件数・取引先数・利用者数をそろえてから見積もりを取る
総負担 初期設定・既存システムとの連携・サポート・契約期間・社内運用を月額と合わせて見る
取引先 費用・操作・問い合わせ先・電子化に応じない取引先の扱いを確かめる
補助金(電子取引類型) 発注側が受注側にアカウントを無償発行する場合の枠。対象経費と日程は最新の公募要領で確かめる
効果の見込み 注文1件あたりの転記・確認時間を導入前に記録し、減る作業と残る作業を分ける
見積もり依頼で確認する項目の順序
対象業務の決定から補助金の確認まで五つの項目を順に確認する流れ1対象業務を決める2取引量・取引先数・利用者数を数える3取引先の負担を確かめる4月額以外の費用と条件を並べる5補助金が使えるかを確かめる

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 対象業務を決める
  2. 取引量・取引先数・利用者数を数える
  3. 取引先の負担を確かめる
  4. 月額以外の費用と条件を並べる
  5. 補助金が使えるかを確かめる

補助金を使えるかどうかや取引先への説明の組み立ては、自社が発注側か受注側か、取引先がどこまで電子化に応じられるかで変わるためです。 相談では、自社の立場と取引先の状況をもとに、見積もりと取引先への相談をどの順で進めるかを確かめられます。

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よくある質問

中小企業が取引DXに支払う月額の相場はいくらですか。

中小企業庁や支援機関の公開資料には、取引DXの月額相場や業務別の金額帯は示されていません。
月額は、電子化する業務の範囲、取引件数、取引先数、自社で操作する人数などによって変わります。
この4つを自社の数字でそろえてから複数の見積もりを取り、初期設定や連携、契約期間を含めた総負担で比べるのが現実的です。

取引先が電子化に対応してくれない場合、導入する意味はありますか。

受発注の電子化は、1社だけが導入しても効果は得られないとされています1。
取引先がFAXのままなら、その注文の転記は残ります。
主要な取引先が応じられるか、応じられない取引先の注文をどう処理するかを先に確かめ、取引先の状況も踏まえて導入するかどうかを判断してください1。
注文が少数の取引先に集中している場合は、その取引先が応じるだけで転記の多くが減る可能性があります。

受注側の中小企業が、自社で電子取引類型の補助金を申請できますか。

電子取引類型は、発注側が受注側にアカウントを無償で発行できる受発注ソフトが補助の対象です2。
受注側の中小企業が、自社の月額負担を下げるために申請する枠として読むと前提を取り違えます。
受注側としては、発注元がこの枠で仕組みを入れた場合にアカウントを無償で受け取る関わり方になります。
自社が別の取引では発注側になる場合の扱いや申請要件の細部は、事務局の公募要領で確認してください。

中小企業共通EDIとクラウド型の受発注サービスは何が違いますか。

中小企業共通EDIは、受発注データの項目や形式を定めた標準の仕様で、注文メッセージ全135項目と、業務アプリに求める最低限の13項目を定めています1。
標準に対応したプロバイダーや業務アプリを使う受注側には、大きな費用はかからないとされています1。
クラウド型の受発注サービスは提供者ごとの仕組みで、取引先の費用や操作はサービスと契約によって違うため、見積もりで個別に確かめる必要があります。
検討しているサービスが共通EDI標準に対応しているかどうかも、見積もりの際に聞いておける点です。

見積もりを依頼するとき、取引件数や取引先数はどう整理しておけばよいですか。

取引件数は、注文書や請求書など電子化する書類ごとに、1か月あたりの件数で数えておくと伝えやすくなります。
取引先数は全体の社数に加えて、電子でやり取りできそうな社数と当面は難しそうな社数に分けておきます。
件数がどの取引先に集中しているかも添えると、段階的な進め方を相談しやすくなります。
あわせて、自社で画面を操作する人数と、つなぎたい既存の販売管理や会計の仕組みも伝えてください。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

> プロフィールの詳細を見る

  1. 1 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(2020年公開・2026年最終更新)
  2. 2 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構(デジタル化・AI導入補助金事務局)「デジタル化・AI導入補助金2026 インボイス枠(電子取引類型)」(2026年度)
  3. 3 出典:東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査 集計結果(2024年調査)」(2025年)

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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